悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌

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第三章 少女期 女神編

第三百五十話 憎悪(セイ視点)

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 目を覚ますと、そこは暗闇だった。深く、深く、淀んだ闇。見つめているだけで、そこに含まれた嘆きが、苦しみが、襲いかかってくるかのようで、僕は、目を閉じて、耳を塞ぐ。しかし、ドロリと粘度のある闇はそれを許してなどくれない。


(憎い、苦しい、痛い、怖い……)


 目を閉じているはずなのに、耳を塞いでいるはずなのに、そこには同じ闇が広がって、僕を苛む。

 思い出すのは、ユミリアと出会う前。誰からも石を投げられ、蔑まれてきた時のこと。


「また、まざりものがいるよ」

「ほんとだ」

「ほんとだー」

「ねぇ、こんどはどうする?」

「いし、なげるー」

「とらっぷー」

「くさいしる、かけるー」


 どんなにひっそりと隠れていても、妖精が存在するような場所に居れば、すぐに見つかってしまう。妖精は、隠れたものを見つける天才だ。そのため、僕は、気が休まる時なんてなかった。


「いた、いたいっ、やめて、やめてよ」


 弱りきっていた僕は、飛ぶことすらできなくて、石を投げられ、足を引っ掛けられ、妖精にとっては毒とも言える植物の汁をかけられ、さらにズタボロになっていく。


(どうして、こんな……ぼく、なにもしてない、のに……)


 混ざりものがどういう意味なのかも分からず、ただただ、苦痛に耐える日々。それでも、その時は憎しみまで抱いたことはなかった。母のことは知らずとも、父は、僕を愛してくれていて、その記憶は、例え父が突然居なくなっても、心に残っていたから。


「ねぇ、まざりものをうんだやつって、どうなったの?」

「しんだんじゃない?」

「まざりものをうむなんて、とってもふきつー」

「ふきつってなにー?」

「だめなことだよー」

「ふきつは、しぬの?」

「そう、おーさまたちが、つぶしちゃうのー」


 どうか、見つかりませんようにと隠れていた僕は、彼らに引きずり出され、意識が朦朧とするまで痛めつけられた。そんな中で聞いたその言葉に、僕の思考は、一時的に停止する。


(つぶしちゃう……つぶれる、の……?)


 父は、確かに突然居なくなった。しかし、無残にもバラバラに千切れた羽根をたまたま見つけて、そこで、妖精が一人、ぺしゃんこに潰れていたのだという話を聞いてはいた。……たとえバラバラでも、父の羽根を見間違うはずはなく、その瞬間、僕は父の死を知った。


(おーさま……ようせいおう……? なんで、そんなかたが、ぼくの、とうさんを、ころし、た……?)


 なぜ、とか、どうして、なんて言葉がいくつも浮かび、次第にそれは、憎しみへと転換していく。


「ころして、やる……」


 絶対に、何がなんでも、父を殺した妖精王を見つけ出して、復讐してやる。そう決意した瞬間、恐怖が、痛みが、苦しみが、どこか遠くのもののように感じられるようになる。
 そうして、僕は…………………。
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