悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌

文字の大きさ
375 / 412
第三章 少女期 女神編

第三百七十四話 囚われの姫

しおりを挟む
(最悪だ……)


 落ちた私を拾い上げようと、レインボードラゴンが動くものの、その前に、別の存在によって横からかっさらわれる形となる。


「邪神、ムエリス……」


 額に邪神の中でも高位の存在である証として、額に黒い紋様を浮かべた紫の長髪の男。かつて、ユレイラ達を襲い、殺した邪神。ユレイラに異常な執着を見せていた邪神。


「あァ、ようやク、みツケタ。俺の、ユレイラ。俺だけノ、ユレイラ」


 背後から抱き締められる形で拘束された私は、そのあまりにも気持ち悪い言葉に、ゾゾゾッと鳥肌を立てる。


「は、離してっ!」


 生理的に無理。そう思うも、腕の力が緩んでくれることはない。これでも、力の限り魔力を用いて攻撃を繰り返しているのだが、全く、これっぽっちも、びくともしない。というか、レインボードラゴン達も必死に私を取り戻そうとしてくれているのだが、彼らの攻撃もものともしないのだ。


「はァ、ハァ……ユレイラ。ユレイラ、ユレイラユレイラユレイラユレイラユレイラユレイラユレイラユレイラユレイラユレイラユレイラユレイラ」

「ひぃっ!」


 耳元で狂った囁きを聞かされて、私は思わず涙目になる。なりふり構わず暴れても、全く手応えのないその様子に、恐怖と混乱でどうにかなりそうだ。


「あァ、かわイい、ユレイラ。俺ノ、ユレイラ」

「や、やぁっ!!」


 ネロリ、と耳を舐められた瞬間、あまりの気持ち悪さに本気で泣く。


「た、助けてっ」

「は、ぁ……モう、邪魔はさセなイ。ずっト、ズっと、二人デ、愛シ合おウ?」


 ただでさえ気持ち悪いのに、もっと気持ち悪いことを言われて、必死に、背後の邪神へ毒薬をかけたり、爆発を起こしたりさせる。私が愛するのは、心から求めるのは、ただ一人。イルト様しか居ないのに、こんなのはあり得ない。
 と、その直後、今までどんなに頑張っても抜け出せなかったその腕から、私は落ちて、空中に放り投げられる。


「ユレイラ様!」


 レインボードラゴンの一体が、その隙きを逃さず、私の体を受け止め……何が起こったのか理解できなかった私は、すぐに、それを目にすることとなる。


「よくも、ユミリアを……」

「許さないっ」

「……殺す……」


 異様に殺気立ち、神力を解放・・・・・しているセイ、鋼、ネシス。そして、何よりも……。


「…………」


 全く、何も口にはしていないものの、凄まじい神力を当然のように放って、見間違いでなければ、呪いを引きちぎったイルト様。ついでに、ムエリスの両腕だけ・・がイルト様の手にある。


(……う、うわぁ……)


 神から別の生き物に転生したはずの存在が、怒りだけで神に復帰するとか、聞いたことがない。しかも、自分ではどうすることもできなかったはずの神による呪いを、簡単に引きちぎるなんて聞いたこともない。

 今まで、変態行為を極めていたムエリスも、流石にその光景に呆然として……すぐに、私へとその視線を向けようとする。


「っ……」


 見られることですら嫌だと思って目を閉じるも、その後に響いたそれに、思わず目を開ける。


「ギャアァァァァアッ!!!」


 そこには、地面に這いずり、ベキバキと神力の圧力に押し潰されるムエリスの姿があった。しかも、何度も何度も、その力は緩んでは強くなるを繰り返すらしく、ムエリスの悲鳴は何度も何度も、響いてくる。


「イ、イリアス様、怖ぇっ」


 神力は、ムエリスの魂を直接攻撃し、どんどん粉々に砕いていく。神にとって、魂の破壊ほど苦しいものは存在しない。それを、イルト様は何度も何度も繰り返す。私が乗っていたレインボードラゴンは次男だったらしく、彼の震え具合から、私は、イルト様が完全に怒り狂っているのを感じて、少しだけ嬉しくなると同時に、早く、消毒してほしい気持ちにもなる。


「イルト様……」


 小さな小さな、私にしては、随分と弱々しい声。早く、この気持ち悪さを何とかしてほしいと思ったこの声は、どうやら、イルト様に届いたらしく、イルト様は、『後は任せる』とセイ達に言って、私の前に一瞬にして現れる。


「ユミリア」


 そうして、イルト様に抱き締められた私は、ようやく、安堵の息を吐いた。
しおりを挟む
感想 344

あなたにおすすめの小説

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~

こひな
恋愛
市川みのり 31歳。 成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。 彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。 貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。 ※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!? バッドエンドだらけの悪役令嬢。 しかし、 「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」 そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。 運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語! ※完結済です。 ※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///) ※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。 《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

幽霊じゃありません!足だってありますから‼

かな
恋愛
私はトバルズ国の公爵令嬢アーリス・イソラ。8歳の時に木の根に引っかかって頭をぶつけたことにより、前世に流行った乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまったことに気づいた。だが、婚約破棄しても国外追放か修道院行きという緩い断罪だった為、自立する為のスキルを学びつつ、国外追放後のスローライフを夢見ていた。 断罪イベントを終えた数日後、目覚めたら幽霊と騒がれてしまい困惑することに…。えっ?私、生きてますけど ※ご都合主義はご愛嬌ということで見逃してください(*・ω・)*_ _)ペコリ ※遅筆なので、ゆっくり更新になるかもしれません。

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

処理中です...