天才小児外科医から溺愛されちゃいました

鳴宮鶉子

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小児科クリニックと救命救急センター  1

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「注射やだ!!嫌、嫌、辞めて!!」

母が経営している小児科クリニックの予防接種・健診時間帯。
子供達の泣き叫ぶが院内にこだまする。

診察室に入った子供達が泣いて出てくるから、待合室で待機している子供達が恐怖で震える。

「痛くないよ!!一瞬だけチクッとするだけよ!!」

親御さんや医者や看護師の声なんて、聞かない。
中には強い子だと思われたくて我慢する子もいるけど、最近の子は打たれ弱く、泣き喚く子が多い気がする。

この地区でクチコミNo.1の人気小児科クリニックで、母を慕って遠くから受診しにくる方もいるから、毎年250人近くの新生児が患者さんに加わる。
3ヶ月健診から中学校卒業まで、予防接種と病気治療を受ける。

准看護師の資格を取得してから、予防接種・健診時間帯の14:00~16:00は可能な限り、サポートに入る。
3歳までの小さな子供達の成長する姿が嬉しくて、注射をする嫌な奴と思われても、彼らの成長を見に行く。

「心愛ちゃん、良いお母さんになるね」

母が経営する小児科クリニックを開業当時からサポートして下さってるベテラン看護師の野嶋さん。
母は秘密主義で自分に関する事を他人にむやみに話さない。
シングルマザーで私を育ててきた事実は周りは悟って知り得るけど、私の父親に関する情報はいっさい聞いた事がない。
物心ついた時にはもう父親らしき人はいなかった。

『心愛ちゃんの父親?……それに関してはお母さんが心愛ちゃんに話さないなら教えられない』

母の医大からの友人や先輩、後輩に訊いても、誰も教えてくれない。

『……いつのまにかに心愛ちゃんを産んでシングルマザーになってたから、わからないんだよね』

私の出生について、知っている人は限りなく少ないと思う。
祖父母も亡くなっていて、1人で産んで私を育てながら医者として勤めていた。

母が医師として働いている姿を見て育ったけど、物心つく前から託児所に預けられシッターさんにお世話されていたから、母に遊んだりご飯を食べさせて貰った記憶はない。

我が子に愛情を注ぐ親御さんとの関わりの中、自分が母親になるイメージが全く湧かない。

小さな子供の成長は嬉しい。
病気に罹り苦しんでいると助けたいと思う。

だけど、それは母性からではなく、命を助けたいという思いからだった。

「心愛、今日は宜しくね」

医師会からの依頼で、私の母も月に8~10日間、京都府立病院に休日夜間小児科医として勤務してる。
月に2~3回、母について患者さんの診療を行う。

『苦しいね……吸入して帰ろうか。呼吸が楽になるテープも出しとくね』

『吐いた方が悪い菌やウイルスが身体から出ていくからいいんだけど、つらいね。血液検査して細菌性かウイルス性か調べよう。脱水症状起こしてるから点滴して、細菌性ならよく効く抗生物質あるからその点滴を入れて、後は飲み薬を処方するね』

夜間診療はここまで丁寧に診察する医師はいない。
次の日にかかりつけ医に診てもらうように言って応急処置しか行わない医師が多い。

「健太、お願い、死なないで!!」

深夜3時過ぎ、生後10ヶ月の男の子が救急車で搬送されてきた。
救急隊員からの説明では、一軒家の急な階段から落ち頭を強打し、意識を失い、それからずっと身体が痙攣しているとの事だった。

レントゲンとCTスキャンをしたところ、脳と骨の間に薄い血液が溜まり硬膜下血腫を起こし、けいれんが止まらず脳が萎縮しているようだった。
骨がぺコッとへこんだ状態になり、陥没骨折を起こすも2歳頃までは骨が柔らかいので自然に治ることが多いが、血管が破れたのが硬膜下で大出血が起きているから手術で整復するしかない。

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