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拒絶
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「ママ、ここどこ?」
「しばらく住む家よ」
当たり前のように葛城部長が訪ねてくるからしばらくの間、家具家電付きの賃貸マンションに住む事にした。
「ママ、おもちゃは?」
「ノートパソコンとiPadで我慢してくれるかな」
幼稚園から徒歩5分圏内で送り迎えしやすいマンションを借り、フルリモート勤務を辞め、明日から出社する事にした。
オフィスビルで勤務するのが初めてで、どこで仕事をすればいいのかわからず、戸惑う。
フリーアドレス制の職場。
朝のミーティングは決まったスペースで行われるが、後は自由に移動して仕事をしていいらしい。
「アミューズメントパークみたいな社内ね。落ち着かない……」
私が所属するエンジニアリング部第1課のミーティングスペースは普通のフロア内にある。
課員は私を含めて18人。
リモートワークでできる仕事だから出社率が悪く、いつも5人ぐらいしか来ていない。
「おはようございます」
「おは……よう、永倉さんが出社って、初めてだよね」
「は、はい」
ガンプラとアニメが大好きな上田さん。
リモートワークだと仕事できないとかで毎日出社してる。
「出社して大丈夫なの?子供の迎え大丈夫?」
「大丈夫です。今日から預かり保育お願いしたので、18時半までに迎えにいけば大丈夫です」
「そんな時間まで預かってくれるの!?いいなぁ。ウチの奥さんも子供預けて仕事すればいいのに……」
未入園児が3人家にいて奥さんが発狂して煩いからと出社している後藤さん。
本当は家でリモートワークがしたいらしい。
月曜日だからか私を含めて3人しか出社してなかった。
「おはよう」
朝のミーティングの時間になり、ノートパソコンを手に持った葛城部長がフロアに現れた。
管理職だから普段は執務室で仕事をしているらしく、ミーティングの時以外は出てこないらしい。
「ゆゆ、……永倉が出社してる。か、息子さんの迎えとか大丈夫?」
「大丈夫です。預かり保育にしました。18時半までに迎えに行けばいいので定時まで大丈夫です」
葛城部長は何か言いたそうな表情をしてる。
「永倉、ミーティング終わったら俺の執務室にこい」
「わかりました」
毎月断っても渡してくる養育費。
食費として受け取ろうかと思ったけど、渋沢栄一を毎月100枚も渡されても困る。
血縁はあるけど、葛城部長の事を翔琉の父親と認めたくない。
だから、全額返す事にした。
「結衣、無理して勤務しないでいい。今すぐ帰れ。預かり保育なんかしたら翔琉が可哀想だろ」
「嫌です。出社しないと毎日葛城部長が家に訪ねてくるので」
私が出社すれば葛城部長が家を訪ねてくる口実が無くなる。
「これは、……お返しします。仕事の面でご迷惑おかけしてたので夕食を振る舞うのは当然の事なので。ですが、これからは仕事は社内でお申しつけ下さい。プライベートに干渉してこないで下さい」
渡されたお金も全額返した。
これで翔琉の父親ぶられる筋合いは無い。
「失礼します」
葛城部長をやっと拒絶する事ができた。
だけど、社内の落ち着けそうなとこで仕事をしていたら当たり前のように葛城部長が私の隣の席に座ってきて、ずっと見張られ仕事がやりにくい。
「預かり保育は可哀想だから、14時にあがって、家に戻ってリモートワークしろ」
「ありがとうございます」
「永倉さんと葛城部長ってどういう関係?」
「中学高校時代の同級生です」
社内でいつも監視されてるからか葛城部長と付き合ってると誤解されて困っている。
「本当にそれだけ?」
「それだけです」
課員から聞かれるのはまだいい。
「永倉さん、貴女、葛城部長を狙ってるの?」
「えっ!?」
葛城部長の事を慕ってると思われる女性からライバル視されるのは勘弁して欲しい。
フリーアドレス制だから1人の時、顔見知りでない社員から何かと仕事以外の事を聞かれ、仕事の妨げになる。
1週間出社してみてもう限界でリモートワークに戻したくて堪らなくなった。
「結衣、……今、どこで生活してるんだ」
翔琉に会おうと家を訪ねて来たのだろう。
葛城部長に執務室へ呼び出され咎められた。
「……プライベートな事なのでお答えできません」
「翔琉は俺の子でもある」
「養育費は返金しましたし、翔琉の父親が自分だと確証ありますか?浮気を疑って私を捨てたのに」
毅然とした態度で葛城部長を拒絶する。
浮気なんてしてないのに浮気女扱いされ、一方的に別れを切り出され、全ての連絡ツールをブロックされた。
別れを切り出された私がどんだけ絶望したか。
先に私の事を拒絶したのは葛城部長。
「超遠距離恋愛で1年の内、3ヶ月間しか一緒に居られないのに、結衣は俺より大学やインターンを優先にしてただろう」
別れの理由がずっと分からなかった。
「自分勝手ですね。私なりに……葛城部長と過ごす時間を作ってました。成績と社会活動で交換留学先が決まるから、できるならスタンフォード大学に行きたいと努力してました。優秀じゃないから叶わなかったですけどね……」
葛城部長を翔琉の父親として受け入れる事は到底できない。
「しばらく住む家よ」
当たり前のように葛城部長が訪ねてくるからしばらくの間、家具家電付きの賃貸マンションに住む事にした。
「ママ、おもちゃは?」
「ノートパソコンとiPadで我慢してくれるかな」
幼稚園から徒歩5分圏内で送り迎えしやすいマンションを借り、フルリモート勤務を辞め、明日から出社する事にした。
オフィスビルで勤務するのが初めてで、どこで仕事をすればいいのかわからず、戸惑う。
フリーアドレス制の職場。
朝のミーティングは決まったスペースで行われるが、後は自由に移動して仕事をしていいらしい。
「アミューズメントパークみたいな社内ね。落ち着かない……」
私が所属するエンジニアリング部第1課のミーティングスペースは普通のフロア内にある。
課員は私を含めて18人。
リモートワークでできる仕事だから出社率が悪く、いつも5人ぐらいしか来ていない。
「おはようございます」
「おは……よう、永倉さんが出社って、初めてだよね」
「は、はい」
ガンプラとアニメが大好きな上田さん。
リモートワークだと仕事できないとかで毎日出社してる。
「出社して大丈夫なの?子供の迎え大丈夫?」
「大丈夫です。今日から預かり保育お願いしたので、18時半までに迎えにいけば大丈夫です」
「そんな時間まで預かってくれるの!?いいなぁ。ウチの奥さんも子供預けて仕事すればいいのに……」
未入園児が3人家にいて奥さんが発狂して煩いからと出社している後藤さん。
本当は家でリモートワークがしたいらしい。
月曜日だからか私を含めて3人しか出社してなかった。
「おはよう」
朝のミーティングの時間になり、ノートパソコンを手に持った葛城部長がフロアに現れた。
管理職だから普段は執務室で仕事をしているらしく、ミーティングの時以外は出てこないらしい。
「ゆゆ、……永倉が出社してる。か、息子さんの迎えとか大丈夫?」
「大丈夫です。預かり保育にしました。18時半までに迎えに行けばいいので定時まで大丈夫です」
葛城部長は何か言いたそうな表情をしてる。
「永倉、ミーティング終わったら俺の執務室にこい」
「わかりました」
毎月断っても渡してくる養育費。
食費として受け取ろうかと思ったけど、渋沢栄一を毎月100枚も渡されても困る。
血縁はあるけど、葛城部長の事を翔琉の父親と認めたくない。
だから、全額返す事にした。
「結衣、無理して勤務しないでいい。今すぐ帰れ。預かり保育なんかしたら翔琉が可哀想だろ」
「嫌です。出社しないと毎日葛城部長が家に訪ねてくるので」
私が出社すれば葛城部長が家を訪ねてくる口実が無くなる。
「これは、……お返しします。仕事の面でご迷惑おかけしてたので夕食を振る舞うのは当然の事なので。ですが、これからは仕事は社内でお申しつけ下さい。プライベートに干渉してこないで下さい」
渡されたお金も全額返した。
これで翔琉の父親ぶられる筋合いは無い。
「失礼します」
葛城部長をやっと拒絶する事ができた。
だけど、社内の落ち着けそうなとこで仕事をしていたら当たり前のように葛城部長が私の隣の席に座ってきて、ずっと見張られ仕事がやりにくい。
「預かり保育は可哀想だから、14時にあがって、家に戻ってリモートワークしろ」
「ありがとうございます」
「永倉さんと葛城部長ってどういう関係?」
「中学高校時代の同級生です」
社内でいつも監視されてるからか葛城部長と付き合ってると誤解されて困っている。
「本当にそれだけ?」
「それだけです」
課員から聞かれるのはまだいい。
「永倉さん、貴女、葛城部長を狙ってるの?」
「えっ!?」
葛城部長の事を慕ってると思われる女性からライバル視されるのは勘弁して欲しい。
フリーアドレス制だから1人の時、顔見知りでない社員から何かと仕事以外の事を聞かれ、仕事の妨げになる。
1週間出社してみてもう限界でリモートワークに戻したくて堪らなくなった。
「結衣、……今、どこで生活してるんだ」
翔琉に会おうと家を訪ねて来たのだろう。
葛城部長に執務室へ呼び出され咎められた。
「……プライベートな事なのでお答えできません」
「翔琉は俺の子でもある」
「養育費は返金しましたし、翔琉の父親が自分だと確証ありますか?浮気を疑って私を捨てたのに」
毅然とした態度で葛城部長を拒絶する。
浮気なんてしてないのに浮気女扱いされ、一方的に別れを切り出され、全ての連絡ツールをブロックされた。
別れを切り出された私がどんだけ絶望したか。
先に私の事を拒絶したのは葛城部長。
「超遠距離恋愛で1年の内、3ヶ月間しか一緒に居られないのに、結衣は俺より大学やインターンを優先にしてただろう」
別れの理由がずっと分からなかった。
「自分勝手ですね。私なりに……葛城部長と過ごす時間を作ってました。成績と社会活動で交換留学先が決まるから、できるならスタンフォード大学に行きたいと努力してました。優秀じゃないから叶わなかったですけどね……」
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