婚約破棄から始まる大恋愛

鳴宮鶉子

文字の大きさ
3 / 10

結婚したい婚約者

しおりを挟む
“仕事終わりました。どちらに伺えばよろしいですか?”

“鉄板焼きHAMADAに来て”

LINE送って既録着いてから5分後。
夕食を共にする気はないのに勝手に予約を入れて、地図送付付きのメッセージを送ってきた。

ショールームから徒歩10分圏内にあるラグジュアリーホテル内にある人気鉄板焼きの店。
気になってたけど、1人では入りにくいし、友人や同僚と入りにくい高級店。

個室にわざわざシュフが来て、高級肉と新鮮な海鮮を焼いて出してくれる。
拓海と2人きりだと会話が続かないから、こういう食事はありがたい。

「ご苦労さん」

先についていた拓海が、料理をオーダーしてくれていて、シュフが伊勢海老と鮑を焼き始めていた。

「明日、休館日だから休みだろ?」

目の前に焼きたての伊勢海老とアワビが置かれ、前菜の盛り合わせと共にソムリエらしき人がが白ワインのボトルを持ってきて、グラスに注がれた。

「凛子が大学卒業して以来だから、3ヶ月ぶりだよね。再会に乾杯」

シュフとソムリエが個室から退出し、2人きりなった。

5歳年上の拓海。
幼稚園に通ってた時、本を読んでくれたり、子供のテーマパークみたいなところに連れて行ってくれたりと、よく遊んでくれてた。
拓海も県外の私立の中高一貫校に進学し、小学生時代は夏休みに会うぐらいだった。
私が中学生になってからは帰省する盆正月に義務的に会わされた。
大学進学後はお互いが東京にいるため、連絡を取り合って会うよう言われるものの、親からの干渉が無くなった事をいい事に全く会ってなかった。

「凛子、ショールームアドバイザー向いてないだろ。カタログに載ってる事をただ黙々と話すAIロボットみたいだったよ」

私立女子大で住居空間デザインを学び、建築・インテリアデザインを中心にした家具・陶芸・テキスタイルなどのプロダクトデザイン、コミュニティデザイン、ビジュアルデザインをする仕事をしたかった。
そのために在学中にインテリア関係の資格を取得するために大学以外に夜間の専門学校と通信教育を受講し、実務経験が必要ない資格は全て取得し、資格を持っている。

「……祖父にTATAで働かないなら家族としての縁を切ると言われたから仕方がなかったんです」

両親は何も言わないが祖父は口を出してくる。
TATAを創業した永倉智徳を尊敬していた祖父。
自身の無力さから経営から外れるも、TATAを取り返したいと野心を抱き、一族全員を振り回している。

「俺と結婚すれば、好きな事しても問題ないんじゃない?専業主婦で家でのんびり暮らしてもいいし、空間デザイナーの仕事を紹介してもいい」

結婚しても祖父は寝たきりで話せなくなるまで、私にTATAに勤務し続けろというだろう。

「大学卒業して3ヶ月しか経ってないのに結婚なんて嫌です。TATAでの仕事が全てではないです」

いつかは諦めて結婚しないといけないけど、今ではない。
既婚者というしがらみに縛られたくない。


「大学時代に好きにさせてただろう。さすがにこれ以上は許す事はできない。凛子は俺の事を嫌ってるかもしれないが、俺は凛子と夫婦として上手くやっていきたい。そのためにこれから関係性を築いていきたい」


高校卒業後、東京で拓海と2人きりで会った時に私は言った。

『拓海、結婚するまではお互い自由恋愛しよう。結婚後も跡取りできたらそれ以降は仮面夫婦になろう』

と。

拓海は『俺は凛子と愛情がある夫婦になりたい』と言ってきたが、無理だと思った。

『……結婚は逃れられないからするしかないけど、自分から好きになった人と束の間の恋愛をしたい』

私立中高一貫女子校での寮生活。
習い事で校外に出てたけど、男女交際禁止でバレたら親に連絡され停学になるため、他校の男子生徒から告白されても付き合う気にはなれなかった。

『婚約者いるのに何考えてるんだよ』

最高峰の国立大学の大学院工学系研究科で建築学を専攻している拓海。
家柄もよく眉目秀麗で長身な拓海はモテるはず。
大学進学してから彼女という存在を作って、遊んでいたはず。

『ねぇ、私の初めて拓海にあげるから、だから、結婚するまでは自由にさせて』

あまりに私が不憫だったのか、拓海は受け入れてくれた。
誓いとして、その日のうちに拓海と身体関係を持ち、処女を失った。

***

「結婚はまだしたくないです。もう少し、自由を下さい」

大学時代、女子大だったのもあり、本気で好きになる人とは出会えなかった。
インターンシップで知り合ったゼネコンの設計士と何人かと付き合ったけど、長続きしなかった。

「今すぐに結婚しろとは言わない。だが、週2回は会って、俺と関係性を作る努力はして欲しい」

「……わかりました」

拒絶したいけど、シュフがステーキ焼きに個室に入ってきたから、話を終わらすために了承した。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうぞ、お好きに

蜜柑マル
恋愛
私は今日、この家を出る。記憶を失ったフリをして。 ※ 再掲です。ご都合主義です。許せる方だけお読みください。

愛情に気づかない鈍感な私

はなおくら
恋愛
幼少の頃、まだ5歳にも満たない私たちは政略結婚という形で夫婦になった。初めて顔を合わせた時、嬉し恥ずかしながら笑い合い、私たちは友達になった。大きくなるにつれて、夫婦が友人同士というのにも違和感を覚えた私は、成人を迎えるその日離婚をするつもりでいた。だけど、彼は私の考えを聞いた瞬間豹変した。

お姫さんと呼ばないで

秋月朔夕
恋愛
華族の娘として生まれたからにはお家のために結婚しなさい。そう父に言われ続けて、わたしは今日幼馴染と結婚する。けれど洋館で出迎えた男は全く違う人だった。

普通のOLは猛獣使いにはなれない

ピロ子
恋愛
恋人と親友に裏切られ自棄酒中のOL有季子は、バーで偶然出会った猛獣(みたいな男)と意気投合して酔った勢いで彼と一夜を共にしてしまう。 あの日の事は“一夜の過ち”だと思えるようになった頃、自宅へ不法侵入してきた猛獣と再会し、過ちで終われない関係となっていく。 普通のOLとマフィアな男の、体から始まる関係。

普通のOLは猛獣使いにはなれない

えっちゃん
恋愛
恋人と親友に裏切られたOLの紗智子は、バーで偶然出会った猛獣(みたいな男)と意気投合して酔った勢いで彼と一夜を共にしてしまう。 あの日のことは“一夜の過ち”だと思えるようになってきた頃、自宅へ不法侵入してきた猛獣と再会して今度は過ちだったと言い逃れが出来ない関係へとなっていく。 普通のOLとマフィアな男の、体から始まる関係の話。 *ただ今、不定期更新になっています。すみません。 *他サイトにも投稿しています。 *素敵な表紙イラストは氷川こち様(@dakdakhk)

終わりにできなかった恋

明日葉
恋愛
「なあ、結婚するか?」  男友達から不意にそう言われて。 「そうだね、しようか」  と。  恋を自覚する前にあまりに友達として大事になりすぎて。終わるかもしれない恋よりも、終わりのない友達をとっていただけ。ふとそう自覚したら、今を逃したら次はないと気づいたら、そう答えていた。

旦那さま、誘惑させていただきます!

永久(時永)めぐる
恋愛
オタクで、恋愛には縁のない生活を送っていた佐久間桃子は、弁護士の久瀬厳と見合いの末、めでたく結婚した。 顔良し(強面だけれど)、スタイル良し、性格良し。非の打ちどころがない完璧な旦那様との新婚生活は楽しくて幸せいっぱい。 しかし、ひとつだけ気がかりがあった。 悩んだ彼女は大胆な計画を立てたけれど……? ※書籍化のため、2016年9月17日をもちまして本編及び一部番外編を引き下げました。 ※書籍化にあたりタイトルを少々変更いたしました。

Cinderella story 〜天涯孤独なわたしの王子様〜

鳴宮鶉子
恋愛
Cinderella story 〜天涯孤独なわたしの王子様〜

処理中です...