料理をしていたらいつの間にか歩くマジックアイテムになっていた

藤岡 フジオ

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カルト教団と修道騎士 5

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 熱心に、丹念にメリィさんは俺の大事なものを舐めている。勿論、そういう経験がないのでぎこちないが俺だってそうだ・・・。

「美味しいですか? メリィさん・・・」

 淫靡な響きを声に乗せて俺はそう訊ねた。ちょっとふざけているのはそうしないと罪悪感が襲ってくるからだ。

「うん、美味しい・・・。こんなの初めて」

 恥ずかしそうに俺を見るメリィさんに俺は心の中で頭を下げて謝った。

(こんな事させてすみません・・・)

 天幕の外から嫌な笑い声が聞こえる。

「フハハ、どうかね、村人の諸君。我が教団、星の棺桶に入れば毎日こんな楽しい儀式ができるのだぞ! いいか、これは如何わしい事ではない。優秀な者を作る為の、大事な命のイニシエーション! 本来ならば優秀な者同士を掛け合わせて、より良い命を生み出す儀式なのだ。が、今日は儀式がどんなものか見てもらう為に、この二人に実演してもらっている。よく見ておくのだぞ」

 俺は大事な何かをしゃぶられながら、ホキキの横に立つ美少年を見た。天幕の中からは、拳を握りしめるナガラがよく見える。やっぱりそうだ。あいつはホキキに従いたくないんだ。

 もう少し状況を観察する。外からは中がしっかりとは見えていないっぽい。カーテンみたいな天幕だな。

「あ、そんなに食べちゃダメですよ、メリィさん(ヒソヒソ)」

「だぁって・・・。お腹ペコペコで・・・」

 俺が大事に取っておいた地球製の貴重な魚肉ソーセージが、とうとう齧られてしまった。

 そう、俺はソーセージを下腹部辺りに持って彼女にしゃぶらせていたのだが、少しずつソーセージは短くなっていく。

 こんな間抜けな事が中で起きていても、誰にもバレてはいない。

(いいぞ。これでもう三分ぐらいは時間を稼げただろう。いける・・・いけるぞ! あれ・・・? ちょっとダメダメぇ!)

 メリィさんが魚肉ソーセージを全部食べてしまった。俺は急いで亜空間ポケットから魚肉ソーセージを出して、素早くビニールの皮を剥いて、またメリィさんにしゃぶらせる。

「次は齧っちゃだめですよ」

 ヒソヒソとそう伝えると、メリィさんもソーセージを咥えながら返事した。

「ふぁぁーい」

「それにしてもよぉ、キスより先にお口でアレさせるなんて、オビオも鬼畜だなぁ・・・」

 天幕の外でピーターの声が聞こえる。

(アホピーターが! 時間稼ぎしてるこっちの身にもなれ!)

 ピーターは俺の計画を知らないから仕方ないのだけど、それでもあれこれ必死になって頑張っている俺を鬼畜呼ばわりする、欲望の下僕(俺が勝手につけたピーターの二つ名)に腹が立った。

「ん?」

 急にメリィさんの頭の動きが早くなった。とても初心な修道女の動きじゃねぇや・・・。

「何してるんですか、メリィさん(ひそひそ)」

 しかしメリィさんは無言だ。夢中になってソーセージを吸って、ひょっとこみたいな顔になってる!

(やだ、この人、ソーセージの旨味を全部吸い尽くすつもりだ。どんだけお腹空いてんだよ!)

 グッポグッポと珍妙な音が部屋に響き渡る。村人たちは耳を塞いだり目を背けたり、中にはピーターのように目に力を入れて、天幕の中の様子を探ろうとしている者もいる。

 違うーーんです、これぜーんぶ演技なんです。今更言うのもなんですが。いや声に出して言ってないけど。誤解なんです、俺たちはそんな淫らな者では、ないーーンです。あぁ、もどかしい!

「ちょ、修道女様、テクニシャンすぎだろー!」

 ピーターがメリイさんの様子がおかしい事に気が付いてそう喚いた。

「確かに・・・。直視するのは生々し過ぎるので、天幕を張ったものの、奴らは本当に中で儀式をしているのか?」

 ホキキが疑い始めた。

(糞ピーターがぁぁぁ! お前、敵なのか味方なのかどっちだよ! なに教団側みたいな顔をして、ホキキの横で腕を組んで偉そうに立ってんだよ! あと一分ほど時間を稼げば良かったんだぞ!)

 天幕の布を強引に剥がして、ホキキが怒鳴る。

「貴様! 神聖なる儀式を汚したな!」

 ちょび髭をプルプル震わせながら、彼はワンドを抜いた。

「解っているだろうな? オーガ。お前の仲間も、その修道騎士も今ここで死刑だ」

 やべぇぇ! ホキキが詠唱を開始した! 即死系の魔法がくる! ピーターはスッと椅子の陰に消えた。ズルイぞ!

「命の終わりは暗闇と共に! 【死】!」

「風の精霊よ、敵を黙らせろ! 【沈黙】!」

 必死になって即死魔法に抵抗しようと集中してた俺の耳に、サーカの声が入ってきた。

 ええ? だってあいつ、今も村の入り口でボーっと突っ立ってんのが、窓から見えるぞ!

 目の前でホキキが何かを叫んでいる。叫んで地団太を踏んでいるが、何も聞こえない。

 間一髪でサーカの魔法が彼を黙らせたのだ。

 翻って逃げようとするホキキの頭に、獅子人のブロードソードの腹が落ちてくる。ホキキは気絶して床を舐めた。

「トウスさん!」

「よぉ、オビオ。助けに・・・。って、お前なにやってんだ!」

 そう、メリィさんは落ちてきた天幕の下で、まだソーセージを激しくしゃぶっているのだ。上手く天幕で隠れているから傍からみれば、メリィさんが俺のナニを光の速さでしゃぶっているように見える。

 さっきまで陰と同化していたピーターが、ここぞとばかりに出てきて俺を指さす。

「見てよ! 騎士様! オビオったら修道騎士様とエッチな事をしてるよ! 口淫させているよ! 口淫! それに修道騎士様の頭のふる速さったら、口淫矢の如しだよ!」

(上手い! って言ってる場合か! ワォ!)

「オオオオ、オオッ! オビオビオビオ、オォォォビチビチビチ、オビオォォ!」

 だから俺を鉄男ぉぉ! みたいに呼ぶんじゃねぇよ、サーカ。途中のビチビチビチはなんだよ・・・。

「今はそれどころじゃねぇだろ。とにかく残りの狂信者をなんとかしないと・・・」

 ―――ドゴォォン!

 台所で何かが壊れた。もう忙しいなぁ! 見てないけど、これ絶対結界が壊れた音でしょ。

 外の狂信者たちは既に騎士に倒されてしまったのか、残った信者たちはテーブルの陰に隠れて、騎士達相手に魔法を撃っている。村人たちは逃げる者もいるし、頭を抱えて恐怖にうずくまる者もいる。

 チュンチュンと激しく魔法が飛び交う中で、ようやく強キャラのキリマルさんが黒いオーラを纏い、台所から扉を蹴って出てきた。少し遅いよ・・・。

「ドラァァァ!! よくも俺様を都合よく使役しようとしたなぁ! 糞どもぉ!」

 飛んでくる火球をぶった切って、すぐ近くにいた星の棺桶の信者を、刀で突き刺す。

「ぐわぁ!」

 信者がお腹を押さえて倒れた。恐らく斬られた信者は絶命したと思われる。

 そこからが早かった。流れるような動きで、騎士達が手こずっていた信者を、キリマルさんは次々に斬っていく。期待通りなんだけどちょっと残酷な気が・・・。

「な、なにも殺さなくても・・・」

 そうキリマルさんに言おうとしたが、隣で声がして俺の声を遮った。

「僕は投降する!」

 キリマルさんの問答無用な斬殺に震える美少年樹族のナガラが、ワンドを捨てた。そして両手を上げて地面に膝をつける。

 こんな状況なのにメリィさんはまだソーセージをしゃぶっている。確かにそれ、美味しいけども・・・。

「もう食べちゃっていいですよ!」

 メリィさんにそういうと、彼女は俺の股間に顔をどんどんと近づけてソーセージを食べてしまった。

 普通に手に持って食えばいいのに、何で俺の股間のところで食うんですかー! それだと、メリィさんが俺のフィニッシュの為に、喉奥までナニを咥えこんでるみたいでしょうがー! 頭を離しなさい! ってあれぇ! ビクともしない! 離しなさいってば! あれぇ!

 筋力値はメリィさんの方が1つだけ上だけど、1つの差ってこんなにあるの!?

 ふぅ・・・やっと頭を離してくれた。

「貴方の(持っていた魚肉ソーセージ)・・・(お腹が減ってたから)とても美味しかったぁ! えへぇ!」

 言葉が足りてませんよ! その言い方だと、まるで俺の股間から出た何かが美味しかったみたいじゃないですかー! 俺、一滴たりともスプラッシュしてませんからー!

 この人、今まで自分が何の真似事をさせられていたのか解ってないんだろうなぁ。純粋無垢なその笑顔、眩しすぎる・・・。ごめんなさい。

「おお、おおおおオビオのアレはさぞかし美味しかった事だろう! おおおお、オビオは料理も美味しいから、色々と美味しいに違いない。そそそ、そうだろう? 修道女様」

 何言ってんだ、サーカは。

 っていうかなんでそんなに動揺してんだよ。お前も初心なタイプなのか? 34年も生きてきたんだから、恋人ぐらいいただろ。でも後で誤解を解かないと・・・。なんか顔がいつもより怖い・・・。

 場が落ち着きつつある集会所で、俺は服や装備を着ながらナガラに訊いた。

「あんたはホキキの命令に従いたくないって態度だったけど、なんでだ?」

「そりゃそうさ、僕の支部は奴に乗っ取られたようなものだからな」

「だったらなんで抗わなかったんだ?」

「君も体験しただろ。ホキキは闇魔法使いの闇樹族だ。逆らえるわけがない・・・」

「闇樹族だと・・・?」

 サーカの顔が怒りに歪む。この場にいて話を聞いていた樹族の騎士も同じ反応だった。樹族達の視線はホキキに向く。

 するとどうだろうか。ホキキの髪が光をも吸収する黒に、肌も不健康そうな白へと変貌していった。

「一族の恥さらしめ」

 騎士の一人がそう言ってホキキの顔に唾を吐いた。この嫌悪は尋常じゃない。もしこれが漫画のワンシーンなら、モヤモヤしたエフェクトが騎士の背景に追加されていただろう。

「なるほどなぁ・・・」

 血塗れのキリマルさんがゆっくりと歩いてくる。

「闇樹族に教団が乗っ取られて仕方なく従ったと。ハハハ! そんな言い訳が通じると思うか?」

「えっ?」

 ナガラは自分の胸から突き出る刀を見て驚く。そして震えながら振り返ってキリマルさんを見た。

「あ、悪魔め・・・ゴフッ!」

「やりすぎだ! キリマルさん! さっきから何人殺してんだよ! もういいだろ!」

 まだ間に合うかもしれない。【再生】で何とか命を繋ぎとめ、その間にメリィさんに奇跡の祈りで回復してもらう。

 しかしキリマルさんはナガラの胸から引き抜いた刀を横に薙ぎ払って、彼の首を刎ねてしまった・・・。

 おい! くそ! なんだこのダークファンタジーみたいな展開! 俺の柄じゃねぇって!

「下がれオビオ!」

 ―――キンッ!

 目の前でトウスさんがブロードソードで鍔迫り合いをしている。なんでキリマルさんから俺を庇っているんだ?

「こいつは次にオビオを殺す気でいたぞ! 間違いなく殺意の籠った目でお前を見ていた!」

「ばかな! キリマルさんは俺らの味方・・・」

 俺の言葉にキリマルさんの顔が狂気に歪む。ばらけた長髪の影の具合で、大きく開けた口や眼窩が黒くて不気味だ。

「ヒャハハハ! その信頼を裏切られたって顔ぉ! いいぜぇ? オビオォ!」

 怪力でごり押すトウスさんの鍔迫り合いで、キリマルさんは一歩も引いていない。彼の持つ妖刀アマノジャクの刀身には梵字のような、良く解らない字が書かれており、血のように赤くぬらぬらと光っていた。

「嘘だ。そうだ・・・。きっと妖刀アマノジャクのせいでそうなっているんですよね? キリマルさん!」

 彼を信じたい。キリマルさんは妖刀を御しきれてなかったんだ! そうに違いない!

 そう期待して彼の顔を見たが、面長な顔は狂気を消そうとはしなかった。

「違うなぁ、オビオ。俺様は最初からこういう人間なのよ。この世界に来る前にも、東京の渋谷交差点で大量に人を殺しているんだぜ? そう、このアマノジャクと出会う前になぁ!」

「そんな・・・」

 くそ! 指輪でこいつの素性を視ておくべきだったんだ! 変にキリマルさん・・・。いや、ムラサメ・キリマルを信頼したせいで死ななくていい人たちが死んだ! 全部俺のせいだ! 俺は殺人鬼に手を貸してしまったんだ・・・。
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