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ノアは、なぜ俺が混乱しているのかわからない様子だった。
むしろ、どうして俺が彼女を違うロエナだと勘違いしたのか疑問なようだった。
「いや、だって時間の進み方がおかしいだろ?」
俺がそう言うと、ノアは納得した顔で頷いた。
そして「それはただの誤差だよ」とあっさりと解答を授けてくれた。
ノアが言うには、異世界間を行き来する際、時間にちょっとした誤差が生じることがあるらしい。
つまり、違う世界へ渡った際、過去や未来へ時間が少しずれることがあるのだ。
ちょっとした誤差だと言えるのは、俺たちにとっては長い3年という時間が、神のような存在にとっては瞬きほどの短さだからなのだろう。
「とくに勇司くんの場合は、雑に行き来させられたようだしね。あ、君たちは僕がちゃんとした時間軸に帰してあげるから、心配いらないよ」
勇司くんを騙した女神は、ずいぶん勝手をしていたらしい。
俺はノアに「ありがとう」と返しつつも、見知らぬ女神に怒りを募らせる。
「ユージ……?」
その名前に反応したのは、意外にもロエナではなく護衛騎士の方だった。
彼は瞳を揺らして「彼を知っているのか?」と俺たちに問いかける。
俺が同郷なのだと答えると、ロエナも護衛騎士も目を見開き、戸惑いと疑いの視線を向けた。
「彼は異世界から召喚された勇者です。あなたたちも彼と同じ世界からきたと?」
「……信じられないとは思いますが……」
「彼の出身地をご存知かしら?」
「東京という都市です。地球という星の、日本という国にあります」
俺の回答に、護衛騎士が眉間に皺をよせる。
そして小声で「国家機密をどうやって……」とぼやいている。
やはり信じてはもらえないようだ。
俺は少し考え込んでから、ロエナに視線を向けた。
まっすぐ見つめられたロエナは、警戒するようにピクリと肩を揺らす。
「勇司くんとは、彼が元の世界に帰還して1年以上経った頃に出会いました。俺、見た目はこんなですけど、元の世界ではずいぶんおじさんなんです。あなたが勇司くんと旅をしたときと同じくらいの年齢の娘がいます。
娘も……勇司くんと同じように、異世界へ召喚されました。勇司くんに会いに行ったのは、彼が異世界からの帰還者だと知ったからです。娘を探す手がかりがほしくて」
「……彼は、元気でしたか?」
「肉体的には。……ただ、精神的にはずいぶん参っている様子でした」
ロエナがぎゅっと拳を握る。
しかし、表情に大きな動揺は見られない。
王族として、感情を表に出さないよう訓練しているのだろう。
その様子が、かえって痛々しく見える。
「彼が病気の妹を救うため、魔王討伐を引き受けたことがご存知ですね」
「……ええ」
「その妹が、今この世界で苦しんでいます。あなたに、彼女を救う手助けをしていただきたいんです」
護衛騎士は堪忍袋の緒が切れたように「適当なことを……!」と言い、ノアに向けていた刃を俺に向ける。
彼もおそらく、勇司がこの世界で深くかかわった人物の一人なのだろう。
「待ちなさい」
護衛騎士を制止したのは、ロエナだった。
彼女は青ざめた表情で、俺に問いかけた。
「彼の妹は、あちらの世界で救われたわけではないの……?」
俺は頷いた。
「ユージは……あちらの世界で幸せになれると……女神さまが……」
ロエナの瞳に、涙が滲む。
そしてやがて、一粒の涙が頬を伝った。
「それらはすべて嘘だったようです。元の世界で彼の妹は存在自体抹消され、勇司くん以外の誰も、彼女のことを覚えてはいないそうです」
「そんな……そんなことって……」
勇司が世界のためにロエナとの関係を諦めたように、ロエナもまた世界と勇司の幸せのために身を引いたのだろう。
呆然と涙を流し続ける彼女の姿に、深い絶望と悲しみを感じる。
護衛騎士は「耳を貸してはなりません!」とロエナを諭したが、ロエナは首を横に振った。
「ユージの妹のことは、私しか知らぬこと。彼が元の世界へ戻る前夜、2人で過ごしていたときに話してくれたことです。……あなたも知らなかったのでしょう?」
「……っ!」
「私は彼らを信じます。そして、ユージの妹を救うため、手を貸すことを約束しましょう。……でなければ、世界を救ってくれたユージに報いることはできません」
涙を拭って顔を上げたロエナの瞳には、強い意志が宿っていた。
そんな彼女に、俺は「ありがとうございます……!」と深く頭を下げた。
むしろ、どうして俺が彼女を違うロエナだと勘違いしたのか疑問なようだった。
「いや、だって時間の進み方がおかしいだろ?」
俺がそう言うと、ノアは納得した顔で頷いた。
そして「それはただの誤差だよ」とあっさりと解答を授けてくれた。
ノアが言うには、異世界間を行き来する際、時間にちょっとした誤差が生じることがあるらしい。
つまり、違う世界へ渡った際、過去や未来へ時間が少しずれることがあるのだ。
ちょっとした誤差だと言えるのは、俺たちにとっては長い3年という時間が、神のような存在にとっては瞬きほどの短さだからなのだろう。
「とくに勇司くんの場合は、雑に行き来させられたようだしね。あ、君たちは僕がちゃんとした時間軸に帰してあげるから、心配いらないよ」
勇司くんを騙した女神は、ずいぶん勝手をしていたらしい。
俺はノアに「ありがとう」と返しつつも、見知らぬ女神に怒りを募らせる。
「ユージ……?」
その名前に反応したのは、意外にもロエナではなく護衛騎士の方だった。
彼は瞳を揺らして「彼を知っているのか?」と俺たちに問いかける。
俺が同郷なのだと答えると、ロエナも護衛騎士も目を見開き、戸惑いと疑いの視線を向けた。
「彼は異世界から召喚された勇者です。あなたたちも彼と同じ世界からきたと?」
「……信じられないとは思いますが……」
「彼の出身地をご存知かしら?」
「東京という都市です。地球という星の、日本という国にあります」
俺の回答に、護衛騎士が眉間に皺をよせる。
そして小声で「国家機密をどうやって……」とぼやいている。
やはり信じてはもらえないようだ。
俺は少し考え込んでから、ロエナに視線を向けた。
まっすぐ見つめられたロエナは、警戒するようにピクリと肩を揺らす。
「勇司くんとは、彼が元の世界に帰還して1年以上経った頃に出会いました。俺、見た目はこんなですけど、元の世界ではずいぶんおじさんなんです。あなたが勇司くんと旅をしたときと同じくらいの年齢の娘がいます。
娘も……勇司くんと同じように、異世界へ召喚されました。勇司くんに会いに行ったのは、彼が異世界からの帰還者だと知ったからです。娘を探す手がかりがほしくて」
「……彼は、元気でしたか?」
「肉体的には。……ただ、精神的にはずいぶん参っている様子でした」
ロエナがぎゅっと拳を握る。
しかし、表情に大きな動揺は見られない。
王族として、感情を表に出さないよう訓練しているのだろう。
その様子が、かえって痛々しく見える。
「彼が病気の妹を救うため、魔王討伐を引き受けたことがご存知ですね」
「……ええ」
「その妹が、今この世界で苦しんでいます。あなたに、彼女を救う手助けをしていただきたいんです」
護衛騎士は堪忍袋の緒が切れたように「適当なことを……!」と言い、ノアに向けていた刃を俺に向ける。
彼もおそらく、勇司がこの世界で深くかかわった人物の一人なのだろう。
「待ちなさい」
護衛騎士を制止したのは、ロエナだった。
彼女は青ざめた表情で、俺に問いかけた。
「彼の妹は、あちらの世界で救われたわけではないの……?」
俺は頷いた。
「ユージは……あちらの世界で幸せになれると……女神さまが……」
ロエナの瞳に、涙が滲む。
そしてやがて、一粒の涙が頬を伝った。
「それらはすべて嘘だったようです。元の世界で彼の妹は存在自体抹消され、勇司くん以外の誰も、彼女のことを覚えてはいないそうです」
「そんな……そんなことって……」
勇司が世界のためにロエナとの関係を諦めたように、ロエナもまた世界と勇司の幸せのために身を引いたのだろう。
呆然と涙を流し続ける彼女の姿に、深い絶望と悲しみを感じる。
護衛騎士は「耳を貸してはなりません!」とロエナを諭したが、ロエナは首を横に振った。
「ユージの妹のことは、私しか知らぬこと。彼が元の世界へ戻る前夜、2人で過ごしていたときに話してくれたことです。……あなたも知らなかったのでしょう?」
「……っ!」
「私は彼らを信じます。そして、ユージの妹を救うため、手を貸すことを約束しましょう。……でなければ、世界を救ってくれたユージに報いることはできません」
涙を拭って顔を上げたロエナの瞳には、強い意志が宿っていた。
そんな彼女に、俺は「ありがとうございます……!」と深く頭を下げた。
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