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第11話 虚弱聖女と悪評
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結局この日は、レイ様が部屋に訪ねてこられることはなかった。
私も部屋から一歩も出なかったため、レイ様と会うこともなかった。
まあ、彼は国王陛下なのだ。
本来は、そうそう会える方ではない。レイ様、出会ったときから距離が近いし友好的だから、王様だと言うことをついつい忘れてしまいそうになる。
次の日、部屋にやってきたのはレイ様ではなく、侍女だった。
「セレスティアル様。体調はいかがでしょうか?」
「もうすっかり大丈夫です。ご迷惑をおかけしてすみません……」
「いえ、回復されたのなら良かったです」
私と近い年齢の女性は、にっこりと笑ってくれた。
歳が近い相手の方がいいだろうと、配慮していただいた結果、彼女――ティッカさんが来てくれたのだという。全体的にウェーブを描いた肩ほどまでの深い青色の髪と、少し垂れた黒目が優しい雰囲気を醸し出す、とても可愛らしい人だ。
私はティッカさんと一緒に、食堂へと向かうために歩いていた。
すれ違う人たちが、私に会釈して通り過ぎていく。中には、
「もう大丈夫ですか?」
と声をかけてくれる人もいるくらいだった。
突然城にやってきた不審な女だと思われても仕方ないのに、皆さんはとても親切だった。ずっと神殿で冷遇されていたため、温かな態度に戸惑ってしまう。
「皆、心配していましたからね。あなた様が、あまりに痩せ細ってお辛そうでしたから」
「あ、はははっ……お、お見苦しい思いをさせて申し訳ないです……」
そ、そんなに心配されるほどの体型……なのかな。
でもまあ、オズベルト様にはよく、痩せこけていて見苦しい姿だと嫌悪されていたっけ。
自分の両手を見つめ、私は乾いた笑い声をあげることしかできなかった。
「あ、あの……レイ様は何をなさっているのですか?」
話題を変えようとレイ様のことを聞いた瞬間、今まで友好的な態度だったティッカさんの表情から笑顔が消えた。
一気に場の空気が、冷たくなった気がする。
彼女の豹変ぶりに、私は言葉を失った。何も言えずにいる私の耳に、ティッカさんの低い声が届く。
「存じておりませんし、興味もありません」
「えっ?」
知らないならまだしも、興味が……ない?
いや、まって。
この国の王様は、レイ様なんでしょ!?
ティッカさんの足が止まった。私も立ち止まると、彼女の顔が私の耳元に近づいてきた。
囁き声なのに、冷たすぎる言葉が、耳の奥に吹き込まれる。
「レイ陛下の話を、人前でなさらない方がいいですよ。セレスティアル様も、皆に憎まれたくはないでしょう?」
「レイ様の話をしない方がいい? 憎まれ、る……? それは、どういう……」
そう言いかけて私は言葉を止めてしまった。
なぜなら、慌ただしく行き交っていた人々が立ち止まり、私たちを見ていることに気づいたからだ。
先ほどまで友好的だった態度が一変、ティッカさんと同じように冷ややかな表情に変わっている。
どういうこと?
もしかして、レイ様の話題を口にしたから?
周囲の反応をみて驚いている私に、ティッカさんが薄く笑いかける。
「おわかりになりましたか? 陛下はルミテリス王国の民たちに憎まれているのです」
「ど、どうして……?」
レイ様の快活な笑顔を思い出した。
自信満々な言動を思い出した。
裏表のないような彼が、こんなに憎まれているなんて、信じられない。
「それは、守護獣ラメンテ様の力を独占しているからです。この国の衰退は、そのせいなのですよ。陛下の叔父であるローグ公爵を筆頭に、様々な貴族たちが忠告なさっていますが、陛下は聞く耳をもたないのです」
「えっ?」
「だからセレスティアル様も、陛下には必要以上に関わりを持たない方がよろしいかと」
そう言い放つと、ティッカさんは私に背を向けて歩き出した。私たちの様子を見ていた人々も動き出す。
まるで何もなかったかのように。
だけど私は、すぐには動き出せなかった。
ローグ公爵ってたしか、昨日、レイ様を訪ねてこられた方だったはず。だけどラメンテが悲しそうな表情をしていて……
もしかして、ローグ公爵の訪問って、レイ様にラメンテの力の独占を止めるよう説得するのが理由だったの?
そこまでしなければならない事態なの?
レイ様がラメンテの力を独占しているなんて、考えられないけれど、ローグ公爵の訪問、そしてティッカさんの話と周囲の反応を思い出すと、心の中が冷たくなっていくのを感じた。
一体、どちらが本当のことなの?
私も部屋から一歩も出なかったため、レイ様と会うこともなかった。
まあ、彼は国王陛下なのだ。
本来は、そうそう会える方ではない。レイ様、出会ったときから距離が近いし友好的だから、王様だと言うことをついつい忘れてしまいそうになる。
次の日、部屋にやってきたのはレイ様ではなく、侍女だった。
「セレスティアル様。体調はいかがでしょうか?」
「もうすっかり大丈夫です。ご迷惑をおかけしてすみません……」
「いえ、回復されたのなら良かったです」
私と近い年齢の女性は、にっこりと笑ってくれた。
歳が近い相手の方がいいだろうと、配慮していただいた結果、彼女――ティッカさんが来てくれたのだという。全体的にウェーブを描いた肩ほどまでの深い青色の髪と、少し垂れた黒目が優しい雰囲気を醸し出す、とても可愛らしい人だ。
私はティッカさんと一緒に、食堂へと向かうために歩いていた。
すれ違う人たちが、私に会釈して通り過ぎていく。中には、
「もう大丈夫ですか?」
と声をかけてくれる人もいるくらいだった。
突然城にやってきた不審な女だと思われても仕方ないのに、皆さんはとても親切だった。ずっと神殿で冷遇されていたため、温かな態度に戸惑ってしまう。
「皆、心配していましたからね。あなた様が、あまりに痩せ細ってお辛そうでしたから」
「あ、はははっ……お、お見苦しい思いをさせて申し訳ないです……」
そ、そんなに心配されるほどの体型……なのかな。
でもまあ、オズベルト様にはよく、痩せこけていて見苦しい姿だと嫌悪されていたっけ。
自分の両手を見つめ、私は乾いた笑い声をあげることしかできなかった。
「あ、あの……レイ様は何をなさっているのですか?」
話題を変えようとレイ様のことを聞いた瞬間、今まで友好的な態度だったティッカさんの表情から笑顔が消えた。
一気に場の空気が、冷たくなった気がする。
彼女の豹変ぶりに、私は言葉を失った。何も言えずにいる私の耳に、ティッカさんの低い声が届く。
「存じておりませんし、興味もありません」
「えっ?」
知らないならまだしも、興味が……ない?
いや、まって。
この国の王様は、レイ様なんでしょ!?
ティッカさんの足が止まった。私も立ち止まると、彼女の顔が私の耳元に近づいてきた。
囁き声なのに、冷たすぎる言葉が、耳の奥に吹き込まれる。
「レイ陛下の話を、人前でなさらない方がいいですよ。セレスティアル様も、皆に憎まれたくはないでしょう?」
「レイ様の話をしない方がいい? 憎まれ、る……? それは、どういう……」
そう言いかけて私は言葉を止めてしまった。
なぜなら、慌ただしく行き交っていた人々が立ち止まり、私たちを見ていることに気づいたからだ。
先ほどまで友好的だった態度が一変、ティッカさんと同じように冷ややかな表情に変わっている。
どういうこと?
もしかして、レイ様の話題を口にしたから?
周囲の反応をみて驚いている私に、ティッカさんが薄く笑いかける。
「おわかりになりましたか? 陛下はルミテリス王国の民たちに憎まれているのです」
「ど、どうして……?」
レイ様の快活な笑顔を思い出した。
自信満々な言動を思い出した。
裏表のないような彼が、こんなに憎まれているなんて、信じられない。
「それは、守護獣ラメンテ様の力を独占しているからです。この国の衰退は、そのせいなのですよ。陛下の叔父であるローグ公爵を筆頭に、様々な貴族たちが忠告なさっていますが、陛下は聞く耳をもたないのです」
「えっ?」
「だからセレスティアル様も、陛下には必要以上に関わりを持たない方がよろしいかと」
そう言い放つと、ティッカさんは私に背を向けて歩き出した。私たちの様子を見ていた人々も動き出す。
まるで何もなかったかのように。
だけど私は、すぐには動き出せなかった。
ローグ公爵ってたしか、昨日、レイ様を訪ねてこられた方だったはず。だけどラメンテが悲しそうな表情をしていて……
もしかして、ローグ公爵の訪問って、レイ様にラメンテの力の独占を止めるよう説得するのが理由だったの?
そこまでしなければならない事態なの?
レイ様がラメンテの力を独占しているなんて、考えられないけれど、ローグ公爵の訪問、そしてティッカさんの話と周囲の反応を思い出すと、心の中が冷たくなっていくのを感じた。
一体、どちらが本当のことなの?
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