平凡な村人だと思われていた俺、実は神々が恐れる最強存在でした〜追放されたけど、無自覚チートで気づけば世界の頂点〜

uzura

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第8話 噂が広がる村人の伝説

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ルグナの村は、すっかり人の出入りが増えていた。  
かつては辺境の寒村にすぎなかったこの地に、今では商人や旅人、そして冒険者らしき者までが押し寄せている。  
目的はただ一つ――“聖者レオン”を見るためだ。

「まったく、誰がそんな名前つけたんだか……」  
朝の畑仕事をしながらレオンは苦笑していた。  
かつて勇者パーティから追放され、荷物持ちとしてさげすまれていた男が、今では光の奇跡を起こす存在として噂されている。  

「“病を癒す手を持ち、魔を退ける拳をふるう、神の子”だってさ。村の子供が町で聞いてきたわよ」  
リリアが呆れたように言いながら、腰まで伸びる赤髪を軽く束ねる。  
「聞かないでくださいよ、そんな恥ずかしい話」  
「もう遅いわよ。王都にまで伝わってるんだもの」  

事実、その日の昼には、村の入り口に数台の馬車が止まった。  
立派な衣装をまとった商人や、教会の修道士らしい白衣の者たちが降りてくる。  
彼らの目はどれも輝いていた。  

「どれが“聖者”だ?」  
「この村の青年だと聞いたぞ」  
「もしかすると、触れるだけで加護を受けられるかもしれん!」  
「馬鹿言うな、拝むだけで十分だ!」  

レオンはげんなりとため息をついた。  
「……俺、観光名所扱いされてません?」  
「むしろ信仰の対象。まあ、あんたが世界を救いながら本人が無自覚なんだから、そうもなるわ」  

リリアの言葉どおり、レオンには実感がなかった。  
ただ少し不思議な力があって、目の前の人を助けたいと思っただけ。  
気づけば村は豊かになり、魔物が現れなくなり、人々が巡礼のように集う場所となっていた。  

それでも彼には、人としての生活を捨てる気がなかった。  
「野菜の収穫、手伝ってくれる人増えたのは助かりますけどね……」  
「それだけじゃ済まないわよ。これ、村の規模、一気に拡張できるレベルだもの」  
そして、リリアが声を潜めた。  
「でもね、レオン。これだけ人が集まると、必ず“欲”が寄ってくる。王都からも、教会からも」  

レオンは困ったように笑った。  
「そっちはリリアさんに任せていいですか?」  
「はあ……ほんと、あんたって鈍感というか、危機感ゼロね」  

***

日が暮れかけた頃、村の広場には篝火が焚かれ、村人たちと旅人が共に酒を酌み交わしていた。  
音楽が流れ、笑い声が響き、どこか神聖な祭りのような雰囲気に満ちている。  
レオンはそんな中、焚火から少し離れてフィオナと座っていた。  

「主よ、この賑わい、悪くはありませんね」  
白髪の少女の姿をとった竜――フィオナは、葡萄の果実を口に含みながら穏やかに笑った。  
「でも、なんか照れますね。俺のせいでこんなことに」  
「せいではありません。あなたが在ることで均衡が生まれ、それが人を惹きつけているだけのこと」  

「均衡、ね……でも、こうやって笑ってくれる人が増えたのは、悪いことじゃない気がします」  
フィオナは頷いた。  
「確かに。かつての竜の時代は、恐怖か崇拝かの二つしかなかった。あなたのように、自然と人々を灯す者は稀です。」  

その言葉に、レオンは少し頬を赤らめた。  
そこへ、リリアがどかりと腰を下ろす。  
「なんだ、二人でいい雰囲気してるじゃない」  
「い、いや、別に!」  
「ふふっ。そうよそうよ。そうやって慌てるとこ見ると、あんたが本当に普通の人間に見えるわね」  

フィオナが小首をかしげて言う。  
「リリア、あなたも彼を気にかけすぎです。少し嫉妬に似た反応が」  
「そ、そんなわけないでしょ! この鈍感男に!?」  
「私はただ事実を確認しただけです」  
二人のやり取りにレオンは苦笑を抑えきれず、肩をすくめた。  

その時だ。  
人々の笑い声を引き裂くように、村の門の方から騒ぎが上がった。  

「誰かが倒れたぞ!」  
「旅人らしい! 血の跡が!」  

レオンは即座に立ち上がり駆けだした。  
門のそば、馬車の前で若い男がぐったりと地面に伏せている。服は裂け、身体中に傷。  
目を開けるなり、掠れた声を漏らした。  

「た、助けてくれ……魔王の……軍が……」  

村の空気が一瞬にして凍りつく。  
レオンとリリアが顔を見合わせた。  
リリアが身をかがめ、男の傷を確かめる。  
「ただの盗賊や魔物の仕業じゃない。切り口が鋭すぎる……魔法兵だわ」  

「魔王軍……ここまで来たのか?」  
「今のうちに避難準備を。どんなに小規模でも、辺境を襲うのは偵察の合図よ」  

村人たちがざわつき始める。  
フィオナが静かに前へ出た。  
「主よ、我が力を解き放てば、この地を護る障壁を編めます。しかし……それは世界にまた“光の柱”を立てる行為。位置が特定され、神々や王国が動き出す恐れがあります」  

レオンは逡巡した。  
守るべきは村。しかし、自分の力が人を招き寄せることも知っている。  
その板挟みの中で、彼は静かに手を握った。  

「……でも、守らなきゃ。ここは、みんなの生活がある場所だから。」  

その一言で、フィオナが笑みを浮かべた。  
「御意。では、“加護の息吹”を」  

白い光が彼女の掌から広がり、村の周囲に風が走る。  
やがて見えない結界のような幕が半円を描き、空気が安堵の気配に包まれた。  

「これで、しばらくは安全でしょう」  
「ありがとう、フィオナ」  
「主の命は絶対です」  

その光景を見ていたリリアが、かすかにため息を漏らした。  
「ねえ、レオン。あなたってほんと、神様が放っておくはずない存在ね」  
「放っておいてほしいんですけどね、本音を言うと」  
「でもね、その優しさが、世界のどこかにいる誰かを照らすのよ」  

レオンは照れ笑いをしながら空を見上げた。  
そこには、いつもより夜空が明るく輝いていた。  

***

そのころ、王都。  
大聖堂の奥深く、黄金の神像が立つ部屋。  
そこに集う神官たちが一斉にひざまずいていた。  

「報告です。北部辺境、ルグナにおいて光柱を確認。通常の加護ではなく、“創世級”の波動です。」  
「またか……!」  
「しかも報告によれば、中心にいたのは“聖者レオン”なる青年。名の一致も確認されています」  

沈黙の中、最奥の玉座に座す老司教が口を開いた。  
「聖者か……皮肉なものだ。神の血脈が人の姿で歩むなど、記録にすらない。放置すれば均衡が崩れる」  

「処分を?」  
「いや。監視だ。彼が何を為すか、我らが判断する前に観察せねばならぬ」  
老司教は杖を鳴らした。  
「神の使徒たちを派遣せよ。“創世の子”その者に接触を試みるのだ」  

燭台の火が揺れ、金属の鈴が静かに鳴る。  
神々の領域と人の国、その均衡が確かに動き出していた。  

辺境の小村に生きる一人の青年が、世界の理を変えようとしていることを、彼自身だけがまだ知らなかった。  

続く
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