転生したら最強の神具を持っていた!~無自覚英雄は今日ものんびり街を救う~

にゃ-さん

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第2話 神具「全能の腕輪」ってチートすぎませんか?

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「えっと……つまり、俺が魔獣を一瞬で消したってこと?」  
「はいっ!見ました!本当にスッと光って、一瞬で全部粉々に!」  

リリアが勢いのまま熱弁している姿に、タクトは額に手を当てた。  
いや、自分でも何をしたのか分からない。気づいたら光って消えただけだ。  

「……でも俺、魔法とか使った覚えないんだけど。」  
「それがすごいんです!詠唱もなく、杖もなし。そんなの、神話級の賢者くらいしか……!」  

周囲では冒険者らしい者たちがざわざわと話している。  
「今の人、もしかして勇者様か?」「いや、見慣れない服だ」「あの腕の光、見たか?」  
いつの間にか囲まれていて、タクトはいたたまれなくなった。  

(ちょっと目立ちすぎじゃないか……?)  

タクトが困っていると、リリアが助け舟を出してくれた。  
「皆さん、彼は恩人です!外で長話をするのも何ですから、街に戻って説明しましょう!」  

その言葉に人々は頷き、群れがほどける。  
リリアが導くまま、タクトは街の門をくぐった。石造りの壁と尖った屋根。行き交う人々、荷馬車。  
まさしく異世界ファンタジーの街だった。  

「ここはリュミナスの町って言うんです。人と魔法が共に生きる交易の町です。」  
そう言うリリアの声はどこか誇らしげだった。  

門を抜けた瞬間、タクトの腕輪が小さく震えた。  
ふと見ると、表面に青い文字が浮かび上がっている。  

――“環境認識完了。新世界における言語/通貨/体系を自動同期しました”  

(……勝手に学習してるんだけど!?)  
心の中でツッコミつつ、彼はつくづくこの腕輪のヤバさを実感した。  

「その腕輪、とても綺麗ですね!」  
横を歩いていたリリアが目を輝かせてのぞき込む。  
「へ?あ、ああ、これ?いや、ちょっとしたお守りというか……」  
「魔力が凄いです。まるで生きてるみたい。」  
「気のせいだよ、きっと。」  

タクトは苦笑でごまかしながら、心の中で腕輪に問いかける。  
(なあ、あんた、喋れる?)  
“はい。マスターの声に反応可能です”  
(やっぱり喋れるのか!ていうか、マスターって何!?俺主人でも何でもないんだけど!)  
“神より全権限を移譲されています。マスターの命令は世界法則に優先します”  
(世界法則に優先って……!)  

冷や汗が背中を伝う。神具どころの話ではない。存在そのものが世界チートだ。  

「タクトさん?どうかしました?」  
「い、いや何でもない!」  
慌てて笑顔をつくるが、顔が引きつっているのを自覚する。  

* * *  

街の中心部にある冒険者ギルドに案内された。  
扉を開けると、熱気とざわめきが一気に押し寄せる。  
屈強な戦士、魔導士風の男女、受付には気の強そうな女性が立っていた。  

「リリア、また怪我でもしたの?昨日も森で魔物に襲われたって報告が——」  
女性が言いかけて、タクトに目を向けた。  
「……彼が助けてくれたの?」  
「はい!見てくださいリサさん!一瞬で全部の魔物を消し去ったんですよ!」  

「一瞬、ねぇ?」  
リサと呼ばれた受付嬢は懐疑的な目でタクトを見つめる。  
「大袈裟に言ってるんじゃないの?魔物を一瞬で消すなんて、伝説級の魔導士でも——」  
「ま、まあ俺もよく分かってなくて……」  
タクトの言葉に、リサは肩をすくめた。  

「とりあえず恩人なら歓迎するわ。登録しておいたら?冒険者証があれば活動も楽になるわよ。」  
「冒険者証……なるほど。じゃあお願いします。」  

タクトは促されるままカウンターに署名する。  
名前、年齢、種族などの簡単な項目を記入。  
だが職業欄で手が止まった。  

「職業……えっと……」  
「戦士とか魔法使いとか、得意な系統でいいのよ。」  
困っているタクトを見て、リリアが口を開いた。  
「彼は……『全能者』です!」  
ギルド内が一瞬で静まり返った。  

「ぜ、全能者……!?」  
「まさか伝説の称号持ちか!」  
ざわつく周囲に、タクトは即座に否定した。  
「いやいやいや!そんな大げさなもんじゃない!ただの冗談だよ!」  
「でも、腕輪がそう言ってましたよね?」  
「えっ?」  

リリアの言葉に反応するように、腕輪が光を放った。  
ギルド中に響く声がした。  
“確認:使用者は全能権限保持者です”  

崩れ落ちるタクト。  
(まじで余計なこと言わないでくれ……!)  

リサが唖然としたまま口を開く。  
「……あなた、本当に何者なの?」  
「えーと……多分、ただの通りすがり……?」  

どう見ても通りすがりではない。  
けれど今さら本当のことを言っても信じてもらえる気がしない。  

リサはため息をつくと、机から銀色のカードを取り出した。  
「ま、わかったわ。事情はよく分からないけど、最低ランクで登録してあげる。これ、Fランク証よ。」  
「ありがとう。」  
受け取ったカードには、淡い光の文字で“ミカミ・タクト”と刻まれていた。  

「とりあえず、簡単な依頼でも受けて感覚を掴むといいわよ。リリア、案内してあげて。」  
「はいっ!」  

そうしてタクトの冒険者生活が、静かに幕を開けた。  

* * *  

初めて受けた依頼は「草原に群生する回復草の採取」。  
聞けばただの簡単な採取クエスト。命の危険もほぼゼロ。  
「こういうので地道に経験積むんですよ!」  
リリアがにこにこと説明する。  

「わかった。俺もできるだけ迷惑かけないようにするよ。」  

二人で森の外れに向かい、緑の茂みを探しまわる。  
タクトには何の問題もないと思っていた。  
しかし、腕輪がまた反応した。  

――“依頼内容:回復草採取を確認。効率化モードを提案しますか?”  
(ちょ、提案とかしなくていい!俺手でちゃんと集めたいんだよ!)  
“了解。全自動収集を実行します”  
(聞いてねぇぇぇぇぇっ!!)  

次の瞬間、大地から光の粒が立ち上り、周囲の草原に生えていた回復草が根こそぎ浮かび上がった。  
小さな竜巻のようにくるくると回り、ぱらぱらとタクトの足元に山のように積もる。  

「……終わりました」  
「……え?終わり?」  
「はい。指定数量を三千パーセント達成しました」  
「やりすぎ!!!」  

リリアが真っ青になって叫んだ。  
タクトも同じ気持ちだった。  

こうして二人は山盛りの回復草とともにギルドへ戻る羽目になった。  

リサは眉をひそめ、机を叩いた。  
「……依頼の数量、十束だったわよね?」  
「えっと、その、つい……」  
「在庫庫が埋まるわ。もう一生分あるかもね。」  

ギルド中から笑いが起こる。  
だがリサの目には諦めと興味が混じっていた。  

「あなた、本当に何者なのよ、全能者さん。」  
「だからそれ違うって……ただの平凡な転生者です。」  
「転生者?」  
「……あっ。」  

言ってはいけない一言だった。  
ギルド中の視線が一斉にタクトへ集まる。  
そして次の瞬間、どよめきが広がった。  

「やっぱりそうか!異世界の英雄だ!」  
「久しぶりだぜ、転生者様が現れたのは何十年ぶりだ!」  
歓声にも似た騒ぎが広がり、タクトは両手を上げて必死に否定する。  

「ちがっ、違うってば!俺はただ、のんびり暮らしたいだけなの!」  

しかし、その願いは誰にも届くことはなかった。  
リリアですら、頬を赤くしながら見つめている。  
「やっぱりすごい人なんだ……」  

(違うんだ、そんな立派なもんじゃない!俺はただ、休みたいだけなんだ……!)  

こうして三上タクトの異世界生活は、本人の意思に反して急速に英雄街道を走り始めるのだった。  

(続く)
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