馬鹿王子は落ちぶれました。 〜婚約破棄した公爵令嬢は有能すぎた〜

mimiaizu

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それを伝えるためにアノマの部屋まで言って彼女にも説明した。


「隣国、ですか?」

「ああ、お前の父君がすぐに手配してくれている。一緒に来るよな?」

「もちろんです。ただ、なんだかお父様の提案って思い切りすぎるような……」


やっぱりアノマもそう思うか。しかし、俺はロカリスの提案を肯定する。


「ロカリスは貿易業を営んでいると聞く。きっと隣国行きもいい考えがあるんだろ。俺はそう思う」

「マグーマ様がそう言うなら私も何も言いませんわ」


アノマもついていくと誓ってくれた。

こうして、祖国に絶望した俺は隣国にアノマとの理想郷――ユートピアを求めたのだ。





勝手に隣国に行くのは重罪だ。だから手配した船には正体がバレないように商人の格好をして乗り込むことになる。メアナイト領の港にある別邸で船に乗り込む準備をしていたのだが、外に出た直後に一番関わりたくない奴らに見つかってしまった。


「見つけましたわよ。マグーマ殿下。そして、アノマ・メアナイト男爵令嬢」

「な!? お前はリリィ! 何故ここに!?」

「何であんたたちが!?」


俺の『元』婚約者のリリィ・プラチナムとその護衛のジェシカ・シアターだった。貴族らしいドレス姿ではなく動きやすい軽装をしているが、あの憎たらしい顔は間違いない。

だが何故ここに!?


「貴方の弟君に捜索の協力をお願いしたから探していたのですよ。目撃情報と貴方の性格から逆算してここを調べるつもりでいましたが、結構早く見つけられたわけです」

「そんな! くっそー! あいつめ、余計なことをしやがって! 弟のくせにー!」

「なんて弟君なの! 実の兄を思いやる心はないのかしら! あんたたちにまで頼むなんて!」


俺は憤りながら地団駄を踏むがありえない話ではない。兄思いのアイツのことだ。きっと俺を心配して片っ端から頼んだのだろう。それが裏目に出て俺を苦しめるとは知らずに……!



「王族が行方知らずなら探し出すのは当たり前ですわ。さあ、王宮にお戻りになってください。これから侯爵の授与式が待っておりますので」

「無駄な抵抗は止めて大人しく縛られるがいい。次期名ばかり侯爵よ」


リリィが爽やかな笑顔で、ジェシカが邪悪な笑顔で、俺達をコケにする……ふざけるな!


「畜生ふざけるな! 何がティレックス侯爵だ! そんなふざけた名ばかりの地位なんか要らねえ! 俺はアノマと幸せになるんだ! 国王になれないならこの国に未練はない!」

「そうよ! 婚約破棄したのに屁理屈こねて婚約破棄し返す最低女! これから外国に行くんだからこれ以上私達の幸せを奪わないでよ!」

「そんなことは叶いませんよ。さあ、同行願います」


これだけ訴えてもリリィは『戻ってこい』と言う。こいつの心は鬼か!? 
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