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26.ここが?
しおりを挟むカーズたちが今いる場所は、公爵家の倉庫になる。そんな部屋をサエナリアの部屋として案内されたカーズと護衛二人は、信じられない思いだった。
「「…………?」
「じ、侍女よ、ここが……」
「はい?」
サエナリアの部屋。それはこの三人から見ても倉庫と断定できるものだった。どこをどう見ても、ベッドとイスとテーブルが置いてある倉庫、としか思えない。
「ここが、そうなのか? ここが、サエナリアの……」
「はい、間違いなく。この倉庫がお嬢様の部屋として与えられたのです」
「「「…………っ!」」」
カーズと護衛二人の反応は、数時間前にやってきた公爵夫妻と同じような反応だった。驚愕、疑念、困惑、そして怒り。様々な感情が顔に現れている。特にカーズの怒りの方が大きい。
「…………何ということを! これが実の娘に倉庫で過ごさせるなど、何という非道なる仕打ちか! 虐待と同じではないか!」
「その通りです、殿下。これも奥様とワカナ様のお決めになったことです。旦那様がこの状況を知ったのは、今日でございます」
「今日だと!? ああ、確かにそう言ってたな! 何と馬鹿な奴だ!」
淡々と発言する侍女ミルナだが、聞いているカーズは怒りを隠すことはなかった。護衛二人も不快そうな顔をしている。
「信じられません……貴族令嬢ですよ……?」
「ソノーザ公爵の頭は鳥頭ですか?」
小声でソノーザ公爵を酷評する護衛二人だが、本当は夫人と次女のせいである。もっとも、ベーリュに責任があるのは間違いないだろう。
「今日までこんな仕打ちを受けていたことを知らなかっただと!? ここまでサエナリアに関心がないとは! あんな立派な娘を自慢もせずにか! ソノーザ公爵家はやはり断罪すべきだ!」
カーズが激しく怒る姿を初めて見る護衛二人は驚くが、何とかカーズをなだめようとする。
「殿下、落ち着いてください」
「ここに来たのはそんな目的ではないはずです」
「だが! いくらなんでもこれは酷いだろうが! 大体な……!」
二人の努力もあって、カーズは幾らか頭が冷えてきたが、怒りは収まったとはいえなった。
「……私は、少しでもソノーザ公爵家を断罪できる証拠を求めてサエナリアの部屋を案内してもらったが、これだけでもう十分だ。我々三人の証言があれば公爵夫人の非道を訴えることができる。これで、少しでもサエナリアの心が晴れるなら……」
「断罪する証拠、だけですか?」
「え?」
「「?」」
カーズの言葉を聞いて、無表情で淡々と説明していた侍女ミルナが口を挟んできた。その目は真剣そのもので、真っすぐにカーズの目を見ていた。
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