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111.愉快?
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「忘れたならもう一度言ってやろうか? そなたの過去の悪事が発覚した、これはそのための裁判でもあるとな」
「「「「「(遂にその話になるのか!)」」」」」
国王の言葉に多くの者が緊張する。確かにそうだった。公には交渉されはしなかったが、何故か一部の貴族にはソノーザ公爵の罪が裁かれると噂されていたのだ。ただ、噂の出所が第二王子だともいわれており、王家の方も噂を否定も肯定もしなかった。
「(うまく言ったね兄さん)」
「(ああ)」
再び顔を青褪めるベーリュは恐る恐ると言った感じで国王の顔を見て「悪事とは具体的にどのような者でしょうか?」と聞こうとしたが、その前に国王が冷たいまなざしでニヤリと笑って答えた。
「ああ、発覚した悪事というのは何も一つ二つではないぞ。せっかくだから一つ一つここで語ってやろうではないか。なあ?(悪あがきしてもらって悪いけどな)」
「え……(嫌な予感、いや、もう確定か……)」
ベーリュの顔に冷や汗が伝う。覚悟はしていたが一つ二つではないという言葉にとてつもない寒気を感じさせた。長年の間に出世のために奔走し公爵に上り詰めたからこそベーリュは国王ジンノのことはよく分かっている。こういう時の国王はかなり怒っているということに。そして、必ず相手を苦しめるような罰を与えたがるといういやらしさを持つことに。
「(い、一体何がバレたんだ? あ、あれか? それともあれか? それとも……)」
「くくく、困惑しているなベーリュ。どうせ『何がバレた』とか思っておるのだろう? 言ったではないか今から教えてやるとな」
「う……(絶対楽しんでるだろ、なんて嫌な王だ)」
「まずはそうだなぁ。そなたの罪を知るきっかけから見せてやるとしようか。おい、あれを見せろ」
「はい、ただいま」
国王は傍にいる宰相のクラマ・ナマ・クーラに合図する。合図を受けた宰相は頷いて、わざわざベーリュの前に移動すると『日記』を見せつけた。
「そ、それは……?」
「見て分からぬか? 一応、そなたの『物だった』らしいが?」
困惑するベーリュを見て国王は愉快そうに笑う。もっとも、宰相は不愉快そうにベーリュを睨む。
「ソノーザ公爵。本当に分かりませんか?」
「は、はあ……」
「……さようですか(ご自分のことしか考えられないこの男に、もう少し他者を思う心があればよかっただろうに)」
「せっかくだ、一番最初の内容を読んで聞かせてやろうではないか」
国王が指をパチンッと鳴らすと同時に、宰相の口から日記の内容が読み上げられた。読み上げた内容を聞いたベーリュは困惑した顔から一気に血の気が引いて、顔を青褪めるのを通り越して真っ白に変えた。
「こ、これは……!」
「(くくくくく、愉快で滑稽ではないか。弟の日記を読み上げられるのはなあ!)」
「「「「「(遂にその話になるのか!)」」」」」
国王の言葉に多くの者が緊張する。確かにそうだった。公には交渉されはしなかったが、何故か一部の貴族にはソノーザ公爵の罪が裁かれると噂されていたのだ。ただ、噂の出所が第二王子だともいわれており、王家の方も噂を否定も肯定もしなかった。
「(うまく言ったね兄さん)」
「(ああ)」
再び顔を青褪めるベーリュは恐る恐ると言った感じで国王の顔を見て「悪事とは具体的にどのような者でしょうか?」と聞こうとしたが、その前に国王が冷たいまなざしでニヤリと笑って答えた。
「ああ、発覚した悪事というのは何も一つ二つではないぞ。せっかくだから一つ一つここで語ってやろうではないか。なあ?(悪あがきしてもらって悪いけどな)」
「え……(嫌な予感、いや、もう確定か……)」
ベーリュの顔に冷や汗が伝う。覚悟はしていたが一つ二つではないという言葉にとてつもない寒気を感じさせた。長年の間に出世のために奔走し公爵に上り詰めたからこそベーリュは国王ジンノのことはよく分かっている。こういう時の国王はかなり怒っているということに。そして、必ず相手を苦しめるような罰を与えたがるといういやらしさを持つことに。
「(い、一体何がバレたんだ? あ、あれか? それともあれか? それとも……)」
「くくく、困惑しているなベーリュ。どうせ『何がバレた』とか思っておるのだろう? 言ったではないか今から教えてやるとな」
「う……(絶対楽しんでるだろ、なんて嫌な王だ)」
「まずはそうだなぁ。そなたの罪を知るきっかけから見せてやるとしようか。おい、あれを見せろ」
「はい、ただいま」
国王は傍にいる宰相のクラマ・ナマ・クーラに合図する。合図を受けた宰相は頷いて、わざわざベーリュの前に移動すると『日記』を見せつけた。
「そ、それは……?」
「見て分からぬか? 一応、そなたの『物だった』らしいが?」
困惑するベーリュを見て国王は愉快そうに笑う。もっとも、宰相は不愉快そうにベーリュを睨む。
「ソノーザ公爵。本当に分かりませんか?」
「は、はあ……」
「……さようですか(ご自分のことしか考えられないこの男に、もう少し他者を思う心があればよかっただろうに)」
「せっかくだ、一番最初の内容を読んで聞かせてやろうではないか」
国王が指をパチンッと鳴らすと同時に、宰相の口から日記の内容が読み上げられた。読み上げた内容を聞いたベーリュは困惑した顔から一気に血の気が引いて、顔を青褪めるのを通り越して真っ白に変えた。
「こ、これは……!」
「(くくくくく、愉快で滑稽ではないか。弟の日記を読み上げられるのはなあ!)」
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