ローグ・ナイト ~復讐者の研究記録~

mimiaizu

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第5章 外国編

心の叫び3

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(母上は言っていた、肉親を亡くす悲しみはよく分かると。兄上の気持ちが分かると。まさか、こうなってしまう可能性も考えての行動だったのか!?)

 リオルは考えすぎだと思うほど考え込んでしまった。下手をすれば母アネーシャを極端に美化してしまいかねない。というかすでにその域に達していた。

(母上は、優しく強く聡明なお方だった。兄上の暴走を予想していたのかも――いや、そうに違いない。それに比べて私は……)

 リオルは母親と自分自身を比べ始める。

(私は……そんな母上とは違う。あの頃の私は荒れ狂う兄を避け、軽蔑すらしていた。「肉親を亡くす悲しみ」が分からなかったから……。でも、母上が戦死した後の私は、その気持ちが分かるはずだった。……はずだったのに、兄上に対して態度は変わらなかった。その結果がこれか……!)

 兄アゼルに責められて、反論できず、打ちのめされて、リオルは正常な考え方ができなくなっていた。普段の彼女らしくないようなネガティブなことまで思いはじめてしまった。

(私達は、私は一体何をしていたんだ? 母親違いとはいえ、同じ父親の血が通った兄妹なのに……。どうして気持ちを理解しようとしなかったんだ? ……私は何を間違っていたんだ? どうして……)

「しっかりしろ、リオさん!」
「っ!?」

 そんなリオルの様子を察したローグは、彼女に向かって叫んだ。リオルはハッとして、ローグのほうを振り返ったが、リオルの顔を見たローグは顔をしかめた。

「何て顔してんだよ。とても実の兄を助けようって顔には見えないぞ。こんな時に何を思い詰めてんだよ」
「ローグ……」

 吐き捨てるようなローグの言葉を聞いても、リオルは普段のような覇気を出せないし反論もできないでいる。第一印象が強気なイメージがあっただけに、今は情けなく見える。

「おい、何なんだよお前も! 一体なにも……」
「何者でもいいだろ、だから黙ってろよ」
「な、な……」

 横からアゼルが話に割り込もうとするが、ローグは相手にしない。更に苛立つだけだからだ。そんなことよりもリオルを奮い立たせたほうがいいと判断したのだ。

「実の兄の本音を聞かされたんだ。その言葉に悩むことがあってもいい。時間をかけて悩んでも仕方がない内容だしな。だが、今はそんな場合じゃないだろ。そんなのは戦いが終わった後にしろよ」
「そ、そうだな……私は……」
「そもそも、あんたの馬鹿兄が言ったことに対して反論できる証拠があるじゃないか」
「え?」
「はあ?」

 ローグの言う『反論できる証拠』とは何なのか。リオルとアゼルはそろって疑問に思ってしまった。この辺りは兄妹なんだなとローグは呆れてしまう。

「この状況――馬鹿お……アゼルを助けるための戦い。それはリオさん、あんたが家族を助けるための戦いのはずだ」
「「っ!」」
「兄を助ける妹。それが今の状況だ。あんたの兄、つまりはこの馬鹿の言ってたことの全てに対する答えとしては最高の答えじゃないのか?」
「それは……!」
「な、なあ……!?」

 リオルとアゼルはそろって驚いた。ただし、その驚き方はまるで違った。リオルはまるで希望を見つけ出したような顔に、アゼルは単純に驚いただけの顔になった。細かい違いに過ぎないだろうが、当人たちにとっては大きな違いだ。

「最初に言ったはずだろ、アゼル」
「……な、何だ!?」
「『お前たちは憎しみあっていたかもしれないが兄妹なのも間違いない』」
「っ!?」
「ローグ……!」
「『どうしても見捨てるなんてことはできなかった』ってさ。これだけ妹の思いを見せられて否定できるか? できないだろう。お前のためにこんなにも苦しんでくれてるんだからさ」
「あ、ああ……」

 ローグの言葉に反論できない。そう思ったアゼルはゆっくりとリオルの顔に目を向ける。彼の目に映ったのは、いつもの強気な生意気な妹の顔――ではなかった。

「リオル……」

 今のリオルの顔は弱弱しく見えた。まるで幼子のような顔だった。少なくとも、そんな風に見えてしまった。
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