ローグ・ナイト ~復讐者の研究記録~

mimiaizu

文字の大きさ
198 / 252
第5章 外国編

心の叫び4

しおりを挟む
(ぼ、僕は……どうすればいいんだ?)

 ローグに言われて、リオルにあんな顔をされて、アゼルは何も言えなくなってしまった。今度はアゼルが思い悩む状況になってしまった……はずだった。

「そんなわけでアゼル馬鹿皇子。さっさと助けられてもらうぜ?」
「「え?」」
「【昇華魔法】『精神強化・強』!」

 ローグは合えるにかけ続けている魔法を一気に強くした。有言実行するためだ。寄生生物の苦しみも一気に増した。

(これ以上、兄妹喧嘩にも寄生騒ぎにも付き合うのはうんざりだ)

「ギイイイイイイイッ!?」

「う、くう!? な、何だ!?」
「ローグ、何を!?」
「二人は、もう迷う必要がないと分かったと思うんだ。リオルは何を言われても家族を助けたいし、アゼルは助けられたいし助けられなければならない。だからこそ、このタイミングで蹴りをつけようと判断した。それまでのことさ」
「「!」」
 
 二人はまたもや驚愕した顔になったが、ローグはそんなことには気にもしないで続けている。魔法と語る言葉が続けられる。

「アゼル、意地になるのはもうやめようよ。お前はリオルたちに、リオルに助けられるべきだ。そうすれば素直に認めてもいいだろ?」
「な、何を……」
「分かってるだろ。家族の情なり、実力なり、リオルを素直に認めることをだよ。この状況で助けられれば、お前がリオルを認めても仕方がない。いや、この場合はこう言ったほうがいい。お前はやっと素直にリオルを認めることができるんだ」
「なっ!? あ、あ……!」
「ローグ! そ、それは……!」
 
 もう何度目か分からないぐらいに驚いてきた二人だが、今のは最大の驚きようだったようだ。しかも、今度は全く同じ驚き方をしたのだ。ローグは思わず苦笑する。

「そして、それはお前の救いになる。特に心のほうでな」
「心のほうだと?」
「いくら何でも分かるだろ? 俺の言っている意味が」

 ローグの言葉に息を飲むアゼル。確かに理解してしまっていた。アゼルがローグの主負うようなシナリオ通りに『助かった』ならば、単純に助かっただけではない。精神面で救われることを意味することを。後はアゼル次第だ。

「……僕は」

 アゼルはこれまでの自身の人生を振り返る。母に溺愛され甘やかされた、愛溢れて愚かな人生。母親違いの妹ができて優越感と劣等感を抱えるようになった人生。尊敬する父親がいて、誇りと緊張あふれる人生。多くの家臣がいて、世辞と陰口を聞く人生。

 ――正直、アゼル自身は本当に大したことが無かった。それは昔から思っていたことだった。自分が嫌になったのはずっと前からだ。

「助かって、救われていいのか?」
「ああ、それは……」
「いいに決まっている!」
「リオル!」
「助かって、救われていい! 他でもない、妹の私が望んでいるんだ! 私のことは、無理に認めなくてもいい! だけど、今は助けられてほしいんだ!」
「!」

 リオルは心の内を思いっきり叫んだ。その叫びを聞いたアゼルは、もう一度リオルの顔を見る。その顔は真剣にアゼルを見ていた。――アゼルは遂に覚悟を決めた。

「……そうか。リオルに、妹にまでこんなことを言われては仕方がないな。僕もいい加減前を向いて歩きたいしな」
「助かってくれるか」
「ああ、僕も結局は助かりたいし、リオルのことも自分のことも素直に認めたい。頼む。今更だが、僕を、僕たち兄妹を救ってくれないだろうか、王国の魔法使いよ」
「その言葉を待っていたよ」
 
 ローグはニヤリと笑うと、更に魔力を注ぎ込む――その前に、アゼルの体と寄生生物のほうに大きな変化が起きた。

シュウウウ……

「ギュアアアアアアアアッ!?」

「「「「「消えたっ!?」」」」」

 アゼルの体から生えた触手が消え去ったのだ。正確には黒ずんでちり芥となって消えていった。そして、寄生生物の本体はアゼルの背中から離れていったのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

商人でいこう!

八神
ファンタジー
「ようこそ。異世界『バルガルド』へ」

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。 音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、 幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。 魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。 そして再び出会う幼馴染。 彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。 もういい。 密かにやってた支援も打ち切る。 俺以外にも魔道具職人はいるさ。 落ちぶれて行く追放したパーティ。 俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

エレンディア王国記

火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、 「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。 導かれるように辿り着いたのは、 魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。 王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り―― だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。 「なんとかなるさ。生きてればな」 手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。 教師として、王子として、そして何者かとして。 これは、“教える者”が世界を変えていく物語。

処理中です...