【完結】すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ

一終一(にのまえしゅういち)

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第3章 王都防衛編

第79話 リザードマン戦

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 雨上がりの午後、またしても神樹に向かってくる巨獣と戦うことになった。

 モニターを見ると、二頭のワニ型巨獣が迫っていた。巨獣の名はリザードマン。主な特徴は二足歩行と四足歩行を可変できることだ。川の周辺に棲息せいそくしているありふれた巨獣である。

「また様子がおかしいな」

 リザードマン達は白目をいてヨダレを撒き散らしながら突進してきている。先日戦った人型巨獣ゴブリンと同じだ。

「シロの言っていたゾンビ個体と一緒かな?」

 踊り子トマティナが発言した。

「かもな。周囲に蚊の巨獣もいるかも知れないから注意しておいてくれ。それじゃあ二人とも戦闘の準備を頼む」

「了解」
「分かりましたわ」

 トマティナとオイチが返事をした。

 最近は彼女二人にも鎧兵を操作させて戦闘に参加してもらうようにしている。俺が病気やケガで操作すらおぼつかなくなった時の保険だ。

 ……というのは表の理由で、裏の理由としては女の子とゲームがしたかったからである。ゲームをする人間は誰しも異性と一緒にできたらなぁと考えたことがあるんじゃないか? 少なくとも俺はある。

 巨獣との戦いは残念ながらゲームではないが、鎧兵はやられても復活できるし似たようなもんだろ。うひひ。

 内心ニヤニヤしながら気を引き締める。

「今回は二千体ずつ渡すから左の個体をトマティナ、右の個体をオイチが対処してくれ。俺は五千体で二人に合わせる」

 現在、鎧兵は一万体召喚できる。残りの千体は他の仕事をさせるための待機兵だ。

 リザードマン達は偶然かは分からないが前回ゴブリンと戦った場所である神樹北側を通過しようとしている。そこは罠を張り直しているが突貫工事でまだ完璧ではない。

 そして二頭の巨獣が罠地帯に突入する直前だった。

「グルル……」

 低くうなりながら停止して、四足歩行から二足歩行になった。

「チッ、罠に気付いたか……!?」

 やはり罠を荒く修正し過ぎたか。土の色も露骨に違うし気付かれてもおかしくない。

「右から行きますわ!」

 オイチが鎧兵部隊を突っ込ませた。

 しかし、尻尾のなぎ払いで簡単にやられる。

「あぁん! やられましたわぁ!」

 あえぐな。

「二人とも、集中して。敵に動きがありそうよ」

 トマティナの発言にモニターを確認すると、左のリザードマンの腕がふくらみ、前腕辺りから剣のようなものが生み出されていた。

 同様に右のリザードマンの腕も膨らむ。こちらは盾のような扁平へんぺいの物体が生み出された。

「シロ、なにあれ?」

「分からない。通常のリザードマンには見られなかった行動だ。ゾンビ化に関係があるのかもしれない」

 リザードマン達は、生み出された剣と盾を一個ずつ交換して剣士のようになった。

 直後、剣をなぎ払って前方の罠の確認を始める。学習してやがるのか?

「これ以上前に進ませたくない。二人とも援護してくれ!」

 左右から同時攻撃を仕掛ける。敵はまたしても巨木のような尻尾をぎ払ってきた。鎧兵達はって弾けるポップコーンのように吹き飛ばされた。

「コウモリ部隊行きますわ!」

 オイチは鎧コウモリを敵の目の前に差し向けた。敵は鬱陶うっとうしそうに剣と盾ではたき落としている。その間に他の部隊を回り込ませる。

「SB改を使うわ!」

 トマティナの操作する部隊がクロスボウでスライムボム改を放つ。だが、矢は間一髪のところで盾により防がれた。さらに爆発しても盾は破壊できなかった。

「硬いな。伊達に盾の形をしているわけじゃないということか」

「どうする? 全方位から同時に狙ってみる?」

「いや、試したいことがある。合わせてくれ」

 俺は部隊をリザードマン二頭の間へ向けて走らせた。

 剣が縦に振るわれる。数十体の鎧兵が死んだ。でもその程度じゃあ止まらないぜ。こちとら五千体いるからな。

 数を減らされながらも、どうにか敵と敵の中間に入った。

 狙いは同士討ち。ゾンビ個体がどう動くか知っておきたかった。

 予想通り、リザードマン達の剣が止まる。へぇ、一応協調性はあるんだな。

 確認の終わった俺は次の指示を出す。

「二人とも、今だ!」

 動きが止まったところを二人の動かす部隊が後ろから攻撃。ありったけのSB改を打ち込んだ。

 爆発。ゾンビ個体は頭部だけになっても動くので、頭を重点的に攻撃した。

 そして頭が黒焦げになった二頭のリザードマンがその場に倒れ、二度と起き上がることはなかった。

「やったぜ、ナイスー!」
「やったわね」
「やりましたわー」

 三人でハイタッチをした。やっぱ女の子とネットゲームをするのは楽しいな!

 ルンルン気分でいると、トマティナが真剣な表情で話しかけてきた。

「リザードマン達は正気を失っているように見えたけれど、その割に行動が合理的だと思わなかった?」

「……確かに。言われてみるとそうだな」

 敵は意図的に罠を避けているように見えた。この手のゾンビは何も気にせず猪突猛進ちょとつもうしんで来ると相場は決まっていそうだが。まぁ固定観念に過ぎないかもな。

「待ってシロ。リザードマンの死体を見て」

 トマティナのモニターを見ると、蚊の巨獣の死骸しがいが映し出されていた。二頭のリザードマンの内、剣を出していた個体からは腹部が“赤い蚊”が、盾を出していた方からは“青い蚊”が出てきたようだ。

「またか。やはりこの蚊がゾンビ化の原因か?」

「かもしれないわ。まだ断言はできないけれど、頭の片隅に入れておいた方がよさそうね」

 早くコイツらの巣を見つけないと。森の外にも探索範囲を広げてみるか。

「シロ様、これを見てくださいませ……!」

 今度はオイチがモニターに指を差した。鎧コウモリの視点を見ると、紫色の霧が神樹北側の森をうように迫ってくるのが映っていた。霧に触れた小動物や虫が苦しんで死んでいく。

「これは毒の霧……!?」

 またしても不穏な現象。一体何が起こっているのだろうか。いや、何か起ころうとしているのか。

 俺は不安な気持ちを抱えながら息をむしか出来なかった。
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