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第3章 第10話
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「アリステラの軍事力を支えていたエーテルは、人の意思に感応し、炎や氷、風や土、雷を自在に操ることが可能でした。
アリステラでは『エーテライズ』と呼ばれていましたが、あなた方の言葉では魔法と呼ばれるものにとても近いでしょう。
滅亡を間近に控えた頃、当時の女王は自らの体内に残ったわずかなエーテルを使い、王族の末裔の血が途絶えることになった際には、天変地異によってホモサピエンスが滅亡するように、森羅万象をエーテライズしたのです」
それがあらゆる災厄のからくりだという。
「この10万年間、アリステラの王族と民の末裔は、ホモサピエンスと交じり、子を遺して命を繋いできました。
元の世界に帰ることもかなわなかった我々は、この世界で生きることしかできなかったのです。
女王の末裔は、ミトコンドリアにわずかなエーテルを宿し、女王となる資格を持つ女子にだけエーテルが引き継がれていくように。
民の末裔は、アリステラの再興の準備のためにその生涯を捧げてきました。それは、ホモサピエンスによって失われたアリステラの文明をエーテルを用いずに再現すること。
それが、災厄が訪れる前までにあなたがたが享受していた文化や芸術、学問、科学なのです。
そして、14年前、この世界で世紀の大発見をしたひとりの女性科学者が現れました。
こちらの女性に見覚えがある方も多いはずです」
小久保ハルミが再びテレビに映し出された。
「彼女が発見した千年細胞は、10万年前に純血のアリステラ人が持っていた不老長寿の細胞にとてもよく似ていました。
しかし彼女の発見は、一部の権力者たちだけが独占するために、その存在自体が否定されてしまいました。彼女は学会を終われ、希代の詐欺師と揶揄されるようになりました。
我々アリステラは、彼女に接触し、協力を仰ぎました。
彼女の身体の中に生きる千年細胞を分け与えてもらい、純血のアリステラ人に限りなく近い身体を取り戻したのです。
そして、彼女は更なる大発見をアリステラのためにしてくれました。
千年細胞を元に、より強力な力を持ち、決して枯渇することがない新たなエーテルを生み出してくれたのです」
すべての準備が整った4年前、アリステラは局地的な大災害や疫病をエーテライズし、ホモサピエンスの恐怖を煽った。
そこに、アリステラの王族の末裔の血筋を絶てば、あらゆる災厄は終わりを告げるというデマを拡散し、ホモサピエンスはまんまとそれにひっかかった。
「あなた方ホモサピエンスが、アリステラを滅亡に追いやった。
アリステラは確かに一度はあなた方を支配しました。
しかし、最初に攻めてきたのはあなた方ホモサピエンスなのです。
この10万年の間、我々が世界各地に何度文明を築いても、ホモサピエンスによって滅ぼされてきました。
その度に我々は文明を一から作り直してきました。
ですから、野蛮なホモサピエンスのあなた方には、我々が味わった10万年の屈辱をぜひご堪能頂きたいとわたしは考えています」
我々が味わった10万年に比べれば、あなた方の屈辱や苦痛は一瞬です、と女王は言った。
「あなた方は間もなく滅亡を迎えることになるからです。
それでようやく、あらゆる災厄は終わりを告げ、あなた方の数十億の屍の上に新生アリステラ王国は建国されるのです」
一条刑事がタカミとショウゴが住むマンションを訪れたのは、無料通話アプリでの通話から3時間後のことだった。
タカミが予想した通り、車のカーナビにも新生アリステラ王国の再興を宣言する映像が映っており、ガス欠のはずの車のエンジンもかかったそうだ。
だが、数年振りに取り戻した移動手段は、道路に転がる無数の屍の妨害を受け、思ったよりも時間がかかってしまったらしい。
「本当にあの日から、この雨は止まずにずっと降り続けているんだな」
地下駐車場に愛車の赤いオープンカー、マツダ・ロードスターを停めて、玄関ロビーに入ってきた彼は、悲しげな表情でそう言った。
あの日を思い出したのだろう。あの日もこの車だった。この車にユワの死体と泣きじゃくるショウゴを乗せた。
一条刑事は、「観ていたか?」とタカミに尋ねた。
お前は信じられるか?あんな荒唐無稽な話、と。
アリステラでは『エーテライズ』と呼ばれていましたが、あなた方の言葉では魔法と呼ばれるものにとても近いでしょう。
滅亡を間近に控えた頃、当時の女王は自らの体内に残ったわずかなエーテルを使い、王族の末裔の血が途絶えることになった際には、天変地異によってホモサピエンスが滅亡するように、森羅万象をエーテライズしたのです」
それがあらゆる災厄のからくりだという。
「この10万年間、アリステラの王族と民の末裔は、ホモサピエンスと交じり、子を遺して命を繋いできました。
元の世界に帰ることもかなわなかった我々は、この世界で生きることしかできなかったのです。
女王の末裔は、ミトコンドリアにわずかなエーテルを宿し、女王となる資格を持つ女子にだけエーテルが引き継がれていくように。
民の末裔は、アリステラの再興の準備のためにその生涯を捧げてきました。それは、ホモサピエンスによって失われたアリステラの文明をエーテルを用いずに再現すること。
それが、災厄が訪れる前までにあなたがたが享受していた文化や芸術、学問、科学なのです。
そして、14年前、この世界で世紀の大発見をしたひとりの女性科学者が現れました。
こちらの女性に見覚えがある方も多いはずです」
小久保ハルミが再びテレビに映し出された。
「彼女が発見した千年細胞は、10万年前に純血のアリステラ人が持っていた不老長寿の細胞にとてもよく似ていました。
しかし彼女の発見は、一部の権力者たちだけが独占するために、その存在自体が否定されてしまいました。彼女は学会を終われ、希代の詐欺師と揶揄されるようになりました。
我々アリステラは、彼女に接触し、協力を仰ぎました。
彼女の身体の中に生きる千年細胞を分け与えてもらい、純血のアリステラ人に限りなく近い身体を取り戻したのです。
そして、彼女は更なる大発見をアリステラのためにしてくれました。
千年細胞を元に、より強力な力を持ち、決して枯渇することがない新たなエーテルを生み出してくれたのです」
すべての準備が整った4年前、アリステラは局地的な大災害や疫病をエーテライズし、ホモサピエンスの恐怖を煽った。
そこに、アリステラの王族の末裔の血筋を絶てば、あらゆる災厄は終わりを告げるというデマを拡散し、ホモサピエンスはまんまとそれにひっかかった。
「あなた方ホモサピエンスが、アリステラを滅亡に追いやった。
アリステラは確かに一度はあなた方を支配しました。
しかし、最初に攻めてきたのはあなた方ホモサピエンスなのです。
この10万年の間、我々が世界各地に何度文明を築いても、ホモサピエンスによって滅ぼされてきました。
その度に我々は文明を一から作り直してきました。
ですから、野蛮なホモサピエンスのあなた方には、我々が味わった10万年の屈辱をぜひご堪能頂きたいとわたしは考えています」
我々が味わった10万年に比べれば、あなた方の屈辱や苦痛は一瞬です、と女王は言った。
「あなた方は間もなく滅亡を迎えることになるからです。
それでようやく、あらゆる災厄は終わりを告げ、あなた方の数十億の屍の上に新生アリステラ王国は建国されるのです」
一条刑事がタカミとショウゴが住むマンションを訪れたのは、無料通話アプリでの通話から3時間後のことだった。
タカミが予想した通り、車のカーナビにも新生アリステラ王国の再興を宣言する映像が映っており、ガス欠のはずの車のエンジンもかかったそうだ。
だが、数年振りに取り戻した移動手段は、道路に転がる無数の屍の妨害を受け、思ったよりも時間がかかってしまったらしい。
「本当にあの日から、この雨は止まずにずっと降り続けているんだな」
地下駐車場に愛車の赤いオープンカー、マツダ・ロードスターを停めて、玄関ロビーに入ってきた彼は、悲しげな表情でそう言った。
あの日を思い出したのだろう。あの日もこの車だった。この車にユワの死体と泣きじゃくるショウゴを乗せた。
一条刑事は、「観ていたか?」とタカミに尋ねた。
お前は信じられるか?あんな荒唐無稽な話、と。
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