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第4章 第1話
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一条ソウマは、数年前に最後に会ったときとは髪型や服装が大きく変わっていた。
水が貴重な物資になってしまったからだろう。頭は丸坊主になっており、服も汚れが目立たない黒いTシャツにカーゴパンツという出で立ちで、必要な物はすべてリュックに詰め込んでいた。
警視庁のエリートだった頃の高級なスーツを着ていた彼とはまるで別人のように見えた。
当時の彼は公安部所属で、主にカルト教団や過激派テロ組織によるテロ対策を担当する刑事だった。
タカミがハッカーであった頃、共にいくつものテロ事件を未然に防いだ。
警察組織が崩壊した後、彼は地元である愛知県に戻り、現在は自警団のような活動を無償でしているという。
「お前は信じられるか? あんな荒唐無稽な話」
アリステラの女王の演説について、一条にそう尋ねられたタカミは、返答に困った。
確かに荒唐無稽な話だった。だが、エーテルという万能物質については信じざるを得なかった。それは一条も同じだろう。ここまで車で来ることができたのだから。
小久保ハルミが女王のそばにいたことも信じるに足る材料に思えた。
一条は、「彼は?」と、その場にいないショウゴのことを気にかけた。
「相当ショックが大きかったみたいだよ。今は薬を飲ませて眠ってる」
「そうか」
ショウゴをタカミが匿っていることを知る者は、世界中で彼だけだった。
だから、誰かとショウゴの話をするのは、彼が相手のときだけだ。
「ここしばらくは、それなりに元気にしていたんだけどね。『雨合羽の男』になるくらいには」
雨野市で都市伝説のように語られている「雨合羽の男」がショウゴであるということにタカミは気づいていた。
「雨合羽の男? なんだ、それは?」
口を滑らせたな、とタカミは反省した。
一条がしているという自警団とショウゴがしていることは、同じ暴徒相手でも似ているようでまるで違うだろうからだ。ショウゴが暴徒の命を奪っていると知れば、彼はそれを許しはしないだろう。
法律などもはや何の意味もないものだとしても、彼はそれを頑なに守る。それが一条という男だった。
一条は、タカミの表情を読み取り、それ以上の質問は野暮だと察してくれたのだろう。
「君は、君の方こそ、大丈夫なのか?」
と、タカミの心配もしてくれた。
正直なところ、正気を保っているのが不思議なくらいだった。
ショウゴを楽にしてやろうと、拳銃を手にした。彼に向けてそれを撃つまで、本当に死なせてやるつもりだった。
死んだはずのユワに瓜二つのアリステラの女王の存在は、ユワの恋人だったショウゴにも、兄であったタカミにも、あまりに衝撃的すぎた。
「正直、一条さんが来てくれて助かったってところかな」
タカミは正直な気持ちを吐露していた。
そんな相手ももはや彼しか存在しない。
ユワもハルミも、アリステラの側にいる。この世界を、人類を滅ぼそうとしている。
「でも、一条さんは信じているんだろう?」
エレベーターで最上階に上がる途中、タカミは彼にそう尋ねた。
「ハルミが女王のそばにいたからか?」
一条の言葉にタカミは頷いた。
「あいつはこの世界に裏切られたからな」
彼は悲しそうにそう呟き、
「ぼくは君がまだ人類の側についてくれていることに感謝しているよ」
そして笑った。
そうだった。タカミもショウゴも世界に裏切られた側の人間だった。
「君があちら側についたなら、人類は本当に終わりだ。ハルミに対抗できるのは君だけだからな」
一条の信頼が嬉しかった。
「君のことだ。アリステラがあの放送をどこから流していたのか、すでに調べはついているんだろう?」
エレベーターが最上階に着いた。
「当然だよ」
と、タカミはエレベーターを降りた。
数時間前、一条と連絡を取った際、タカミのスマホのそばには彼のパソコンがあり、エーテルによる影響で起動していた。
タカミは一条と会話をしながら、アリステラによる放送の発信源を突き止めるプログラムを起動させていた。
水が貴重な物資になってしまったからだろう。頭は丸坊主になっており、服も汚れが目立たない黒いTシャツにカーゴパンツという出で立ちで、必要な物はすべてリュックに詰め込んでいた。
警視庁のエリートだった頃の高級なスーツを着ていた彼とはまるで別人のように見えた。
当時の彼は公安部所属で、主にカルト教団や過激派テロ組織によるテロ対策を担当する刑事だった。
タカミがハッカーであった頃、共にいくつものテロ事件を未然に防いだ。
警察組織が崩壊した後、彼は地元である愛知県に戻り、現在は自警団のような活動を無償でしているという。
「お前は信じられるか? あんな荒唐無稽な話」
アリステラの女王の演説について、一条にそう尋ねられたタカミは、返答に困った。
確かに荒唐無稽な話だった。だが、エーテルという万能物質については信じざるを得なかった。それは一条も同じだろう。ここまで車で来ることができたのだから。
小久保ハルミが女王のそばにいたことも信じるに足る材料に思えた。
一条は、「彼は?」と、その場にいないショウゴのことを気にかけた。
「相当ショックが大きかったみたいだよ。今は薬を飲ませて眠ってる」
「そうか」
ショウゴをタカミが匿っていることを知る者は、世界中で彼だけだった。
だから、誰かとショウゴの話をするのは、彼が相手のときだけだ。
「ここしばらくは、それなりに元気にしていたんだけどね。『雨合羽の男』になるくらいには」
雨野市で都市伝説のように語られている「雨合羽の男」がショウゴであるということにタカミは気づいていた。
「雨合羽の男? なんだ、それは?」
口を滑らせたな、とタカミは反省した。
一条がしているという自警団とショウゴがしていることは、同じ暴徒相手でも似ているようでまるで違うだろうからだ。ショウゴが暴徒の命を奪っていると知れば、彼はそれを許しはしないだろう。
法律などもはや何の意味もないものだとしても、彼はそれを頑なに守る。それが一条という男だった。
一条は、タカミの表情を読み取り、それ以上の質問は野暮だと察してくれたのだろう。
「君は、君の方こそ、大丈夫なのか?」
と、タカミの心配もしてくれた。
正直なところ、正気を保っているのが不思議なくらいだった。
ショウゴを楽にしてやろうと、拳銃を手にした。彼に向けてそれを撃つまで、本当に死なせてやるつもりだった。
死んだはずのユワに瓜二つのアリステラの女王の存在は、ユワの恋人だったショウゴにも、兄であったタカミにも、あまりに衝撃的すぎた。
「正直、一条さんが来てくれて助かったってところかな」
タカミは正直な気持ちを吐露していた。
そんな相手ももはや彼しか存在しない。
ユワもハルミも、アリステラの側にいる。この世界を、人類を滅ぼそうとしている。
「でも、一条さんは信じているんだろう?」
エレベーターで最上階に上がる途中、タカミは彼にそう尋ねた。
「ハルミが女王のそばにいたからか?」
一条の言葉にタカミは頷いた。
「あいつはこの世界に裏切られたからな」
彼は悲しそうにそう呟き、
「ぼくは君がまだ人類の側についてくれていることに感謝しているよ」
そして笑った。
そうだった。タカミもショウゴも世界に裏切られた側の人間だった。
「君があちら側についたなら、人類は本当に終わりだ。ハルミに対抗できるのは君だけだからな」
一条の信頼が嬉しかった。
「君のことだ。アリステラがあの放送をどこから流していたのか、すでに調べはついているんだろう?」
エレベーターが最上階に着いた。
「当然だよ」
と、タカミはエレベーターを降りた。
数時間前、一条と連絡を取った際、タカミのスマホのそばには彼のパソコンがあり、エーテルによる影響で起動していた。
タカミは一条と会話をしながら、アリステラによる放送の発信源を突き止めるプログラムを起動させていた。
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