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第8章 第10話
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「世界が滅びてしまっても?
大和ショウゴさんもいなくなってしまうんですよ?」
アンナにそう問われたとき、レインは何も言い返せなかった。
知識の館バイトゥルヒクマ。
その空間を構成するエーテルに記録された、知識や記憶、経験が、かろうじてアンナの人格や精神、魂といったものを再現しているだけだということだったが、アンナはやはりアンナだった。
世界が滅びてしまうかもしれないということは、正直なところどうでもいいと思った。
しかし、世界が滅びるということは、ショウゴが死んでしまうということだ。自分も死んでしまうということだった。
世界も自分もどうでもよかった。
だけど、ショウゴには生きていて欲しかった。
ショウゴに生きてほしいということは、世界はショウゴが生きやすい世界でなければ意味がない。
世界の滅亡は必ず回避しなければいけなかった。
それだけじゃない。災厄の時代が訪れる以前の状態に復興させなければいけなかった。
エーテルによってあらゆる災厄が起こせるのなら、その逆も可能のはずだ。
災厄は止められる。
そして、失われた命を元に戻すことはできなくても、壊れた世界はエーテルを結晶化させ、その形を変化させることで、元に戻すことは不可能ではなかった。
しかし、たとえそこまでしたとしても、ショウゴにとって、その世界には雨野ユワがいなければ、それはおそらく何の意味もない世界だった。
ユワがいる世界ならば、そこに自分はいなくてもいい。
いない方がいい。
いても苦しいだけだ。
「お願いがあります」
レインは、
「雨野ユワさんと話がしたいですわ」
姿どころか、声すらも聞かせない、雨野ユワとの対話を望んだ。
新生アリステラの女王、アリステラピノアは、死者を強制的に蘇生させ作り出された、魂を持たない傀儡の女王だと、先ほど誰かが言った。
だとしたら、雨野ユワもここにいるはずだった。
「わたくしはユワさんとお会いしたことがありませんから、出来ればお姿も見せてほしいです」
バイトゥルヒクマを構成するエーテルが、まるで水害が起きたときの川や海のように荒れた。翡翠色の光は様々な色に変わり、濁流に飲み込まれたかのようだった。
アンナや母たちの意識が、困惑しているのがわかった。
「エーテルが記憶する知識や記憶から、雨野ユワさんの姿を再現することは可能です。ただ今はもう話が通じるとは思えませんが」
「構いませんわ」
「彼女が亡くなったのは4年も前のこと。つい最近まで生きていたわたしたちと違い、その意識はすでに……」
アンナだけではなく、母や叔母もつい最近までは生きていたということだろうか。
リサやマヨリという人もまた。
「それでも、アナスタシア様はお会いになりたいとおっしゃるのですね」
「ええ、お願いよ、アンナ。
でももう、わたくしのことは、レインと呼び捨ててください。
あなたはわたくしのお姉様なのですから」
「わかったわ、レイン」
レインの目の前に、雨野ユワが現れた。
「ふたりきりになりたいでしょう? わたしたちはしばらく消えてるわね」
「ありがとう、お姉様」
雨野ユワは、確かに例のあの放送に映っていた新生アリステラの女王と同じ顔をしていた。
「あなたが雨野ユワさんね?」
レインの問いかけに、ユワは答えなかった。
知識の館バイトゥルヒクマを構成するエーテルが記憶する知識や記憶からユワの姿を再現する、そう聞いてはいたが、彼女の瞳には生気がなく、レインを見ているようで見ていなかった。焦点がまったく合っていなかった。
「わたくしは朝倉レインと言います。はじめまして、ユワさん」
レインが名乗っても、
「あなたのことはいつもタカミさんやショウゴさんからお聞きしていますわ」
タカミやショウゴという彼女の意識に引っ掛かりそうな名前を口にしても、彼女の表情が変わることはなかった。
大和ショウゴさんもいなくなってしまうんですよ?」
アンナにそう問われたとき、レインは何も言い返せなかった。
知識の館バイトゥルヒクマ。
その空間を構成するエーテルに記録された、知識や記憶、経験が、かろうじてアンナの人格や精神、魂といったものを再現しているだけだということだったが、アンナはやはりアンナだった。
世界が滅びてしまうかもしれないということは、正直なところどうでもいいと思った。
しかし、世界が滅びるということは、ショウゴが死んでしまうということだ。自分も死んでしまうということだった。
世界も自分もどうでもよかった。
だけど、ショウゴには生きていて欲しかった。
ショウゴに生きてほしいということは、世界はショウゴが生きやすい世界でなければ意味がない。
世界の滅亡は必ず回避しなければいけなかった。
それだけじゃない。災厄の時代が訪れる以前の状態に復興させなければいけなかった。
エーテルによってあらゆる災厄が起こせるのなら、その逆も可能のはずだ。
災厄は止められる。
そして、失われた命を元に戻すことはできなくても、壊れた世界はエーテルを結晶化させ、その形を変化させることで、元に戻すことは不可能ではなかった。
しかし、たとえそこまでしたとしても、ショウゴにとって、その世界には雨野ユワがいなければ、それはおそらく何の意味もない世界だった。
ユワがいる世界ならば、そこに自分はいなくてもいい。
いない方がいい。
いても苦しいだけだ。
「お願いがあります」
レインは、
「雨野ユワさんと話がしたいですわ」
姿どころか、声すらも聞かせない、雨野ユワとの対話を望んだ。
新生アリステラの女王、アリステラピノアは、死者を強制的に蘇生させ作り出された、魂を持たない傀儡の女王だと、先ほど誰かが言った。
だとしたら、雨野ユワもここにいるはずだった。
「わたくしはユワさんとお会いしたことがありませんから、出来ればお姿も見せてほしいです」
バイトゥルヒクマを構成するエーテルが、まるで水害が起きたときの川や海のように荒れた。翡翠色の光は様々な色に変わり、濁流に飲み込まれたかのようだった。
アンナや母たちの意識が、困惑しているのがわかった。
「エーテルが記憶する知識や記憶から、雨野ユワさんの姿を再現することは可能です。ただ今はもう話が通じるとは思えませんが」
「構いませんわ」
「彼女が亡くなったのは4年も前のこと。つい最近まで生きていたわたしたちと違い、その意識はすでに……」
アンナだけではなく、母や叔母もつい最近までは生きていたということだろうか。
リサやマヨリという人もまた。
「それでも、アナスタシア様はお会いになりたいとおっしゃるのですね」
「ええ、お願いよ、アンナ。
でももう、わたくしのことは、レインと呼び捨ててください。
あなたはわたくしのお姉様なのですから」
「わかったわ、レイン」
レインの目の前に、雨野ユワが現れた。
「ふたりきりになりたいでしょう? わたしたちはしばらく消えてるわね」
「ありがとう、お姉様」
雨野ユワは、確かに例のあの放送に映っていた新生アリステラの女王と同じ顔をしていた。
「あなたが雨野ユワさんね?」
レインの問いかけに、ユワは答えなかった。
知識の館バイトゥルヒクマを構成するエーテルが記憶する知識や記憶からユワの姿を再現する、そう聞いてはいたが、彼女の瞳には生気がなく、レインを見ているようで見ていなかった。焦点がまったく合っていなかった。
「わたくしは朝倉レインと言います。はじめまして、ユワさん」
レインが名乗っても、
「あなたのことはいつもタカミさんやショウゴさんからお聞きしていますわ」
タカミやショウゴという彼女の意識に引っ掛かりそうな名前を口にしても、彼女の表情が変わることはなかった。
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