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第9章 第4話
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巨大地震や津波は、この島国では数年に一度か十数年に一度は必ず起きる。決して珍しいことではない。
イズモが産まれる何年か前にも東北で大きな地震があったという。
だが、ある日突然見知らぬ女性が自分の前に現れ、地震発生の日時を予言した上に、中部地方のある地方都市に行けば地震からも津波からも免れられるなんて言われて、はいそうですか、と素直に信じる者がいるだろうか。いたらそいつは新興宗教やマルチ商法にすぐ引っ掛かってしまうだろう。
指定された地方都市が、4年前から一年中雨が降り続けている街でなかったら、行ってみようという気にはならなかっただろう。
そういう噂を聞いたことがあり、きっとただの都市伝説だろうと思っていたが、実際にその目で確かめてみたくなったのだ。
もしかしたら、そんなのはとってつけた理由に過ぎなかったのかもしれない。
自分に生まれてはじめて優しくしてくれた女性の言葉を、簡単には信じられないが、もしかしたら彼は信じたかったのかもしれなかった。
「そのメモのマンションの18階の部屋は、何年も前にわたしが買ったけど、一度も使っていない部屋なの。これから使う予定もないから安心して好きなように使って」
そのマンションは外壁がすべてソーラーパネルになっており、この災厄の時代でも最低限の電気が使えるということだった。
屋上には雨水を貯める貯水タンクとろ過装置がついており、一年中雨が降り続けるその街では飲み水に困らないどころか、シャワーを浴びることもできるという。
「ひとつ上の19階と最上階の20階に人は住んでいるみたいだけど、それ以外の階の住人は餓死したり、街に出掛けたときに暴徒に襲われたりして死んでしまったりして、もうほとんどいないから」
女性はそんなことも言った。
彼はその女性ともう少し話をしたかったが、
「ここから目的の街までは400キロはあるし、徒歩か自転車でしか行けないからなるべく急いでね。
車やバイクはたとえ使えたとしても、道路には車が乗り捨てられてたり、死体が転がっていたりして、まともに走れないから。
あなたがちゃんとたどり着けることを祈ってるわ」
そう言うと、夜の闇の中に女性は消えてしまった。
翌朝の日の出から、イズモは雨野市に向かって歩き始めた。
4年間まともに食事をとっていなかった体は、体力や筋力が相当衰えており、1日に歩ける時間も距離も少なかった。筋肉痛も酷かった。
歩き始めてから2週間が過ぎた頃、1週間程前のことだろうか。
イズモが、東京から雨野市まで徒歩で歩いている途中、道路に転がっていた死体から何やら音声が聞こえてきた。
彼はその死体に駆け寄り、音声の出所を探すと、その死体が持っていたスマホだった。
電話をかけることもインターネットに接続することもできなくなったスマホをいまだに持ち歩く人もいるんだなと思った。彼にはわからない感情だったが、家族や友人、恋人との思い出が写真や動画として記録されていたからかもしれない。
そのスマホは、充電はゼロパーセントで、電波もまったく受信できていないというのに、映像が映し出されていた。
アリステラ王国という聞いたこともない国の女王を名乗る、彼と同い年くらいの少女といっしょに、あのときの女性が映っていたのを見た。
その映像の中で語られた内容は、イズモには到底理解できないものばかりであったが、4年前か、それ以前から始まっていた疫病や天変地異を引き起こしていたのは、その女王やあのときの女性だったのだと彼は知った。
あんなに優しくしてくれたのに、と裏切られた気持ちになった。
だが同時に、自分に話してくれたことは、予言や妄言などではなかったのだと気づいた。
天変地異を引き起こしている張本人だからこそ、いつ日本に巨大地震が起き、その結果日本がどうなってしまうのか知っていたのだ。
そして、この女性は、その理由こそわからないものの、自分を天変地異から守ろうとしてくれているのだとわかった。
だから、頑張れた。
正直、体はとうに限界を迎えていて、諦めかけていたところだった。
だが、400キロ離れたこの街まで歩いてこれた。
一度部屋に戻って休もう。ベッドで眠るなんて四年ぶりなのだから。
それに冷凍庫には冷凍食品が山ほどあった。まともな食事を摂るのも4年ぶりのことだった。
イズモは部屋に戻り食事を摂ると、あの女性のことを想いながらベッドで眠りについた。
イズモが産まれる何年か前にも東北で大きな地震があったという。
だが、ある日突然見知らぬ女性が自分の前に現れ、地震発生の日時を予言した上に、中部地方のある地方都市に行けば地震からも津波からも免れられるなんて言われて、はいそうですか、と素直に信じる者がいるだろうか。いたらそいつは新興宗教やマルチ商法にすぐ引っ掛かってしまうだろう。
指定された地方都市が、4年前から一年中雨が降り続けている街でなかったら、行ってみようという気にはならなかっただろう。
そういう噂を聞いたことがあり、きっとただの都市伝説だろうと思っていたが、実際にその目で確かめてみたくなったのだ。
もしかしたら、そんなのはとってつけた理由に過ぎなかったのかもしれない。
自分に生まれてはじめて優しくしてくれた女性の言葉を、簡単には信じられないが、もしかしたら彼は信じたかったのかもしれなかった。
「そのメモのマンションの18階の部屋は、何年も前にわたしが買ったけど、一度も使っていない部屋なの。これから使う予定もないから安心して好きなように使って」
そのマンションは外壁がすべてソーラーパネルになっており、この災厄の時代でも最低限の電気が使えるということだった。
屋上には雨水を貯める貯水タンクとろ過装置がついており、一年中雨が降り続けるその街では飲み水に困らないどころか、シャワーを浴びることもできるという。
「ひとつ上の19階と最上階の20階に人は住んでいるみたいだけど、それ以外の階の住人は餓死したり、街に出掛けたときに暴徒に襲われたりして死んでしまったりして、もうほとんどいないから」
女性はそんなことも言った。
彼はその女性ともう少し話をしたかったが、
「ここから目的の街までは400キロはあるし、徒歩か自転車でしか行けないからなるべく急いでね。
車やバイクはたとえ使えたとしても、道路には車が乗り捨てられてたり、死体が転がっていたりして、まともに走れないから。
あなたがちゃんとたどり着けることを祈ってるわ」
そう言うと、夜の闇の中に女性は消えてしまった。
翌朝の日の出から、イズモは雨野市に向かって歩き始めた。
4年間まともに食事をとっていなかった体は、体力や筋力が相当衰えており、1日に歩ける時間も距離も少なかった。筋肉痛も酷かった。
歩き始めてから2週間が過ぎた頃、1週間程前のことだろうか。
イズモが、東京から雨野市まで徒歩で歩いている途中、道路に転がっていた死体から何やら音声が聞こえてきた。
彼はその死体に駆け寄り、音声の出所を探すと、その死体が持っていたスマホだった。
電話をかけることもインターネットに接続することもできなくなったスマホをいまだに持ち歩く人もいるんだなと思った。彼にはわからない感情だったが、家族や友人、恋人との思い出が写真や動画として記録されていたからかもしれない。
そのスマホは、充電はゼロパーセントで、電波もまったく受信できていないというのに、映像が映し出されていた。
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その映像の中で語られた内容は、イズモには到底理解できないものばかりであったが、4年前か、それ以前から始まっていた疫病や天変地異を引き起こしていたのは、その女王やあのときの女性だったのだと彼は知った。
あんなに優しくしてくれたのに、と裏切られた気持ちになった。
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そして、この女性は、その理由こそわからないものの、自分を天変地異から守ろうとしてくれているのだとわかった。
だから、頑張れた。
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一度部屋に戻って休もう。ベッドで眠るなんて四年ぶりなのだから。
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イズモは部屋に戻り食事を摂ると、あの女性のことを想いながらベッドで眠りについた。
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