ひとりの少女を守るために70億の命を犠牲になんてできないから、ひとりの少女を犠牲にしてみた結果、事態がさらに悪化した件。

あめの みかな

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第9話 第6話

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 台風の目の中で、キャッスルチャリオットの最上部が切り離され、超巨大台風よりもさらに高い高度に打ち上げられたのが、気象衛星の映像から確認できた。
 打ち上げられた最上部は、空中で8つに分離し、その姿を戦艦のような形に変えた。

「やはり、飛翔艇オルフェウスも再現していたのですのね」

 それらのうちの2機は、ロシアや中国に向かい、その他はヨーロッパやアフリカ、アメリカ、南アメリカ、オーストラリア、そして南極へと向かっていった。

「南極に向かっても意味がないと思うけど。南極調査隊とか南極料理人ももういないでしょ?」

「永久凍土を溶かして、世界中に大洪水を引き起こすつもりなんだろう。あの氷の中には未知のウィルスも眠ってる」

「それはちょっと困るね。レインさん、アリステラには核兵器みたいなものもあるの?」

「あれは、20世紀初頭のこの世界にはエーテルが存在しなかったため、アリステラの民の末裔であるヤルダバ人の科学者たちが、アリステラの魔法(エーテライズ)を模して作ったものに過ぎませんわ」

 それはつまり核兵器とは異なるが、同等かそれ以上の大量破壊兵器が存在していたということだった。

「アリステラにはかつて『エーテリオン』という大量破壊魔法が存在しました。
 アリステラの父・ブライと、第43代女王ステラの妹である大賢者ピノアにしか使えなかった魔法ですが」

 まだアリステラが、地球からはるか遠く離れた惑星に存在していた時代の魔法だという。

 エーテルは、この世界において、アリステラと共に転移してきたもの以外は存在しなかったか、いまだ発見されていないだけであり、アリステラが存在した世界では酸素や水素と同じように、万物の根源をなす究極的要素である元素のひとつに過ぎなかったという。
 アリステラでは、エーテライズによって、エーテルの原子核をあえて不安定な状態にし、自発的に分裂するようにすることで電力や電波に変えており、その応用としてブライが産み出した大量破壊魔法がエーテリオンであり、ピノアが産み出したそれ以上の破壊力を持つ魔法が『サンドリオン』と呼ばれていたという。

 小久保ハルミが千年細胞から作り出し、今この世界の大気中に存在するエーテルは、エーテライズによってあえて不安定な状態にしなくとも電力や電波として大気中に存在するだけで扱うことができた。
 だからレインは、ハルミが作り出したエーテルをまがい物と呼んでいたようだ。

「そのエーテリオンやサンドリオンという魔法は、この世界でいう、超ウラン元素とかの不安定な原子核を自発的に分裂させた、プルトニウム240を使った核兵器に似てるな」

 先ほどレインが言ったように、ヤルダバの科学者たちが似せて作ったのだから、彼女にしてみれば当然のことだっただろう。

 ハルミならば、エーテリオンを再現することはおそらく容易いだろう。彼女自身がエーテルの扱いに長けているとは思えないが、科学的なアプローチで再現することはできるはずだ。
 もっとも、プルトニウム240による核兵器の製造は技術的には不可能ではないが、非常に困難であるとされており、核兵器本来の爆発力が発揮されない形の核爆発である不完全核爆発を起こしかねないように、ハルミのまがい物のエーテルではエーテリオンの完全再現はできないような気もした。

「純正のエーテルを用いたエーテリオンには、大陸ひとつを簡単に吹き飛ばしかねない破壊力がありました」

 ぞっとした。
 そんなものをたとえ不完全な再現であったとしても南極に撃ち込まれでもしたら、永久凍土など簡単に溶けてしまうだろう。

「あんたはそれを相殺したりできないのか?」

「わたくしの頭の中には大賢者ピノアの知識や記憶、経験がありますから、エーテリオンやサンドリオンを再現すること自体は可能です」

「再現することはできるが、まがい物のエーテルで、女王となる資格すら持たない者が行うエーテリオンに一体どれだけの威力があるかわからない、か」

「ええ、相殺するどころか、わたくしのエーテリオンが南極大陸を破壊してしまいかねませんわ」

 エーテリオンを撃たせる前に、新生アリステラ自体を壊滅させるしか、もはや世界の滅亡を止めるすべはないような気がした。

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