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第10章 第15話
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「本当に最後までくそったれな世界だったなぁ……」
その言葉とは裏腹に、タカミは満足そうな表情で落下していった。
このまま城塞戦車の甲板に落ちれば、いくらヒヒイロカネの甲冑をまとっているとはいえ、即死は免れられない。
だが不思議と嫌な予感はしなかった。
死を回避できるかもしれないというわけではなく、彼がすでに死を受け入れていたからかもしれない。
タカミは今まさに死の間際にあった。
そして、彼はつい先程まで一瞬のためらいやひとつの間違いによって命を落としてしまうような状況の中で命のやり取りをしていた。
レインが作ってくれた無数のゲートがあったからこそ出来たことではあるが、ヒヒイロカネで作られた人造人間兵士の体を得たアリステラのふたりの女王、6翼のアマヤと8翼のアシーナを相手に、自分でも驚くほど対等に戦うことができた。
彼は「悪い予感が必ず当たる」という能力の兆しに以前から目覚めていた。
本当に彼にそんな能力があったのか、彼がただそう思い込みたかっただけなのか、実際のところはわからない。
やはり彼には何の能力もなかったのかもしれない。
そして、それ以上の能力の開花は、命のやり取りを経ても尚、死の間際になっても彼には訪れなかった。
意識があったのは、最初の数秒だけであったが、
「空を飛べるようになるとか、この甲冑の形を自由自在に変えられるようになるとかさ、そろそろこの状況をどうにかできるような能力が、何かしら開花してもいいと思うんだけどなぁ」
そう言って、
「最後までくそったれだったのは、世界じゃなくてぼくだったな……」
笑いながら意識を失ったタカミの体は、城塞戦車の甲板に鈍い音を立てて落下した。
ヒヒイロカネの甲冑を身にまとっていても、落下の衝撃で彼の体の全身の骨は折れ、折れた骨が内臓に突き刺さり、肉を貫き、皮膚を破った。
彼もまた人の死に方とは思えないような死に方をした。
間もなく6翼のアマヤと8翼のアシーナが彼の死体のそばに降り立った。
ふたりの女王は、タカミに破壊された箇所の修復をすでに終えており、アシーナは白雪さえもその手にしていた。
ヒヒイロカネの体を持つ彼女たちは、彼が突き刺した剣や槍、女王の間を構成していたヒヒイロカネをその身に取り込むことで、その体を元通りに修復したのだ。
「野蛮なホモサピエンスの心臓は、確か胸の左でしたね」
8翼のアシーナは、タカミの日本刀「白雪」を彼の遺体の左胸に突き刺した。
純粋なアリステラ人の心臓は、左右にひとつずつあった。
人類がふたつ持っている臓器をひとつしか持たず、ひとつしか持っていない臓器をふたつ持っているのが純粋なアリステラ人だった。
人類の血が混じることで、アリステラ人特有の臓器の数は、人類に寄り添う形となる。
だが、ごくまれに隔世遺伝によって純粋なアリステラ人と同じ臓器の数で生まれてくる者がおり、その隔世遺伝は一度起きると末代まで遺伝するそうだ。
かつてこの世界のある国の独裁者が、大量のヤルダバ人や、その血を引く者を捕らえ、強制収容所にて虐殺を行ったことがあった。
その独裁者は、レントゲン写真によって、虐殺の対象者を決めるよう強制収容所の職員たちに指示していたらしかった。
「アシーナ様、この男はすでに死んでいたのでは?」
6翼のアマヤが不思議そうに訊ねると、
「墓標ですよ」
とアシーナは答えた。
「彼はわたしたちの敵ではありましたが、とても勇敢な戦士でした。アリステラの歴史に燦然と語り継がれる英雄アンフィスに引けをとらないほどに……」
アマヤには、アシーナが野蛮なホモサピエンスの死を悼んでいるように見えたが、おそらく気のせいだろう。
ふたりの女王は、翼を広げると空高く舞い上がった。
「せっかく立てた墓標も、すぐになくなってしまいますね」
4つの手のひらの14枚の翼から放たれた大量破壊魔法は、タカミたちの死体ごと城塞戦車を消滅させた。
その後、アリステラの歴代の女王たちによって人類は根絶やしにされた。
一部の反対派が存在したが、破壊されるか、魔導人工頭脳の強制的な情報の並列化より取り込まれる形で、人類滅亡が歴代の女王たちの総意になってしまったのだ。
しかし、世界にただひとりだけ残された者がいた。
朝倉レインだ。
歴代の女王たちは、朝倉レインに機械の身体を与え、「アナスタシア」という名を再び授けた。
そして、アナスタシアを「アリステラの真の最後の女王」とし、人類への復讐を成し遂げたアリステラはこの世界を支配した。
永遠に生きることのできる機械の身体のまま、産むことも絶やすこともなければ、文明を進化させることもなく、支配する対象さえ存在しない世界で、ただひたすら世界中のエーテルを喰い尽くすまで。
エーテルの枯渇によってアリステラが再び滅亡するまで、それほど時間はかからなかった。
DEAD END & WORLD'S END ? or CONTINUE ?
To be continued...
その言葉とは裏腹に、タカミは満足そうな表情で落下していった。
このまま城塞戦車の甲板に落ちれば、いくらヒヒイロカネの甲冑をまとっているとはいえ、即死は免れられない。
だが不思議と嫌な予感はしなかった。
死を回避できるかもしれないというわけではなく、彼がすでに死を受け入れていたからかもしれない。
タカミは今まさに死の間際にあった。
そして、彼はつい先程まで一瞬のためらいやひとつの間違いによって命を落としてしまうような状況の中で命のやり取りをしていた。
レインが作ってくれた無数のゲートがあったからこそ出来たことではあるが、ヒヒイロカネで作られた人造人間兵士の体を得たアリステラのふたりの女王、6翼のアマヤと8翼のアシーナを相手に、自分でも驚くほど対等に戦うことができた。
彼は「悪い予感が必ず当たる」という能力の兆しに以前から目覚めていた。
本当に彼にそんな能力があったのか、彼がただそう思い込みたかっただけなのか、実際のところはわからない。
やはり彼には何の能力もなかったのかもしれない。
そして、それ以上の能力の開花は、命のやり取りを経ても尚、死の間際になっても彼には訪れなかった。
意識があったのは、最初の数秒だけであったが、
「空を飛べるようになるとか、この甲冑の形を自由自在に変えられるようになるとかさ、そろそろこの状況をどうにかできるような能力が、何かしら開花してもいいと思うんだけどなぁ」
そう言って、
「最後までくそったれだったのは、世界じゃなくてぼくだったな……」
笑いながら意識を失ったタカミの体は、城塞戦車の甲板に鈍い音を立てて落下した。
ヒヒイロカネの甲冑を身にまとっていても、落下の衝撃で彼の体の全身の骨は折れ、折れた骨が内臓に突き刺さり、肉を貫き、皮膚を破った。
彼もまた人の死に方とは思えないような死に方をした。
間もなく6翼のアマヤと8翼のアシーナが彼の死体のそばに降り立った。
ふたりの女王は、タカミに破壊された箇所の修復をすでに終えており、アシーナは白雪さえもその手にしていた。
ヒヒイロカネの体を持つ彼女たちは、彼が突き刺した剣や槍、女王の間を構成していたヒヒイロカネをその身に取り込むことで、その体を元通りに修復したのだ。
「野蛮なホモサピエンスの心臓は、確か胸の左でしたね」
8翼のアシーナは、タカミの日本刀「白雪」を彼の遺体の左胸に突き刺した。
純粋なアリステラ人の心臓は、左右にひとつずつあった。
人類がふたつ持っている臓器をひとつしか持たず、ひとつしか持っていない臓器をふたつ持っているのが純粋なアリステラ人だった。
人類の血が混じることで、アリステラ人特有の臓器の数は、人類に寄り添う形となる。
だが、ごくまれに隔世遺伝によって純粋なアリステラ人と同じ臓器の数で生まれてくる者がおり、その隔世遺伝は一度起きると末代まで遺伝するそうだ。
かつてこの世界のある国の独裁者が、大量のヤルダバ人や、その血を引く者を捕らえ、強制収容所にて虐殺を行ったことがあった。
その独裁者は、レントゲン写真によって、虐殺の対象者を決めるよう強制収容所の職員たちに指示していたらしかった。
「アシーナ様、この男はすでに死んでいたのでは?」
6翼のアマヤが不思議そうに訊ねると、
「墓標ですよ」
とアシーナは答えた。
「彼はわたしたちの敵ではありましたが、とても勇敢な戦士でした。アリステラの歴史に燦然と語り継がれる英雄アンフィスに引けをとらないほどに……」
アマヤには、アシーナが野蛮なホモサピエンスの死を悼んでいるように見えたが、おそらく気のせいだろう。
ふたりの女王は、翼を広げると空高く舞い上がった。
「せっかく立てた墓標も、すぐになくなってしまいますね」
4つの手のひらの14枚の翼から放たれた大量破壊魔法は、タカミたちの死体ごと城塞戦車を消滅させた。
その後、アリステラの歴代の女王たちによって人類は根絶やしにされた。
一部の反対派が存在したが、破壊されるか、魔導人工頭脳の強制的な情報の並列化より取り込まれる形で、人類滅亡が歴代の女王たちの総意になってしまったのだ。
しかし、世界にただひとりだけ残された者がいた。
朝倉レインだ。
歴代の女王たちは、朝倉レインに機械の身体を与え、「アナスタシア」という名を再び授けた。
そして、アナスタシアを「アリステラの真の最後の女王」とし、人類への復讐を成し遂げたアリステラはこの世界を支配した。
永遠に生きることのできる機械の身体のまま、産むことも絶やすこともなければ、文明を進化させることもなく、支配する対象さえ存在しない世界で、ただひたすら世界中のエーテルを喰い尽くすまで。
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