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「カイト兄上…まずは謝罪を。今までごめんなさい!」
入って来た瞬間に勢い良く頭下げやがった。しかも俺の食事の乗ったトレーは溢れないように綺麗に保たれたままだ。
器用な奴だな…じゃなくて!
「えぇっ!ちょっ…顔あげてよ!俺は何もリエルに対して怒ってないからね」
驚きすぎて思いっきり素が出てしまったんだが!
俺が驚いたのは急に頭を下げてきたのもあるがリエルが頭を下げたことだ。
この世界にはもちろんだが土下座なんていうものは存在しない。だから、頭を下げるというのが最敬礼なのだ。
その最敬礼を次期魔王のリエルが出来損ないの兄に対してしたのだ。この世界においてそんな光景を見たのは俺だけだと思う。
日本人として生きていた前世がある俺は耐性があるから、素が出た程度で済んだが他の人が見ていたら驚きのあまり心臓発作で倒れていただろう。
そのくらい驚きの光景だ。
「謝罪は受け取ってくれない?」
リエルよ!なんだその今にも涙が溢れますって言う目は…そんなのずるい!かわいい、許す!!
「うぐぅっ…謝罪は受け取ろう。だが、いろいろ説明して欲しいのだが?」
リエルは花でも出せる魔法があるのか?顔の周りに花が舞っててさらに眩しくて見えないんだが…美形って恐ろしい。
「ありがとう、カイト兄上!もちろんお話するから食べながら聞いてね」
「あぁ、助かる」
食事を俺に渡したリエルはベット横の椅子に座った。
「まずは…カイト兄上を助けることができなかったのは、あなたに対して負の感情を抱く奴らを排除するためなんだ。
これまであなたを避けてきたのは私たちが敵対していた方が排除しやすかったから。そして今回、やっと排除できたよ。
今まで悲しい思いさせてごめんね。」
そういうことだったのか…徹底的に俺を避けてきた父と弟。だけど、他の奴らみたいに俺に対して嫌悪感を抱いている感じはなかった。むしろ、リエルはたまに切なげにこっちを見てきていたのが気になっていた。
だけど…だけどなんで……
「なんで…俺には何も言ってくれなかったんだ。お前にとってはたかが13年と思うかもしれない。だけど、俺にとったら辛くて長い時間だった。
そんなに信用がなかったのか?っつ…俺が……俺が出来損ないだから……計画をめちゃくちゃにされると思って…一言も言ってくれなかったのか?」
止めようと思っても、なかなか涙は止まってくれなかった。話しているうちに悲しみが積もっていった。
「それは違う!カイト兄上は出来損ないなんかじゃない」
突然視界が闇に覆われ、悲しみから急激に体温が低下していた身体が温もりに包まれた。
「…り、える……?」
「カイト兄上に話さなかったのは、誰が敵かも分からない中伝えれなかったのもある。そしてなにより、一度あなたに近づいたらもう離れられなくなると思ったからなんだ。」
せめて、母が死んだときだけは近くにいてほしかった。それは無理だと今なら分かるけど…唯一、俺に温もりというものを教えてくれていた人。その人が突然いなくなった悲しみはまだ心の中に残っていた。
『あなたは私のかわいい子よ。誰が何と言っても…』
『あら?自分の髪と目が嫌いなの?私は大好きよ!だって、私とお揃いだもの』
いつだって優しい言葉をくれた。とても大切にされていると感じていた。
それに、何が離れたくなくなると思ったからだ!
「何人敵がいようとお前には…家族には、側にいてほしかった。もうこれ以上家族を失いたくないんだよ。お前なら分かるだろ?」
「そうだよね…母上が亡くなったとき側にいられなくてごめんね。もうこれからはずっと一緒にいるからね」
リエルにずっと一緒にいると言われて心を占めていた悲しいという感情がどんどんなくなっていくのを感じた。
そして、徐々にリエルに抱きしめられているという状況に羞恥心が湧いてきた。
「…わ、分かったならもういい。お前はやることがあるだろ?俺は食事をとるからお前はやることをしてこい」
「ふふっ、そうだね…少し行ってくるね」
リエルは俺から離れ部屋から出ていこうとしていた。
「リ、リエル!何か欲しいものはあるか?……あぁー、あれだあれ。そのー、お礼だ。今まで俺のために何かいろいろしてくれたみたいだから」
これからもっと仲良くしたいと思うからっていうのは秘密だ。そんなの言ったら恥ずかしすぎて気絶する!
「お礼なんていいのに…そうだなー、しいて言うなら…兄上かな…?」
……えっ?……はっ??
「…………なーんてね、冗談だよ。カイト兄上から貰えるものならなんでも嬉しいよ!」
や、やめろよ!ガチかと思ってしまった俺が恥ずかしいわ。冗談がキツすぎて兄として不安になるぞ!これ以上人を魅了してどうする!
「そ、そうか。何か考えておく」
「ありがとう、カイト兄上。そうだ、言い忘れてたけど父上と一度話してやって?…あの人はカイト兄上が思っているよりもだいぶ不器用な人なんだ」
「分かった」
そうは言ったものの俺がお願いしたところで父上は俺に会ってくれるとは思わないがな。何せ魔王としての仕事で日々忙しいお方だ。
「じゃあ後でね、カイト兄上。」
「あぁ、またな」
何気にこういう『後でね』とかいう言葉が好きだったりする。またすぐに会える気がするからだ。
今まで離れていた距離をこれからつめていきたい。ひとまずは弟への贈りものを考えることだな。
入って来た瞬間に勢い良く頭下げやがった。しかも俺の食事の乗ったトレーは溢れないように綺麗に保たれたままだ。
器用な奴だな…じゃなくて!
「えぇっ!ちょっ…顔あげてよ!俺は何もリエルに対して怒ってないからね」
驚きすぎて思いっきり素が出てしまったんだが!
俺が驚いたのは急に頭を下げてきたのもあるがリエルが頭を下げたことだ。
この世界にはもちろんだが土下座なんていうものは存在しない。だから、頭を下げるというのが最敬礼なのだ。
その最敬礼を次期魔王のリエルが出来損ないの兄に対してしたのだ。この世界においてそんな光景を見たのは俺だけだと思う。
日本人として生きていた前世がある俺は耐性があるから、素が出た程度で済んだが他の人が見ていたら驚きのあまり心臓発作で倒れていただろう。
そのくらい驚きの光景だ。
「謝罪は受け取ってくれない?」
リエルよ!なんだその今にも涙が溢れますって言う目は…そんなのずるい!かわいい、許す!!
「うぐぅっ…謝罪は受け取ろう。だが、いろいろ説明して欲しいのだが?」
リエルは花でも出せる魔法があるのか?顔の周りに花が舞っててさらに眩しくて見えないんだが…美形って恐ろしい。
「ありがとう、カイト兄上!もちろんお話するから食べながら聞いてね」
「あぁ、助かる」
食事を俺に渡したリエルはベット横の椅子に座った。
「まずは…カイト兄上を助けることができなかったのは、あなたに対して負の感情を抱く奴らを排除するためなんだ。
これまであなたを避けてきたのは私たちが敵対していた方が排除しやすかったから。そして今回、やっと排除できたよ。
今まで悲しい思いさせてごめんね。」
そういうことだったのか…徹底的に俺を避けてきた父と弟。だけど、他の奴らみたいに俺に対して嫌悪感を抱いている感じはなかった。むしろ、リエルはたまに切なげにこっちを見てきていたのが気になっていた。
だけど…だけどなんで……
「なんで…俺には何も言ってくれなかったんだ。お前にとってはたかが13年と思うかもしれない。だけど、俺にとったら辛くて長い時間だった。
そんなに信用がなかったのか?っつ…俺が……俺が出来損ないだから……計画をめちゃくちゃにされると思って…一言も言ってくれなかったのか?」
止めようと思っても、なかなか涙は止まってくれなかった。話しているうちに悲しみが積もっていった。
「それは違う!カイト兄上は出来損ないなんかじゃない」
突然視界が闇に覆われ、悲しみから急激に体温が低下していた身体が温もりに包まれた。
「…り、える……?」
「カイト兄上に話さなかったのは、誰が敵かも分からない中伝えれなかったのもある。そしてなにより、一度あなたに近づいたらもう離れられなくなると思ったからなんだ。」
せめて、母が死んだときだけは近くにいてほしかった。それは無理だと今なら分かるけど…唯一、俺に温もりというものを教えてくれていた人。その人が突然いなくなった悲しみはまだ心の中に残っていた。
『あなたは私のかわいい子よ。誰が何と言っても…』
『あら?自分の髪と目が嫌いなの?私は大好きよ!だって、私とお揃いだもの』
いつだって優しい言葉をくれた。とても大切にされていると感じていた。
それに、何が離れたくなくなると思ったからだ!
「何人敵がいようとお前には…家族には、側にいてほしかった。もうこれ以上家族を失いたくないんだよ。お前なら分かるだろ?」
「そうだよね…母上が亡くなったとき側にいられなくてごめんね。もうこれからはずっと一緒にいるからね」
リエルにずっと一緒にいると言われて心を占めていた悲しいという感情がどんどんなくなっていくのを感じた。
そして、徐々にリエルに抱きしめられているという状況に羞恥心が湧いてきた。
「…わ、分かったならもういい。お前はやることがあるだろ?俺は食事をとるからお前はやることをしてこい」
「ふふっ、そうだね…少し行ってくるね」
リエルは俺から離れ部屋から出ていこうとしていた。
「リ、リエル!何か欲しいものはあるか?……あぁー、あれだあれ。そのー、お礼だ。今まで俺のために何かいろいろしてくれたみたいだから」
これからもっと仲良くしたいと思うからっていうのは秘密だ。そんなの言ったら恥ずかしすぎて気絶する!
「お礼なんていいのに…そうだなー、しいて言うなら…兄上かな…?」
……えっ?……はっ??
「…………なーんてね、冗談だよ。カイト兄上から貰えるものならなんでも嬉しいよ!」
や、やめろよ!ガチかと思ってしまった俺が恥ずかしいわ。冗談がキツすぎて兄として不安になるぞ!これ以上人を魅了してどうする!
「そ、そうか。何か考えておく」
「ありがとう、カイト兄上。そうだ、言い忘れてたけど父上と一度話してやって?…あの人はカイト兄上が思っているよりもだいぶ不器用な人なんだ」
「分かった」
そうは言ったものの俺がお願いしたところで父上は俺に会ってくれるとは思わないがな。何せ魔王としての仕事で日々忙しいお方だ。
「じゃあ後でね、カイト兄上。」
「あぁ、またな」
何気にこういう『後でね』とかいう言葉が好きだったりする。またすぐに会える気がするからだ。
今まで離れていた距離をこれからつめていきたい。ひとまずは弟への贈りものを考えることだな。
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