転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃

文字の大きさ
25 / 42

20

しおりを挟む
「失礼致します」

「どうぞ」

…えっ、ちょっま、まって。

「おい、リエル。まさかこのまま入るつもりか?」

俺はまだリエルに抱えられたままだ。父上もこの様子にだいぶ慣れてきただろうとは思うものの、さすがにこれで入室は失礼な気がする。…って思ってたんだが、何でお前は何言ってんの?みたいな不思議そうな顔で首を傾げて此方を見てるんだ。

「降ろしたらカイト兄上歩けないでしょ?きっと父上も分かってるよ」

確かに俺はまともには歩けないし、父上は優しいから許してくれるだろうけど…問題は父上の側近達だろう。話したことはないし、どんな人かは知らない。だけど、だからこそ礼儀知らずとかいう印象はつけられたくない…なんて、うんうん唸っていたのだが、リエルが痺れを切らした……ぬーん。

「入るからね、カイト兄上」

ところが、待ちうけていたのは厳しい視線ではなく優しい視線だった。まあ、流石に俺は怪我人だしな。

((((お2人が仲良しでなによりだ。今日も平和が保たれてる…))))
リエルが思っている視線とは少し違う視線だった。

「お久しぶりです、父上。目を覚まされて本当によかったです。」

リエルが挨拶をしている間、父上をじっと見ていた訳だが、また涙がこみ上げてきた。グッと何とか堪えられたが危なかった…

「ーー父上。本当に…本当によかった」

またこうやって3人で集まれた…勇者が現れたとき、父上が倒れたとき。やっぱり不安というか父上ともう会えないかもという思いが何度もよぎった…本当によかった。

「カイト、リエル。本当に迷惑をかけた。特にカイト…お前が私を助けようとしなかったら、私は此処にいなかった。本当にありがとう」

やっぱりこうやってお礼を言われると照れ臭いな。

「父上を助けられてよかったです」

普段無表情を貫いている俺でも頬がどうしても緩んでしまった。やっぱり偉大なる魔王様の父上にお礼を言われるのは嬉しい。

「…御歓談中のところ申し訳ございません。もうそろそろ休まれませんと…」

「いや、もう少しだ「ダメです」…」

父上が拗ねている顔をしている。きっと長い付き合いなんだろうな。そんな顔見たことなかった。
…さあ、そろそろお暇するか。父上は目覚めたとは言え、魔力がだいぶ減っている状況だ。なので、ベッドから起き上がることができない。
俺は治癒魔法の副作用のせいだから、明日には身体は自由になっていると思う。だが父上は、魔力がないせいで身体が動かない…ということは、動けるようになるのには1ヶ月くらいかかるだろうとリエルが言っていた。

「では、父上また明日」
「また来ますね、父上。」

俺たちには、また明日がある。それが当たり前ではなく、幸せなことであると改めて分かった。

「あぁ、またな……ちょっと待ってくれ」

お別れだとリエルが扉に向かって歩き出そうとしていたところ、父上に止められた。

「リエル、私たちはお前を応援することにした」

何のこと?って思ってると、父上の側近たちも首を縦に振った。どうやら、父上とその側近たちはリエルの何かを応援をしているらしい。

「本当ですか!」

リエルの目が輝き出した。何かよく分からないが、よかったな。

「あぁ、頑張れよ」

何かよく分からないが、頑張れよ。

「ありがとうございます!」

そこで俺たちは父上の寝室を退出した。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

悪辣と花煙り――悪役令嬢の従者が大嫌いな騎士様に喰われる話――

BL
「ずっと前から、おまえが好きなんだ」 と、俺を容赦なく犯している男は、互いに互いを嫌い合っている(筈の)騎士様で――――。 「悪役令嬢」に仕えている性悪で悪辣な従者が、「没落エンド」とやらを回避しようと、裏で暗躍していたら、大嫌いな騎士様に見つかってしまった。双方の利益のために手を組んだものの、嫌いなことに変わりはないので、うっかり煽ってやったら、何故かがっつり喰われてしまった話。 ※ムーンライトノベルズでも公開しています(https://novel18.syosetu.com/n4448gl/)

弟がガチ勢すぎて愛が重い~魔王の座をささげられたんだけど、どうしたらいい?~

マツヲ。
BL
久しぶりに会った弟は、現魔王の長兄への謀反を企てた張本人だった。 王家を恨む弟の気持ちを知る主人公は死を覚悟するものの、なぜかその弟は王の座を捧げてきて……。 というヤンデレ弟×良識派の兄の話が読みたくて書いたものです。 この先はきっと弟にめっちゃ執着されて、おいしく食われるにちがいない。

俺は勇者のお友だち

むぎごはん
BL
俺は王都の隅にある宿屋でバイトをして暮らしている。たまに訪ねてきてくれる騎士のイゼルさんに会えることが、唯一の心の支えとなっている。 2年前、突然この世界に転移してきてしまった主人公が、頑張って生きていくお話。

記憶喪失になったら弟の恋人になった

天霧 ロウ
BL
ギウリは種違いの弟であるトラドのことが性的に好きだ。そして酔ったフリの勢いでトラドにキスをしてしまった。とっさにごまかしたものの気まずい雰囲気になり、それ以来、ギウリはトラドを避けるような生活をしていた。 そんなある日、酒を飲んだ帰りに路地裏で老婆から「忘れたい記憶を消せる薬を売るよ」と言われる。半信半疑で買ったギウリは家に帰るとその薬を飲み干し意識を失った。 そして目覚めたときには自分の名前以外なにも覚えていなかった。 見覚えのない場所に戸惑っていれば、トラドが訪れた末に「俺たちは兄弟だけど、恋人なの忘れたのか?」と寂しそうに告げてきたのだった。 トラド×ギウリ (ファンタジー/弟×兄/魔物×半魔/ブラコン×鈍感/両片思い/溺愛/人外/記憶喪失/カントボーイ/ハッピーエンド/お人好し受/甘々/腹黒攻/美形×地味)

【完結済み】準ヒロインに転生したビッチだけど出番終わったから好きにします。

mamaマリナ
BL
【完結済み、番外編投稿予定】  別れ話の途中で転生したこと思い出した。でも、シナリオの最後のシーンだからこれから好きにしていいよね。ビッチの本領発揮します。

雪解けに愛を囁く

ノルねこ
BL
平民のアルベルトに試験で負け続けて伯爵家を廃嫡になったルイス。 しかしその試験結果は歪められたものだった。 実はアルベルトは自分の配偶者と配下を探すため、身分を偽って学園に通っていたこの国の第三王子。自分のせいでルイスが廃嫡になってしまったと後悔するアルベルトは、同級生だったニコラスと共にルイスを探しはじめる。 好きな態度を隠さない王子様×元伯爵令息(現在は酒場の店員) 前・中・後プラスイチャイチャ回の、全4話で終了です。 別作品(俺様BL声優)の登場人物と名前は同じですが別人です! 紛らわしくてすみません。 小説家になろうでも公開中。

悪い兄は弟の命令通りに身をくねらせる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

救世の神子として異世界に召喚されたと思ったら呪い解除の回復アイテムだった上にイケメン竜騎士のツガイにされてしまいました。

篠崎笙
BL
剣崎勝利の家は古武道で名を馳せていた。ある日突然異世界に召喚される。勇者としてではなく、竜騎士たちの呪いを解く道具として。竜騎士ゲオルギオスは、勝利をツガイにして、その体液で呪いを解いた。勝利と竜騎士たちは悪神討伐の旅へ向かったが……。 

処理中です...