断罪されるはずの推し(悪役令息)を、俺が全力で幸せにしてみせます

月乃

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無事を願い

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 ウィルと共にフィルの部屋を飛び出した俺は、ライオネル殿下とヘドワートに簡潔に書いた手紙を家令に託した。殿下とヘドワートはフィルを助ける手立てを用意してくれるだろう。
 しかし、一刻を争う事態に、俺は助っ人の到着を待つことができなかった。


「ウィル!もう待てない。二人で行こう!何かあったら俺が護るから!!」


 俺の言葉に、ウィルは震える手で覚悟を決めた顔で頷いた。




 俺たちは、夜道を走り、街外れにある古城へと向かった。
古城の門は、不気味な音を立てて開いていた。

(フィルはもう中に…)

 俺は、ウィルと共に、古城へと足を踏み入れた。
中に入ると、黒いローブを纏った男たちが何人もいた。



「なんだ、貴様らは…」




 男がそう言うと、ウィルが呪文を唱えた。


「光よ、我に力を…ライト・ボール!」


 ウィルの掌から、小さな光の球が放たれ、男に向かって飛んでいく。



「なっ…!」



 男たちは、光の球に驚き、後ずさりした。
その隙に、俺は炎を纏わせた剣で、男たちを薙ぎ倒した。



「ウィル!後ろだ!」



 俺が叫ぶと、ウィルは振り返り、再び光の球を放った。
特訓の成果もあり、俺たちは連携よく、次々と敵を倒していく。
 敵を薙ぎ倒していきながら一つ一つ部屋を探し、ついに最後の一部屋になった時、「貴様ぁ!!いい加減にしろ!!」と、怒声が聞こえてきた。その声に俺は嫌な予感がした。

 俺とウィルは、迷うことなく扉を開けた。

 部屋の中には、数人の男たちと、彼らと睨み合うフィルがいた。そして、一人の男が、フィルに拳を振り上げているところだった。


「フィル!!」



 俺とウィルは、叫びながら、ありったけの魔力で魔術を男に向かって放った。
 ウィルは、特訓で覚えたばかりのライト・スパークを、俺はファイア・ボールを、男に向かってぶっ放した。
 光と炎の魔法は、男と、彼を囲んでいた仲間たちを巻き込み、壁に打ち付けた。



「フィル、大丈夫か?!」



 俺とウィルは、フィルに駆け寄った。フィルの体から力が抜けガクッと崩れ落ちそうになった瞬間、なんとか抱き止めて床にゆっくりと降ろしてやった。
 フィルは、呆然とした表情で俺たちを見ていた。
 俺は、フィルの頬が赤く腫れ、痛々しくなっているのを発見し、胸が締め付けられた。


(くそっ…!もう一発、とどめを入れておこうか…?)


 俺は、あまりの怒りに拳を握りしめたが、まずはフィルの心のケアが大切だと思い直した。
 ウィルが、震える手でフィルの頬に触れた。



「フィル…痛そう…ごめんね、気づくのが遅くなっちゃって」



 ウィルがそう呟くと、ウィルの掌から、温かな光が溢れ出した。
 その光は、フィルの頬を包み込み、フィルの頬の腫れが、みるみるうちに引いていく。


「…っ!治った…!」


 ウィルの放った光は、癒しの魔術だった。
初めての癒しの魔術の成功に、ウィルも、フィルも、そして俺も、驚きで声が出なかった。
その時だった。


「キートオオオ!!!どこだぁ!!!父が助けに来たぞ!!!!」


相変わらずの大声が聞こえてきた。

(あれ、父上は呼んでないはずだけど…)

俺は、最強の助っ人の登場に、少し安堵した。



「父上!ここです!」



俺が声を上げると、バタバタと足音が聞こえ、父上を先頭に、ライオネル殿下とヘドワートが入ってきた。




「「「みんな、無事か!!」」」




三人が焦った顔で部屋に入ってきた。


「よかった、フィルも怪我なさそうだね」


ライオネル殿下が、フィルの顔を見て安堵の表情を浮かべた。


「いや、頬を殴られていたみたいだが、ウィルが癒しの力で治した」



 俺がそう言うと、三人は驚いた顔でウィルを見た。



「そうか、ウィルは癒しの力を発現し、フィルは無事に救出できた…」



 ライオネル殿下がそう呟き、俺たちに近づいてきた。



「遅くなってすまなかった。もう直ぐ騎士団が来るだろう」

「いえ、全然遅くないです。殿下自ら来てくださってありがとうございます。ところで、父上だけ騎士団の方々置いて、先に来られたんですか?」


俺が尋ねると、父上は得意げに胸を張った。



「当たり前だろう!殿下が友達が危険だと言って、殿下は行くべきではないと言っても聞かず駆け出そうとするから…おっと、そろそろ騎士団の方へ合流する。また後でな、キート」




父上はそう言うと、慌ただしく部屋を出ていった。


(やっぱり、殿下は情に熱い男だ…王族としての対応的にいいか分からないが、自ら闘う王族もいたっていいじゃないか)


 俺は、殿下の優しさに胸が熱くなった。
父上と入れ替わるように、フィルが小さな声で呟いた。




「ご、ごめんなさい。みんなに迷惑かけたくなかったのに…結局迷惑をかけて…」


 フィルは、目から大粒の涙を流しながら、俺たちに謝った。

 俺は、思わずそんなフィルを抱きしめた。


「そんなこと言わないでくれ、フィル。迷惑だなんて、誰も思ってない」



俺の言葉に、ウィルも、ライオネル殿下も、ヘドワートも頷き、フィルを囲うようにみんなでフィルを抱きしめた。



「そうだよ、フィル。もし、このままフィルが命を落としていたらと思うと、恐ろしくてたまらない」


ウィルが、震える声で言った。



「フィルは、私たちの大切な友達だ。友達を助けるのは、当然のことだよ」



ライオネル殿下が、優しく言った。



「そうだよ~。僕たちも、フィルに頼られたかったんだからね!」


 ヘドワートが、のんびりとした口調で言った。
みんなの言葉に、フィルはさらに泣き出した。



「ありがとう…。本当に…ありがとう…」



フィルは、涙を拭いながら、俺たちに言った。

「みんなのおかげで、この世界を憎む気持ちが消えて、今回シャドウ・オーダーの誘いを断ることができたんだ」



 俺たちは、肩を寄せ合い、お互いの無事を喜び合った。そして、フィルの無事とフィルの辛い気持ちが減ったことへの喜びを感じていた。





「さっさとこんなとこから出よう!最近みんなで門まで帰れてないからね!」



 ヘドワートの言葉で、しんみりした空気が一変し、みんな笑顔を取り戻した。
 俺たちは、古城の建物を後にし、夜空の下、古城の門へと向かって歩き始めた。
 この日、俺たちの絆は、さらに強固なものへと変わったように感じた。
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