異世界キャンプ チートどころか低スペックのまま転移させられた妖精は楽しい旅にする為にモンスターを美味しく料理してやろうと思います~

綾川鈴鹿

文字の大きさ
32 / 115

6話、デザートフィッシュ(5)“料理パート1”

しおりを挟む
【料理レシピ】『デザートフィッシュ』

[デザートフィッシュの下処理]

①頭を外し、鱗を剥がす。

「頭と鱗は捨てちゃいましょ」
「どうやって?」
「頭はエラごと落として、鱗は逆らう様にナイフで剝がしちゃって」
「なるほどね、こんな感じ?」

 ラーナはリリの持っていたナイフを持ち上げると、すっと頭を落とし、鱗も剥ぎ取る

(わぁお、わたしとは大違いね)

「リリ、これはそのまま捨てちゃうの?」
「流石に捨てるしかないわねー」
「そっかー、残念」

 美味しく無いと言ってはいたが、味は関係なくお腹は空いているらしい。
 ラーナが「残念」と言ってデザートフィッシュの頭を見つめる目は、悲しげであった。

(食べたかったのね……)

 しかし、流石にリリにはモンスターの頭を食べる勇気は、まだ出来ていないのだ。


②骨、内臓を取り除き水で綺麗に洗う

「内臓と頭と骨は捨てていいわ、今回は使えそうにないから」
「三枚に卸せばいいの?」
「えぇ、それでいいわ」
「オッケー」

ラーナが、っあ! っと声を上げたのに反応してリリが聞く。

「どうしたの?」
「っえ? デザートフィッシュは魚じゃなくて、蛇だったんだって思って」
「そうなの?」
「骨の形は蛇だよ? ほらっ」

ラーナはデザートフィッシュを捌きながら指をさす。
 リリがお腹を覗き込むと、そこには中骨ではなく立派な肋骨がズラリと並んでいた。

「ほんとじゃない!」

(やっぱりツチノコだったわ! それより……)

「ラーナー? その手に持っている内臓は、捨てるからね」
「食べられる匂いがするし、もったいないじゃん!」

(また匂い、信用できるのかもしれないけど)

「わたしにモンスターの内臓を食べる勇気はない!」
「ボクが食べるからー、ねぇお願いー」

 可愛くねだるラーナと、頑なにNOを突き付けるリリ、言い争いは数分にも及んだ。

「ダメったらダメー! お腹壊しちゃうわ!」
「えー、本当に……ダメ?」
「どんなに可愛く言ってもダメ!」
「ざんねーん」

 ついにラーナは諦めたのか「じゃあね」と言うと、そのまま深めに掘った地面に埋めた。


”デザートフィッシュの一夜干し“

「下処理も終わったし本格的に作ろっか!」
「やっとだね! 今日は何作るの?」
「干物よっ!」

 Ⅴサインを出し、リリは答える。

「えーー時間かかるじゃん、やめようよー」
「そうは言っても、保存食は重要よ」
「でもさぁー」

 ラーナは納得していないが、リリにはこの反応は予想通り。

「もう一個作るから、今日はそっちよ!」
「んー、ならまぁ……いっか」

 ラーナは納得した、リリの計画通りである。


①開いたデザートフィッシュを串に刺し、塩を強めに振る

「串はこの投げ針でいい? 毒はきれいに拭いてあるから」

 ラーナは、マントから千本のような太く長い針を何本も取り出し聞く。

「ラーナを信じるからね、わたし毒で死ぬのは嫌よ?」
「大丈夫だってー、死にはしないよ」

 ラーナが小さく
「この毒は、せいぜい一日動けなくなるぐらいだし」
 そう呟いた声は、リリの耳までは届いていなかった。

「……わかったわ、じゃあ串をさして塩を塗り込んで貰っていい?」
「まかせてー、まずは岩塩砕かなきゃね」

 慣れた手付きで岩塩を削ると、ラーナは鼻歌交じりで細かくなった塩を塗りこむ。


②デザートフィッシュを焚き火の煙の熱が当たるほどの距離で放置する

「これ、どうやって干せばいいの?」

 ラーナがリリに聞く、風通りは良いが砂漠だと立てかける場所がないからだ。

「焚き火に当てながら、焼干しにしよっか」
「焼き干しって?」

(こっちの世界には無かったかー、まぁ地球でもマイナーだしねー)

「干物っていろんな方法があるのは知ってる?」
「適当に吊るしとくだけじゃないの?」
「それは天日干しね」
「っえ! ほかにもあるの?」
「あるわよー、ラーナは分かる?」

 ラーナは「うーん」と腕を組み悩む。

「わかった! 塩漬け!」
「なるほど、それは塩蔵ね」
「燻製!」
「なるほどなるほど、ラーナは詳しいのね」
「たまたま知ってただけだよ」

 リリはそのまま少し考え込む。
 料理とはいえ、どこまで異世界の知識を使っていいものか疑問を覚えたからだ。

(ここまであるなら、きっと細かく分類してないだけよね、よしっやろう!)

 急に黙ったリリに、ラーナは少し不安そうに聞く。

「違った?」
「っえ? あぁ、違わないわよ、今回は組み合わせる感じね」
「組み合わせる?」

 ラーナはピンときて無いようで、また「うーん」と悩む。
 リリはその向上心、好奇心を見習わないとなと思いつつも答えだす。

「さっき塩を振ったでしょ?」
「うん!」
「これを干すというより、焼く感じで水分を抜いていくの」
「それは普通に焼くのとは違うの?」
「弱火で焼くのは一緒だけど、今回は焼いた後に更に天日干しか、日陰干しにするわ」
「へぇー、じゃあもうすぐ夕暮れだし、日陰干しだね」
「ラーナは理解が早いわね」

 ラーナはエへへッと笑い、照れくさそうにしながらも、焚き火の周りに切り身を並べだした。 

「リリ、どうせなら燻製もしたら?」
「燻製も!?」
「その方が早く出来そうじゃん」
「確かにっ!」

(そんなこと思ってもなかったわ、ラーナの発想は斬新ねっ!)

「燻製するなら煙が必要よね、ラーナなにかもってる?」
「ボクが持ってるものだと……オレガノかファイヤーリーフかな?」

 そう言って鞄から二つの束を取り出してきた。
 片方は束ねた茎を紐で結び、乾燥したパセリのように丸まった葉が不規則に並んでいる。

(これオレガノよね? 地球と一緒じゃん)

 もうひとつの束は、木の枝のような太い茎。
 そして付いている葉は、炎を模ったような刺々しい形をしている。

(これがファイヤーリーフ、パッと見はヒイラギみたいだけど、見たことない植物だわ)

 リリは葉の棘に気をつけつつ、匂いを嗅いだ。

「香りはハジカミっぽい……かなっ?」
「ハジカミ?」
「っあ! いやっ、気にしないで、今回はオレガノ使いましょ」

 思わず地球の単語を出してしまったリリは、ラーナの反応にあたふたと取り繕う。

「そのまま焚き火に入れるの?」
「出来れば燃やすんじゃなくて、炭の上に置いてゆっくりたくさん煙を出したいわね」
「なるほどねー、おっけー」

 ラーナは葉を摘まむと小瓶に詰め、枝のみを炭の上に置く。

(焦ったー、ハジカミぐらいなら大丈夫だったかもしれないけど、本当に焦ったー)

「フゥ、あとは待つだけね」
「楽しみだねー」

 ラーナはワクワクが隠せないのか、そわそわと干物を眺めていた。

『デザートフィッシュの一夜干し、完成間近』


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。 国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。 でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。 これってもしかして【動物スキル?】 笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

「わざわざ始まるまでまたないで、今のうちに手を打ったってよくない?」

イチイ アキラ
恋愛
アスター公爵令嬢エステルは、夢をみる。それは先を映す夢。 ある日、夢をみた。 この国の未来を。 それをアルフレッド王太子に相談する。彼女を愛して止まない婚約者に。 彼は言う。 愛する君とぼくの国のためなら、未来を変えるのも仕方なくない?

処理中です...