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SS、ラーナの戦術論(その1)
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荒野で焚き火の火がパチパチと音を立てながら、ゆらゆらと火が揺れている。
焚き火を囲む一羽と一人、鍋を囲みながらケラケラと笑い声をあげながら談笑している。
「そういえば、ラーナってどれぐらい強いの?」
(ずぅーっと、気になっていたのよねー)
具のないデザートフィッシュのスープを口に運びながらリリは聞く。
「っん? どういう基準で?」
ラーナは、焚き火にサボテンを焚べながら聞き返す。
(んん? 基準って、ステータスが分かるの?)
「基準? そんなものあるの?」
ビックリしながらリリは、また聞き返した。
「そりゃあるでしょ? リリは分かってないなー」
ラーナは首を横に振るとハァーとため息をつく。
(その反応は酷くない? 戦闘民族のハイ・オークと、戦いなんて知らずに生きてきたわたしじゃ、そりゃ違うでしょうよ!)
「じゃあ、例えば一対一なら?」
「一対一かぁ、分かりやすいのはコロッセオかなぁ?」
「コロッセオ?」
「決闘って言ってもいいけど、リリでも分かりやすい条件なら……」
「なら?」
ラーナは少し悩む。
「障害物なし、対峙距離は5馬身、武器は2つまで、魔法有り、勝利条件は殺さず無力化すること、これならどう?」
「確かに、分かりやすい!」
(ここまでギチギチにルールがあるとなにかのスポーツみたいね、これならラーナの圧勝ね!)
リリが頭の中で考えるが、ラーナの圧倒的な獣性を見たリリには、ラーナが負ける姿など想像すらできない。
しかし、ラーナの答えはいがいなものであった。
「この条件ならボクはあんまり強くない、かなぁ」
「っえ? そうなの?」
(あれれっ? ラーナは相当強いんだと思っていたんだけど、異世界ってそんなに強い人だらけなの? こわー、異世界こわー)
「ボクは、せいぜいが大きな街で5番目位じゃない?」
ラーナはう~んと少し考えるとそう答えた。
「なんで? あんなに強いじゃん、それは嘘だわ!」
リリはラーナがモンスターを粉砕した瞬間を思い出し言う。
(あれが国ではなく街で5番目ってどんな強者だらけなの )
ファンタジー世界の強者達への、妄想がリリの中でドンドン膨らむ。
「やっぱり勇者とかいるの?」
(魔法もチートもあるんでしょ? 見てみたいわぁ!)
「勇者? 英雄じゃなくて?」
「っえ、違うの?」
「ボクは勇者なんて、物語以外じゃ聞いたこともないかなー」
「な、なーるーほーどっ?」
(勇者と英雄って違うの?)
「話しを戻すね、まずは距離かな」
「距離?」
「ボクが近づくまでに、強力な魔法を打てるような人に、ボクは相当無理しないと勝てないんだよ」
「相当の無理って?」
「死ぬ覚悟で突っ込むとか、片腕を潰すとかかな?」
「あーなるほどー」
(魔道士の遠距離無双は、ゲームでも鉄板だもんね、確かに無傷は厳しそう)
ラーナの説明に、うんうんと頷くリリ。
「次に純粋な力! ボクはハイ・オークだけどこのサイズだからねー」
「それでも、鬼族は力が強いんじゃないの?」
「もちろん大抵の鬼族は強いよ? それでも獣人族や人族にだってボクより力の強い人はそれなりにいると思うよ?」
「そうなの!?」
「まぁ会ったことはないんだけどねー」
「ふーん」
(会ったことがないのなら、いないのでは?)
頭の中で疑問が湧くが、リリは会話を途切れさせないように、口には出さなかった。
「力で負けてると、真っ向から受けられないし、捕まったら逃げられない」
「ラーナでも力負けするって、想像できないわね」
(パラメーター的には、ラーナは最強の部類かと思っていたけど、違うの?)
リリの居た世界では、ここまでの怪力を持つ人などいない。
なので、リリは未だに信じられなかった。
「効果的なのは、ギリギリで避けるぐらいかな?」
「簡単そうに言っているけど、難しくない?」
「まぁ、大抵そういうやつはノロマが多いから、やりようはいくらでもあるんだけどねっ」
(あるんだ!)
「スリルがあって面白いよー!」
「スリルって……」
ウキウキと話すのを見て、改めてラーナのバーサーカーっぷりを認識したリリ。
(戦術の選択肢に、特攻が常にあるって、色んな意味で怖い子!!)
「あとは技術かなぁ、特に剣術! 人族に多いけど、達人に近い人の剣術は速い、上手い、読めない、ナイフ二本じゃ絶対に無理!!」
(初めて『無理』ってラーナが言い切った、達人って本当にすごいのねー)
「ナイフ二本じゃってことは、フル装備なら?」
ラーナの至る所に付けられた数々の武器を知るリリはマントの投げナイフを見ながら聞く。
「んー、毒も暗器も全部使えばいい勝負にはなるんじゃない?」
「それでも、いい勝負なのねー」
「敵わない敵相手に負けない戦い方、ってのを師匠が教えてくれたからねっ!」
「なるほどー! それはわたしにとっても心強いわ!」
「ただそうなると、殺さないようにするほうが難しいんだよねぇ」
「毒も使うものね」
[まぁ、なんとかなるとは、思うけどねっ!」
(軽い! 相変わらずラーナって戦闘に対しては軽い! 軽すぎて怖い!)
実際は『戦闘』ではなく『死』に対して鈍感なのだろう。
ラーナは戦いでの死を求めている節がある。
諦めにも近い感情をリリは感じていたが、あえて触れないことにした。
「そっかぁ、ラーナの戦い方は万能ってことね!」
「不利な条件で戦わないってだけだよ、ボクもいろいろと覚えたからねー」
「色々って?」
「なーいしょ! バレたらリリに利用されちゃうー!」
ケラケラと笑いながらラーナは答えた。
(ラーナと戦うなんて、ぜーったいにないけどね! 怖いし!)
「じゃあ、モンスター相手ならどうなの?」
「フル装備なら、この荒野でデザートプレデター以外には負ける気がしないよ?」
「ジャイアントスコーピオンは? 厳しいでしょ!」
リリはニマニマとしながら聞く。
「ジャイアントスコーピオン?」
「サソリって怖いのよ、あの狩るためのようなフォルム……」
表情が暗くなるリリに対して、ラーナは胸を張って答えた!
「フフンッ! 余裕余裕!」
(軽っ!? そんな軽さ?)
怪訝そうに、しかし勢いよくリリが聞く。
「本当にー? どこらへんが余裕なの? デカイのよ、ジャイアントなのよ?」
(正直、ラーナが負ける姿は想像できないけど、余裕ってこともないでしょー)
「リリは本当に戦闘ってものを知らないんだねっ!」
「なにをー!?」
ポカポカと叩くリリに、ラーナは明るく答えた。
「まぁピクシーは争いを好まないって言うし、リリはこの前のこともあったから、わからなくはないけどさー、今度はジャイアントスコーピオンは余裕だってことを、ボクが、一から説明してあげるよー」
「よろしくおねがいします! 師匠!」
リリは宙で正座をしながら頭を下げる。
「それ、なんか恥ずかしいからやめて!」
「やめませんわ、師匠!」
「……あーはいはい、わかった、わかった」
リリのおふざけに、ラーナは適当に生返事をすると、話し出した。
「じゃ、まずはサイズの話し! 戦いでのサイズの差は、一定のレベルまでしかない!」
「一定?」
「例外を除けばねっ、だからボクとリリの二人で一対一をしたとしたら、実はリリの方が有利なんだよ?」
(どういうこと?)
リリは、なぜだかしびれ始めた足を気にして、正座をさっさとやめると、ラーナの肩に座った。
足を組み、右手は顎に置き、腕を組むと顎に手を置き考え出す。
「んー考えてはみたけど、やっぱりわたしじゃラーナには勝てなくない?」
(レベル差? いやいやいや、この世界にはレベルなんてものはない! 少なからず今のわたしが知る限りはない!)
リリの頭の中で、ゲームのような熟練度やステータス、スキルなどが頭をよぎる?
(知らないだけで、この世界にそんなものあるの? モンスターを倒すと、自然に上がってるとか?)
「リリ? ヒントいる?」
「うーん……」
リリが両手を上げて降参をした。
(これ以上考えても、出てこないわね)
「お手上げだわ、やっぱり戦闘のことはラーナに聞かないとダメね、教えてくれる?」
リリの降参にラーナの顔がパーッと明るくなると、まくし立てるように話し出した。
「ジャイアントスコーピオンがなぜ余裕かというとね、まずでかい!」
「それは知ってる!」
「だからさっき言ったようにノロマ!」
「それも、なんとなくわかるわね」
「小回りが利かないって、言う方が分かりやすいかなぁ?」
「あーなるほど」
(それは、その通りな気がするわ)
「あとね、サソリはハサミより外へは尻尾しか攻撃手段がないんだけど、その尻尾ですら後ろには届かないから、後ろに対して全く攻撃手段がないんだよー、きっと殻が邪魔して動かないんだね!」
「ほぇー」
ラーナは身振り手振りと、地面に絵まで描きキャッキャとリリに教える。
考えることを止め、ラーナを眺めていたリリは、本当に戦いが好きなんだなぁとニコニコ眺めていた。
(ラーナって実は頭いいわよね、言われるまでそんなこと気づきもしなかったわー)
感嘆するリリには目もくれず、ラーナは続きを話す。
「極め付きは、弱点が多いんだよねっ!」
「弱点? さっき言っていた後ろってこと?」
「んーん、関節の一つ一つに隙間があるから全部が弱点!」
「それは言い過ぎじゃ?」
「多分、リリの想像してる倒し方は力任せのファイターでしょ?」
「そうね」
[ジャイアントスコーピオンの殻を壊そうと思うと大変だけど、ボクみたいな細く切り刻む戦い方にはせいぜい木偶人形だよ?」
「木偶人形!」
(サンドバックじゃない!)
「避けなきゃいけない攻撃も3つしかないし、人型の敵と比べたら控えめに言っても、的当てゲームみたいなものかなぁ?」
(ラーナ饒舌ね! こんなに喋るラーナは始めてだわ)
「的当てゲームって、ラーナは随分と自信があるのね?」
「さっきも言ったようにサイズ差はあんまり関係ないんだよ、差があればあるほど隙になる場所が増えるだけ」
「な、なる、ほどっ?」
「逆に少し大きいぐらいのが不利になるかなぁ、ボクでいうと人族や鬼族、獣人族とかがそう」
「へぇー」
(理には適っている……気はする)
「サイズ差がありすぎたら大きいほうが不利ってこと?」
リリの質問に、ラーナは大きく頷く。
「うん! もちろん最低限のダメージが与えられることと、攻撃を喰らわないことってのが大前提だけどね。だからリリももう少し強い魔法が使えたらボクには勝てるかもよ?」
「無理無理無理無理!」
(いくら強くなってもラーナに勝てる気しないってー、まぁわたしは戦いとか全くわからないから、ラーナの言っていることが、当たっているか外れているのかすらも、わからないどねー)
「ラーナはすごいわね、そんなにいろいろと考えて戦ってたのねー」
あれこれと考えているうちに、思わず口をついて本音が出てきてしまった。
「でしょー?」
ラーナは腰に手を置き、フンスッと胸を張って答えた。
(相変わらずラーナの仕草はカワイイわね!)
「結局、ラーナが強いことはわかったんだけど……」
「けど?」
「結局、どれぐらい強いのかは、分かんなかったわねぇ」
「しょうがないよ、比べる人がいないんだし」
「それでもラーナがいろいろと考えているって分かったわ、いつもありがとう」
「リリの方こそ、料理ありがとう!」
(実際に作っているのはラーナだけど、真っすぐな目で言われると照れるわね)
夜も更け、辺りの生き物は恐らく活動を停止したであろう。
二人は焚き火を前にずぅーっと話し続けた。
焚き火を囲む一羽と一人、鍋を囲みながらケラケラと笑い声をあげながら談笑している。
「そういえば、ラーナってどれぐらい強いの?」
(ずぅーっと、気になっていたのよねー)
具のないデザートフィッシュのスープを口に運びながらリリは聞く。
「っん? どういう基準で?」
ラーナは、焚き火にサボテンを焚べながら聞き返す。
(んん? 基準って、ステータスが分かるの?)
「基準? そんなものあるの?」
ビックリしながらリリは、また聞き返した。
「そりゃあるでしょ? リリは分かってないなー」
ラーナは首を横に振るとハァーとため息をつく。
(その反応は酷くない? 戦闘民族のハイ・オークと、戦いなんて知らずに生きてきたわたしじゃ、そりゃ違うでしょうよ!)
「じゃあ、例えば一対一なら?」
「一対一かぁ、分かりやすいのはコロッセオかなぁ?」
「コロッセオ?」
「決闘って言ってもいいけど、リリでも分かりやすい条件なら……」
「なら?」
ラーナは少し悩む。
「障害物なし、対峙距離は5馬身、武器は2つまで、魔法有り、勝利条件は殺さず無力化すること、これならどう?」
「確かに、分かりやすい!」
(ここまでギチギチにルールがあるとなにかのスポーツみたいね、これならラーナの圧勝ね!)
リリが頭の中で考えるが、ラーナの圧倒的な獣性を見たリリには、ラーナが負ける姿など想像すらできない。
しかし、ラーナの答えはいがいなものであった。
「この条件ならボクはあんまり強くない、かなぁ」
「っえ? そうなの?」
(あれれっ? ラーナは相当強いんだと思っていたんだけど、異世界ってそんなに強い人だらけなの? こわー、異世界こわー)
「ボクは、せいぜいが大きな街で5番目位じゃない?」
ラーナはう~んと少し考えるとそう答えた。
「なんで? あんなに強いじゃん、それは嘘だわ!」
リリはラーナがモンスターを粉砕した瞬間を思い出し言う。
(あれが国ではなく街で5番目ってどんな強者だらけなの )
ファンタジー世界の強者達への、妄想がリリの中でドンドン膨らむ。
「やっぱり勇者とかいるの?」
(魔法もチートもあるんでしょ? 見てみたいわぁ!)
「勇者? 英雄じゃなくて?」
「っえ、違うの?」
「ボクは勇者なんて、物語以外じゃ聞いたこともないかなー」
「な、なーるーほーどっ?」
(勇者と英雄って違うの?)
「話しを戻すね、まずは距離かな」
「距離?」
「ボクが近づくまでに、強力な魔法を打てるような人に、ボクは相当無理しないと勝てないんだよ」
「相当の無理って?」
「死ぬ覚悟で突っ込むとか、片腕を潰すとかかな?」
「あーなるほどー」
(魔道士の遠距離無双は、ゲームでも鉄板だもんね、確かに無傷は厳しそう)
ラーナの説明に、うんうんと頷くリリ。
「次に純粋な力! ボクはハイ・オークだけどこのサイズだからねー」
「それでも、鬼族は力が強いんじゃないの?」
「もちろん大抵の鬼族は強いよ? それでも獣人族や人族にだってボクより力の強い人はそれなりにいると思うよ?」
「そうなの!?」
「まぁ会ったことはないんだけどねー」
「ふーん」
(会ったことがないのなら、いないのでは?)
頭の中で疑問が湧くが、リリは会話を途切れさせないように、口には出さなかった。
「力で負けてると、真っ向から受けられないし、捕まったら逃げられない」
「ラーナでも力負けするって、想像できないわね」
(パラメーター的には、ラーナは最強の部類かと思っていたけど、違うの?)
リリの居た世界では、ここまでの怪力を持つ人などいない。
なので、リリは未だに信じられなかった。
「効果的なのは、ギリギリで避けるぐらいかな?」
「簡単そうに言っているけど、難しくない?」
「まぁ、大抵そういうやつはノロマが多いから、やりようはいくらでもあるんだけどねっ」
(あるんだ!)
「スリルがあって面白いよー!」
「スリルって……」
ウキウキと話すのを見て、改めてラーナのバーサーカーっぷりを認識したリリ。
(戦術の選択肢に、特攻が常にあるって、色んな意味で怖い子!!)
「あとは技術かなぁ、特に剣術! 人族に多いけど、達人に近い人の剣術は速い、上手い、読めない、ナイフ二本じゃ絶対に無理!!」
(初めて『無理』ってラーナが言い切った、達人って本当にすごいのねー)
「ナイフ二本じゃってことは、フル装備なら?」
ラーナの至る所に付けられた数々の武器を知るリリはマントの投げナイフを見ながら聞く。
「んー、毒も暗器も全部使えばいい勝負にはなるんじゃない?」
「それでも、いい勝負なのねー」
「敵わない敵相手に負けない戦い方、ってのを師匠が教えてくれたからねっ!」
「なるほどー! それはわたしにとっても心強いわ!」
「ただそうなると、殺さないようにするほうが難しいんだよねぇ」
「毒も使うものね」
[まぁ、なんとかなるとは、思うけどねっ!」
(軽い! 相変わらずラーナって戦闘に対しては軽い! 軽すぎて怖い!)
実際は『戦闘』ではなく『死』に対して鈍感なのだろう。
ラーナは戦いでの死を求めている節がある。
諦めにも近い感情をリリは感じていたが、あえて触れないことにした。
「そっかぁ、ラーナの戦い方は万能ってことね!」
「不利な条件で戦わないってだけだよ、ボクもいろいろと覚えたからねー」
「色々って?」
「なーいしょ! バレたらリリに利用されちゃうー!」
ケラケラと笑いながらラーナは答えた。
(ラーナと戦うなんて、ぜーったいにないけどね! 怖いし!)
「じゃあ、モンスター相手ならどうなの?」
「フル装備なら、この荒野でデザートプレデター以外には負ける気がしないよ?」
「ジャイアントスコーピオンは? 厳しいでしょ!」
リリはニマニマとしながら聞く。
「ジャイアントスコーピオン?」
「サソリって怖いのよ、あの狩るためのようなフォルム……」
表情が暗くなるリリに対して、ラーナは胸を張って答えた!
「フフンッ! 余裕余裕!」
(軽っ!? そんな軽さ?)
怪訝そうに、しかし勢いよくリリが聞く。
「本当にー? どこらへんが余裕なの? デカイのよ、ジャイアントなのよ?」
(正直、ラーナが負ける姿は想像できないけど、余裕ってこともないでしょー)
「リリは本当に戦闘ってものを知らないんだねっ!」
「なにをー!?」
ポカポカと叩くリリに、ラーナは明るく答えた。
「まぁピクシーは争いを好まないって言うし、リリはこの前のこともあったから、わからなくはないけどさー、今度はジャイアントスコーピオンは余裕だってことを、ボクが、一から説明してあげるよー」
「よろしくおねがいします! 師匠!」
リリは宙で正座をしながら頭を下げる。
「それ、なんか恥ずかしいからやめて!」
「やめませんわ、師匠!」
「……あーはいはい、わかった、わかった」
リリのおふざけに、ラーナは適当に生返事をすると、話し出した。
「じゃ、まずはサイズの話し! 戦いでのサイズの差は、一定のレベルまでしかない!」
「一定?」
「例外を除けばねっ、だからボクとリリの二人で一対一をしたとしたら、実はリリの方が有利なんだよ?」
(どういうこと?)
リリは、なぜだかしびれ始めた足を気にして、正座をさっさとやめると、ラーナの肩に座った。
足を組み、右手は顎に置き、腕を組むと顎に手を置き考え出す。
「んー考えてはみたけど、やっぱりわたしじゃラーナには勝てなくない?」
(レベル差? いやいやいや、この世界にはレベルなんてものはない! 少なからず今のわたしが知る限りはない!)
リリの頭の中で、ゲームのような熟練度やステータス、スキルなどが頭をよぎる?
(知らないだけで、この世界にそんなものあるの? モンスターを倒すと、自然に上がってるとか?)
「リリ? ヒントいる?」
「うーん……」
リリが両手を上げて降参をした。
(これ以上考えても、出てこないわね)
「お手上げだわ、やっぱり戦闘のことはラーナに聞かないとダメね、教えてくれる?」
リリの降参にラーナの顔がパーッと明るくなると、まくし立てるように話し出した。
「ジャイアントスコーピオンがなぜ余裕かというとね、まずでかい!」
「それは知ってる!」
「だからさっき言ったようにノロマ!」
「それも、なんとなくわかるわね」
「小回りが利かないって、言う方が分かりやすいかなぁ?」
「あーなるほど」
(それは、その通りな気がするわ)
「あとね、サソリはハサミより外へは尻尾しか攻撃手段がないんだけど、その尻尾ですら後ろには届かないから、後ろに対して全く攻撃手段がないんだよー、きっと殻が邪魔して動かないんだね!」
「ほぇー」
ラーナは身振り手振りと、地面に絵まで描きキャッキャとリリに教える。
考えることを止め、ラーナを眺めていたリリは、本当に戦いが好きなんだなぁとニコニコ眺めていた。
(ラーナって実は頭いいわよね、言われるまでそんなこと気づきもしなかったわー)
感嘆するリリには目もくれず、ラーナは続きを話す。
「極め付きは、弱点が多いんだよねっ!」
「弱点? さっき言っていた後ろってこと?」
「んーん、関節の一つ一つに隙間があるから全部が弱点!」
「それは言い過ぎじゃ?」
「多分、リリの想像してる倒し方は力任せのファイターでしょ?」
「そうね」
[ジャイアントスコーピオンの殻を壊そうと思うと大変だけど、ボクみたいな細く切り刻む戦い方にはせいぜい木偶人形だよ?」
「木偶人形!」
(サンドバックじゃない!)
「避けなきゃいけない攻撃も3つしかないし、人型の敵と比べたら控えめに言っても、的当てゲームみたいなものかなぁ?」
(ラーナ饒舌ね! こんなに喋るラーナは始めてだわ)
「的当てゲームって、ラーナは随分と自信があるのね?」
「さっきも言ったようにサイズ差はあんまり関係ないんだよ、差があればあるほど隙になる場所が増えるだけ」
「な、なる、ほどっ?」
「逆に少し大きいぐらいのが不利になるかなぁ、ボクでいうと人族や鬼族、獣人族とかがそう」
「へぇー」
(理には適っている……気はする)
「サイズ差がありすぎたら大きいほうが不利ってこと?」
リリの質問に、ラーナは大きく頷く。
「うん! もちろん最低限のダメージが与えられることと、攻撃を喰らわないことってのが大前提だけどね。だからリリももう少し強い魔法が使えたらボクには勝てるかもよ?」
「無理無理無理無理!」
(いくら強くなってもラーナに勝てる気しないってー、まぁわたしは戦いとか全くわからないから、ラーナの言っていることが、当たっているか外れているのかすらも、わからないどねー)
「ラーナはすごいわね、そんなにいろいろと考えて戦ってたのねー」
あれこれと考えているうちに、思わず口をついて本音が出てきてしまった。
「でしょー?」
ラーナは腰に手を置き、フンスッと胸を張って答えた。
(相変わらずラーナの仕草はカワイイわね!)
「結局、ラーナが強いことはわかったんだけど……」
「けど?」
「結局、どれぐらい強いのかは、分かんなかったわねぇ」
「しょうがないよ、比べる人がいないんだし」
「それでもラーナがいろいろと考えているって分かったわ、いつもありがとう」
「リリの方こそ、料理ありがとう!」
(実際に作っているのはラーナだけど、真っすぐな目で言われると照れるわね)
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