84 / 115
14話、討伐隊(1)
しおりを挟むサウエム荒原には、スカイロックと呼ばれる大きな岩山がある。
天を突き抜けるほどの大きな岩山だ。
登っている五つの人影がある、中腹はだいぶ先に通り過ぎたのであろうか? 人が二人程度なら通れるほどの道なき道を進む一行は足場を確認しながら確実に歩みを進めていた。
ハァ、ハァ、ハァ……
メンバーはラーナ、イヴァ、クラウディア、クリスタ、アンの五人。
珍しい組み合わせ、やはり誰が行くかを選ぶ際も一悶着あったのだった……
(目的地は岩山の上、敵は動きも多少は掴めてる必要なのは……)
ラーナは少しだけ悩む。
一人ではロック鳥を相手取ることはできないのは、分かっている。
幸いアンの説得によって、クラウディア達も手助けをしてくれることになったのだが、いかんせん戦闘能力が未知数なのだ。
「ソフィアは留守番、イヴァは連れて行くからそのつもりで」
「っえー、ラーナ嘘じゃろ? 妾は行きたくないのじゃー、岩山を妾が登れるわけ無いじゃろー、妾は運動は苦手なのじゃ」
「ダメ、テレポートでいいからついてきて!」
ラーナの中ではイヴァの参加は決まったことらしく、譲る気は微塵もなさそうだ。
(イヴァがいないと、持っていける荷物が限られる)
「いやじゃー、またロック鳥に会うなんて怖いのじゃ!」
「リリを助けるためにだから、お願いイヴァ」
珍しく命令口調ではなく、しおらしく頼んでいるように見えるラーナ。
それを見てイヴァも反論の言葉をつまらせた。
「……それでも無理じゃ、妾はあの鳥に刃向かえる実力はない……それどころか立ち向かう勇気もない、正直に言えば怖いのじゃ」
「……」
(完全に腰が引けちゃってる、試しに物で釣ってみるかなぁ?)
「付いてきてくれるなら、ファイアフラワーの実、あげようか?」
「っえ!! そんな珍しいもの……いやっ、持ってるわけがなかろう」
一瞬イヴァの声が上ずったが、直ぐに俯き元のトーンに戻る。
「ルベルンダなら珍しくもないし、そこそこ取れるよ? カバンの中にあるんだけどなぁ……ダメ?」
長寿の種族として知られるダークエルフ。
暇つぶしもできないない環境、その中でも特に箱入りに育てられたイヴァは、密かに植物を集めてはニヤけるという変わった趣味があった。
もちろんイヴァに興味を持っていないラーナは知る由もない。
「ファイヤーリーフの種……は、欲しい……」
ラーナは手持ちの中で、一番高価で珍しいものを提示しただけに過ぎないのだが、交流の一切ないルベルンダで自生する植物は、本土ではとても珍しい部類に入っていた。
「はいはーい、そんな珍しいもの、私もほしいー」
ソフィアが急に手を上げて口を挟む。
彼女も錬金術師として、珍しいものには目が無かったのだ。
「ソフィアは黙ってて、あげないし」
「そんなー、酷いじゃないかぁ」
しかしラーナに一蹴されてしまった。
そんなやり取りを気にも留めずにまだ悩むイヴァ。
「うーん……じゃが……」
(……あー考えるのも説得するの面倒くさくなってきたー)
ラーナは人との付き合いの経験が少なく、元々の性格が真っすぐで素直なのも相まって、交渉事が苦手だった。
なので早々と諦めて、投げやりに言う。
「わかった、もういい」
「っえ!」
ラーナの言葉に、イヴァの声が少し明るくなる。
「そこまで嫌なら、麻酔で眠ってるうちにボクが抱えて連れてく」
ラーナの頑なな意志と滅茶苦茶な提案、イヴァは逃げられないと悟ったのか
「……ついてく、付いて行けばいいんじゃろ? ただファイアフラワーは貰うでの!」
そう自暴自棄に答えた。
「それで? ラーナちゃん残りのメンツはどうするんだい? この馬車6人乗りだろう?」
話の流れから、自分は行かなくて済むことが分かったソフィアは、強気に話を進めだした。
そこにクラウディアが、割り込むように口を出す。
「わたくし達は付いていきますわよ」
「っん? っえ、お主ら馬鹿なのかや? 自分から好んでロック鳥に会いに行くなんて……馬鹿なのかや?」
(イヴァ二回言った、本気で行きたくなかったんだなぁ)
「別に無理してまでクラウディア達は来なくていいよ?」
ラーナは優しさ半分、揉め事を避けたい半分でクラウディアに提案をした。
「あなた達は、わたくしに無理やり馬車を出させておいて、いまさらそれは無いんじゃありませんの? わたくし達も行きます!!」
しかしクラウディアは、ラーナの提案を正論で返した。
「見たことないからそんなことが言えるんじゃ、ラーナでも太刀打ち出来んのにお主らじゃ無理に決まっておろうに」
「因みに、危険なのになんでついてきたいの?」
(クラウディアがそんなに戦い好きなイメージは……ないこともないけど、普通は怖いし嫌なんじゃないの?)
率直に素直に聞くラーナに、クラウディアはジッと押し黙る。
そして少し考え口を開く。
「伝説のロック鳥を万が一にでも討伐なんてしたら、その功績は計り知れないのよ」
「なるほどね」
「そんな栄誉を亜人だけに任せるわけには行きませんの、ましてやハイ・オークとダークエルフだけなんて、貴族として高みで見物など出来ませんわ」
(貴族の矜持ってやつ? ボクはその考え嫌いじゃないけど)
「何を言っとるのじゃ? 高いところに登るのは妾たちじゃぞ?」
「イヴァは物覚えはいいのに、バカだなぁ……クラウディアは一人でいいの?」
ラーナの質問にエマがいやいやと、大きく手を振り、口を挟んで来る。
「はぁーなにを言っているのですか、この子鬼は? もちろんお嬢様をお一人で向かわせるわけないでしょ? 私達四人にそっちが二人、これで丁度じゃない、あんたは数の計算もできないの?」
一同が話し合いをしている最中。
後ろからガチャガチャと音を立て、アンが近づいてくる。
「遅れて悪いな、久々だったからこの盾を探すのに手間取っちまってな」
「アンも行くの?」
「もちろんさ、この中で前衛で盾役を張れるのは、アタシぐらいだろうからな」
プレートアーマーに身を包み、身の丈ほどの大きな剣とラーナが隠れるほどの大盾を持っている。
同じ前衛のラーナやエマと比べて、かなりの重装備だ。
確かにこれほどの装備は、体格のいいアンにしか無理なのだろう、エマも絶句していた。
「だってさ、あれは重さ的に二人分だね」
ラーナがエマの顔を覗き込み、からかうように言い放つ。
エマはアンの言い分に反論もできず、ただ黙りながらラーナを睨みつけている。
それを見ていたクラウディアが、止めもせず淡々と冷静に話しだした。
「では、わたくしとクリスタが同行しますわ」
「足手まといになるなら置いてくから」
「大丈夫ですわ、わたくしは天才ですもの、魔法もそれなりに使えましてよ」
胸を張り答えるクラウディア、口を出さず後ろでずっと控えるクリスタ。
急にラーナが二人に向かって、目にも留まらぬ速さで投げナイフを投げた。
キンッ! キンッ! シュバ!
クリスタは投げられた二つのナイフを上へ弾くと、宙に舞い上がるナイフを手に取る。
同時にクラウディアが腰のレイピアを突き、文字通りラーナの目の前で寸止めした。
「この鬼! なにをしてますの!」
「やはり醜悪な本性を出しましたわね!」
一連の動きを追えずに見ていた、エマとディアナがラーナに向かって激怒する。
「二人ともお黙り! テストは合格でよろしいですわね?」
二人を武器を持たない左手で制し一喝したクラウディアは、得意げにラーナに聞く。
対してラーナは、目の前にあるレイピアの切っ先に微動だにせず答えた。
「最低限は動けるみたいだね、オーケー5人で行こう!」
(これなら大丈夫かな、まぁいないよりはマシかなぁ)
クラウディアに異論を唱え、ラーナに怒声と罵倒を言うエマとディアナ、二人を無視してラーナは馬車へと向かう。
その足取りはゆっくりとしていながらも決して重々しくはなかった。
その小さな後ろ姿を見ながら、クラウディアはホッと溜息を付き、胸を撫で下ろすとレイピアを腰に戻した。
0
あなたにおすすめの小説
『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合
鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。
国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。
でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。
これってもしかして【動物スキル?】
笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる