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14話、討伐隊(2)
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一方その頃、馬車の中に隠れるリリ。
外にいる巨大な鳥の雛に怯えながらも、ラーナの鞄の中で、まだ丸くなっていた。
(どうしよう、どうしよう、このままここにいて良いの? それとも逃げるべき?)
「ここ、何処なんだろう? 雲の上なのは分かったけど……」
バサァ、バサァ
急にものすごい勢いで風が吹き、馬車がグワングワンと揺れる。
(んんー!? なに、なに?)
リリは鞄ごと宙に浮きそうなほどの風圧に、心臓が飛び出るほど驚き恐れつつも、必死に声を押し殺していた。
バサァ、バサァ…………
しばらくして馬車の揺れが収まった。
リリは衣擦れの音すら立てないように、細心の注意を払いゆっくりと外を覗くと、そこには、またも想像を絶する光景があった。
リリの何百何千倍もある鳥がそこに佇んでいたのだ。
(で、でっかぁー--!!)
木の様な大きな脚、雛を毛づくろいする嘴も人ぐらいなら飲み込めるであろうサイズだ、ピクシーのリリなんて、目よりも小さい。
「……親鳥がいる、そんな想像はしてたけど、改めてちゃんと見ると……絶望だわ」
(逃げられると思っていたわたしがバカだった、これは……逃げられない……逃げられるわけがない)
ロック鳥をみてリリは死を覚悟した。
そして同時に、この世界に来てから一番の無力感と絶望感に苛まれた。
リリは、ロック鳥に見つからないように、少しでも小さく丸まって身を隠すことしかできなかった。
(ラーナがいないと心細いわ……)
* * *
改めて、スカイ・ロックの中腹へと戻る。
よくよく見ると、足取りが軽いのはラーナだけで、他の四人は随分と疲れているように見える。
5人の真ん中を歩くクラウディアがラーナに声をかける。
「結構、登りましたわ、そろそろかしら?」
「んーまだかな? ロック鳥の匂いはしないし」
「ラーナよ、妾そろそろ……魔力も、体力も、尽きそうなんじゃ、が」
最後尾も最後尾、杖を両手で着き、ハァハァ、ゼェゼェと言いながらも着いて来ていたイヴァが、一番前を歩くラーナの横にテレポートをし口を挟んだ。
「もう少し進まないと」
イヴァを一瞥したラーナは、そう呟くと真っすぐ前を見つめる。
慌ててイヴァが袖を掴み、ラーナの歩みを無理やり止めるためにしがみついた。
それを見ていたアンがラーナを諫める。
「ラーナ嬢ちゃん、ロック鳥の近場じゃ焚き火もできないんだ」
「だろうね」
「今回はイヴァ嬢ちゃんが、最重要なんだから休んだらどうだ?」
「うーん……」
「あそこの窪みなんて良いんじゃないか?」
アンが指差した先には、洞窟とも呼べない、雨を凌ぐのがやっとな程の窪み。
(正直、もう少し進みたかいんだけどなぁ)
悩んでいるラーナをよそに、クラウディアが指示を出す。
「良いでしょう、クリスタ昼食の準備をしなさい!」
「かしこまりました、クラウディア様」
「あっあぁ、助かったのじゃ」
イヴァは膝から崩れ落ち、その場に座り込んだ。
「申し訳ありませんがイヴァ様、道具を出していただいてもよろしいですか?」
クリスタがしゃがみこみイヴァに声をかけた。
「……はぁはぁ、これでいいかや?」
イヴァは収納魔法から、予めしまっておいたキャンプ道具一式を出す。
アンが提案を出してから、トントン拍子で話しが進んでいく。
(まぁいっか)
ラーナは自分の気持ちを押し殺し、準備を始めたクラウディア達に声をかける。
「ボクもなにか手伝おうか? 野菜でも切る?」
「鬼族の力など借りませんわ、あなたは見張りでもしていればいいわ」
明らかに嫌悪感を出して話すクラウディア、しかし意外にもクリスタが止めた。
「クラウディア様、言い過ぎです」
「っ!!」
「それにこの状況ならば、クラウディア様が見張りをするのが、正しいかと思いますが?」
「クリスタ、何を言っているの!?」
「ここでは、イヴァ様が休みを取るのが最優先なのは分かっていますか?」
クラウディアは怒ってはいないが、見る見るうちに顔から火が出そうなほど赤くなった、何かに気づいたのであろう。
しかしクリスタは慣れているので、淡々と言葉を続ける。
「もうお気づきの通り、喧嘩の火種となる可能性の高いクラウディア様が、見張りに出るのが当たり前の配慮ではないかと、クリスタは愚考しますが?」
相変わらず、流れるように毒舌を吐いた。
今までの態度を見て、クラウディアは言い返すのではないかと、横で眺めていたラーナだったが、彼女の口からは予想外の返答が返ってきた。
「……まぁ一理ありますわね、それでクリスタ、本日のメニューはなんですの?」
少しバツの悪そうにしながらも、クラウディアは身なりを整え問いかける。
するとクリスタが頭を下げて答えた。
「質素で申し訳ないのですが」
「構わないわ、行軍中なのだもの」
「ありがとうございます、今回はリューネブルク産の塩蔵ベーコンを使った、オニオンスープとフランスパンで御座います」
サラリと答えたクリスタだが、ラーナには質素とは全然思えない内容だ。
外にいる巨大な鳥の雛に怯えながらも、ラーナの鞄の中で、まだ丸くなっていた。
(どうしよう、どうしよう、このままここにいて良いの? それとも逃げるべき?)
「ここ、何処なんだろう? 雲の上なのは分かったけど……」
バサァ、バサァ
急にものすごい勢いで風が吹き、馬車がグワングワンと揺れる。
(んんー!? なに、なに?)
リリは鞄ごと宙に浮きそうなほどの風圧に、心臓が飛び出るほど驚き恐れつつも、必死に声を押し殺していた。
バサァ、バサァ…………
しばらくして馬車の揺れが収まった。
リリは衣擦れの音すら立てないように、細心の注意を払いゆっくりと外を覗くと、そこには、またも想像を絶する光景があった。
リリの何百何千倍もある鳥がそこに佇んでいたのだ。
(で、でっかぁー--!!)
木の様な大きな脚、雛を毛づくろいする嘴も人ぐらいなら飲み込めるであろうサイズだ、ピクシーのリリなんて、目よりも小さい。
「……親鳥がいる、そんな想像はしてたけど、改めてちゃんと見ると……絶望だわ」
(逃げられると思っていたわたしがバカだった、これは……逃げられない……逃げられるわけがない)
ロック鳥をみてリリは死を覚悟した。
そして同時に、この世界に来てから一番の無力感と絶望感に苛まれた。
リリは、ロック鳥に見つからないように、少しでも小さく丸まって身を隠すことしかできなかった。
(ラーナがいないと心細いわ……)
* * *
改めて、スカイ・ロックの中腹へと戻る。
よくよく見ると、足取りが軽いのはラーナだけで、他の四人は随分と疲れているように見える。
5人の真ん中を歩くクラウディアがラーナに声をかける。
「結構、登りましたわ、そろそろかしら?」
「んーまだかな? ロック鳥の匂いはしないし」
「ラーナよ、妾そろそろ……魔力も、体力も、尽きそうなんじゃ、が」
最後尾も最後尾、杖を両手で着き、ハァハァ、ゼェゼェと言いながらも着いて来ていたイヴァが、一番前を歩くラーナの横にテレポートをし口を挟んだ。
「もう少し進まないと」
イヴァを一瞥したラーナは、そう呟くと真っすぐ前を見つめる。
慌ててイヴァが袖を掴み、ラーナの歩みを無理やり止めるためにしがみついた。
それを見ていたアンがラーナを諫める。
「ラーナ嬢ちゃん、ロック鳥の近場じゃ焚き火もできないんだ」
「だろうね」
「今回はイヴァ嬢ちゃんが、最重要なんだから休んだらどうだ?」
「うーん……」
「あそこの窪みなんて良いんじゃないか?」
アンが指差した先には、洞窟とも呼べない、雨を凌ぐのがやっとな程の窪み。
(正直、もう少し進みたかいんだけどなぁ)
悩んでいるラーナをよそに、クラウディアが指示を出す。
「良いでしょう、クリスタ昼食の準備をしなさい!」
「かしこまりました、クラウディア様」
「あっあぁ、助かったのじゃ」
イヴァは膝から崩れ落ち、その場に座り込んだ。
「申し訳ありませんがイヴァ様、道具を出していただいてもよろしいですか?」
クリスタがしゃがみこみイヴァに声をかけた。
「……はぁはぁ、これでいいかや?」
イヴァは収納魔法から、予めしまっておいたキャンプ道具一式を出す。
アンが提案を出してから、トントン拍子で話しが進んでいく。
(まぁいっか)
ラーナは自分の気持ちを押し殺し、準備を始めたクラウディア達に声をかける。
「ボクもなにか手伝おうか? 野菜でも切る?」
「鬼族の力など借りませんわ、あなたは見張りでもしていればいいわ」
明らかに嫌悪感を出して話すクラウディア、しかし意外にもクリスタが止めた。
「クラウディア様、言い過ぎです」
「っ!!」
「それにこの状況ならば、クラウディア様が見張りをするのが、正しいかと思いますが?」
「クリスタ、何を言っているの!?」
「ここでは、イヴァ様が休みを取るのが最優先なのは分かっていますか?」
クラウディアは怒ってはいないが、見る見るうちに顔から火が出そうなほど赤くなった、何かに気づいたのであろう。
しかしクリスタは慣れているので、淡々と言葉を続ける。
「もうお気づきの通り、喧嘩の火種となる可能性の高いクラウディア様が、見張りに出るのが当たり前の配慮ではないかと、クリスタは愚考しますが?」
相変わらず、流れるように毒舌を吐いた。
今までの態度を見て、クラウディアは言い返すのではないかと、横で眺めていたラーナだったが、彼女の口からは予想外の返答が返ってきた。
「……まぁ一理ありますわね、それでクリスタ、本日のメニューはなんですの?」
少しバツの悪そうにしながらも、クラウディアは身なりを整え問いかける。
するとクリスタが頭を下げて答えた。
「質素で申し訳ないのですが」
「構わないわ、行軍中なのだもの」
「ありがとうございます、今回はリューネブルク産の塩蔵ベーコンを使った、オニオンスープとフランスパンで御座います」
サラリと答えたクリスタだが、ラーナには質素とは全然思えない内容だ。
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