異世界キャンプ チートどころか低スペックのまま転移させられた妖精は楽しい旅にする為にモンスターを美味しく料理してやろうと思います~

綾川鈴鹿

文字の大きさ
85 / 115

14話、討伐隊(2)

しおりを挟む
 一方その頃、馬車の中に隠れるリリ。
 外にいる巨大な鳥の雛に怯えながらも、ラーナの鞄の中で、まだ丸くなっていた。

(どうしよう、どうしよう、このままここにいて良いの? それとも逃げるべき?)

「ここ、何処なんだろう? 雲の上なのは分かったけど……」

バサァ、バサァ

 急にものすごい勢いで風が吹き、馬車がグワングワンと揺れる。

(んんー!? なに、なに?)

 リリは鞄ごと宙に浮きそうなほどの風圧に、心臓が飛び出るほど驚き恐れつつも、必死に声を押し殺していた。

バサァ、バサァ…………

 しばらくして馬車の揺れが収まった。
 リリは衣擦れの音すら立てないように、細心の注意を払いゆっくりと外を覗くと、そこには、またも想像を絶する光景があった。
 リリの何百何千倍もある鳥がそこに佇んでいたのだ。

(で、でっかぁー--!!)

 木の様な大きな脚、雛を毛づくろいする嘴も人ぐらいなら飲み込めるであろうサイズだ、ピクシーのリリなんて、目よりも小さい。

「……親鳥がいる、そんな想像はしてたけど、改めてちゃんと見ると……絶望だわ」

(逃げられると思っていたわたしがバカだった、これは……逃げられない……逃げられるわけがない)

 ロック鳥をみてリリは死を覚悟した。
 そして同時に、この世界に来てから一番の無力感と絶望感に苛まれた。
 リリは、ロック鳥に見つからないように、少しでも小さく丸まって身を隠すことしかできなかった。

(ラーナがいないと心細いわ……)


* * *


 改めて、スカイ・ロックの中腹へと戻る。
 よくよく見ると、足取りが軽いのはラーナだけで、他の四人は随分と疲れているように見える。
 5人の真ん中を歩くクラウディアがラーナに声をかける。

「結構、登りましたわ、そろそろかしら?」
「んーまだかな? ロック鳥の匂いはしないし」
「ラーナよ、妾そろそろ……魔力も、体力も、尽きそうなんじゃ、が」

 最後尾も最後尾、杖を両手で着き、ハァハァ、ゼェゼェと言いながらも着いて来ていたイヴァが、一番前を歩くラーナの横にテレポートをし口を挟んだ。

「もう少し進まないと」

 イヴァを一瞥したラーナは、そう呟くと真っすぐ前を見つめる。
 慌ててイヴァが袖を掴み、ラーナの歩みを無理やり止めるためにしがみついた。
 それを見ていたアンがラーナを諫める。

「ラーナ嬢ちゃん、ロック鳥の近場じゃ焚き火もできないんだ」
「だろうね」
「今回はイヴァ嬢ちゃんが、最重要なんだから休んだらどうだ?」
「うーん……」
「あそこの窪みなんて良いんじゃないか?」

 アンが指差した先には、洞窟とも呼べない、雨を凌ぐのがやっとな程の窪み。

(正直、もう少し進みたかいんだけどなぁ)

 悩んでいるラーナをよそに、クラウディアが指示を出す。

「良いでしょう、クリスタ昼食の準備をしなさい!」
「かしこまりました、クラウディア様」
「あっあぁ、助かったのじゃ」

 イヴァは膝から崩れ落ち、その場に座り込んだ。

「申し訳ありませんがイヴァ様、道具を出していただいてもよろしいですか?」

 クリスタがしゃがみこみイヴァに声をかけた。

「……はぁはぁ、これでいいかや?」

 イヴァは収納魔法から、予めしまっておいたキャンプ道具一式を出す。
 アンが提案を出してから、トントン拍子で話しが進んでいく。

(まぁいっか)

 ラーナは自分の気持ちを押し殺し、準備を始めたクラウディア達に声をかける。

「ボクもなにか手伝おうか? 野菜でも切る?」
「鬼族の力など借りませんわ、あなたは見張りでもしていればいいわ」

 明らかに嫌悪感を出して話すクラウディア、しかし意外にもクリスタが止めた。

「クラウディア様、言い過ぎです」
「っ!!」
「それにこの状況ならば、クラウディア様が見張りをするのが、正しいかと思いますが?」
「クリスタ、何を言っているの!?」
「ここでは、イヴァ様が休みを取るのが最優先なのは分かっていますか?」

 クラウディアは怒ってはいないが、見る見るうちに顔から火が出そうなほど赤くなった、何かに気づいたのであろう。
 しかしクリスタは慣れているので、淡々と言葉を続ける。

「もうお気づきの通り、喧嘩の火種となる可能性の高いクラウディア様が、見張りに出るのが当たり前の配慮ではないかと、クリスタは愚考しますが?」

 相変わらず、流れるように毒舌を吐いた。
 今までの態度を見て、クラウディアは言い返すのではないかと、横で眺めていたラーナだったが、彼女の口からは予想外の返答が返ってきた。

「……まぁ一理ありますわね、それでクリスタ、本日のメニューはなんですの?」

 少しバツの悪そうにしながらも、クラウディアは身なりを整え問いかける。
 するとクリスタが頭を下げて答えた。

「質素で申し訳ないのですが」
「構わないわ、行軍中なのだもの」
「ありがとうございます、今回はリューネブルク産の塩蔵ベーコンを使った、オニオンスープとフランスパンで御座います」

 サラリと答えたクリスタだが、ラーナには質素とは全然思えない内容だ。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

わたしにしか懐かない龍神の子供(?)を拾いました~可愛いんで育てたいと思います

あきた
ファンタジー
明治大正風味のファンタジー恋愛もの。 化物みたいな能力を持ったせいでいじめられていたキイロは、強引に知らない家へ嫁入りすることに。 所が嫁入り先は火事だし、なんか子供を拾ってしまうしで、友人宅へ一旦避難。 親もいなさそうだし子供は私が育てようかな、どうせすぐに離縁されるだろうし。 そう呑気に考えていたキイロ、ところが嫁ぎ先の夫はキイロが行方不明で発狂寸前。 実は夫になる『薄氷の君』と呼ばれる銀髪の軍人、やんごとなき御家柄のしかも軍でも出世頭。 おまけに超美形。その彼はキイロに夢中。どうやら過去になにかあったようなのだが。 そしてその彼は、怒ったらとんでもない存在になってしまって。

僕に仕えるメイドは世界最強の英雄です1~またクビになったけど、親代わりのメイドが慰めてくれるので悲しくなんてない!!~

あきくん☆ひろくん
ファンタジー
仕事を失い、居場所をなくした青年。 彼に仕えるのは――世界を救った英雄たちだった。 剣も魔法も得意ではない主人公は、 最強のメイドたちに守られながら生きている。 だが彼自身は、 「守られるだけの存在」でいることを良しとしなかった。 自分にできることは何か。 この世界で、どう生きていくべきか。 最強の力を持つ者たちと、 何者でもない一人の青年。 その主従関係は、やがて世界の歪みと過去へと繋がっていく。 本作は、 圧倒的な安心感のある日常パートと、 必要なときには本格的に描かれる戦い、 そして「守られる側の成長」を軸にした 完結済み長編ファンタジーです。 シリーズ作品の一編ですが、本作単体でもお楽しみいただけます。 最後まで安心して、一気読みしていただければ幸いです。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~

ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。 休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。 啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。 異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。 これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。

『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~

鈴白理人
ファンタジー
ラザナキア王国の国民は【スキルツリー】という女神の加護を持つ。 そんな国の北に住むアクアオッジ辺境伯一家も例外ではなく、父は【掴みスキル】母は【育成スキル】の持ち主。 母のスキルのせいか、一家の子供たちは生まれたころから、派生スキルがポコポコ枝分かれし、スキルレベルもぐんぐん上がっていった。 双子で生まれた末っ子、兄のウィルフレッドの【精霊スキル】、妹のメリルの【魔法スキル】も例外なくレベルアップし、十五歳となった今、学園入学の秒読み段階を迎えていた── 前作→『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

処理中です...