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15話、とてつもなく大きな鶏肉(5)
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【ピクシーの生態と秘法】
リリは知る由もないが、ピクシーの秘法と多種族に呼ばれているものには、勘違いから起きたからくりがある。
力も弱く魔法に長けた体躯の小さなピクシー族は、自ら人里に下りてこない限り、まずみつかること自体が珍しい。
だからこそ、生活様式は謎に包まれているのだが、一般的に知られているのは魔法主体の生活をしており、ちょっとした力仕事ですら魔法で済ませること。
主食は木の実や花の蜜などの小さなものを好んで食べる、その程度だ。
実際大きくは間違っていない、生活するには木の実で十分事足りる、しかし肉も魚も普通に食べる。
好んで木の実を食べているのは、持ち運びが楽で腐らないからという、実に合理的で現実的な理由である。
生来から魔法に長けた種族であるピクシーならば、簡単に自分の何倍もの大きさの大型動物すら狩る事ができる。
なので、一人で居ても食糧難になることはほとんどないのだが、動物を見つけ、狩りをし、下処理をして料理をする、ここまでやっても結局、殆どは捨てることとなる。
だからこそ、村のような集団ですら狩りをする必要性がない、したところでめんどくさいからだ。
食糧には困らないというピクシーという生物の特殊性、更には自由を好み規律を嫌う性格が、一部の例外を除きピクシーという種族から定住という文化を失くした。
そして厄介なことにイタズラ好きで自由奔放、これが問題だった。
聞いた人、見た人が話す内容が各地方で内容がまったく違う、そんなことは当たり前のようにあるのだ。
それはピクシーの噂を専門に調べる専門家がいるほどに煩雑としている。
ピクシーがよく食べる木の実であるスパイスやハーブの効能にも詳しいのは生態的には当たり前。
しかし他種族と居るときに、木の実を好んで食べることはしないし、聞かれたことに対して適当に返事をする。
これが重なり続け、気づけば他種族からは秘法とよばれることが増えていったのだ。
今回のリリの行動自体は、スパイスの種はピクシーには大きく硬い、だから重たい靴で潰していた、たったそれだけだったのだが。
嘘八百の技術体型が物語の一節に綴られ、それを聞き信じたものの間で実しやかに囁かれている、いわゆる都市伝説や空想に近い話と全く同じ行動をとっていた。
元貴族とはいえ、いや逆に中途半端に詳しい元貴族だからこそ、クラウディアはピクシーの出てくる物語を子供の頃に読むことができ、そして信じ込んでいた。
だからこそ、シンデレラに出てくる魔法使いのビビデバビデブーという魔法を聞いたかのように、興奮したクラウディアはリリに詰め寄ったのであった。
* * *
「それは残念ですわ、あの『ヴェルキンドの冒険』に出てくる妖精の秘法が知れると思いましたのに……」
クラウディアはリリの話を聞いてそう言ったが、よくよく考えれば香辛料で臭みを取っているだけなので分かりそうなものではある。
自身の思い込みで落胆したクラウディアは、その事にまったく気づいていなかった。
リリ自身も悪びれもせず、訂正すらしないまま話を続けたので、ピクシーの新たな秘法がここに生まれた。
「そういえばクラウディアは白ワインと、バターか動物の油ってあります? レバーペーストに使いたいんですけど、流石にないですよね……」
尻もちをついたまま靴を脱ぎ、問いかけたリリ。
それを見て、クラウディアは頭をかしげながら答えた。
「ん? 白ワインなら、荷運びの褒美代わりに渡しましたわ」
「っえ? イヴァに? 聞いてないんだけど」
「彼女の褒美ですし良いのではなくて?」
「クラウディアはいいの?」
「少量ですし、安酒ですから、あげたところで大したことはありませんわ」
「ふーん……」
(酒飲みの年寄りめ! この話し隠してたわね)
イヴァの方を向いたリリの表情は満面の笑みだ。
聞こえていたのだろう、イヴァはあからさまに目を逸らしていた。
しかし、ジィーッと睨み続けるリリに恐れをなしたのか、杖を突くと収納魔法から樽を3つも出した。
「3樽も隠してたの? 全くイヴァったら……」
「妾がクラウディアから直接貰ったものなんじゃから良いではないか!」
「確かにそうね」
「じゃろう?」
「じゃあこれはイヴァの物でいいわよ」
(助けに来てもらったわたしが言えた義理ではないわよね、でも……)
リリの言葉に、イヴァの顔が晴れやかになっていくが、リリは言葉を続ける。
「ラーナとアンが許してくれるならね!!」
「っえ!? っあ……」
「一緒に戦ったんでしょ? 分け合わなきゃダメよー」
(勝ち逃げなんてさせないんだから!)
イヴァは頭を抱えて天を仰ぎ、泣き叫ぶように答えた。
「あの二人と分け合ったら妾の分なんて残らんではないかー」
「そこは3人で話し合ってね! っあ、クリスタも入れたら4人ね!」
「まだ増えるのかや? ラーナだけでも一日で一樽は飲み干すのじゃぞ?」
縋るように助けを求めるイヴァを冷たくあしらう
「じゃあ助けに来てもらったんだし、わたしは料理の分しか貰わないわ!」
「リリの取り分が減った所で、何の足しにもならんわ」
そう言い、ガックシと肩を落としたイヴァ。
リリはケラケラと笑い、手を振るとラーナの元へと向かった。
リリは知る由もないが、ピクシーの秘法と多種族に呼ばれているものには、勘違いから起きたからくりがある。
力も弱く魔法に長けた体躯の小さなピクシー族は、自ら人里に下りてこない限り、まずみつかること自体が珍しい。
だからこそ、生活様式は謎に包まれているのだが、一般的に知られているのは魔法主体の生活をしており、ちょっとした力仕事ですら魔法で済ませること。
主食は木の実や花の蜜などの小さなものを好んで食べる、その程度だ。
実際大きくは間違っていない、生活するには木の実で十分事足りる、しかし肉も魚も普通に食べる。
好んで木の実を食べているのは、持ち運びが楽で腐らないからという、実に合理的で現実的な理由である。
生来から魔法に長けた種族であるピクシーならば、簡単に自分の何倍もの大きさの大型動物すら狩る事ができる。
なので、一人で居ても食糧難になることはほとんどないのだが、動物を見つけ、狩りをし、下処理をして料理をする、ここまでやっても結局、殆どは捨てることとなる。
だからこそ、村のような集団ですら狩りをする必要性がない、したところでめんどくさいからだ。
食糧には困らないというピクシーという生物の特殊性、更には自由を好み規律を嫌う性格が、一部の例外を除きピクシーという種族から定住という文化を失くした。
そして厄介なことにイタズラ好きで自由奔放、これが問題だった。
聞いた人、見た人が話す内容が各地方で内容がまったく違う、そんなことは当たり前のようにあるのだ。
それはピクシーの噂を専門に調べる専門家がいるほどに煩雑としている。
ピクシーがよく食べる木の実であるスパイスやハーブの効能にも詳しいのは生態的には当たり前。
しかし他種族と居るときに、木の実を好んで食べることはしないし、聞かれたことに対して適当に返事をする。
これが重なり続け、気づけば他種族からは秘法とよばれることが増えていったのだ。
今回のリリの行動自体は、スパイスの種はピクシーには大きく硬い、だから重たい靴で潰していた、たったそれだけだったのだが。
嘘八百の技術体型が物語の一節に綴られ、それを聞き信じたものの間で実しやかに囁かれている、いわゆる都市伝説や空想に近い話と全く同じ行動をとっていた。
元貴族とはいえ、いや逆に中途半端に詳しい元貴族だからこそ、クラウディアはピクシーの出てくる物語を子供の頃に読むことができ、そして信じ込んでいた。
だからこそ、シンデレラに出てくる魔法使いのビビデバビデブーという魔法を聞いたかのように、興奮したクラウディアはリリに詰め寄ったのであった。
* * *
「それは残念ですわ、あの『ヴェルキンドの冒険』に出てくる妖精の秘法が知れると思いましたのに……」
クラウディアはリリの話を聞いてそう言ったが、よくよく考えれば香辛料で臭みを取っているだけなので分かりそうなものではある。
自身の思い込みで落胆したクラウディアは、その事にまったく気づいていなかった。
リリ自身も悪びれもせず、訂正すらしないまま話を続けたので、ピクシーの新たな秘法がここに生まれた。
「そういえばクラウディアは白ワインと、バターか動物の油ってあります? レバーペーストに使いたいんですけど、流石にないですよね……」
尻もちをついたまま靴を脱ぎ、問いかけたリリ。
それを見て、クラウディアは頭をかしげながら答えた。
「ん? 白ワインなら、荷運びの褒美代わりに渡しましたわ」
「っえ? イヴァに? 聞いてないんだけど」
「彼女の褒美ですし良いのではなくて?」
「クラウディアはいいの?」
「少量ですし、安酒ですから、あげたところで大したことはありませんわ」
「ふーん……」
(酒飲みの年寄りめ! この話し隠してたわね)
イヴァの方を向いたリリの表情は満面の笑みだ。
聞こえていたのだろう、イヴァはあからさまに目を逸らしていた。
しかし、ジィーッと睨み続けるリリに恐れをなしたのか、杖を突くと収納魔法から樽を3つも出した。
「3樽も隠してたの? 全くイヴァったら……」
「妾がクラウディアから直接貰ったものなんじゃから良いではないか!」
「確かにそうね」
「じゃろう?」
「じゃあこれはイヴァの物でいいわよ」
(助けに来てもらったわたしが言えた義理ではないわよね、でも……)
リリの言葉に、イヴァの顔が晴れやかになっていくが、リリは言葉を続ける。
「ラーナとアンが許してくれるならね!!」
「っえ!? っあ……」
「一緒に戦ったんでしょ? 分け合わなきゃダメよー」
(勝ち逃げなんてさせないんだから!)
イヴァは頭を抱えて天を仰ぎ、泣き叫ぶように答えた。
「あの二人と分け合ったら妾の分なんて残らんではないかー」
「そこは3人で話し合ってね! っあ、クリスタも入れたら4人ね!」
「まだ増えるのかや? ラーナだけでも一日で一樽は飲み干すのじゃぞ?」
縋るように助けを求めるイヴァを冷たくあしらう
「じゃあ助けに来てもらったんだし、わたしは料理の分しか貰わないわ!」
「リリの取り分が減った所で、何の足しにもならんわ」
そう言い、ガックシと肩を落としたイヴァ。
リリはケラケラと笑い、手を振るとラーナの元へと向かった。
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