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18話、サウエム荒原(4)
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「クリスタは知っています、城の誰よりも早く起きては剣の稽古をし、夜は誰よりも遅くまで帝王学に励む努力家であることを」
「努力なんてしてないわ、わたくしは天才なのよ!」
クラウディアの言葉をクリスタは無視して言う。
「どんなに辛いことがあっても、領民や私たち平民の前では笑顔で市政に立つ我慢強い一面をもっていることを知っています」
「そ、そんなことないですわ」
その言葉を聞き、クラウディアは恥ずかしそうに俯く。
「クリスタはずーっとクラウディアお嬢様の後ろから見てきました」
しかしクリスタは止まらない。
「男として、後継者として育てられた幼少時代の苦悩」
「そんなこともありましたわね」
「しかし弟君が生まれて後継者候補から外れ、それでも強固な意志を持って、民の生活と領の未来という大きな責任を自ら抱えた、その尊い姿」
「あ、当り前のことをしたまでよ」
「そんなクラウディア様を、クリスタはずっと立派な主人であり、大切な『妹』のように想っていました」
「ク、クリスタ……ごめんなさい」
涙を流し、クリスタを抱きしめるクラウディア。
クリスタはクラウディアの頭を右手で撫でると、そっと抱きしめ返し優しく話す。
「お嬢様、貴女は他人にも自分にも厳しすぎる、そんなにも自分を追い詰めていたら、いつか潰れてしまいます」
「そうかもしれないわね、クリスタは毒舌だけど、いつもわたくしを助けてくれていたのは知っているわ」
「だからこそ、もっと周りに甘えても良いのです!」
「クリスタの最後の忠告、直ぐには変わらないけど少しだけ気を付けるわ」
「無理をしないでくださいね」
クリスタは更に強く抱きしめる。
「わたくしには、もうそんな弱音を言える人はいないけれど……」
軽くうなずき、クラウディアはボソリと呟いた。
その言葉が聞こえたのか、クリスタはいつも以上に無表情のまま、傷のない片目から涙を零す。
「あの時、剣が振り下ろされる時、クリスタは思ってしまったのです、ああこれで楽になれると……」
ずっと胸の内にあった後悔を、静かに懺悔し始めた。
「しかしそれと同時に、クラウディア様の道の終わりまで支え、付き添えなかった不甲斐ない従者であった自分を後悔もしました」
「クリスタ……」
「アンデットとして生き返った今では、最後まで大事な主であり、妹のように思ってきたクラウディア様を守って生き続けたのだと、この傷だらけの身体をクリスタは誇りに思っています」
「本当にごめんなさい」
「クリスタは大丈夫です、だからもう泣かないで下さい」
そう言いながらも、自分はとめどなく溢れる涙を抑えられないクリスタ。
「貴女も泣いているじゃない、普段から感情表現が乏しいクリスタが泣くなんて……でもそうね、いまクリスタが幸せなら良かったわ」
クラウディアとクリスタは、涙でグシャグシャになった顔を取り繕うこともせず、満面の笑みで抱きしめあっていた。
(あれぇ? この話の主人公ってわたしだよね? 周りがドラマチックすぎてわたし完全にモブキャラなんですけど、普通こういう別れのシーンって、わたしがクローズアップされるものじゃないの?)
リリは二人の会話を見て、そんなことを考えていた。
しかし二人の背景や関係性を考えると、悲しい気持ちになるばかりであった。
* * *
「あれは感動したよねぇ、私達には無縁の、美しき主従関係ってやつだよねっ、まるで物語の一説の様だったじゃないかっ」
満足そうに話しをしたソフィアに、リリが苦言を呈す。
「それは確かにそうだけども、この話ってソフィアが南に向かう理由になってないわよね?」
「本当に気づかないのかいっ? ん? ん?」
煽り散らすソフィア、ロック鳥の燻製をほおばりながらラーナが答えた。
「ソフィアは言葉が足りない、クリスタがアンデッドだからでしょ?」
「ん? ラーナそれはどういうこと?」
ラーナの答えでも理解ができなかったリリは更に聞き返す。
(ラーナも言葉が足りないって!)
「不思議な生き物を研究してるソフィアには、絶好の実験体ってこと」
(その言い方は元も子もないような……)
そう思ったリリだが、ソフィアを庇う気はないので、素直な反応をした。
「あーなるほどねーって、その一言で良くない?」
リリが苦々しくソフィアに言うと、クリスタも顔を隠しながら同意した。
「クリスタもリリ様と同意見です、ソフィア様が関係のない話をしたせいで、クリスタは顔から火が出そうです、アンデットなので顔色は変わりませんが」
(あー、勢いでカッコつけたセリフって、他人から改めて聞きたくないよねー、これは死にたくなる)
自身の黒歴史を思い出したリリも黙る、そこに突然イヴァが質問をした。
「ちなみにソフィアはアンデッドの研究をしたことはあるのかや?」
「んーないかなっ、そうそう出会えるもんでもないしねっ」
さらっととんでもないことを聞くイヴァ、対したソフィアもさらっと答えた。
(まったくこの奇人達は……)
リリは心の中で頭を抱えた。
「そうなのかや? それじゃあ無理じゃの」
「何がだいっ? ダメもとで天才錬金術師の私に言ってご覧よ!」
「それもそうじゃの」
(なんの話しだろ? 深刻そうには見えないけど……)
「みんな聞いてくれんかや? もちろんクリスタの話じゃ」
イヴァの言葉に皆が耳を傾ける。
「このままだとしばらくしたらクリスタは腐る」
「「「えっ!!」」」
リリとラーナ、更には珍しいことにクリスタも、びっくりした声を出す。
「努力なんてしてないわ、わたくしは天才なのよ!」
クラウディアの言葉をクリスタは無視して言う。
「どんなに辛いことがあっても、領民や私たち平民の前では笑顔で市政に立つ我慢強い一面をもっていることを知っています」
「そ、そんなことないですわ」
その言葉を聞き、クラウディアは恥ずかしそうに俯く。
「クリスタはずーっとクラウディアお嬢様の後ろから見てきました」
しかしクリスタは止まらない。
「男として、後継者として育てられた幼少時代の苦悩」
「そんなこともありましたわね」
「しかし弟君が生まれて後継者候補から外れ、それでも強固な意志を持って、民の生活と領の未来という大きな責任を自ら抱えた、その尊い姿」
「あ、当り前のことをしたまでよ」
「そんなクラウディア様を、クリスタはずっと立派な主人であり、大切な『妹』のように想っていました」
「ク、クリスタ……ごめんなさい」
涙を流し、クリスタを抱きしめるクラウディア。
クリスタはクラウディアの頭を右手で撫でると、そっと抱きしめ返し優しく話す。
「お嬢様、貴女は他人にも自分にも厳しすぎる、そんなにも自分を追い詰めていたら、いつか潰れてしまいます」
「そうかもしれないわね、クリスタは毒舌だけど、いつもわたくしを助けてくれていたのは知っているわ」
「だからこそ、もっと周りに甘えても良いのです!」
「クリスタの最後の忠告、直ぐには変わらないけど少しだけ気を付けるわ」
「無理をしないでくださいね」
クリスタは更に強く抱きしめる。
「わたくしには、もうそんな弱音を言える人はいないけれど……」
軽くうなずき、クラウディアはボソリと呟いた。
その言葉が聞こえたのか、クリスタはいつも以上に無表情のまま、傷のない片目から涙を零す。
「あの時、剣が振り下ろされる時、クリスタは思ってしまったのです、ああこれで楽になれると……」
ずっと胸の内にあった後悔を、静かに懺悔し始めた。
「しかしそれと同時に、クラウディア様の道の終わりまで支え、付き添えなかった不甲斐ない従者であった自分を後悔もしました」
「クリスタ……」
「アンデットとして生き返った今では、最後まで大事な主であり、妹のように思ってきたクラウディア様を守って生き続けたのだと、この傷だらけの身体をクリスタは誇りに思っています」
「本当にごめんなさい」
「クリスタは大丈夫です、だからもう泣かないで下さい」
そう言いながらも、自分はとめどなく溢れる涙を抑えられないクリスタ。
「貴女も泣いているじゃない、普段から感情表現が乏しいクリスタが泣くなんて……でもそうね、いまクリスタが幸せなら良かったわ」
クラウディアとクリスタは、涙でグシャグシャになった顔を取り繕うこともせず、満面の笑みで抱きしめあっていた。
(あれぇ? この話の主人公ってわたしだよね? 周りがドラマチックすぎてわたし完全にモブキャラなんですけど、普通こういう別れのシーンって、わたしがクローズアップされるものじゃないの?)
リリは二人の会話を見て、そんなことを考えていた。
しかし二人の背景や関係性を考えると、悲しい気持ちになるばかりであった。
* * *
「あれは感動したよねぇ、私達には無縁の、美しき主従関係ってやつだよねっ、まるで物語の一説の様だったじゃないかっ」
満足そうに話しをしたソフィアに、リリが苦言を呈す。
「それは確かにそうだけども、この話ってソフィアが南に向かう理由になってないわよね?」
「本当に気づかないのかいっ? ん? ん?」
煽り散らすソフィア、ロック鳥の燻製をほおばりながらラーナが答えた。
「ソフィアは言葉が足りない、クリスタがアンデッドだからでしょ?」
「ん? ラーナそれはどういうこと?」
ラーナの答えでも理解ができなかったリリは更に聞き返す。
(ラーナも言葉が足りないって!)
「不思議な生き物を研究してるソフィアには、絶好の実験体ってこと」
(その言い方は元も子もないような……)
そう思ったリリだが、ソフィアを庇う気はないので、素直な反応をした。
「あーなるほどねーって、その一言で良くない?」
リリが苦々しくソフィアに言うと、クリスタも顔を隠しながら同意した。
「クリスタもリリ様と同意見です、ソフィア様が関係のない話をしたせいで、クリスタは顔から火が出そうです、アンデットなので顔色は変わりませんが」
(あー、勢いでカッコつけたセリフって、他人から改めて聞きたくないよねー、これは死にたくなる)
自身の黒歴史を思い出したリリも黙る、そこに突然イヴァが質問をした。
「ちなみにソフィアはアンデッドの研究をしたことはあるのかや?」
「んーないかなっ、そうそう出会えるもんでもないしねっ」
さらっととんでもないことを聞くイヴァ、対したソフィアもさらっと答えた。
(まったくこの奇人達は……)
リリは心の中で頭を抱えた。
「そうなのかや? それじゃあ無理じゃの」
「何がだいっ? ダメもとで天才錬金術師の私に言ってご覧よ!」
「それもそうじゃの」
(なんの話しだろ? 深刻そうには見えないけど……)
「みんな聞いてくれんかや? もちろんクリスタの話じゃ」
イヴァの言葉に皆が耳を傾ける。
「このままだとしばらくしたらクリスタは腐る」
「「「えっ!!」」」
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