王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!

こさか りね

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次の休みの日。

試作品を作る前に、妃教育を受けるのだ。

私は、歩きながら右手の甲をさすった。
先日、キスをされてから、その事ばかりを考えてしまう。

私の事が好きだと言ったが、本当なのかと疑いたくなる自分と、もし本当ならばどうすれば良いのか、と悩む事に疲れ果てていた。

今日もそんな事ばかりを考えていたら、あっという間に王妃様の部屋へ着いてしまったのだ。

「王妃様、失礼致します。フェアリエルにございます」
「どうぞ、入ってらして」

今日も丁寧に教えてくれる。
恙無つつがなく終わり、ウィルフォードの所へ行こうとしたら、引き止められた。

「ウィルフォードから、何か言われていない?」
いつもよりも眉をハの字にして、神妙な面持おももちで聞いて来る王妃様に、私は好きって言われた事だとすぐに気付いた。

「・・・はい」
言い辛くて気まずい雰囲気が出てしまう。

そうしたら、王妃様が絶望した顔になり、いきなり私の手を取った。

「フェアリエルさん、何か困った事があったら相談しに来なさい。必ず力になりますからね!」

王妃様は切羽詰まった表情で伝えてくれるのだが『貴女の息子に好きだと言われて困っています』とは流石に言えない。
だから、無難に返した。

「はい。ありがとうございます」

私は、親子で色々と話すぐらい仲良しなんだな。と思い、時間となった為、ふたたびウィルフォードの所へと向かったのだ。

【王妃視点】

ウィルフォードがフェアリエルさんに婚約解消の話をした様だ。
気まずそうにしていたわ。
・・・なんて言う不甲斐のなさ。

解消になるのなら、契約は無効だわ。
ウィルフォードへ後程のちほど、問い詰めましょう。

そう息巻く王妃であった。


【視点は戻り、その頃のフェアリエルは・・・】

ウィルフォードの侍従に客間へと案内されていた。

どんな顔をして会えばいいのか分からない。
ウィルフォードに会うだけなのに妙に緊張する。

「フェアリエル。待たせてすまない。妃教育はどうだった?」

・・・あれ?いたって普通ね。
意識し過ぎていたのかもしれないわ。

「今日もとても丁寧に教えてくださったわ。ウィルも忙しいのに付き合ってくれてありがとう」
「俺は君に会いたいからな。今日も会えて嬉しいよ。」

そう言って、愛情たっぷりの笑顔を送ってくれたのだ。

・・・そんな事なかった、愛情表現がすごい。
すっかりられたわ。

私の意識の違いでそう思うのか、口調も態度もいつもより柔らかい様に感じる。
している私に『早速始めようか』と言ってウィルフォードは私の隣に座ったのだ。

・・・えっ・・・隣?近くない?

私はマジッククレーを手に取りコネコネする。
すぐ隣にウィルフォードがいる為、なかなか集中できない。


「・・・あの、ウィル?ちょっと近くない?」
「そう?この方が手伝いやすいからね」

時間を作って来てくれているのだ、ウィルフォードのしやすい方が良いだろうと思い、納得したのだった。

「そう、なのね。・・・ごめんなさい。集中するわ」

一つ一つの工程を思い浮かべて落とし込んで行く。
火と水を組み合わせて水蒸気を作り出すのだが、今まで一つの元素しか作った事がないので、なかなか上手く行かない。

ふぅ。っと、思わずため息が出てしまった。

「何か分からない事があったのか?」
「ええ。二つの元素が結びつかなくて。言葉では分かっていたけど、ちゃんと理解していなかったんだわ」

「そうか。
 ・・・少し触れるよ」

そう言って、私のマジッククレーを持つ手の上から自分の手を重ねた。
肩は完全に触れ合っている。

!?ビックリして、固まってしまった。
それなのに、ウィルフォードは何事もないように話を続ける。

「今、頭の中で浮かぶ回路が共有されているのが分かるか?
俺がこれから繋いで行くので良く見ていてほしい」

そう言って、どんどんと落とし込んで行く。

すっ、すごいわ!

私が理解していたのって、上辺だけだったのね。と再認識した。

そうしてあっという間に作り上げていく。

「ここまで来ればどうだろう。後は出来そうか?」
「ええ、ありがとう。やってみるわ」
最後の仕上げは何とか自分で作る事ができたのだ。

すぐに形に出来ると考えていた、自分の甘さが嫌になる。
あんなに大見得おおみえを切ったのに、ウィルフォードがいなければ大半は実現できない。

「私、何も理解していなかったわ。貴方がいなければ、このマジッククレーも作る事が出来なかった。本当にありがとう。自分の詰めの甘さを実感したわ」

「まぁ、確かに理解はまだ足りていないが、君の出したアイディアはとても素晴らしい物だ。
作る事は、知識と経験を積めば出来る様になるが、アイディアはそうはいかない。
君はもっと自分をめてあげてもいいのではないか?」

「ありがとう。
・・・私、もっと頑張るわ」

前世の知識を使っているので、素直に喜べないが、頑張る事は私にも出来る。
もっともっと、精進しょうじんしなくては。


【その日の夜】

ウィルフォードは母に呼び出された為、母の部屋へと来ていた。

部屋へ入ると不機嫌な顔を隠そうともせず、いきなりまくし立てて来たのだ。

「ウィルフォード。あなた、フェアリエルさんに解消する事、伝えたんですって?
今日、聞いたわ。
・・・とても、気まずそうにしていたわよ。
いいこと?わたくしは、この先、フェアリエルさんに何かあったら必ず力になりますからね。
本当になげかわしい」

悲壮感たっぷりでハンカチを目に当て、泣いているパフォーマンスをしてくる。
・・・そう言えば、解消するって話しをたな。と思い出し、聞き直した。

「母上、何の話ですか?」
「だから、婚約解消の話よ!伝えたのでしょう?」

ものすごい勢いで怒りをぶつけて来た。顔を見ると、やはり涙は出ていなかった。

「いいえ、解消するとは話していませんし、するつもりもありませんよ」

「・・・どう言う事?フェアリエルさんに聞いたら、すごく言い辛そうだったわ。
あなた、何を言ったの?」

「これからの事を少々。ちなみになんて聞いたのですか?」

「何か言われていないか。と聞いたのよ。
それより、解消はしないの?」

「はい。解消するのを止めました」

「なんて事。わたくし、てっきり解消の話をしてしまったのかと思っていたわ。
早速、マクシエル様にも、お伝えしないと。」

そう言って喜びいそしんで、部屋を出る支度をしている。
俺は部屋へ戻るか、と歩き始めたら母が再度口を開いた。

「ウィルフォード、いいこと?何事も全力で取り組みなさい。やり残した事があっては、まともに後悔すらも出来ないのよ」

「はい、母上。肝に銘じます」

母からの有り難い教訓を教えてもらい、俺は退出したのだ。

その後、両陛下の心に安寧がもたらされたのは言うまでもない。

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