王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!

こさか りね

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アディエル視点

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「では、行こうか。念の為、上着は被って行こう。いいかい?」
「うん。分かった」

アルマの手を引き裏口へとやって来た。
まだ、父達は来ていない。

アルマは、とても成人している様には見えない為、聞いていみたのだ。

「アルマは、いくつなんだい?」
「じいちゃんがボクを拾って11年目って言ってたんだ」

「この剣術大会は18歳から出場可能なんだ。自己申告制だから通過できたのかな?
それもそれで、問題ありだけどね・・・」

しかし、11歳と仮定すると、かなりの大柄だ。人間で言うと15.6歳程の体躯だろう。
これも獣人の特徴なのだろうか・・・。

しばし考えにふけっていると、馬車がやって来た。

窓から顔を出した父が『アディ待たせたな!早く乗りなさい』と声を掛けて来たので、アルマと一緒に馬車へと乗る。

「アルマ、嫌じゃなければ上着を取っていいよ」

僕がそう言うと上着を取った。
綺麗な灰色の髪に耳が生えている。目はパッチリと大きく、外にいた時とは違い、瞳孔が開いていた。

「紹介するね。僕の父と母だよ」
「こんにちは、アルマ・ニコネスです」

アルマはペコリとお辞儀をして挨拶をしている。

「挨拶ありがとう。私はベンジャミンと言う。
君に会えて嬉しいよ」

笑顔で答えた父に対して、母は何かを思案している様子だった。

わたくしはマリアベルよ。よろしくね。
・・・アルマ、貴方、獣人よね?」

何故、母が知っているのだろう。
・・・エルから聞いたのか?

そう思っていたら、父が言い出した。
「ベル?君は彼の種族を知っているのか?」

僕同様に父も驚いたのか、聞きたかった事を代弁してくれたのだ。

「知っている。とは語弊ごへいがあるわ。
ただ、わたくしの出身国には数は少ないけれど、獣人が存在している。
と言う本があるの。
アルマの特徴は、本に書いてある事と一致しているわ」

「そうなのか。この国では、見聞きした事がないから知らなかったよ。
でも、そうだな。陛下なら、何か知っているかもしれないな」

父が納得した所で、アルマがソワソワしながら、母に問いかけた。

「ボクの出身国の名前は書いてありましたか?」

母は思い出しているのか、しばし瞳を閉じてから、再度、アルマに目を向けたのだ。

「そうね。書いてあったのは【遥か彼方に獣人達の楽園が存在する】としかなかったの。
・・・力になれなくてごめんなさい」

「ううん。ありがとう。
ボクみたいな人が、他にもいるって分かって嬉しかったです」

そして、話している内に公爵邸に着いたのだ。

「アディの家は大きいんだね!迷子にならないの?」

アルマはキョロキョロとしながら、僕に付いて来る。
そんな彼を見て、微笑ましくなってしまった。

「ははっ。迷子にはならないよ。アルマ、お腹は空いていないかい?」
「うん。空いてる」

「では、まずは食事にしよう。すぐに用意させるが、苦手な物はある?」
「特にないよ!大丈夫」

僕は準備をさせる為、メイドに伝える。

そうして、20分後。
食事の準備ができたのだ。

アルマは余程お腹が空いていたのか、黙々と口へ食べ物を運ぶ。
そして、ほぼ完食し落ち着いた様子だった。

「アディありがとう。これで、じいちゃんの所へ帰れるよ」
「そうだね。ところで、アルマが帰る山はどの辺りなんだい?」

僕はテーブルに地図を広げて見せる。

アルマがした場所は、自領の南端なんたんの山だった。
ここは王都になるので、それなりに距離がある。この場所だと、馬車で馬を交換しながら5日はかかる距離だ。

「アルマは、ここからどうやって来たんだい?」
「走って来たよ。体力だけは自身があるんだ!」

この距離を走るとは・・・。
身体能力が高いとは知っていたが、ここまでとは思わなかった。

「お爺さんの所に僕も一緒に行きたいんだが、いいかな?」
「アディも一緒に来てくれるの?
嬉しいな!じいちゃんはね、すごく優しいんだよ。いつも笑顔なんだ。
アディも、じいちゃんに似ているね!」

そう屈託くったくなく言うアルマに、僕も笑顔で返した。

「そうなのかい?それは嬉しいな。
そうしたら、準備をしなくてはいけないから、このまま少し待てるかい?」

そう伝えると『分かった』と言い、笑顔で頷いたのだ。
そして、僕はアルマに1つ質問をする事にした。

「そうだアルマ、字は読める?」
「読めるよ。でも、難しい字はまだ習ってないんだ」
「そうか。では、絵本を何冊か持って来させるから、読んで待っていてくれ。
分からない事があったら、後で聞いてくれて大丈夫だからね」

そう伝え、アルマを残し部屋を出る。
そして僕は、メイドに絵本の種類を伝えた。

アルマはきっと、死を理解していない。
口で伝えるより、読んで知ってもらう方がいいと思ったのだ。

普通に考えると、僕がここまでする義理はない。

だが、彼の瞳を見た時、放って置けないと思ってしまった。
もし、嫌な予感が当たってしまったら・・・。

祖父の死をたりにしてどう思うだろうか。
唯一ゆいいつの家族が急にいなくなるのだ。
・・・とても11歳の少年に受け止められる事ではない。

それに、彼はこの国では、認知すらされていない獣人だ。
この先の事を思うと心が痛い。

だがもし、アルマが望むのなら、公爵家で引き受ける事も視野に入れている。
一人がいいと言うのであれば、その限りではない。
先程、両親には許可を得ているのだ。

これから馬車で往復10日の旅に出る。
万が一に備えて準備をしておこう。

とその時、フェアリエルが帰って来た。

「お兄様、ただいま帰りました。何処かに出かけるの?」
「ああ。アルマの祖父の所へね。だから、余裕を見て15日程、留守にするよ」
「そんなに?随分遠いのね。分かったわ。
お兄様、気を付けて行って来てください」

フェアリエルが真剣な顔で送り出してくれる。
僕は安心させる為に、笑顔で返したのだ。

「行ってくるよ。それと、アルマの事で父様母様に色々話してあるから、後で聞いておいてくれるかい?」
「ええ。分かったわ」

そうして僕は、アルマの祖父が生きていてほしいと、希望を持ちながら、馬車へと乗ったのだった。
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