王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!

こさか りね

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アディエル視点

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アルマと一緒に馬車へと乗り込む。

アルマは先程、メイドからもらった本を持っていた。

「何か、分からない事があったかい?」

アルマは本を見つめながら、思い返すように話し始めたのだった。

「うーん。みんなね、誰かをかばって怪我をしたり、食べられたり、寒くて死んでしまったりするんだ。
・・・とても悲しかったよ。
でも、それにも理由があって、みんな誰かを守る為にした事なんだ。
それは分かったんだけど、一つだけ分からない事があったんだ。
・・・一緒に見てくれる?」

そう言って、アルマは一冊の本を開き、僕に見せてくれた。

その本の絵は、お婆さんがベッドで寝ている絵だったのだ。
そして、不思議な顔で、再度、問いかけて来た。

「お婆さんはね、何もないのに起きないんだ。
ここに書いてある(眠る様に死んでいた)ってなんなの?
寝ているんじゃないの?」

そう、アルマは死について知っていた。ただ、寿命で死ぬ事を知らなかったのだ。

「アルマ、これはね、お婆さんは歳を取って死んだのだよ。彼女は天寿てんじゅまっとうしたんだ」

「怪我や病気じゃないのに、死ぬの?」

いつもの、つぶらな瞳で聞いて来る。
僕は、アルマの瞳を見つめ、伝わる様にと、一言一言に思いを乗せて話したのだ。

「ああ。僕も、君も、生きている者全てに、死は訪れるんだ」
「みんな、死ぬの?・・・怖い・・・」

アルマの怯えを含んだ声を聞き、落ち着かせ様と優しく答える。

「そうだね。
知らない事は、誰だって怖いよね。
もちろん、僕だって怖いさ。
でもね、その怖さを軽くする方法があるんだよ」

「なに?」

「精一杯生きる事さ。
神の教えを守り、恥じない生き方をすれば、いずれ天国へ行ける。
そう思えば、少しは気持ちが軽くならないかい?」

「ボクには、まだ難しくて分からないよ」

確かに、11歳の彼には死など、考えた事もないだろう。
だから僕は、一つだけ、彼に伝えたんだ。

「そうか。だがこの先、アルマに絶望する様な事が起こったとしても、諦めずに精一杯生きてくれ。
きっと、神様は見ていてくださるよ」

「うん。分かった!諦めないって事だよね。ボク頑張るよ」
「ああ。僕もアルマに負けない様に、頑張らなくてはね」

そうして、馬を替える為、休憩を挟む事になった。

夕食は時間がしいので、馬車の中で食べる事にしたのだ。
持ち帰りできる、ホットサンドとフルーツジュースを買ってから、また馬車へと乗り込む。

アルマはホットサンドが好きなのか3つも食べた。
具材はハム・タマゴ・チーズが入っている。
1つでも結構なボリュームだ。
アルマの食欲旺盛な所をたりにすると、なんだか、微笑ましくなってしまった。

その後、4時間程走ってから宿へと入る。

公爵家が出資している宿が、自領には多々ある為、いつ泊まっても良い様に、どの宿も一室は確保されているのだ。
一室でも、メインルームにベッドルームが3部屋付いている。

僕、アルマ、御者と従者で一室ずつ使う事となった。

今回は護衛を連れて来ていない。
僕もだが、アルマも、自分の身は守れるので、必要ないと判断した。
それより、機動力きどうりょくを優先させたのだ。

そうして、明日の経路を確認して寝支度をし、早々に就寝したのである。


次の日の朝は、日の出と共に出発した。

前日に宿へと頼んであった朝食をもらい、馬車の中で、従者がみなに配る。

バンズにローストチキンとトマト、レタスが挟んである。それにフライドポテトだ。

こう言うメニューは、家では出てこないので、外出する時の楽しみだったりするのである。

昨日アルマの食欲を見て、余分に頼んでおいたのが良かった。
朝でも、2個をペロリと食べてしまったのだ。

獣人は、並外れた身体能力だから、消費するのが早いのではないか、と思ったのである。

「アルマ、足りるかい?」

アルマは牛乳を飲んでいたのをめて、答えてくれた。

「うん。大丈夫だよ。
アディの家でも思ったんだけど、みんな、こんなに美味しいご飯を食べているんだね!」

本当にそう思っているのだろう、キラキラとした瞳で話してくれる。

「美味しかったのなら、よかったよ。アルマはどんな食事をしていたんだい?」

「いつも、じいちゃんが作ってくれるんだ。
家の後ろに畑があるから、収穫できそうな野菜で、メニューが決まるんだよ!
もちろん、じいちゃんが作ってくれたご飯も美味しいんだけど、あんまり肉とか出てこないんだ」

やはり子供だと、野菜より肉が好きなのだろう。
僕は『アルマは肉が好きなのかな?』と問いかけた。

「うん。肉も魚も好きだよ。魚は近くの川で捕れたから、良く食べていたんだ。
賞金があれば、じいちゃんにも、ちゃんとした肉を、食べさせてあげられたんだけど、仕方がないよね・・・。
だからね、帰りにウサギがいれば、狩って行こうと思っているんだ。
見つかればいいな!」

そうしてアルマは、ウサギの仕留め方や、食べ方などを一生懸命、僕に教えてくれたのだ。
そんなアルマを見ていたら、勝手に口から出てしまった。

「・・・アルマ。もっと近くになったら、ちゃんとした肉を準備しようね。お爺さんに食べてもらおう」

「わぁ!ありがとうアディ!じいちゃんきっと喜ぶよ。嬉しいなぁ」

そう喜ぶアルマを見て、思ってしまった・・・。

生きていてほしい。

そう願わずには、いられなかったのだ。
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