〈完結〉伯爵令嬢リンシアは勝手に幸せになることにした

ごろごろみかん。

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3.伯爵令嬢リンシアは共同戦線を張る

9話:餅は餅屋と言いますでしょう

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そして、私は目の前に聳え立つ本棚の数々に、唖然とした。

「……これはまた、すごい量……ですわね?」

パッと見、地下五階くらいまで続いていそうだ。思わず、意識が遠くなってしまったが、すぐに思い直す。

(なんと言っても、ここは魔法大国エルドラシア!!前世の図書館みたいに、検索機能が用意されているはず……!!)

その可能性に思い当たった私は、少し気を取り直した。
そして、ルーズヴェルト卿と手分けして、【魅了】の効果のある魔道具の洗い出しにかかった。





検索サーチ機能はあった。あったのだけど……地上に戻った私は思わず頭を抱えた。

(数が……数が多すぎるわ!!)

ある程度効力期間と対象範囲を絞っても、まだこんなにある。私は紙に書き付けた候補リストを見ると重いため息を吐いた。

「まさか二十以上にも上るとは、流石に予想外ですね……」

答えるのは、対面に座るルーズヴェルト卿だ。

今、私たちは、私が魔法学院に在学していた際使っていた研究室に腰を落ち着かせていた。

あれから、まる二日が経過する。
一昨日、私たちは検索機能を使って、蔵書を探し出したはいいけど……そこで膨大な数が引っかかっヒットしたので、そこで一度作業を切り上げたのだ。
そして昨日丸一日使って、今度は魅了効果を持つ違法魔道具の確認を進めた。だけどふたたび、私たちはまたしても頭を抱えることとなった。

(条件に当てはまる違法魔道具が多すぎるのよ……!!)

私は、メモしたリスト一覧にふたたび目を向けた。

⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆
管理番号:第BJL!TQO’XM番
管理名:命奪いの点眼液
効果:対象に強い恋慕を抱かせる
代償:使用後半年以内に心臓発作で死ぬ
管理状態:管理(B2 a7#QK番)

管理番号:第FRA’LMJQK番
管理名:天秤のアンクレット
効果:複数人に清らかな恋心を抱かせ、依存状態にさせる
代償:耐久値を超えると足が凍死状態となる
管理状態:不明 (注釈152*番)

管理番号:第DQMXHZ’NT番
管理名:人惑わせの指輪
効果:月明かりの下、会ったものを陶酔状態にする
代償:日中の存在の消去
管理状態:管理 (B1 c%6Vm番)

管理番号:第WKL=POJ!RB番
管理名:虚栄のレース編みの手袋
効果:握手をした相手を洗脳する
代償:消費魔力が全体魔力を上回ると手足が壊死する
管理状態:管理 (B2 tX2@h番)




⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆


(しっかし……違法魔道具には代償があるのは知っていたけど……)

どれもこれも、本当物騒ね!!
違法魔道具に関わるとロクなことにならない、と言われている理由の一端を知った気がした。

「……聞いてきますわ」

このまま違法魔道具の管理名を書き付けた紙とにらめっこしていても仕方ない。そう思って腰を上げた私に、ルーズヴェルト卿が首を傾げた。

「誰に?」

「それはもちろん、違法魔道具に、です♡」

私はにっこりと微笑んで答えた。

 (もうこうなったら、直接当事者に聞くしかないじゃないの!!)

何せ、私には時間が無い。お母様との約束もあるけど──それ以上に、セリーナに自滅・・されたら困るのだ。

代償には様々なものがあるが、最終的な着地は全て同じ。何せ、悪魔の求めているものは人間の魂だ。
違法魔道具は、いわゆる悪魔との契約。
手順は、召喚者が悪魔を呼び出し、それを魔道具に住ませる。そして、自分の願いを叶えてもらう代わりに魂を差し出す、というわけだ。

それで、召喚者の魂を食らった違法魔道具は持ち主を変えて、次の所有者……つまり、新たなターゲットを見つける。その繰り返しだ。
セリーナが本当に違法魔道具を使用しているのなら、いずれ彼女の魂も悪魔に刈り取られるはず。効果が無期限の違法魔道具なんて聞いたことがないから、きっとどこかで限界が来るはずだわ。
それが明日か、明後日か、はたまた一年後かは分からない。だけど、放っておけば間違いなくセリーナは自滅する。

(……勝手に自滅されるんじゃつまらないわ)

何せ彼女には借りがある。これは、私がやらなければならないことだ。
私の返答に、ルーズヴェルト卿とクラインベルク様は意表を突かれたのか、目を瞬いていた。





ルーズヴェルト卿とクラインベルク様も同行してくださると言うので、三人でふたたび地下に向かう。地下に足を踏み入れると、うんざりした様子の違法魔道具たちに出迎えられた。

『うわぁ、また来たよ。居留守使う?』
『入ってまーすってやつ?』
『用が済んだらさっさと帰ってくれないかな』
『ふぉっふぉっふぉ。ワシはもう寝る』
『あ!じいさん狸寝入りし始めたぞ!!』

散々な歓待を受けた私は、頷いて答えた。

「楽しそうですわね。寛いでるところ申し訳ないのですが、お聞きしたいことがあるのですわ」

違法魔道具たちは返答しなかった。つまり無視である。私は構わず彼らに尋ねた。

「あなたたちの弱点って何?」

『尋問かよ!!』

少年のような声で、違法魔道具が突っ込みを入れた。それに私は首を傾げた。

「あら、過去に受けたことがあって?」

『うるせー!知らねー!帰れ!』

「言わないと……そうね。聖水とかかけてみましょうか?本当は漬け込みたいのだけど、魔封じを外すわけにもいかないし……塩水で代用できるわよね?学院長に協力を仰いでもいいのだけど、流石にお忙しいと思うのよ」

マリア先生もそうだけど、学院長も、それぞれ受け持っている仕事や、研究がある。各国から協力依頼を受けている案件もあるのだとか。多忙な彼らの手を煩わせるのは、できる限り避けたい。悪魔祓いといえば、聖水。
聖水のレシピって確か、お清めした水と、選別した塩と聞いたことがある。水道水と、食堂に常備されている食用塩でも構わないかしら?
そんなことを考えていると、至る所から違法魔道具たちの悲鳴が上がった。どうやら、弱点は見つかったようだ。

『人でなし!』
『魔女め!』
『冷血女!』

「あらあら……。そうはしゃがないでくださいませ。弱点を教えてくださってありがとう。ついでにあとひとつ、教えていただけると嬉しいのですが」

違法魔道具たちのブーイングを黙殺する私に、困惑した視線が左右から……つまり、ルーズヴェルト卿とクラインベルク様から向けられるが、それも気にしないことにする。今は情報収集が最優先だもの。彼らからの評価が多少……多少?落ちたところで気にしない。周りの目を気にしているようでは、魔道具造りは出来ない。
私は暗闇に向けて、さらに質問を放った。

「魅了効果のある違法魔道具で、対象は複数人。一般的に目につく部位への使用ではない形態……といったら何があるかしら。教えてくださる?」

餅は餅屋、ではなかった。違法魔道具のことなら違法魔道具に聞くのが、一番手っ取り早いだろう。私の質問に、一瞬、驚いたように彼らは沈黙した。


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