魔王召喚 〜 召喚されし歴代最強 〜

四乃森 コオ

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感情と行動

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自分こそがノイマンを超える最高の頭脳だということを証明するために究極の生物を創り出す研究を成功させてみせると豪語するメイニエル。
そして、その過程において自身の息子であるザザの身体を弄り回すことを正当化し、この研究は自分と亡くなった妻とザザによる“究極の愛”なのだと語ったのだった。


イカれてる・・・」


嫌悪感に苛まれたミリアが無意識に言葉を漏らす。
その隣に立つマクスウェルは、奥歯を強く噛み締め、これまでにない程の怒りに満ちた表情を見せる。
そして、そのただならぬ空気を感じ取ったザザが再び声を上げて泣き出す。


「メイニエルさん、ザザ君が可哀想です。もうこれ以上馬鹿な真似をするのはよしてください」

「馬鹿な真似?お前らのようなガキに何が分かる!!」


ザザの身を心配してこれ以上の研究を止めるようにと説得するスズネの言葉に対し逆上するメイニエル。
これまでの落ち着いた様子から一変し溢れんばかりの感情を爆発させる。


「コイツは ───── 私にとってこの世で最も大切だった妻を殺したくせに放っておいたら死ぬんだぞ!それでは、妻は何のために・・・」


そう言いながら涙ぐみ俯くメイニエルであったが、次の瞬間顔を上げると狂気に満ちた笑みを見せたのだった。


「クックックックックッ。しかし、私はツイていた。死ぬしかなかった息子が…まさか私たちの研究に適合するとはな ────── 」


高笑いをしながら優越感に浸るメイニエル。
その傍で啜り泣くザザ。
ここで我慢の限界に達したマクスウェルが怒りに満ちた声を上げる。


「メイニエル!ザザ君を解放しなさい!!」

「フンッ、何を馬鹿なことを。そういうわけにはいかないに決まっているだろう」


そして、涙に暮れるザザの頭を掴み無理矢理顔を上げさせると、反対の手で白衣のポケットから注射器を取り出したのだった。


「「「「「「 やめて(ろ)~~~~~ 」」」」」」


その意味を察知し懸命に叫ぶスズネたちの思いも虚しくザザの首筋に注射器の針が突き刺さる。

グッ…ギューーーーーーッ。


「グウォォォォォ」


注射器の中に入っていた黒紫の液体が流し込まれると、ザザは悶え苦しみながらボコボコと骨格を変化させ魔人へと姿を変えたのだった。


「ザザ君!!」

「お…ねぇ…ちゃん、た…すけ…て・・・」


そう言い残してザザは完全に魔人と化してしまった。


「ウソ…どうしよう」

「大丈夫よ、これまでだって元の姿に戻ってたんだし、とりあえず今はザザ君を止めることを考えましょう」

「うん、そうだね」

「クックックッ。こんな愚息を救うために意気込んでいるところ悪いんだが、今回打ち込んだモノは特別製でね…もう元の姿に戻ることはない。それどころか無駄な感情も無くなり私の命令だけを聞くただの殺戮兵器となったのだ!!」


「うそ…どうしよう…」

「まだです!!まだ魔人になったばかりですから間に合うかもしれません」

「そうっす、まだ間に合うっすよ」

「諦めるのは早いのじゃ」

「や…やりましょう」

「よ~し、さっさとザザ君を救出するわよ」


メイニエルの言葉を聞いても諦めないスズネたちは、まだ元に戻せる可能性があると信じて立ち上がる。
そんなスズネたちの思いとは裏腹に魔人と化したザザがさっそく襲い掛かってきた。

ドゴーーーーーン。

一瞬のうちに間合いを詰め殴り掛かってきた魔人。
その攻撃を間一髪のところで交わしたスズネたちであったが、魔人が振り下ろした拳によって大きく砕けた地面の破片が周囲へと飛散しスズネたちを追撃する。


「みんな危ない!!」


─────── キーン。

─────── ガンッ。


二手に分かれて回避したスズネたちを襲った追撃であったが、一方ではミリアとマクスウェルがスズネを守りつつ飛んできた破片全てを剣で捌ききり、もう一方ではシャムロムがラーニャとセスリーを大盾で守り攻撃を防いだのであった。

その後も次々と攻勢をかけてくる魔人であったが、スズネたちも懸命にその攻撃を回避する。
しかし、魔人とはいえ目の前にいるのがあの少年ザザだということが脳裏に浮かんでしまい反撃に出ることが出来ない。


「ザザ君、もう止めて」

「ゴロ…ズ、ゴロ…ズ」


スズネの叫びも虚しくザザは攻撃を止めようとはしない。
もしかすると本当に感情や理性といったものまで無くしてしまったのかもしれない。


「無駄だ、無駄だ。もはやソイツに意思など無い。私が止めるまで破壊の限りを尽くす化物 ───── 本物の魔人と化したのだ!!」

「あのオッサン…絶対に許さない。殺してやる」

「駄目ですよミリア。メイニエルは捕らえて騎士団に引き渡します。そして、必ず…法の下で裁かせます」

「アンタね!そんな悠長な ───── 」


そう言いながらマクスウェルへと視線を向けたミリアは固まってしまう。
その様子に気づいた他のメンバーたちも視線を向けると、その姿にゾッとし背筋を凍らせたのだった。
その表情は怒りを超えた怒りに溢れており、剣を握る手はその力によって爪が皮膚を突き破り足下へと血が滴っていた。


「僕たちは処刑人でも裁判官でもありません。・・・が、あの男だけは逃すわけにはいきません。必ず捕らえます」


そこまでの怒りを内に宿しながらも一時の感情に流されぬよう必死に耐え、今の自分に出来ることを遂行しようとするマクスウェル。
そこには師であるアーサーの教えはもちろんのこと、幼少の頃からずっと見てきたガルディア王国を守るために日々研鑽を積む聖騎士団の姿があったからである。
その姿にスズネたちはマクスウェルの目指す“騎士”というものを見た気がした。


─────── ボカンッ。

「痛っ!?」


緊迫した状況が続く中、突然クロノがマクスウェルの頭を殴る。
そして、何故殴られたのか理解出来ないマクスウェルがクロノに怒りの矛先を向ける。


「なんですか突然!!」

「ど阿呆が…キレてんじゃねぇ。言葉と感情が一致してないんだよ」

「そう見えましたか・・・」

「感情が起こるのはいい、誰にでも感情はあるからな。しかし、感情に支配されてるようじゃ半人前だ。感情を認識した後にどう行動するかは自分の意思で決めろ」

「すみません。冷静さを欠いていたようです」


そう言うとマクスウェルは瞳を閉じて三度深く深呼吸をした。


《そういえば師匠にも言われたことがある。感情はあっていい、でも支配されるな。その感情は一旦横に置いておき、今自分がとるべき行動は何かを自分に問いなさい ───── と》

《僕の中にまだ怒りはある。しかし、怒りに任せると剣筋は鈍る。僕が今とるべき行動は怒りに任せた剣ではなく、ただ一点を斬るための剣 ───── 》


そうして、再び瞳を開いたマクスウェルからは無駄な力が抜け、凛とした佇まいとなっていた。
そこには無駄な力感が無く自然体ではあるが隙は見当たらない。
それは今のマクスウェルが出来うる最高の状態であった。


「ちょっと頭が冷えたからといって何だというんだ。その騎士かぶれのガキからやってしまえザザ」

「ゴロズ…ゴロズ…」


ドーーーーーン。

力強く蹴り上げられ加速した魔人がマクスウェル目掛けて猛スピードで突っ込み、右腕を大きく広げてラリアットをくらわそうとしていた。


「フゥ~」


そして一秒もかかることなく二人が激突する。


ガッ…ガガッ… ──────── ザンッ!!


魔人の右腕とマクスウェルの剣がぶつかり合い互角の競り合いになるかと思われたが、一気に闘気を込めたマクスウェルの剣が魔人の右腕を斬り落としたのだった。


「グゥォォォォォ」


右腕を斬り落とされた魔人はあまりの痛みに絶叫しながら後方へと下がる。
そして、スズネたちから距離を取るとすぐに斬られた右腕を再生させると同時に全身を形状変化させ始める。


「ちょっと、ちょっと、やる気満々になっちゃったっすよ~」

「みんな注意して!!」


ググッ…グググググッ ─────── ドンッ!!

先程よりもさらに鋭い加速と見せる魔人。
そのスピードになんとかついていくスズネたちであったが、壁から壁へと移動する度にその速度が増していく魔人を前に徐々に追い詰められていく。


「な…なんてスピードなの」

「これってマズいわよね」

「みんな急いでウチの後ろに。ウチが受け止めて魔人の動きを止めるっすから、その隙に攻撃してくださいっす」


その指示に従い全員が大盾を構えるシャムロムの後ろに下がる。
そして、その速度がMAXに達した魔人がスズネたちに襲い掛かる。


「ハッハッハッ、そんなゴミども蹴散らしてしまえ!!ザザ」


メイニエルの言葉を受けて魔人ザザが大盾を構えたシャムロム目掛けて一気にその巨体ごと突っ込んできた。

ガンッ ─────── グッ…ググッ…グググググッ。


「グッ…ウゥゥゥゥ。これは…ちょっと…ヤバいっす」


─────── ガシャーン 。


そのあまりの威力と重量によってシャムロムもろともスズネたちは弾き飛ばされてしまう。
そして、その衝撃によってシャムロムは気を失ってしまったのだった。


「大丈夫!?シャムロム、シャムロム」


心配するスズネの呼び掛けにも全く反応を示さずぐったりとしている。


「大丈夫、気を失っているだけよ。シャムロムのことは任せたわよスズネ」

「ラーニャとセスリーは距離をとって援護をお願いします」

「分かったのじゃ。任せておけ」

「りょ…了解しました」

負傷したシャムロムのことをスズネに任せ、他のメンバーたちは瞬時に行動に移る。
ここまでやられっぱなしの“宿り木”であったが、もうザザを気にかけ遠慮していられる余裕はない。
そして、ザザを救い出すためにもまずは魔人の動きを止めて拘束しなければならない。
そのためにも守りに徹し受けてばかりいるのではなく、攻めに転ずる必要があると全員が理解したのだった。


「それじゃ行くわよ、マクスウェル」

「はい。ザザ君を救い出しましょう」


そう言うと、ミリアとマクスウェルは魔人に向かって走りだしたのだった。



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