魔王召喚 〜 召喚されし歴代最強 〜

四乃森 コオ

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開戦④

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~第一軍戦闘地~


《うおぉぉぉぉぉ ────────── 》


何処からともなく雄叫びが聞こえる。
なかなか地上まで陽の光が入ることのないパスカル大山脈では、その薄暗さも重なり周囲の状況を把握することは難しい。


「何処かで~戦いが~始まった~みたいね~」

「はぁ~…眠い…。おやすみなさい…」


他の戦闘地で本格的に戦いが始まったことを理解し気持ちを萎えさせるマウルス。
そして、そのまま瞳を閉じて眠りに入ろうとする。
しかし、そんな彼のお目付け役として同じ軍に配属されたメールによってその行いは阻止されるのであった。


「ダメよ~。みんなで~力を合わせて~戦うのよ~」

「ちょっと…メールさん、邪魔しないでくださいよ…」

「そんなこと~言わないの~。私たち三人で~目の前の敵を~やっつけるんだから~」


なんとかサボろうとするマウルスとそれを必死に改めさせようとするメール。
ここまでに何度も繰り返されてきた二人のやり取りであったが、今回はこれまでと異なる出来事が起こる。


「必要ない」


────────── !?

────────── !?


「えっ!?…ドランさんが喋った…」

「そんなことよりも~ドラン~、必要ないって~どういうこと~?」

「言葉の通りだ。我は獣王の刃。敵は全て我が討つ」


これまでの沈黙を打ち破り、突然発せられた言葉に驚きを隠すことが出来ないメールとマウルス。
彼らが驚くのも無理はない。
それほどまでに“炎獄のドラン”が発言することは珍しいのだ。
基本的に無口であり、そのスタンスは獣王であるゼリックを前にしていても変わらない。
それでも獣王への忠誠心は誰よりも高く、それは弱肉強食の獣人族社会において自分よりも強い者に対する絶対服従の掟を体現しているのであった。


「では、行ってくる」


バサッ ─────────  。


そう一言だけ言い残すとドランは自身の部隊すら連れることなく、たった一人で第一軍が陣を張る方角へと飛び立っていった。



◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


「アーサー様、ご報告致します。前方より敵が近づいてきております」

「数は?」

「それが・・・一人です」

「一人?間違いないのか?何処かに伏兵が潜んでいる可能性は?」

「いえ、斥候部隊が前線で索敵魔法によって隈なく探りを入れましたが見当たらなかったとのことです。間違いありません。相手は一人です!」


にわかに信じ難い報告である。
しかし、今はそんな冗談を言うような状況ではない。
が、──────── それでも軍を率いるアーサーとしては疑わずにはいられなかった。
何故なら、アーサー率いる直属の団、ガウェイン率いる第四聖騎士団、ガラハット率いる第十二聖騎士団、その総数は三千である。
その軍に対して一人で戦いを挑むというのは勇敢ではなくただの無謀。
そんな馬鹿なことは常人であれば絶対にやらない。
それ故にアーサーは何度も報告を確認したのであった。


「なんともまぁ~頭のイカれたやつがいたもんだな」

「ガッハッハッ。なかなか豪気な輩がいるようですな!サシの勝負であれば吾輩が行って始末してきましょうかな」

「まぁ~まぁ~落ち着けよガラハット。相手がどんなやつかも分からない状況で闇雲に突っ込んで行っても良いことないぞ」

「ガウェインの言う通りだ。相手の奇行に私たちがわざわざ合わせてやる必要はない。第一軍として対処するまでだ」


豪快な性格をしているガラハットは王国の軍勢を前にしても臆することなく一人で戦おうとする敵の行動を粋に感じ、一対一のタイマンで勝負しようと考えたのだがアーサーとガウェインによって静止される。
そして、報告を受けたアーサーたちが作戦に移ろうとしたその時 ──────── 。


炎の息吹ファイアブレス


ヴォーーーーッ ───── ゴゴーーーーッ ───── 。


「総員退避ーーーーー!!」


ドゴーーーーーン!!


─────────────────────────


第一軍の騎士たちは空中に浮かぶ一人の獣人の姿を眺めていた。
全身を覆う赤黒い鱗が時折キラリと光り薄暗さの中でより一層の存在感を示す。
そして、大きく広げた両翼を上下に動かすことでバサッ…バサッ…という風を叩く音が周囲に響き渡る。
その姿はまるで龍族。
実際、アーサーを除く龍族を見たことがない騎士たちはそう勘違いしていた。
正確には龍族ではなく大翼蜥蜴の獣人であるのだが、滅多に姿を現さない龍族の姿など知る由もないわけなのだから、彼らがそう誤解をしても仕方あるまい。

そんな稀有な存在を前に皆が視線を奪われていた時にそれは放たれたのだった。
轟音と共に放たれた息吹ブレスによって一瞬の内に辺りは炎に包まれ、アーサーによる咄嗟の叫びも虚しく約三百人もの騎士が負傷する事態となった。
騎士たちの身を守るために装備された鎧は黒く焼け焦げてしまっており、中には鎧が炎の高温に耐えきれず溶けてしまい皮膚が爛れている者さえいる。
すぐさま救護班が呼ばれ負傷者の治療に取り掛かるのだが、敵の攻撃が一度で終わるはずもない。
第一軍が崩れかけた陣形の修復に取り掛かろうとしていたその時、ドランによる第二射が放たれる。


「足掻くな。貴様らに活路など無い。炎の息吹ファイアブレス

「第二射が来るぞ!前列、盾構え!!」

「「「「「 ハッ!!! 」」」」」


ヴォーーーーッ ───── ゴゴーーーーッ ───── 。


「グッ・・・凄まじい威力だ」

「なんて熱量・・・」

「耐えろ!陣形が整うまで耐えるんだ!!」


立て続けに放たれた息吹ブレス
その強烈な圧力に対して魔法防御が付与された上にさらに魔法によって強化された盾を手に懸命に耐える騎士たち。
彼らのすぐ後ろでは陣形が整えられており、さらにその後方では救護班による負傷者の治療が急ピッチで進められていた。
そして、もちろんそこには治療にあたるスズネと共に宿り木の姿もあった。


「ちょっと、ちょっと…なんなのよアイツ。いきなり火を吹いたかと思ったら、どんな威力してんのよ!」

「ふん!まぁ~なかなかやるようじゃの~。わっちの魔法と勝負じゃ!!」

「二人とも落ち着くっす。うちらはあくまでもスズネの護衛として付いて来てるだけなんすからね。自重するっすよ」


開戦早々に目の前で起きた出来事に驚愕し慌てふためく宿り木の面々を横目にガルディア王国が誇る騎士たちは状況に合わせて迅速に行動していく。
そして、ドランによる第二射が落ち着く頃にはしっかりと整えられた陣形が完成していたのだった。


「さぁ~ここからだ!相手が一人だからと甘くみるな。三つの団で連携して敵を叩く。反撃開始だ!!」


ここまで十二支臣“炎獄のドラン”による攻撃に対して受けに回っていた王国軍であったのだが、第一軍軍長であるアーサーの号令の下、一転して攻勢に打って出るのであった。




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