魔王召喚 〜 召喚されし歴代最強 〜

四乃森 コオ

文字の大きさ
149 / 208

新王誕生

しおりを挟む
「────── 兄様っ!!」


気がつくとそこは見慣れた自室であった。
朝の温かな陽の光が窓から射し込んでいる。
何ひとつとして変わることのないいつもの日常的な風景。
なんだ…ただの悪い夢か ───── 今し方まで見ていた思い出すだけでも吐き気を催すような光景が夢であったのかと思い、ユニはホッと胸を撫で下ろす。

《そうよ、兄様がお父様やザックス様に剣を向け、ましてや命を奪うようなことをするはずがないわ。ほんと今までで最悪の夢だったわ》

タッタッタッタッタッ ───── ガチャッ!


「姫様っ!!」


部屋の中から漏れ出したユニの声を聞きつけたメイドが慌てた様子で部屋に飛び込んできた。


「ハァ…ハァ…ハァ…。姫様、お身体は大丈夫ですか?」


質問の意味が分からず首を傾げるユニ。
何をそんなに慌てているのか。
ただ寝て起きただけなのに何を心配しているのか。
全く状況を理解出来ていないユニは笑顔で返事をする。


「ええ、何も問題はないわ。むしろそんなに慌てているあなたの方が心配よ」

「姫様…何も覚えていらっしゃらないのですか?」

「うん?何の話?」


ユニの様子から状況を理解していないことを察したメイドは、大きく息を吐くとなるべく冷静にゆっくりと今の状況を説明し始める。


「落ち着いて聞いてくださいね。ゼリック様たちによる謀反によりお父上であるレオニス様が討たれました。そして、新たにゼリック様が王位に就かれました。それが三日前の出来事です。姫様は玉座の間で意識を失い倒れているところを発見され、今までずっと意識を失われていたのです」

「えっ…。それじゃ…あれは夢ではなかったの…。 ──────── ウッ…」

「姫様!!」



◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ 


ユニが目を覚す三日前。
レオニスたちとの戦いを終えたばかりの玉座の間にて。

──────── ドスッ。

そこには空となった玉座に腰を掛けるゼリックの姿があった。
仲間たちは玉座から数段降りた床に跪き、新たな王の誕生を祝う。
ここから獣王国ビステリアは新王の下で新たな舵を切ることとなる。


「それで、ゼリック~この後はどうするッキ?」

「国民に俺がこの国の新たな王になったことを宣言する。そして、軍事力の強化を開始する」

「あれ?すぐにガルディアに喧嘩を売るんじゃないピョン?」

「現状ではかなり分が悪い。ガルディアも最近国王が代替わりしたらしい。それに伴って十二の剣ナンバーズとかいう聖騎士団の団長たちの顔触れも大きく変わり軍部の強化が成されたって話だ」

「ガルルルル。十二の剣ナンバーズ?誰だか知らねぇーが、そんな奴ら俺たちでブッ殺せばいいだけの話だろ?さっさと戦争しようぜ」

「その提案には賛成出来ないかな。ガルディア王国は大国だ。純粋な数だけ見ても獣王国の数倍はある。みんなが負けるとは思っていないけど、他の戦士たちは難しいと思う」

「なるほど!ゼリック様は軍事力の強化を進めつつ、その機を伺うおつもりなのですね」

「まぁ~そういうことだ。みんなには自分たちの部隊を持ってもらうつもりだから、しっかり鍛え上げてくれよ」


ゼリックの話にも出たように獣王国ビステリアが新たな王を迎える二年前、ガルディア王国では先代国王の急死に伴い第一王子であったレオンハルトが王位に就いていた。
レオンハルトは即位と同時に抜本的な改革を開始。
当時階級制及び年功序列制が敷かれていた旧体制からの脱却をはかり、貴族や平民などの階級や年齢に関わらず能力のある者たちを次々と重要な役職に雇用していった。
それによって一部の貴族から大きな反発を受けることになったのだが、多くの貴族そして国民からの支持を受け、これを見事に鎮圧。
この新王による改革によって、ガルディア王国の経済は大きな安定の兆しをみせ始め、国を守護する軍部にも有能な者たちが数多く集まるようになったのだった。


「クワックワックワッ。新たな獣王の方針は理解したよん。でも、目的のためには即時行動も必要なんじゃないのかい?」

「その言う通りだ。同胞たちの救出、獣王国の強化、どちらかではない!どちらもだ!!俺は全てを手に入れるぞ!!!」

「いいわね~。それでこそ~私たちの~王様よ~」

「当然ね!アタイたちの王様ならそれくらいはやってもらわないと」


ゼリックの言葉に仲間たちは大きく頷く。
相手が強いからといって尻尾を巻いて逃げ出すような獣人族ではない。
王権を奪うという大きな戦いに勝利しても誰一人として満足していない。
むしろ本番はここから ──────── 。


「それで・・・そこにいるのは誰なんだ?」


ゼリックが視線を向けた先には猫の獣人の姿が。
列の一番端で仲間たちに紛れて同じように跪いている。

《確か…あの者はドラー。若くしてその才能を認められた戦士で、今回の戦いにおいての危険人物に含まれていたはず・・・》

ゼリックがドラーに視線を送りながらあれこれ考えていると、ドラーの隣にいたピヨンが口を開く。


「コイツの名前はドラー、なかなか見所のある奴だったから連れてきたピョン。鍛えればウチらくらい強くなりそうだピョン」

「へぇ~…ピヨンにそこまで言わせるか」


ピヨンからの紹介を受けてそれまで口を閉ざしていたドラーが初めて言葉を発する。


「獣王ゼリック様、お初にお目にかかります。只今ご紹介頂きましたドラーと申します。今この時より獣王様の剣として獣王国を支えていく所存です」

「ドラー、君の噂は以前より耳にしているよ。若くしてその才を認められた天才だと」

「いえ、そのような大層なものではありません。若かりし頃に武闘大会にて前近衛隊長パンサーを倒したという獣王様の武勇に比べれば、オイラなんて取るに足らない存在です」

「アハハハハ。そんな古い話まで知っているのか。あれはまぐれみたいなものだよ。 ───── 気に入った!ピヨンからの推薦もあるし、何より強い者は大歓迎だ!そうだな~・・・ドラー、君には新たな近衛隊の隊長をやってもらおう」

「えっ!?オイラが獣王様直属の部隊の隊長ですか?」

「不服か?」

「いえ、滅相もありません…。ですが、こんな若造が隊長なんて他の者たちが何と言うか・・・」


突然伝えられた近衛隊隊長への就任の話。
ゼリック自身も思いつきで任命したようであり、唐突のことでドラーは困惑した様子を見せるのだった。


「ガルルルル。獣王であるゼリックがお前を隊長にすると言ったんだ。他の奴らが何と言おうが関係ない。もし不満を口にするような奴がいたら、お前に実力で黙らせればいいだけの話だ。なったってここは実力主義の獣王国ビステリアだからな!!」


タイガードの一言で場が収まる。
この言葉にこれからの獣王国が進む道が示されていた。


「タイガードの言う通りだ。ピヨンが認めた君の実力を俺は信じている。逆らう奴は力で黙らせろ。そして、そのために研鑽を積め。ここにいるメンバーは全員君よりも強いからね!いくらでもしごいてもらうといい」

「アハハ…。それは…なんとも心強い皆さんですね…」


自身に向けられる数多の視線を前にただただ苦笑いを浮かべるしかないドラーなのであった。


今からおよそ十数年前、共存共栄を望み、世界の安寧を目指した獣王レオニスが討たれた。
そして新たに王位に就いたゼリックは、世界の秩序を壊してでも獣人族の存在を高みへ押し上げようと目論む。
この事によって、獣王国ビステリアは国内外に向けて大きな変化をしていくことになるのであった。



◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ 


「ここまでが獣王国ビステリアが変わってしまった経緯です。ゼリックが王位に就いてからというもの、実力主義に拍車がかかり力で全てを統べるようになりました。そして、時が流れると共にゼリック自身も力に溺れるようになっていきました」

「なんか・・・獣王国もいろいろあんのね」


ユニの話を聞き終えたスズネたちは思いもよらない獣王国の過去を知り困惑するのだった。


「それで、なぜ僕たちなのでしょうか?獣王ゼリックを止めるということなら僕たちよりも聖騎士団の団長の方々のほうが適任だと思うのですが」


獣王国ビステリアの王であり、剣聖ミロクの弟子でもあるゼリックを止める。
どう考えてもBランクの冒険者パーティが受けるような話ではない。
しかし、なぜか初対面であるはずのスズネたちをユニは指名してきたのだ。
そんな疑問を念が絶えないスズネたちに対して、ようやくユニがその理由を話し始めるのであった。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

職業ガチャで外れ職引いたけど、ダンジョン主に拾われて成り上がります

チャビューヘ
ファンタジー
いいね、ブックマークで応援いつもありがとうございます! ある日突然、クラス全員が異世界に召喚された。 この世界では「職業ガチャ」で与えられた職業がすべてを決める。勇者、魔法使い、騎士――次々と強職を引き当てるクラスメイトたち。だが俺、蒼井拓海が引いたのは「情報分析官」。幼馴染の白石美咲は「清掃員」。 戦闘力ゼロ。 「お前らは足手まといだ」「誰もお荷物を抱えたくない」 親友にすら見捨てられ、パーティ編成から弾かれた俺たちは、たった二人で最低難易度ダンジョンに挑むしかなかった。案の定、モンスターに追われ、逃げ惑い――挙句、偶然遭遇したクラスメイトには囮として利用された。 「感謝するぜ、囮として」 嘲笑と共に去っていく彼ら。絶望の中、俺たちは偶然ダンジョンの最深部へ転落する。 そこで出会ったのは、銀髪の美少女ダンジョン主・リリア。 「あなたたち……私のダンジョンで働かない?」 情報分析でダンジョン構造を最適化し、清掃で魔力循環を改善する。気づけば生産効率は30%向上し、俺たちは魔王軍の特別顧問にまで成り上がっていた。 かつて俺たちを見下したクラスメイトたちは、ダンジョン攻略で消耗し、苦しんでいる。 見ろ、これが「外れ職」の本当の力だ――逆転と成り上がり、そして痛快なざまぁ劇が、今始まる。

魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。 音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、 幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。 魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。 そして再び出会う幼馴染。 彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。 もういい。 密かにやってた支援も打ち切る。 俺以外にも魔道具職人はいるさ。 落ちぶれて行く追放したパーティ。 俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流@3/19書籍発売!
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

処理中です...