魔王召喚 〜 召喚されし歴代最強 〜

四乃森 コオ

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ユニの願い

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「なぜ僕たちなのでしょうか?」


明らかに今の宿り木には分不相応な依頼。
なにせ相手は獣王国ビステリアの王にして、あの剣聖ミロクの弟子なのだ。
現在進行形でミロクを師事し修行を受けているミリアとマクスウェルの二人としては、師匠であるミロクが認めたゼリックの実力を軽視するわけにはいかなかった。


「そ…それは・・・」

「ちょっとアンタ、正直に話しなさいよ!」

「ええ…それはもちろん」

「まぁ~アタシとしてはアンタが嘘を言ってるとは思ってないわ。もし、この話を聖騎士長であるアーサー様とかに持ってきていたなら罠かと疑いもするけど…。残念ながら今のアタシたちをどうこうしたところでこの戦争を動かすほどの事ではないしね」

「ミリア・・・」

「クソ~…このアタシの存在を無視して戦争を進めてるのもムカつくし、それを受け入れちゃってる自分自身にも腹が立つ」

「「「「「・・・・・」」」」」


冷静な分析と漏れ出る本音。
その狭間で何とも煮え切らない表情を見せている。
そして仲間たちは彼女にかける言葉を失うのであった。


「話を戻すッスよ!ユニさん、なんでウチらに頼るのか説明をお願いするッス」

「あっ!?はい。正直に申しますと、お願いするのは皆さんにではなくて…その~…スズネさんと魔王クロノさんにです!」


どこか気まずそうに話したユニであったのだが、彼女の予想とは相反してあっさりとした返答が返ってくる。


「まぁ~そうよね。分かってたけど」

「あの…申し訳ありません」

「いえ、謝ることではありませんよ。僕たちに実力が足りていないのは紛れもない事実ですから。でも、どうしてスズネさんとクロノのことを知っているんですか?」


話せば話すほどに疑問が出てくる。
当然これまでにスズネたち宿り木のメンバーとユニの間に接点はない。
話したこともなければ、会ったことすらないのだ。
しかも現時点で彼女たちはまだBランクになったばかりのパーティであり、クロノという存在があるとはいえまだまだ名の通ったパーティというわけでもない。


「先ほどみなさんにお伝えした通りゼリックの力は強大です。剣聖と謳われる方より剣術を学び、今では雷獣の力の80%を使いこなせるまでに至っています。剣の腕はもちろんのこと、そのスピードは光の速度に匹敵すると云われています」

「「「「「「 光の速度!? 」」」」」」

「はい。はっきり言って生半可な強さの方では太刀打ち出来ないと思います、そんな風に思い悩んでいた時に魔王を召喚したというヒト族の少女の話を耳にしたのです。そこで私は城の者たちの目を盗み内緒でガルディア王国へ行き情報を集めることにしました」

「王族の方がお忍びで!?」

「そこでいろいろな話を伺いました。少女の名がスズネということ、クロノという名の魔王はこれまでの長い魔族の歴史において“歴代最強の魔王”と云われていること、仲間たちと『宿り木』というパーティを組んでいること、さらにスズネという少女は龍族とも契約を結んだということ」

「なんか全部筒抜けになってるッスね・・・」

「ガバガバなのじゃ」

「いったい誰なのよ!アタシたちのことをベラベラと喋ったのは!!」

「ガルディアの中でも特にモアという街の人々から詳しい話を聞くことが出来ました。その街の酒場で“ロマリオ”という冒険者の方と出会い、その方がとても詳しく教えてくださいました」


【【あっ…あの人か・・・ 】】

その名を聞いてすぐさま一人の男の顔が思い浮かび、問答無用で納得せざるを得ないスズネとミリアなのであった。


=========================

※ロマリオ
Aランククラン『ミネルヴァ』のメンバー。
四十代のベテラン冒険者で困っている人を見かけると放っておけない性格。
冒険者になりたてだった頃のスズネとミリアが仲間集めに四苦八苦していた時に声をかけられ、ラーニャの情報を教えてもらったという恩がある。

=========================


「それで・・・魔王と龍族と契約したスズネを使って何をさせようってわけ?」


急に声のトーンを落とし真剣な眼差しをユニへと向けるミリア。
大事な親友に危険なことはさせたくないという思いから出たその言葉には少しばかりの怒りも含まれていた。


「今回の戦争、ゼリックの本当の狙いは ───── 聖騎士長アーサーの命です」

「「「「「「 えっ!? 」」」」」」

「詳しい作戦までは知ることが出来ませんでしたが、聖騎士長アーサーを狙っていることは確かです」

「どうしてアーサー様を狙うんですか?」

「それは ───── 聖騎士長アーサーがガルディア王国の“光”だからです」

「「「「「「ガルディア王国の“光”??」」」」」」

「はい。今のガルディア王国にとって聖騎士長アーサーは“武の象徴”であり、王国を守護する“平和の象徴”でもあります。王族を始めとした貴族からも多くの国民からも支持されていると聞きます。そんな彼の命を奪うことはガルディア王国の精神的支柱を奪い、国民への不安を煽り、心を殺すことを意味します。そうして弱りきったところを獣王国ビステリアの全勢力をもって一気に攻め落とし支配下に置くつもりなのです」

「そんな…師匠…。いや…師匠が、アーサー様が負けるはずがありません!!」


ゼリックの思惑を知り驚愕するスズネたち。
中でもアーサーのことを育ての親とも思っているマクスウェルにとって、それは胸が引き裂かれるようなものであり、アーサーが負けるわけなどないと大きく叫ぶのであった。


ゼリックの思惑は理解した。
しかし、そんな思惑通りに事が運ぶのだろうか。
アーサー自身も“四聖”に数えられるほどの実力の持ち主である。
何か策を用意しているのか、それとも真正面からねじ伏せるだけの実力があるのか、さすがにユニもそこまで調べることは出来なかったようだ。


「ちょっと待つッス。もしかしてスズネへのお願いって、獣王ゼリックと聖騎士長アーサー様の戦いに割って入るということッスか?」


スッ ──────── 。

その場にいた全員が一斉にユニへと視線を向ける。
それらの視線を一身に受けるユニは静かに頷く。


「はい…その通りです」

「ふざけんじゃないわよ!そんな戦いに突っ込んで行ったら命がいくつあっても足りないわ!!アンタ、スズネに死ねっていうの!!!」

「ミリア、落ち着いて。ユニさんは何もそこまで言ってないよ」

「あわわわわ…ヤバいッスよーーーーー」

「じゃが、その戦いに割って入るということはそういうことじゃろ?まぁ~わっちの旦那様の手にかかれば両者ともひと捻りじゃろうがな」


怒る者、心配する者、慌てる者、煽る者。
いろんな感情が交錯する中、クロノは静かに状況を見守っているのだった。


「ユニさん、結局のところ私…というかクロノは何をすればいいんですか?」

「初めにお話しした通りゼリックを止めてもらいたいのです。ゼリックと聖騎士長アーサーの戦いは想像を絶するものになると思われます。それを止めることが出来るのは彼らに匹敵する強さを持つ者だけです。魔王と龍族であれば彼らを止めることも出来るのではないかと・・・。どうかお願いします!ゼリックを止めて・・・彼を救ってやってください!!」


涙を流しながら頭を下げるユニ。
獣王という絶対的な立場となり、さらなる力を身に付け、それに溺れるようになってしまったとしても、子供の頃から慕ってきた人。
若かりし頃の彼はもういないのかもしれない。
それでもユニにとってゼリックは今なお大切な最愛の人なのだ。
そんな彼女の悲痛な叫びを受け取った鈴音は覚悟を決める。


「分かりました。そのお願い引き受けます」

「ちょっとスズネ!」

「ごめんね、みんな。でも、困っている人を放ってはおけないよ。私なんかに助けを求めてくれるんだったら、たとえ難しいことだとしてもそれに応えたいって思うよ」


そこにはいつものスズネの姿があった。
これと決めたらその道を突き進む。
覚悟を決めたその目を見たらもう誰一人として彼女を止めようとは思わない。


「ありがとうございます。ありがとうございます。 ───────── 」


何度も何度も感謝を口にするユニ。
その姿に笑顔で応えるスズネ。
仲間たちは心配しながらも、一度言い出したら聞かないリーダーの姿を前にやれやれと思いつつ、その決断を受け入れるのであった。
しかし、 ────────── 。


「なんだか綺麗に話がまとまったような空気を出しているが、結局のところやるのは俺だろ?」


ここまで頑なに口を閉ざしていた魔王様がここぞとばかりに口を開く。


「ごめんね、クロノ。勝手に決めちゃって・・・」

「ハァ~・・・。まぁ~今さらだけどな。お前の無茶に振り回されるのは」

「う~~~…ごめんなさい」


勝手に話を進められた挙句、いつもの如く面倒事を押し付けられる形となったクロノ。
毎度のことに嫌味の一つも言いたくなる気持ちはよく分かる。
そんな小言を聞かされ、盛り上がっていた気持ちを抑えられたスズネはいつものように平謝りするしかなかった。


「まぁ~冗談はこの辺にしておいてやる」

「えっ!?怒ってないの?」

「ああ、今回の話は俺も受けてやる」

「急にどうしたのよ?アンタが面倒事に乗り気なんて珍しいわね」


いつもと違うクロノの反応を不思議に思うスズネたちをよそに、当の本人は何故かやる気満々。
周囲の心配などお構いなしに不敵な笑みを浮かべている。


「光の速度で動く獣の王に、“四聖”とかいう最強の剣士だろ。どいつもこいつも誰に断って“王”だの“最強”だのとほざいてやがるんだ?奴らに誰が本当の“最強の王”なのかをしっかり叩き込んでやる」


ユニの願いを叶えるためではない。
スズネの想いに応えるためでもない。
自分を差し置いて勘違いした称号を掲げている者たちに実力の差というものを思い知らせるため。
ただそれだけのためにクロノは参戦を決意したのであった。



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