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違和感
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「「「 ウオォォォォ!! 」」」
キーーーン! ─── ギーーーン!! ─── キーーーン!!!
スズネたちがユニから獣王国の過去について話を聞いていた頃、当然各戦闘地では激しい戦いが続けられていた。
しかし、その激しい轟音と相反して戦いの進行度合いは非常に緩やかなものであった。
「おいおい!どうした?ガルディアの騎士ってのはその程度なのか?」
「クソッ!!」
「なんなんだ獣王国の奴ら・・・」
「やたらと煽ってくるくせに剣を交えてはすぐに木々を使って姿をくらましやがる」
最前線で戦う騎士たちが感じる違和感。
もちろん現場を指揮する団長たち、アルバート、シャルロッテもまた同様の違和感を抱えながら自分たちの部隊を進軍させていた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
【第二戦闘地】
「ウッキッキッ。十二の剣っていっても大したことないッキね!期待外れッキ」
「猿が・・・」
クイックイッ ───────── 。
尻尾を大きく左右に振りながら手招きをするサルザール。
その挑発的な態度を前に苛立ちをみせつつ、じわりじわりと確実に距離を詰めていくランスロット。
「何でもいいからさっさとかかってくるッキ」
「ランスロット様!!」
「どうした?ドノヴァン。これから猿の駆除を始めるところなんだが」
「それが我々の団だけがかなり先行しているようで、第八聖騎士団とトライデントがまだ到着しておりません」
第一聖騎士団。
ガルディア王国が誇る最強の騎士『十二の剣』において第一席にその名を連ねるランスロットが団長を務める聖騎士団。
全部で十二ある聖騎士団の中でも“最強”を自負しており、それによって他の聖騎士団を軽視する傾向が度々見受けられていたのだった。
そして、それは団長であるランスロットが誰よりも強く発していた。
「それがどうした?雑魚どもに合わせていては作戦が進められん。到着したら我々第一聖騎士団が片付けた敵の掃除でもさせておけ」
「・・・。畏まりました」
そうしてランスロットは他の団の到着を待つことなく、再び第一聖騎士団と共に戦闘に戻るのであった。
─────────────────────────
【第三戦闘地】
トリスタンが率いる第三軍は彼の性格を表すかのように慎重な進軍をみせ、対峙した獣王国軍との戦闘もゆっくりとしたペースで進められていた。
「おいおい優男、さっさとかかってこいよ!」
「そう急かさないでくれ。僕は他のみんなみたいに強くないから慎重なんだよ」
「ハッハッハッ。確かに細っちょくてすぐに折れちまいそうだな。どうせ後ろの騎士たちも大したことないんだろ。全員まとめてスパッと殺してやるよ」
「それは・・・困るな・・・」
煽るブルを相手に笑顔を見せながらのらりくらりとその挑発をいなしていくトリスタンだったのだが、最後の発言だけは笑って聞き逃すわけにはいかず、笑顔の消えたトリスタンから氷のように冷たい殺気が漏れ始める。
「クワックワックワッ。何ともまぁ~顔色の悪いやつだねい。こっちまで気分が悪くなりそうだよん」
「はぁ~面倒だ・・・。──────── フンッ」
ズバンッ!!!
ズズッ…ズズズッ…ズズズズズッ ─────── ズドーン!ズドーン!ズドーン!
「はぁ~これで多少は見やすくなったな・・・」
「お前…オレっちたちの大事な山に何してくれてんだよん…」
「あぁ?・・・。邪魔だったから少し伐採してやっただけだが?」
「やっちまったねい…。オレっちを本気で怒らせたよん…。ズタズタに引き裂いてやるよん!!」
「上から偉そうに吠えるな・・・。あ~面倒だ・・・。はぁ~しょうがない・・・。その目障りな羽を斬り落としてから処刑してやる」
怒りのあまり顔を紅潮させるバルバドール。
対するベディヴィアはいつも通りの青白く不健康そうな顔で空に浮かぶ敵の姿を見上げていた。
「俺の相手は馬ッスか?ドカッと乗って、ググッと締め上げて、ズバッと倒させてもらうッス」
「なんだこの頭の悪そうなガキは。私の相手は相手の力量も分からないほどのバカのようね」
「バカとは失礼ッスよ!戦う相手にはリスペクトを持たないといけないって・・・誰かが言ってた気がするッス!! ───── ところでリスペクトって何ッスか?」
「はぁ~…どうやら本物のバカのようね。あなたと話しているとこちらまでバカになりそうだわ。バカは死んでも治らないっていうけど、ひと思いに蹴り殺してあげるわ」
「俺は強いッスよ!聖騎士になってあっという間に他の騎士たちをズバーンと追い抜いて、ドドドンッて団長になったんスから。馬の調教くらいババババンッとやってみせるッス!!」
「調教?・・・。この私を?・・・。やれるものならやってみなさい!この暴脚ホルスを乗りこなせるものならね!!」
無意識な失言の連発。
本人に悪気は無いのだが、それが余計に相手の気持ちを逆撫でる。
能天気な団長と怒り心頭の十二支臣による激突が始まろうとしていた。
─────────────────────────
【第四戦闘地】
第四戦闘地は他の戦闘地と比べて圧倒的に激しい戦地となった。
第四軍を率いるケイたち第三聖騎士団とスネル・ピヨンによる連合部隊の戦いもさることながら、クランの象徴でありメンバーたちの憧れでもあるシャルロッテを馬鹿にされたローズガーデンと獣王国軍きっての戦闘狂であるタイガードの部隊の戦いは熾烈を極めた。
「隊列を乱さないでください。相手は二つの部隊で構成されており、左右で異なる戦い方をしてくる可能性もあります。決して気を抜かないように!!」
「「「「「 ハッ!!! 」」」」」
「みんな前に出過ぎないように注意して!いつも言ってるけど、援護はやり過ぎると逆に味方の邪魔になるからバランス良くね!!」
単独で戦闘を行うことがほとんどない第十一聖騎士団。
彼らの主な役割は魔法による味方への支援と敵への攻撃である。
敵と味方が入り交じる戦場において横から介入するということは思っている以上に難しい。
味方の戦闘を妨げることなく敵の進攻を防ぎながらサポートと援護射撃を行わなくてはならないのだ。
そんな難題を前にしても団長であるエスターを信頼する団員たちの表情は明るい。
「「「「「 了解です!団長!! 」」」」」
第三・第十一聖騎士団が激闘を繰り広げてきた中、その隣ではそれ以上の激しさで二つの部隊がぶつかり合っていた。
「雌のくせになかなかやるじゃねーか!あっちの雌とも戦いたくなってきたぜ」
「黙れ!耳障りな戯言をほざくな!!獣風情がシャルロッテ様の相手になると思うなよ。貴様など私の手で剥製にしてくれる」
「ソフィア様の邪魔をさせるな!他の獣人どもを決して近づけさせるんじゃないよ!!」
「「「「「 ハイ!!!!! 」」」」」
タイガードと副団長ソフィアの一騎打ち。
その周辺では二人の戦いを邪魔させまいとそれぞれの部隊が激しい攻防を繰り広げている。
まさに今回の戦争において一二を争うほどの激闘であった。
ただ一人を除いては ──────── 。
《みんなに任せてって言われたから大人しく見てるけど、私一応クランリーダーなんだけどな…。はぁ~、私ってまだまだ頼りないのかな・・・》
真剣な眼差しで戦局を見つめるシャルロッテ。
しかし、そんな彼女の悲痛な悩みを知る者など誰一人としていないのであった。
─────────────────────────
【第一戦闘地】
「ガウェイン様、アーサー様の姿が見えません」
「チッ…さっきの野郎の攻撃の時か」
「ガウェイン殿、聖騎士長殿のことは心配無用。吾輩たちは目の前の敵に集中いたそう」
「ああ、もちろんだ。あの人がそう簡単にくたばるかよ。それにしても獣王国軍の奴らチマチマと面倒な戦い方をしやがる。まるで何かを待ってるみたいだ」
「ガウェイン殿も感じましたかな。吾輩も先ほどから妙な感じを受けておるのだが・・・」
ガウェイン・ガラハットの両団長は戦場に流れる妙な空気を肌で感じてはいるものの、その正体が何なのか、敵の思惑が何なのかというところまでは掴めずにいた。
しかし、そんなことを悠長に考えていられるほど戦場は甘くない。
次々と現れる敵を前に聖騎士たちは戦闘を繰り返すしかないのであった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
パスカル大山脈という天然要塞を熟知し、地の利を活かして聖騎士たちの攻撃を上手くいなしながら戦局をコントロールしていく獣王国軍。
各部隊を先導する十二支臣たちもまた数で勝る敵を相手に大立ち回りを演じてはいるものの、タイガードを除く他の者たちは相対する敵に襲いかかりながらも団長たちが顔を出すと軽く拳を交えるとすぐに後方へ姿を消すというヒット&アウェイを繰り返す。
そのように挑発するわりに逃げ腰な戦い方に終始する相手を前に騎士たちはイライラを募らせていく。
そんな中でドランによる攻撃によってアーサーと分断されてしまったガウェインとガラハットは目の前の敵と交戦しながらも懸命にアーサーの捜索を続けていた。
しかし、広く高く燃え盛る炎の壁に邪魔をされてなかなか上手く前に進むことが出来ず、そこでもたもたしていると何処からともなく現れるマウルスの凶刃に討たれるといった悪循環に陥っていたのだった。
─────────────────────────
一方、軍を率いる将を失った第一軍が奮闘を続けていた中、当のアーサー本人はというと ──────── 。
仲間たちとはぐれ広大なパスカル大山脈の中を一人彷徨っていた。
各地で両軍が激突しているであろう喚声と轟音が鳴り響いているのだが、彼を探す聖騎士団と同様に炎の壁に妨げられて合流することが出来ない。
アーサーは道を阻む炎の壁をなんとか突破しようと斬撃や魔法を繰り出したのだが、全く消える気配もなく、強引な突破を諦めた彼は炎の切れ目を目指して壁沿いを進むことにしたのだった。
「いったいこの炎の壁は何処まで続いているんだ?斬撃も魔法もまるで効果がない。あの者…ただ者ではないな」
第一軍の前に現れた十二支臣が一人『炎獄のドラン』。
その凄まじい攻撃力と放たれたブレスを思い返し、仲間たちと合流した後の戦略を思い描きながら歩みを進めるアーサーなのであった。
しかし、永遠とも思えたその歩みの先で彼は思いもよらない光景を目にすることとなる。
キーーーン! ─── ギーーーン!! ─── キーーーン!!!
スズネたちがユニから獣王国の過去について話を聞いていた頃、当然各戦闘地では激しい戦いが続けられていた。
しかし、その激しい轟音と相反して戦いの進行度合いは非常に緩やかなものであった。
「おいおい!どうした?ガルディアの騎士ってのはその程度なのか?」
「クソッ!!」
「なんなんだ獣王国の奴ら・・・」
「やたらと煽ってくるくせに剣を交えてはすぐに木々を使って姿をくらましやがる」
最前線で戦う騎士たちが感じる違和感。
もちろん現場を指揮する団長たち、アルバート、シャルロッテもまた同様の違和感を抱えながら自分たちの部隊を進軍させていた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
【第二戦闘地】
「ウッキッキッ。十二の剣っていっても大したことないッキね!期待外れッキ」
「猿が・・・」
クイックイッ ───────── 。
尻尾を大きく左右に振りながら手招きをするサルザール。
その挑発的な態度を前に苛立ちをみせつつ、じわりじわりと確実に距離を詰めていくランスロット。
「何でもいいからさっさとかかってくるッキ」
「ランスロット様!!」
「どうした?ドノヴァン。これから猿の駆除を始めるところなんだが」
「それが我々の団だけがかなり先行しているようで、第八聖騎士団とトライデントがまだ到着しておりません」
第一聖騎士団。
ガルディア王国が誇る最強の騎士『十二の剣』において第一席にその名を連ねるランスロットが団長を務める聖騎士団。
全部で十二ある聖騎士団の中でも“最強”を自負しており、それによって他の聖騎士団を軽視する傾向が度々見受けられていたのだった。
そして、それは団長であるランスロットが誰よりも強く発していた。
「それがどうした?雑魚どもに合わせていては作戦が進められん。到着したら我々第一聖騎士団が片付けた敵の掃除でもさせておけ」
「・・・。畏まりました」
そうしてランスロットは他の団の到着を待つことなく、再び第一聖騎士団と共に戦闘に戻るのであった。
─────────────────────────
【第三戦闘地】
トリスタンが率いる第三軍は彼の性格を表すかのように慎重な進軍をみせ、対峙した獣王国軍との戦闘もゆっくりとしたペースで進められていた。
「おいおい優男、さっさとかかってこいよ!」
「そう急かさないでくれ。僕は他のみんなみたいに強くないから慎重なんだよ」
「ハッハッハッ。確かに細っちょくてすぐに折れちまいそうだな。どうせ後ろの騎士たちも大したことないんだろ。全員まとめてスパッと殺してやるよ」
「それは・・・困るな・・・」
煽るブルを相手に笑顔を見せながらのらりくらりとその挑発をいなしていくトリスタンだったのだが、最後の発言だけは笑って聞き逃すわけにはいかず、笑顔の消えたトリスタンから氷のように冷たい殺気が漏れ始める。
「クワックワックワッ。何ともまぁ~顔色の悪いやつだねい。こっちまで気分が悪くなりそうだよん」
「はぁ~面倒だ・・・。──────── フンッ」
ズバンッ!!!
ズズッ…ズズズッ…ズズズズズッ ─────── ズドーン!ズドーン!ズドーン!
「はぁ~これで多少は見やすくなったな・・・」
「お前…オレっちたちの大事な山に何してくれてんだよん…」
「あぁ?・・・。邪魔だったから少し伐採してやっただけだが?」
「やっちまったねい…。オレっちを本気で怒らせたよん…。ズタズタに引き裂いてやるよん!!」
「上から偉そうに吠えるな・・・。あ~面倒だ・・・。はぁ~しょうがない・・・。その目障りな羽を斬り落としてから処刑してやる」
怒りのあまり顔を紅潮させるバルバドール。
対するベディヴィアはいつも通りの青白く不健康そうな顔で空に浮かぶ敵の姿を見上げていた。
「俺の相手は馬ッスか?ドカッと乗って、ググッと締め上げて、ズバッと倒させてもらうッス」
「なんだこの頭の悪そうなガキは。私の相手は相手の力量も分からないほどのバカのようね」
「バカとは失礼ッスよ!戦う相手にはリスペクトを持たないといけないって・・・誰かが言ってた気がするッス!! ───── ところでリスペクトって何ッスか?」
「はぁ~…どうやら本物のバカのようね。あなたと話しているとこちらまでバカになりそうだわ。バカは死んでも治らないっていうけど、ひと思いに蹴り殺してあげるわ」
「俺は強いッスよ!聖騎士になってあっという間に他の騎士たちをズバーンと追い抜いて、ドドドンッて団長になったんスから。馬の調教くらいババババンッとやってみせるッス!!」
「調教?・・・。この私を?・・・。やれるものならやってみなさい!この暴脚ホルスを乗りこなせるものならね!!」
無意識な失言の連発。
本人に悪気は無いのだが、それが余計に相手の気持ちを逆撫でる。
能天気な団長と怒り心頭の十二支臣による激突が始まろうとしていた。
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【第四戦闘地】
第四戦闘地は他の戦闘地と比べて圧倒的に激しい戦地となった。
第四軍を率いるケイたち第三聖騎士団とスネル・ピヨンによる連合部隊の戦いもさることながら、クランの象徴でありメンバーたちの憧れでもあるシャルロッテを馬鹿にされたローズガーデンと獣王国軍きっての戦闘狂であるタイガードの部隊の戦いは熾烈を極めた。
「隊列を乱さないでください。相手は二つの部隊で構成されており、左右で異なる戦い方をしてくる可能性もあります。決して気を抜かないように!!」
「「「「「 ハッ!!! 」」」」」
「みんな前に出過ぎないように注意して!いつも言ってるけど、援護はやり過ぎると逆に味方の邪魔になるからバランス良くね!!」
単独で戦闘を行うことがほとんどない第十一聖騎士団。
彼らの主な役割は魔法による味方への支援と敵への攻撃である。
敵と味方が入り交じる戦場において横から介入するということは思っている以上に難しい。
味方の戦闘を妨げることなく敵の進攻を防ぎながらサポートと援護射撃を行わなくてはならないのだ。
そんな難題を前にしても団長であるエスターを信頼する団員たちの表情は明るい。
「「「「「 了解です!団長!! 」」」」」
第三・第十一聖騎士団が激闘を繰り広げてきた中、その隣ではそれ以上の激しさで二つの部隊がぶつかり合っていた。
「雌のくせになかなかやるじゃねーか!あっちの雌とも戦いたくなってきたぜ」
「黙れ!耳障りな戯言をほざくな!!獣風情がシャルロッテ様の相手になると思うなよ。貴様など私の手で剥製にしてくれる」
「ソフィア様の邪魔をさせるな!他の獣人どもを決して近づけさせるんじゃないよ!!」
「「「「「 ハイ!!!!! 」」」」」
タイガードと副団長ソフィアの一騎打ち。
その周辺では二人の戦いを邪魔させまいとそれぞれの部隊が激しい攻防を繰り広げている。
まさに今回の戦争において一二を争うほどの激闘であった。
ただ一人を除いては ──────── 。
《みんなに任せてって言われたから大人しく見てるけど、私一応クランリーダーなんだけどな…。はぁ~、私ってまだまだ頼りないのかな・・・》
真剣な眼差しで戦局を見つめるシャルロッテ。
しかし、そんな彼女の悲痛な悩みを知る者など誰一人としていないのであった。
─────────────────────────
【第一戦闘地】
「ガウェイン様、アーサー様の姿が見えません」
「チッ…さっきの野郎の攻撃の時か」
「ガウェイン殿、聖騎士長殿のことは心配無用。吾輩たちは目の前の敵に集中いたそう」
「ああ、もちろんだ。あの人がそう簡単にくたばるかよ。それにしても獣王国軍の奴らチマチマと面倒な戦い方をしやがる。まるで何かを待ってるみたいだ」
「ガウェイン殿も感じましたかな。吾輩も先ほどから妙な感じを受けておるのだが・・・」
ガウェイン・ガラハットの両団長は戦場に流れる妙な空気を肌で感じてはいるものの、その正体が何なのか、敵の思惑が何なのかというところまでは掴めずにいた。
しかし、そんなことを悠長に考えていられるほど戦場は甘くない。
次々と現れる敵を前に聖騎士たちは戦闘を繰り返すしかないのであった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
パスカル大山脈という天然要塞を熟知し、地の利を活かして聖騎士たちの攻撃を上手くいなしながら戦局をコントロールしていく獣王国軍。
各部隊を先導する十二支臣たちもまた数で勝る敵を相手に大立ち回りを演じてはいるものの、タイガードを除く他の者たちは相対する敵に襲いかかりながらも団長たちが顔を出すと軽く拳を交えるとすぐに後方へ姿を消すというヒット&アウェイを繰り返す。
そのように挑発するわりに逃げ腰な戦い方に終始する相手を前に騎士たちはイライラを募らせていく。
そんな中でドランによる攻撃によってアーサーと分断されてしまったガウェインとガラハットは目の前の敵と交戦しながらも懸命にアーサーの捜索を続けていた。
しかし、広く高く燃え盛る炎の壁に邪魔をされてなかなか上手く前に進むことが出来ず、そこでもたもたしていると何処からともなく現れるマウルスの凶刃に討たれるといった悪循環に陥っていたのだった。
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一方、軍を率いる将を失った第一軍が奮闘を続けていた中、当のアーサー本人はというと ──────── 。
仲間たちとはぐれ広大なパスカル大山脈の中を一人彷徨っていた。
各地で両軍が激突しているであろう喚声と轟音が鳴り響いているのだが、彼を探す聖騎士団と同様に炎の壁に妨げられて合流することが出来ない。
アーサーは道を阻む炎の壁をなんとか突破しようと斬撃や魔法を繰り出したのだが、全く消える気配もなく、強引な突破を諦めた彼は炎の切れ目を目指して壁沿いを進むことにしたのだった。
「いったいこの炎の壁は何処まで続いているんだ?斬撃も魔法もまるで効果がない。あの者…ただ者ではないな」
第一軍の前に現れた十二支臣が一人『炎獄のドラン』。
その凄まじい攻撃力と放たれたブレスを思い返し、仲間たちと合流した後の戦略を思い描きながら歩みを進めるアーサーなのであった。
しかし、永遠とも思えたその歩みの先で彼は思いもよらない光景を目にすることとなる。
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