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撤退
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「キャーーーーーッ」
!?!?!?!?!?!?
突如として山中に響き渡った悲鳴。
それは疑うべくもなく助けを求めるものであった。
そして、それを耳にしたスズネたちは迷うことなく走り出したのだった。
ザッザッザッザッザッ ──────── 。
「なんすか、なんすか、今の叫び声は」
「あの声の感じからしてピンチってことよね」
「とにかく急ごう」
ザッザッザッザッザッ ──────── 。
「み…見えました!どうやら単眼巨人に襲われているようです」
「ありがとうセスリー。それじゃ、ミリアとマクスウェル君は先行して!セスリーは後方から援護を、ラーニャちゃんはいつでも魔法を放てるように準備しておいて」
「「「「了解!!」」」」
スズネたちが悲鳴が聞こえた方角へ急いで駆けつけると、そこには五体の単眼巨人に囲まれた一組の冒険者パーティの姿があった。
遠目で見たところ四人一組のパーティのようだが、タンク役であると思われる大柄の男が頭から血を流して気を失っているようだ。
そして、その傍には彼の物であろう大盾が転がっていたのだが、その形状を見てスズネたちは驚愕する。
彼女たちがそうなってしまうのも当然。
大盾はちょうど真ん中辺りで大きく折れ曲がり、くの字にへしゃげてしまっていたのだ。
その光景だけでも単眼巨人がどれほどの力を有しているのかを思い知るには十分であった。
「グオォォォォォ ──────── 」
そして、スズネたちがその場に駆け付けたのは、まさに窮地の冒険者たち目掛けて一体の単眼巨人がトドメの一撃を放とうと拳を振り上げている時だった。
「ヤバいっすよ!?あんな分厚い大盾がへしゃげちゃってるっす」
「とんだ馬鹿力ね。まともにぶつかったらひとたまりもないわよ」
「一先ずあの人たちの救助を優先。セスリーとラーニャちゃんは単眼巨人を牽制して近づけさせないようにして」
「は…はい!頑張ります」
ギッ…ギギギッ ───── ヒュンッ。
「任せるのじゃ!あんな奴、わっちの魔法でぶっ飛ばしてやるのじゃ」
ゴゴゴゴゴッ…バキバキバキッ ───── 。
「喰らうのじゃ ───── 岩石砲」
ドシュンッ ──────── 。
セスリーの手から放たれた風を纏いし疾風の矢とラーニャによって放たれた巨大な岩石が冒険者たちに襲いかかろうとしていた単眼巨人に襲いかかる。
ブシュッ!!
ドゴーン!!
「ヴゥゥゥ ───── イダイ」
グラッ…グラッ… ───── ドシーーーン。
「やったっす」
「みんな急いで」
ザッザッザッザッザッ ─────── 。
「大丈夫ですか?」
「ええ、ありがとう。助かったわ。」
「君たちも冒険者かい?」
「はい。皆さんと同じく今回のクエストでモンナケルタに来ました」
「そうかい。俺はこのパーティ“黒狼の牙”のリーダーをしているアレスだ。本当に助かったよ」
「私はパーティ“宿り木”でリーダーをしています、スズネです」
「二人とも気を抜かないでください!そんな悠長に話をしていられるほど余裕のある状況ではありませんよ」
「ごめん、マクスウェル君。みんな急いでここから ───── 」
同じ冒険者として同業者の危機を救うべく窮地へと飛び込んだ宿り木。
しかし、ここで彼女たちが予想だにしていなかった出来事が起こる。
ドシーン、ドシーン、ドシーン。
ドシーン、ドシーン、ドシーン。
ドシーン、ドシーン、ドシーン。
彼女たちの耳に届いた地響きの正体。
それは攻撃を受けた仲間の元へと集まってきた敵の別動隊であった。
その数 ──── なんと十五体。
冒険者たちの助けに入ったはずの宿り木であったが、気づいた時には四方にわたり周囲を囲まれていたのだった。
「あわわわわ…。囲まれちゃったっすよ」
「クソッ!コイツらいったいどこから湧いて出たのよ」
ドシーン、ドシーン、ドシーン。
そんな彼女たちの動揺など一切気にすることもなく、単眼巨人たちは慎重かつ大胆に距離を詰めてくる。
「あ…足止めします」
バシュンッ ─── バシュンッ ─── バシュンッ ─── 。
「わっちに任せるのじゃ ───── 火球」
ヒューーーン ───── ドーーーン!!
「アタシたちもやるわよ!マクスウェル」
「言われなくても分かっていますよ」
ヒュンッ ─── ヒュンッ ─── ヒュンッ ─── 。
ザシュッ ─── ザシュッ ─── ザシュッ ─── 。
向かってくる敵に対して、セスリーの弓撃、ラーニャの魔法攻撃、ミリアとマクスウェルの斬撃と、あらゆる方法で迎撃しようとする宿り木であったのだが、そんなことなどお構い無しとでも言いたげに彼らは前進することを止めない。
そして、とうとうスズネたちの目の前までやってきた単眼巨人。
その内の一体が咆哮をあげながら大きな拳を振り下ろす。
「ヴオォォォォォ ──────── 」
グググッ…ブウォン ───── ドガンッ!!
「ウググググッ…。凄いパワーっす。でも…そう簡単にはやらせないっすよ」
単眼巨人の強烈な一撃をその身ひとつで受け止めたシャムロム。
しかし、いくら頑丈さが売りの彼女であってもその強大な力の前では問題なしとはいかなかった。
ググッ…グググッ…グググググッ…。
「ヤ…ヤバいっす…。手が痺れて力が入らないっす」
そして、その圧倒的な体躯の差に加え、遠心力と重力が合わさった剛力の拳を小さな身体で受け止めていたシャムロムに限界が訪れようとしていた。
その時、必死に仲間たちを守ろうとする彼女の頑張りを無駄にしまいと、ミリアとマクスウェルが打って出る。
自分たち目掛けて繰り出された長い腕を駆け上がるミリア。
そして頂上まで登りきると、くるりと身体を一回転させながら敵の頭部目掛けて炎の剣を振り下ろす。
「デカい図体で偉そうに見下してんじゃないわよ! ───── 火炎輪」
さらにミリアの攻撃に連動したマクスウェルが敵の足元へと潜り込み、その動きを封じるべくアキレス腱へと斬りかかる。
「目の前の事にばかり気を取られていてはいけませんよ!ミロク剣術 基之型 ~ 一文字 ~」
ガンッ!
ザシュッ!
「グウォォォォォ」
ミリアの一撃をなんとか腕でガードした単眼巨人であったが、死角から繰り出されたマクスウェルの一振りはアキレス腱を庇うことが精一杯で足の側面を深く斬り込まれる形となり、悲痛な叫びを上げたのだった。
しかし、それでも致命傷を与えたとは言い難い。
それどころか仲間を傷つけられたことにより、他の単眼巨人たちが怒り心頭でスズネたちに襲いかかってきたのだった。
「ゴロゼ!ゴロゼ!」
「ナガマガ、ヤラレダ。ゼッダイニ、ユルザナイ」
「ゴロゼ!ゴロゼ!」
ドシーン、ドシーン、ドシーン。
ドシーン、ドシーン、ドシーン。
「ヤバい、ヤバい、ヤバい」
まさに絶体絶命のピンチ。
二十体にも及ぶ単眼巨人が四方よりじわりじわりと距離を詰めてくる。
もはや逃げる場所などない。
その時、現状を分析したアレスが口を開く。
「スズネ、俺たちを助けにきてくれたこと、本当に感謝している。しかし、このままでは君たちまで巻き添えをくうことになる。それだけはなんとしてでも避けたい。だから、俺たちがコイツらの注意を引き付けておいている間に君たちだけでも逃げてくれ」
元はと言えば自分たちが招いた窮地。
そこにたまたま居合わせただけの若い冒険者たちを巻き込むわけにはいかない。
そう思っての言葉であろう。
そして、そのことは十分にスズネたちにも伝わっていた。
だがしかし、それを真に受け、自分たちだけが助かることを許容出来るような彼女たちではない。
「それは絶対にダメです!!」
アレスからの提案を即座に拒否するスズネ。
そして、それは彼女一人の意思ではなく宿り木としての総意であった。
「せっかく助けに来たのにアンタたちだけ残して逃げられるわけないでしょ」
「そうです。助けを求める者を見殺しにしていては騎士の名折れです」
「それはいいっすけど、とりあえずピンチな状況には変わりないっすよ」
「みんな聞いて!今の状況でこの数を相手にするのは無茶だと思う。だから、ここは一点突破で一気に山を駆け下りよう」
「オッケー。分かりやすくていいわ。殿はアタシとマクスウェルが受け持つから、とりあえずラーニャ、一発ド派手なのいっちゃって!」
現状の自分たちと相手の戦力差に加え、さらに負傷者を抱えての戦いは無謀だと判断したスズネからメンバーたちに指示が出され、それぞれが臨戦態勢を取りつつ撤退の準備を始める。
そして、作戦開始の合図となる一撃は彼女に託された。
「ワーッハッハッハッ。わっちに任せるのじゃ!あんなデカブツどもなど、わっちの魔法で吹き飛ばしてやるのじゃ」
任された大役。
いつにも増してやる気満々のラーニャ。
そして、その言葉通り彼女の強力な魔法によって退路は開かれる。
バリバリッ…バリバリバリッ。
ビュンッ、ビュンッ、ビュンッ。
右手に雷。
左手に暴風。
自信に満ちた表情で笑みを浮かべるラーニャの両手にはそれぞれ異なる属性の魔法が。
そして彼女が両手を合わせた時、これまでとは異なる二属性の魔法が姿を現す。
「雷と風による混合魔法じゃ。とくと味わうがよい。雷宿る暴嵐よ、我が敵を穿て ───── 雷嵐」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ ──────── 。
放たれた暴嵐は木々を薙ぎ倒し、迫り来る巨漢の魔獣さえも吹き飛ばす。
さらに、雷を宿したその攻撃は弾き飛ばした敵の身体を痺れさせ、その動きも止めたのだった。
「よし!今のうちに駆け抜けよう」
「アンタたちもさっさと行きなさい。追いかけてくる奴らはアタシたちで相手しといてあげるわ」
「クッ…すまない…」
窮地の中で生まれた光明。
それ目掛けて一斉に走り出したスズネたち。
もちろん単眼巨人たちもみすみす逃すようなことはせず、必死に逃げる獲物を懸命に追いかける。
「ニガズナ!」
「ゴロズ。ゼンブ、ゴロズ」
「ダメダ。オンナハ、ヅガマエロ。ヅガマエデ、オウノモドヘヅレデイグ」
「えっ!?」
ドシーン、ドシーン、ドシーン。
そこからはまさに必死の逃走劇であった。
殿を務めたミリアとマクスウェルの奮闘、セスリーの弓による援護、ラーニャの魔法攻撃、クロノの防御魔法によってなんとかモンナケルタからの脱出に成功。
そして、スズネたちは身体に溜まった疲れを振り払い、その足で報告も兼ねて冒険者ギルドへと向かったのであった。
!?!?!?!?!?!?
突如として山中に響き渡った悲鳴。
それは疑うべくもなく助けを求めるものであった。
そして、それを耳にしたスズネたちは迷うことなく走り出したのだった。
ザッザッザッザッザッ ──────── 。
「なんすか、なんすか、今の叫び声は」
「あの声の感じからしてピンチってことよね」
「とにかく急ごう」
ザッザッザッザッザッ ──────── 。
「み…見えました!どうやら単眼巨人に襲われているようです」
「ありがとうセスリー。それじゃ、ミリアとマクスウェル君は先行して!セスリーは後方から援護を、ラーニャちゃんはいつでも魔法を放てるように準備しておいて」
「「「「了解!!」」」」
スズネたちが悲鳴が聞こえた方角へ急いで駆けつけると、そこには五体の単眼巨人に囲まれた一組の冒険者パーティの姿があった。
遠目で見たところ四人一組のパーティのようだが、タンク役であると思われる大柄の男が頭から血を流して気を失っているようだ。
そして、その傍には彼の物であろう大盾が転がっていたのだが、その形状を見てスズネたちは驚愕する。
彼女たちがそうなってしまうのも当然。
大盾はちょうど真ん中辺りで大きく折れ曲がり、くの字にへしゃげてしまっていたのだ。
その光景だけでも単眼巨人がどれほどの力を有しているのかを思い知るには十分であった。
「グオォォォォォ ──────── 」
そして、スズネたちがその場に駆け付けたのは、まさに窮地の冒険者たち目掛けて一体の単眼巨人がトドメの一撃を放とうと拳を振り上げている時だった。
「ヤバいっすよ!?あんな分厚い大盾がへしゃげちゃってるっす」
「とんだ馬鹿力ね。まともにぶつかったらひとたまりもないわよ」
「一先ずあの人たちの救助を優先。セスリーとラーニャちゃんは単眼巨人を牽制して近づけさせないようにして」
「は…はい!頑張ります」
ギッ…ギギギッ ───── ヒュンッ。
「任せるのじゃ!あんな奴、わっちの魔法でぶっ飛ばしてやるのじゃ」
ゴゴゴゴゴッ…バキバキバキッ ───── 。
「喰らうのじゃ ───── 岩石砲」
ドシュンッ ──────── 。
セスリーの手から放たれた風を纏いし疾風の矢とラーニャによって放たれた巨大な岩石が冒険者たちに襲いかかろうとしていた単眼巨人に襲いかかる。
ブシュッ!!
ドゴーン!!
「ヴゥゥゥ ───── イダイ」
グラッ…グラッ… ───── ドシーーーン。
「やったっす」
「みんな急いで」
ザッザッザッザッザッ ─────── 。
「大丈夫ですか?」
「ええ、ありがとう。助かったわ。」
「君たちも冒険者かい?」
「はい。皆さんと同じく今回のクエストでモンナケルタに来ました」
「そうかい。俺はこのパーティ“黒狼の牙”のリーダーをしているアレスだ。本当に助かったよ」
「私はパーティ“宿り木”でリーダーをしています、スズネです」
「二人とも気を抜かないでください!そんな悠長に話をしていられるほど余裕のある状況ではありませんよ」
「ごめん、マクスウェル君。みんな急いでここから ───── 」
同じ冒険者として同業者の危機を救うべく窮地へと飛び込んだ宿り木。
しかし、ここで彼女たちが予想だにしていなかった出来事が起こる。
ドシーン、ドシーン、ドシーン。
ドシーン、ドシーン、ドシーン。
ドシーン、ドシーン、ドシーン。
彼女たちの耳に届いた地響きの正体。
それは攻撃を受けた仲間の元へと集まってきた敵の別動隊であった。
その数 ──── なんと十五体。
冒険者たちの助けに入ったはずの宿り木であったが、気づいた時には四方にわたり周囲を囲まれていたのだった。
「あわわわわ…。囲まれちゃったっすよ」
「クソッ!コイツらいったいどこから湧いて出たのよ」
ドシーン、ドシーン、ドシーン。
そんな彼女たちの動揺など一切気にすることもなく、単眼巨人たちは慎重かつ大胆に距離を詰めてくる。
「あ…足止めします」
バシュンッ ─── バシュンッ ─── バシュンッ ─── 。
「わっちに任せるのじゃ ───── 火球」
ヒューーーン ───── ドーーーン!!
「アタシたちもやるわよ!マクスウェル」
「言われなくても分かっていますよ」
ヒュンッ ─── ヒュンッ ─── ヒュンッ ─── 。
ザシュッ ─── ザシュッ ─── ザシュッ ─── 。
向かってくる敵に対して、セスリーの弓撃、ラーニャの魔法攻撃、ミリアとマクスウェルの斬撃と、あらゆる方法で迎撃しようとする宿り木であったのだが、そんなことなどお構い無しとでも言いたげに彼らは前進することを止めない。
そして、とうとうスズネたちの目の前までやってきた単眼巨人。
その内の一体が咆哮をあげながら大きな拳を振り下ろす。
「ヴオォォォォォ ──────── 」
グググッ…ブウォン ───── ドガンッ!!
「ウググググッ…。凄いパワーっす。でも…そう簡単にはやらせないっすよ」
単眼巨人の強烈な一撃をその身ひとつで受け止めたシャムロム。
しかし、いくら頑丈さが売りの彼女であってもその強大な力の前では問題なしとはいかなかった。
ググッ…グググッ…グググググッ…。
「ヤ…ヤバいっす…。手が痺れて力が入らないっす」
そして、その圧倒的な体躯の差に加え、遠心力と重力が合わさった剛力の拳を小さな身体で受け止めていたシャムロムに限界が訪れようとしていた。
その時、必死に仲間たちを守ろうとする彼女の頑張りを無駄にしまいと、ミリアとマクスウェルが打って出る。
自分たち目掛けて繰り出された長い腕を駆け上がるミリア。
そして頂上まで登りきると、くるりと身体を一回転させながら敵の頭部目掛けて炎の剣を振り下ろす。
「デカい図体で偉そうに見下してんじゃないわよ! ───── 火炎輪」
さらにミリアの攻撃に連動したマクスウェルが敵の足元へと潜り込み、その動きを封じるべくアキレス腱へと斬りかかる。
「目の前の事にばかり気を取られていてはいけませんよ!ミロク剣術 基之型 ~ 一文字 ~」
ガンッ!
ザシュッ!
「グウォォォォォ」
ミリアの一撃をなんとか腕でガードした単眼巨人であったが、死角から繰り出されたマクスウェルの一振りはアキレス腱を庇うことが精一杯で足の側面を深く斬り込まれる形となり、悲痛な叫びを上げたのだった。
しかし、それでも致命傷を与えたとは言い難い。
それどころか仲間を傷つけられたことにより、他の単眼巨人たちが怒り心頭でスズネたちに襲いかかってきたのだった。
「ゴロゼ!ゴロゼ!」
「ナガマガ、ヤラレダ。ゼッダイニ、ユルザナイ」
「ゴロゼ!ゴロゼ!」
ドシーン、ドシーン、ドシーン。
ドシーン、ドシーン、ドシーン。
「ヤバい、ヤバい、ヤバい」
まさに絶体絶命のピンチ。
二十体にも及ぶ単眼巨人が四方よりじわりじわりと距離を詰めてくる。
もはや逃げる場所などない。
その時、現状を分析したアレスが口を開く。
「スズネ、俺たちを助けにきてくれたこと、本当に感謝している。しかし、このままでは君たちまで巻き添えをくうことになる。それだけはなんとしてでも避けたい。だから、俺たちがコイツらの注意を引き付けておいている間に君たちだけでも逃げてくれ」
元はと言えば自分たちが招いた窮地。
そこにたまたま居合わせただけの若い冒険者たちを巻き込むわけにはいかない。
そう思っての言葉であろう。
そして、そのことは十分にスズネたちにも伝わっていた。
だがしかし、それを真に受け、自分たちだけが助かることを許容出来るような彼女たちではない。
「それは絶対にダメです!!」
アレスからの提案を即座に拒否するスズネ。
そして、それは彼女一人の意思ではなく宿り木としての総意であった。
「せっかく助けに来たのにアンタたちだけ残して逃げられるわけないでしょ」
「そうです。助けを求める者を見殺しにしていては騎士の名折れです」
「それはいいっすけど、とりあえずピンチな状況には変わりないっすよ」
「みんな聞いて!今の状況でこの数を相手にするのは無茶だと思う。だから、ここは一点突破で一気に山を駆け下りよう」
「オッケー。分かりやすくていいわ。殿はアタシとマクスウェルが受け持つから、とりあえずラーニャ、一発ド派手なのいっちゃって!」
現状の自分たちと相手の戦力差に加え、さらに負傷者を抱えての戦いは無謀だと判断したスズネからメンバーたちに指示が出され、それぞれが臨戦態勢を取りつつ撤退の準備を始める。
そして、作戦開始の合図となる一撃は彼女に託された。
「ワーッハッハッハッ。わっちに任せるのじゃ!あんなデカブツどもなど、わっちの魔法で吹き飛ばしてやるのじゃ」
任された大役。
いつにも増してやる気満々のラーニャ。
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バリバリッ…バリバリバリッ。
ビュンッ、ビュンッ、ビュンッ。
右手に雷。
左手に暴風。
自信に満ちた表情で笑みを浮かべるラーニャの両手にはそれぞれ異なる属性の魔法が。
そして彼女が両手を合わせた時、これまでとは異なる二属性の魔法が姿を現す。
「雷と風による混合魔法じゃ。とくと味わうがよい。雷宿る暴嵐よ、我が敵を穿て ───── 雷嵐」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ ──────── 。
放たれた暴嵐は木々を薙ぎ倒し、迫り来る巨漢の魔獣さえも吹き飛ばす。
さらに、雷を宿したその攻撃は弾き飛ばした敵の身体を痺れさせ、その動きも止めたのだった。
「よし!今のうちに駆け抜けよう」
「アンタたちもさっさと行きなさい。追いかけてくる奴らはアタシたちで相手しといてあげるわ」
「クッ…すまない…」
窮地の中で生まれた光明。
それ目掛けて一斉に走り出したスズネたち。
もちろん単眼巨人たちもみすみす逃すようなことはせず、必死に逃げる獲物を懸命に追いかける。
「ニガズナ!」
「ゴロズ。ゼンブ、ゴロズ」
「ダメダ。オンナハ、ヅガマエロ。ヅガマエデ、オウノモドヘヅレデイグ」
「えっ!?」
ドシーン、ドシーン、ドシーン。
そこからはまさに必死の逃走劇であった。
殿を務めたミリアとマクスウェルの奮闘、セスリーの弓による援護、ラーニャの魔法攻撃、クロノの防御魔法によってなんとかモンナケルタからの脱出に成功。
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