魔王召喚 〜 召喚されし歴代最強 〜

四乃森 コオ

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闇より現れし者

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「ハァ…ハァ…ハァ…」


その単眼巨人サイクロプスは自身のことを王だと口にした。
長い歴史を持つガルディア王国においても伝承の中の存在とされてきた単眼巨人の王サイクロプスキング
そんな伝説級の魔獣が全身から血を流し、大きく肩で息をしながら瀕死の状態でいる。
その思いもよらなかった光景を前にして、スズネたちは言葉を失い呆然と立ち尽くしていた。


「アレが・・・単眼巨人の王サイクロプスキングっすか?」


口火を切ったのはシャムロム。
あの単眼巨人の王サイクロプスキングは本物なのか?
そんな半信半疑な彼女の心境を表すかのように歯切れの悪い言い方であった。
そして、それは彼女だけではなく他のメンバーたちも同じ思いでその光景を眺めていたのだった。


「いや、そんなわけないわ。だって、単眼巨人の王サイクロプスキングは伝説の存在でしょ。あんなボロボロなわけない。アレは偽物よ!」


目の前の現実を受け入れられないミリア。
楽しみにしていた強敵との戦い。
しかし、その夢は儚くも脆くガラガラと音を立てて崩れ落ちていく。


「残念ながらあそこで瀕死の状態で立っているのが単眼巨人の王サイクロプスキングで間違いないでしょう。よく見てください。周りに転がっている他の単眼巨人サイクロプスと比べてもサイズがひと回り大きい上、身に付けている装備も明らかに違います」

「なんじゃ、王と自称しておるくせに大したことのない奴じゃな。旦那様がわざわざ来る必要もなかったではないか」

「フンッ」

「で…でも、いったい誰が単眼巨人の王サイクロプスキングをあそこまで追い詰めたのでしょうか」


セスリーの言葉に全員が同意する。
圧倒的な強さを誇ったとされている単眼巨人の王サイクロプスキングを瀕死の状態にまで追い詰めた存在。
そんな強者がこの場にいる ──────── 。



────────────────────


洞窟の最奥の広間は陽の光によって明るさがあるとはいえ、基本的には薄暗く差し込んだ光がキラキラと一筋のラインを引いている程度である。
よって広間の大部分は暗闇に覆われている。


「おい!隠れてねぇーでさっさと出て来い!!」


左右に首を振りながら誰かを探すように大声を上げる単眼巨人の王サイクロプスキング
しかし、その呼び声に応える者はおらず、ただただ静寂だけが広間を漂う。

ヒソヒソヒソ ──────── 。


「いったい誰と話してるんすかね?」

「そんなのアタシにも分かんないわよ」

「で…でも、人や魔獣の気配はどこにもありません」

何者かを探し、その何者かに対して威嚇を続ける単眼巨人の王サイクロプスキングであったのだが、スズネたちよりも先に訪れた冒険者の姿も見当たらなければ強力な魔獣の気配もない。
では、いったい誰がいるのか?
そして単眼巨人の王サイクロプスキングは誰を探しているのか。
何がなんだか分からない状況を前にスズネたちが困惑した表情をしながら広間中を注視していると ───── どこからともなく何かの唸り声が聞こえてくる。

グヴヴゥゥゥゥゥ ──────── 。


「なんすか?なんすか?」

「何かが・・・いるようですね」

「でも気配なんてないわ。いったい何が起きてんのよ」


彼女たちがさらなる困惑の色を見せたその時、その反応とは対照的に巨人の王は不敵に笑いだす。


「クククククッ…ガッハッハッハッハッ。やっと出てきやがったかクソ猫が!コソコソと隠れやがって。今すぐお前の息の根を止めてやる」


弱々しくも手にした剣を暗闇に向ける単眼巨人の王サイクロプスキング
スズネたちも必死になってその先にある暗闇を凝視するが何も見えない。
しかし単眼巨人の王サイクロプスキングの言葉から数秒後、突然暗闇の中に深紅の光が現れる。


「な…なんかいるっす! ───── ハッ!?」


思わず大きな声を上げてしまったシャムロムが慌てて自身の口を両手で覆ったのだが、その声が聞こえていないのか、耳には届いているがあえて気にしていないのか、単眼巨人の王サイクロプスキングは一切反応をみせることなく暗闇から現れたそれを睨み続けていた。

グヴヴゥゥゥゥゥ ──────── 。

ヒタッ…ヒタッ…ヒタッ…。

緊迫した空気が広間を満たし、少しばかりの息苦しさを感じさせる。
そして、それらの一切を気にも留めることなく暗闇の中で深紅の光を放っていたそれがゆっくりと姿を現した。


「えっ…アレは何?」

「アタシの目には猫にしか見えないんだけど・・・。何なのよあのデカさは!?」


その場にいた全員が注目する中、暗闇から現れたのは全身真っ黒な猫であった。
まぁ~猫とはいっても当然普通の猫ではない。
体長はゆうに三メートルを超えようかというほどの巨大な魔獣である。

ヒタッ…ヒタッ…ヒタッ…。

相手との距離を測るようにゆっくりと歩みを進める黒猫。
その間も単眼巨人の王サイクロプスキングは剣を構えながら視線を外すことはない。
むしろ姿を隠していた時よりも警戒を強めているようであった。
そんな両者の距離がゆっくりと近づいていく様子を前にスズネたちが息を呑んでいる中、唯一人驚愕の表情で声を上げる者がいた。


「ヤバいっす、ヤバいっす、ヤバいっす」


いつ激突してもおかしくないような緊迫した状況の中で黒猫の姿を見たシャムロムが小刻みに震えながら慌てだす。


「どうしたのシャムロム?大丈夫?」

「フゥーッ、フゥーッ、フゥーッ」

「ちょっと急にどうしたのよ。あの黒猫がどうかしたの?」

「どうかしたどころの話じゃないっす。あの魔獣はヤバいんすよ!」


どうやらシャムロムはあの黒猫の正体に気付いたようであった。
しかし、その他のメンバーたちはあの魔獣が何なのか皆目見当もついていない様子。
それでも仲間の取り乱す様子を見て、ただ事ではないということだけは理解することができた。


「とりあえず落ち着いてシャムロム。ヤバいだけじゃ何も分からないよ。あの黒い猫の魔獣はいったい何なの?」

「ああ…申し訳ないっす。あまりの衝撃にパニックになったっす」

「それで、アイツは何者なの?」


仲間たちのおかげで冷静さを取り戻したシャムロム。
そして、彼女の口から語られた内容にスズネたちは驚愕することになるのだった。


「ウチもギルドにある資料でしか見たことがないんすけど ───── あの魔獣の名はおそらく『キャスパリーグ』。Sランクの魔獣っす」



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