【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ

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第2章 英雄の最期

第2話 英雄候補

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「熊を睨んで追い返したとは人聞きが悪い。私はただ、丁度いい訓練相手が見つかったと思ったのに。王立学校の時? ああ、あれは……うん。恥ずかしいね。お腹が空いていたから、食材来た! って思っただけなのさ」

 火を起こして、魚を頬張りながら聞くオルタナさんのお話。

「ベレニスちゃんは、熊を見て可愛いって思ったんじゃないかな? 熊もベレニスちゃんを可愛いって思ったんだろうね。だけど川辺は危ないから、早くお帰りって魚を渡したのさ」

「ま、まあ、そういうことにしとくわ⁉」

「ローゼちゃんは、熊と戦う気なんて更々なかったのを熊も察したのだろうね。でも何か言ってるから、魚が欲しいんだろうと思われたんじゃないかな?」

「ま、まあ、魚は美味しかったから、ラッキーだったってことですね!」

 チラリと、川で魚釣りチャレンジをしているリョウを見る。
 自分だけ熊から貰えなかったのが不甲斐ないと、オルタナさんから釣り竿を借りている。

 でも、そもそも私たちは何しにここへ来たんだっけ?

「リョウ君の場合、明確な敵かそうでないかで、明らかに戦いの質が変わるからね。野生の動物や魔獣はそういうのに敏感なんだろう」

「オルタナ、傭兵のこと褒めすぎじゃないの?」

「そうかい? でも話を聞いて、ベレニスちゃんもローゼちゃんもリョウ君も、等しく英雄の資質があると思ったよ。ただ暴れて解決するだけでは、何も問題の解決にならないからね」

「英雄ですか? リョウは先の騒動後にちらほら言われているのを耳にしますけど……」

「ほんっと、ムカつくわよね。私だって活躍したのに‼」

「彼はアランの傭兵で、隣国の麻薬戦争でも名を馳せているからね。そのうちわかってくるだろうさ。かの七英雄も、最初から全員英雄と呼ばれたわけではないだろ?」

「英雄と称されたのは北部奪還戦以降ですので、ほぼ終盤ですね」

「その時代と比べると、昔の人物に比べてあいつは英雄の器よ、とか、あいつは非凡だが英雄には向いてないって評する人々が多くて有利かもね」

 クスッとオルタナさんは笑った。

「それって英雄が安売りされてるんじゃない? てかオルタナだって、麒麟児とか大陸七剣神に一番近いとか言われてるわよね? でも英雄って呼ばれないのはなんでなの?」

「私は器ではないさ。同じく王国に仕える父や兄の身を優先するし、軍に友人も多くいる。たとえ上が腐っていようが、逆らわぬ駒という役割だからね。おっと、誤解しないでくれたまえよ。民を苦しめる役目なんて負いたくないし、そこは口先三寸に己の力をひけらかして逃れるさ」

 それって結構危ないんじゃ……?
 でもオルタナさんなら何とかなりそうなのも、この人の魅力だよなあ。

「英雄の安売りはなんとなくわかる気がします。あちこちで大きな戦いや、魔獣が活発化してる報告に、盗賊の増加で街道ものんびり歩けない状況。こんな今の世の中を変えてくれる人物の登場を、誰もが願ってます。だからこんな活躍を、こういう人がしたって噂話が大陸を駆け巡る。そんでもって、リョウもそんな英雄の器候補として名前が出てきたって感じですかね」

「そうだね。それに彼はまだ若い。伸びしろも多大にあって悪い噂も聞かない。冒険者ギルドでの立ち居振る舞いにも粗暴さがないからね。好感を持たれ、それがまた噂となって大陸を駆け巡る。彼が英雄になる下地は整ったと私は見ているよ」

「うう~、私の噂は~?」

「ベレニスちゃんは、可愛いエルフがいるって噂になってるよ」

 オルタナさんがウインクして喜ぶベレニスだけど、甘やかさないで~。
 ベレニスの噂はその後にこう続くんだから。自己中ワガママエルフって。

 私はベレニスが仲間想いなのは知っているし、オルタナさんみたいにわかってくれる人もいる。
 だから多くの人にベレニスは凄いって思われたいけど、果たしてこれからどうなることやら。

「てか、傭兵に好感ってありえなくない? アレが私やローゼ以外の女と話してるのって、ギルドの受付の女の人との事務的会話だけなんだけど。ね? ローゼ」

 いや、私に振られても反応に困るぞ。

「まあ、たしかに見たことないかも」

「ハハハ、私は理由を知っているが、あえて言わないでおこう」

「どうせ、剣の素振りと武具の手入れだけが趣味の、つまんない奴ってバレてるってとこよね~」

「え~、そこまで話したんなら教えてくださいよ~、オルタナさん」

 けれど話は逸れて、領主代行のトール・カークスに代わり、正式な領主代行として軍の将軍クラスが、ビオレールに着任することが決まったと教えてくれた。

 軍側か。隣国との国境の要を任せられる人材が、宰相閥にいなかったのだろう。
 この決定は後々王都で何かが起これば、ビオレールに集う王家側の人間が多くなりそう。

 ビオレール伯爵の一族がどう動くのかも注目だ。
 後継者が幼少だからと、最重要拠点を成人するまで代行されるのに納得しているかどうか。
 新たな火種にならなければいいが。
 ……そうならないのを祈るのみの、今の私の立場だけど。

 結局リョウは一匹も釣れずにいたが、まだ粘ってボウズを避けようとしているようだ。

「ねえリョウ! そろそろ帰る支度しよう!」

「先に帰ってもいいぞ!」

 そんなリョウの返事。
 ハア……そういうとこが駄目なんだぞ、リョウは。

「私はローゼちゃんもすぐに、英雄候補として大陸に名が響くと思ってるよ」

 ふと、呟かれるオルタナさんの声。

「ま、まあリョウと一緒にいる以上、私だって負けないように頑張りますから!」

「ハッハッハ、いい返答だ。楽しみにしているよ」

 リョウから、貸していた釣り竿を素早く回収して立ち去るオルタナさん。
 あっ、リョウ悔しくてちょっと涙目になっている。

 ハアっとため息を吐きながらのリョウと、お腹をさすって欠伸を連発のベレニスと帰路につく。

 ホントに何しにここへ来たんだっけ?

 ちなみに毎年現れていた熊の群れは、翌年以降出なくなったとか。
 恐るべし、オルタナさん。
 
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