【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ

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第2章 英雄の最期

第11話 ドワーフの里

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 野宿を挟みつつも旅は順調に進み、ザガン領間近の渓谷へとさしかかる。

 谷底を流れる川の幅は広く、ゆったりとした流れの水面は底が見えるほどに澄んでいた。

「あ、リョウ様、そっちじゃないっす。自分が帰るドワーフの里はこっちなんで、ここからは自分が先導するっす」

「ここら辺にドワーフの里なんてあったんだ。びっくりかも」

 渓谷から見上げる空は広く、奥のほうは見えない。
 鉱山も近くにあるようで、硫黄の臭いも漂っていた。

 私の呟きに、フィーリアは苦笑した。

「まあ、隠れ里っすからねえ。ローゼさんが知らなくても無理はないっすね」

「人との接触はしないのか?」

「いえいえリョウ様、出稼ぎはよく出ているっすよ。里に来るドワーフの商人もいるっす。ただ人は入れてないっすね」

 谷底には川が流れているが、所々に大きな岩があり足場になっている。
 川の流れも一定なので歩きやすい。

 少し進むと川の両側に大きな崖が見えるようになるが、フィーリアは臆することなくヒョイヒョイと進む。

「いいの? 私たちを連れて行って」

「ん~、本来ならザガンの街で待っててもらう手筈にするつもりだったっすけど、まあ今更っすよ。ローゼさんにもリョウ様にも貸しがあるっすからね」

「ちょっとぉ、私は?」

「ハハ、ベレニスさんはエルフっすから別にいいっすよ。一応エルフは信用できるっすから」

 その回答にムフンと胸を張るベレニス。

 そんなもんなのか?
 ドワーフとエルフの関係性はわからんなあ。

 てかベレニス、ドワーフだらけの場所でこれだからドワーフはとか言わないでね、マジで。

 獣道のような細い道を抜け、少し開けた場所に出る。
 するとそこには小さな集落があった。
 その内の1人がこちらに気づくと、他のドワーフも気づいたようで、ワラワラと集まってきた。

 皆一様に髭もじゃで背が低い。そして筋肉質だ!
 そして斧を背中に背負っているのが何人かいる。
 あれは戦う時に使うのかな?

 ……あれえ? なんか斧を構えだしたぞ?

「ちょっ! 自分っす。フィーリアっす! 5年ぶりにフィーリアが帰ってきたんすよ‼」

 慌てるフィーリアに、ガルルとしているベレニス。
 リョウも腰の剣に手を伸ばす。

「フッフッフ、ハッハッハ、冗談じゃよ。よく無事で戻ってきたのお」

 ドワーフの1人が笑いながらフィーリアに近づき、ポンポンと肩を叩く。

「痛っ、痛いっすゲッペンさん! もう! びっくりしたっすよ」

「ま~ったく、これだからドワーフは。冗談のセンスが最悪」

 って! ベレニス! 初っ端から喧嘩腰はやめて!
 ただドワーフの戦士たちは気にしてないみたい。

「エルフに、人間の若い男女のう。一応フィーリアを拐かして、我らの里に悪さしに来た輩かもしれんからな。ちょいと試したのじゃ」

 ゲッペンと呼ばれたドワーフのおっさんは、顎髭を撫でながら目を細めて言う。

「拐かしって、自分は自分の意思で旅に出たっす! 置き手紙もしたっすよ!」

「クルトもユーリアもそうは思っておらんぞ」

「あ~父ちゃんも母ちゃんも元気っすか?」

「早く行って確かめるがいいさ」

「わかったっす。それじゃ皆さん、自分ちに案内するっす」

 走り出すフィーリアについて行く私たち。

 ドワーフの家々は丈夫な石造りで、工房らしき建物から絶えず煙が立ち上っていた。
 ドワーフたちは背が低く、筋肉質な体つきが特徴的で、多くが斧を武器にしているようだった。

 そして石造りの一際大きい家に辿り着く。
 そこでフィーリアが大声でただいまーっす! と言いながら入って行くので私たちも続く。

 家の中には2人のドワーフがいて、目を見開いていた。

 1人は髭もじゃで背の低く、灰色の髪を肩まで伸ばし、切れ長の目が特徴的な男の人。

 もう1人は女性で、長い緑髪を後ろで束ねている美人さん。
 ちょっと横幅あるけど。

「フィーリア! 無事に戻って来たのね!」

「えへへ、母ちゃん、父ちゃんただいまっす!」

 そしてフィーリアを抱き締める母。
 う~ん、感動の再会だねえ。

「フィーリア……」

「ちゃーんと、5年経つ前に戻ってきたっす父ちゃん」

 そして父とも抱き合う娘……と思いきや。

「置き手紙だけで出ていきやがって! このバカ娘が!」

 フィーリアを持ち上げるや、そのままグルグル回し始めるドワーフ父。

「ちょっ! やめるっすやめるっすよ~!」

「あなた、客人もいるんですよ!」

 ゴチン! と母の鉄拳が父に落ちる。
 ズシンと倒れる音と、ぐるぐる目を回しているフィーリアを見て、愉快そうにプププと笑うベレニス。

 なんていうか、カオスだ。

「フィーリアの母のユーリアです。皆様がずっとフィーリアと旅を?」

 フィーリアの母は倒れた夫をどかし、姿勢を正して訊ねてくる。

「いえ、この人たちはビオレールで自分が雇った冒険者の人たちっす」

「それはそれは、娘がお世話になりました。無事に娘を送り届けて頂き感謝します」

 深々とお辞儀をするユーリアさん。

「皆さん、暫く里でゆっくりするっす。部屋はあるんで好きに使って下さいっす」

「良いんですか? フィーリアのお母さん?」

 親の許可を取らずに勝手に決める娘だったので、念の為に確認する。
 するとユーリアさんはニコリと笑う。

「ユーリアでいいですよ。フィーリアが連れてきたのです。遠慮は要りませんよ」

 そうなんだ? ならゆっくりしていこうかな。

「そっすよ。一通り用事を終えるまで1週間てとこっすかね。それが終わったら、また旅立つっすよ」

 そう告げるフィーリアだったが、ユーリアさんの鉄拳が頭上から降った。
 にこやかな笑顔のままで。

 ドゴン! と鈍い音が響いた。

 ユーリアさん、強ぇ……
 フィーリア、完全に伸びてるよ……

「やっぱり、また旅立つ気なのねこの子は。……お願いできますか皆さん! どうか、この子がもう二度と旅に出ないように説得してくれませんか? 報酬もお出しします」

 お辞儀するユーリアさん。

 ベレニスは伸びているフィーリアの顔を、永久に脳裏に刻もうとするかのように、グリグリと指を押し込んでいる。

 そんな中、私とリョウは顔を見合わせたのだった。
 
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