【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ

文字の大きさ
54 / 315
第2章 英雄の最期

第12話 フィーリアの事情

しおりを挟む
 ドワーフの里にも広場があるみたい。
 そこで私たち3人は、今後の方針を決めるべく話し合いをすることになった。

 木で出来た長椅子に腰掛けて、私はリョウとベレニスにさっき聞いたユーリアさんの話についてどう思ったのかを尋ねた。

「べっつにぃ、フィーリアが決めればいいんじゃない?」

 身も蓋もないなあ、ベレニスは……

「フィーリアに先に雇われていて、契約内容は王都ベルンまでだ。だからフィーリアが反故にしない限り、俺は母親の頼みは受けん」

 う~ん、律儀というか、頭が固いというか。
 まあ傭兵としてリョウが出す回答はそうなるか。

「ローゼはどうなのよ?」

「5年も家出していた娘が、また旅に出るってなったら親としては心配だろうし。私はユーリアさんの気持ちがわかるかな」

 私は両親に先立たれているし。
 死んだからには二度と会えない。
 一度旅に出ればいつ死んでもおかしくない御時世である以上、やはり親としては心配だろう。
 でも……

「ユーリアさんから聞いた、フィーリアが5年前に旅に出た理由が、ちょっと気になるかな……」

 フィーリアとフィーリア父が気絶している中、教えてくれたユーリアさんの話。
 フィーリアが6歳で両親に置き手紙をして、その時に訪れていたドワーフの商人の荷馬車に隠れて旅に出た理由。

『フィーリアの父のクルトは、ドワーフでは珍しく学者をしていてね。ドワーフの文化や歴史、鍛冶技術なんかを調べて本に纏めてたんです』

 ドワーフは手先が器用で腕力に優れ、鍛冶師や戦士としてなら優秀だ。
 だが反面、ドワーフ族は頭脳労働には向いていないらしく、学者になりたがる者は珍しいらしい。
 ただ、クルトさんの学者は趣味らしく、本職は鍛冶師であるとのことだった。

 クルトさんは幼いフィーリアにも、子守唄替わりに色々な知識を語って聞かせていたようだ。
 フィーリアも父親が語る様々な知識に目を輝かせては、質問を重ねて喜ばせたようだった。

 ……けれど、5年前のフィーリア旅立ちの直前。

『クルトは空の星の輝きが、千年前の魔王による大陸侵攻の時と酷似していると呟いてしまった。それを聞いたフィーリアは、どう行動すればいいのかを訊ねてしまった』

 クルトさんはこう返したそうだ。

『闇の力強まる時、また光も強く輝く。闇が世界を包む時、光もまた世界を包む。その時を待て』

 ただ、フィーリアは聡すぎた。
 父親の表情から、光は小さく、何も手を打たなければ闇に飲まれ消滅してしまうと。

 だからフィーリアは旅に出た。
 旅の中で魔王復活の兆しを探ろうとしたのだそうだ。
 闇を打ち払う英雄を探し、その手助けとなる知識も身につけるために。

「魔王ねえ。魔族以前に人間があっちこっちで争ってて、そんな時に魔王とか復活されたら悲惨よね。ま、私にとってはどうでもいいけど。最終的に大陸を手に入れるのは私だし」

 って、おい。ベレニス……軽い口調だったけど結構マジで言ってない?

 ただベレニスも、フィーリアのこれまでの行動については理解したようだった。

 ん?

「うわあ、エルフだ。耳長いね」

「エルフってドワーフ食べるんでしょ? こわ~い」

 私たちの目の前から聞こえる話し声。
 フィーリアより小さなドワーフの女の子2人が、こっちを見ながらヒソヒソしていた。

「誰がドワーフなんて食べるかあ! 食べちゃうぞお!」

 ベレニスが駆け出し女の子たちを追う。
 キャーキャーしながら、広場で追いかけっこを始める女の子たち。

 ベレニス……めっちゃ遊ばれているなあ。

「俺も特に魔王とか魔族はどうでもいいな。依頼があれば戦う。それだけさ」

 リョウは英雄譚とかに興味がないみたい。
 フィーリアが旅をしてまで調べようとしていることについて、関心がないようだ。

 名声欲とか出世欲とか物欲に、ちょっと欠けたところがあるリョウ。
 そんなリョウに、フィーリアが残念がっていたけど、その気持ちがわかる気がする。

「昔、さ。七英雄の頃のお話なんだけど、ドワーフの王でシュタインって人がいてね」

 リョウはピクリと反応して私の方を向く。
 人の話を聞こうとする姿勢は良いんだよね。

 私は七英雄の話を語って聞かせた。
 七英雄は大昔、魔王を倒すために集まった英雄たちだ。
 種族が違えども結束し、そして絆を深め、彼らはついに魔王を倒し世界を救ったのだ。

「名匠と呼ばれたシュタインも、当初は戦いに参戦しないで、ドワーフを護るのみに徹するって言ってたんだ。降りかかる火の粉のみを払うって感じで。でも人間はシュタインの造る武具を欲して、力ずくで奪おうとしたんだ」

「……そいつは酷いな」

「当然、ドワーフは激怒して徹底抗戦の構えを取った。一触即発で人間とドワーフ、両方に大勢の犠牲者が出る寸前。でもドワーフ側に人間2人とエルフが1人加わったんだ。後に七英雄と呼ばれる剣士レイン、魔女アニス、エルフの女王フォレスタが」

「……」

「3人はシュタインと人間を説得し、人間は酒と食料を提供、ドワーフは武具を提供することで和解したんだ。……まあ何が言いたいかというと、アニスたちは依頼なんてされてない。むしろ人間側からドワーフとの戦いに参戦するように依頼されてたんだ。でも結果は話した通りで彼らは自分がしたいと思った通りに動いた。リョウも依頼でどう動くとか考えないで、こう動きたいって思っていいと思うかなってね」

「……そうか」

 短く呟いたリョウが、どう思ったのかはわからなかった。
 でもちょっと心が動いたのがわかるかも。

 ドワーフの少女たちや、追い駆けるベレニスを静かに見つめる目は、優しい目だったから。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~

月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』 恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。 戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。 だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】 導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。 「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」 「誰も本当の私なんて見てくれない」 「私の力は……人を傷つけるだけ」 「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」 傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。 しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。 ――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。 「君たちを、大陸最強にプロデュースする」 「「「「……はぁ!?」」」」 落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。 俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。 ◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!

古代文明の最強王、5000年後に転生すると魔法が弱体化しすぎていたのでもう一度最強になります。~底辺貴族からの成り上がり~

しNぱ
ファンタジー
5000年前、魔法文明マギア魔導王国を築き、 魔法体系そのものを創造した王アーケ・マギアス・マギアは、 さらなる魔法の発展を求め、自らの魂を未来へ送る転生魔法を発動した。成熟した古代魔法を超える研究が進んだ世界を見たいという純粋な探求心から、5000年後の世界へと意識を沈めた。 目覚めた先は、スケルド男爵家三男レイフとしての赤子の身体だった。産まれた瞬間から記憶を持つ彼は、質素な家と薄い魔力の流れを前に、未来の魔法研究が古代よりも大きく退化していることに気づく。最底辺と呼ばれる家に生まれながらも、家族は温かく、彼の異常な魔力量を希望として受け入れた。 幼少期から魔力操作を自然に行い、三歳で石を浮かせ、五歳で光魔法を自在に扱うなど、古代王としての力を隠しながら成長する。外では古代魔法を使わず、転生者であることを悟られないよう慎重に振る舞いながら、未来の魔法体系を観察し続けた。 十歳になると身体強化などの古代魔法を最低限だけ使い、父との剣術訓練でも圧倒的な動きを見せるが、本来の力は隠したまま過ごす。そして十六歳、高等魔導学園に入学したレイフは、初日の実技試験で無詠唱魔法や術式無効化を用いて試験官を圧倒し、最底辺男爵家ながらA級判定を受ける。 その姿を見たストラング公爵家の令嬢エリナは、彼に強い興味を抱く。5000年後の世界は古代より魔法が退化していたが、だからこそ発展の余地がある。レイフは古代王としての知識をもとに、もう一度魔法の未来を切り開くことを決意する。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?

桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。 だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。 「もう!どうしてなのよ!!」 クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!? 天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?

処理中です...