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第2章 英雄の最期
第15話 謎の魔女
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ベルガー王国ザガン伯爵領は、ドワーフの隠れ里の渓谷の西側にある。
その領主邸の伯爵のもとに、見知らぬ魔女が面会を求めてきたと報告が入った。
魔女は1人でやってきたという。
「もうすぐ日が暮れる、追い返せ。それでなくとも忙しいのに、魔女ごときの相手などしてられるか」
ザガン伯爵は面倒くさそうに手を振り、追い返すように指示を出した。
だが……
「それはご無体な、お話ぐらい聞いて頂けるほうがよろしいかと」
いつの間にか、ザガン伯爵の背後に立っていたのは黒いフードを目深に被った女。
その女の口元は笑みを浮かべている。
報告に来た者はどういった理由か不明だが、不自然に眠りについていた。
ザガン伯爵は恐怖のあまり、慌てて椅子から転がり落ちながら、手を前に伸ばして女を退かそうとした。
「聞けば、王都への近道である山道に盗賊が住み着いたとか。さぞお困りでしょう」
だが女は一向に下がる気配もなく、それどころかザガン伯爵の目の前にまでやってくる。
……フードの隙間から見える女の口元は、笑みの形のままであった。
その女から発せられる異様な威圧感に、ザガン伯爵は脂汗を流して震えることしかできないでいた。
「な、何者だ! だ、誰ぞ! 誰かおらぬか!」
ザガン伯爵は大声で叫ぶが、誰1人駆けつける気配もなく、ただ女と2人きり。
「人口も少なく、旅人や冒険者も寄らぬこの地では、宰相様への賄賂を工面するのもお辛いでしょう。……どうです? 私に全て任せてみては」
「な、なんぞ方策があるというのか! そ、そうか! 私の家来になるというのじゃな! 良かろう。そなたを召し抱えよう!」
女の言葉を受けて、ザガン伯爵は思いつきでそんな提案をした。
だが女は高笑いする。
「家来などと畏れ多いですわ。私はただ伯爵様の出世のお手伝いをさせて頂くだけです。……そうですね。まずは盗賊を始末しましょう。盗賊が貯めたお宝を我が物にするために」
ザガン伯爵は女の言葉の意味をつかめず、ただ呆然と見つめるしかできない状態だった。
女は、そんなザガン伯爵に構わずに話を続ける。
「近くにドワーフの隠れ里があるのをご存知でしょうか?」
「あ、あるらしいというのは昔から言われておる。だが、詮索するなとも代々言われておる」
「何故?」
「刺激して争いになっても、屈強な戦士の多いドワーフに勝てぬからよ。……それに連中が世に流通している武具、それがなくなればドワーフの機嫌を損ねたとして、この私が大陸中から責められるからな」
ザガン伯爵はドワーフの隠れ里への興味はなかった。
けれど、少しでも悪感情を持たれないようにと、最低限の情報だけは持っていたのだ。
女は予想通りの回答だったのか、満足して頷く。
「そのドワーフの里に、現在アランの傭兵が滞在しております。その人物に依頼をするのは如何でしょう?」
「ほう?」
ドワーフを盗賊にぶつけるのが策なのかと勘ぐっていたが、意外な情報とまともな思考にザガン伯爵は女のことを少し見直した。
アランの傭兵といえば一騎当千と誉れ高い。
現団長のグレン・アルバースは単身盗賊の拠点を襲い、数百の首級を上げた話もある。
「アランの傭兵か。ふむ悪くない。丁重に我が領にお迎えしよう。使者を出すので、そなたに道案内を頼んで良いか?」
「ええ、喜んで。では準備が出来たらお声がけください」
「そのほう、名はなんと申す? それとアランの傭兵の名は?」
「アランの傭兵の名はリョウ・アルバース。私の名はルシエンと申します。以後、お見知りおきしていただければ幸いです」
ザガン伯爵はルシエンという名を知らなかったが、リョウ・アルバースという名には聞き覚えがあった。
だが、どこで聞いたかは思い出せなかった。
そして女……ルシエンのフードから見える口元は、笑みの形のままであった。
その領主邸の伯爵のもとに、見知らぬ魔女が面会を求めてきたと報告が入った。
魔女は1人でやってきたという。
「もうすぐ日が暮れる、追い返せ。それでなくとも忙しいのに、魔女ごときの相手などしてられるか」
ザガン伯爵は面倒くさそうに手を振り、追い返すように指示を出した。
だが……
「それはご無体な、お話ぐらい聞いて頂けるほうがよろしいかと」
いつの間にか、ザガン伯爵の背後に立っていたのは黒いフードを目深に被った女。
その女の口元は笑みを浮かべている。
報告に来た者はどういった理由か不明だが、不自然に眠りについていた。
ザガン伯爵は恐怖のあまり、慌てて椅子から転がり落ちながら、手を前に伸ばして女を退かそうとした。
「聞けば、王都への近道である山道に盗賊が住み着いたとか。さぞお困りでしょう」
だが女は一向に下がる気配もなく、それどころかザガン伯爵の目の前にまでやってくる。
……フードの隙間から見える女の口元は、笑みの形のままであった。
その女から発せられる異様な威圧感に、ザガン伯爵は脂汗を流して震えることしかできないでいた。
「な、何者だ! だ、誰ぞ! 誰かおらぬか!」
ザガン伯爵は大声で叫ぶが、誰1人駆けつける気配もなく、ただ女と2人きり。
「人口も少なく、旅人や冒険者も寄らぬこの地では、宰相様への賄賂を工面するのもお辛いでしょう。……どうです? 私に全て任せてみては」
「な、なんぞ方策があるというのか! そ、そうか! 私の家来になるというのじゃな! 良かろう。そなたを召し抱えよう!」
女の言葉を受けて、ザガン伯爵は思いつきでそんな提案をした。
だが女は高笑いする。
「家来などと畏れ多いですわ。私はただ伯爵様の出世のお手伝いをさせて頂くだけです。……そうですね。まずは盗賊を始末しましょう。盗賊が貯めたお宝を我が物にするために」
ザガン伯爵は女の言葉の意味をつかめず、ただ呆然と見つめるしかできない状態だった。
女は、そんなザガン伯爵に構わずに話を続ける。
「近くにドワーフの隠れ里があるのをご存知でしょうか?」
「あ、あるらしいというのは昔から言われておる。だが、詮索するなとも代々言われておる」
「何故?」
「刺激して争いになっても、屈強な戦士の多いドワーフに勝てぬからよ。……それに連中が世に流通している武具、それがなくなればドワーフの機嫌を損ねたとして、この私が大陸中から責められるからな」
ザガン伯爵はドワーフの隠れ里への興味はなかった。
けれど、少しでも悪感情を持たれないようにと、最低限の情報だけは持っていたのだ。
女は予想通りの回答だったのか、満足して頷く。
「そのドワーフの里に、現在アランの傭兵が滞在しております。その人物に依頼をするのは如何でしょう?」
「ほう?」
ドワーフを盗賊にぶつけるのが策なのかと勘ぐっていたが、意外な情報とまともな思考にザガン伯爵は女のことを少し見直した。
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「アランの傭兵か。ふむ悪くない。丁重に我が領にお迎えしよう。使者を出すので、そなたに道案内を頼んで良いか?」
「ええ、喜んで。では準備が出来たらお声がけください」
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ザガン伯爵はルシエンという名を知らなかったが、リョウ・アルバースという名には聞き覚えがあった。
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