【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ

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第2章 英雄の最期

第16話 ドワーフの宴会

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 いやもう、酒盛りが始まるとは思わなかったよ。

 フィーリアの帰還と私たちの歓迎に、里を上げての酒盛りをすることになったんだとさ。

「うええ、酒臭っ! これだからドワーフは嫌なのよ! 大声で騒ぐし、酒癖悪いし! 欲望に忠実で、ホント嫌になるわね!」

 ベレニスは鼻を摘みながら、嫌そうに文句を言っている。
 だけど、ジューシーなお肉料理や色とりどりの果物が運ばれてくると、よだれを垂らして頬張っている。

 ほんと欲望に忠実だ。エルフも人間も。

 私だってお酒の臭いは得意じゃないし、ドワーフのおっさんたちの息の臭さには辟易する。

 けど、こんな美味しそうな料理を目の前にして食べないなんてとんでもない!

 私はお肉を頬張り、果物を齧り、果実ジュースを流し込む。

 あー幸せ♪ ドワーフがビヤ樽体型なのが多いのもわかるかも。
 こんな美味しい料理を、お酒と一緒に食べていたらそりゃ太るよね。

「飲んでるか! 食ってるか! 若者よ!」

 里に入る時に出会ったドワーフの戦士、ゲッペンさんが私とリョウの肩をバシバシ叩いてきた。

 ……痛いんだけど。

「なんぞ小僧、酒を飲んでおらぬではないか! ドワーフの里では遠慮は無用、さあ飲むのじゃ!」

 ゲッペンさんはリョウに、お酒の入ったジョッキを渡す。

「いえ、俺は……」

「儂らドワーフの酒が飲めないってか⁉」

 ゲッペンさんは、酒臭い息を吐きかけてリョウに迫る。

「そういえば、リョウってお酒を飲んでいるのを見たことないけど、嫌いなの?」

「どうせ傭兵はお子様だから飲めないのよ~。ヒック。アハハハ~。な~んか超気分良いわ~」

 って! 誰だ、ベレニスにお酒を飲ませたのは!
 めっちゃ出来上がって、フィーリアの肩をバンバン叩いているんだけど!

「うざいっす。マジでうざいっす。ホント誰っすか! ベレニスさんに酒を飲ませたのは!」

 私とリョウは、ずっとここにいたから違うからね?

 あっ、ちびっ子たちがクスクスしてる。
 絶対あの子たちだな。
 ベレニス……遊ばれてるなあ……

 フィーリアには可哀想だが犠牲になってもらうとして、リョウへと視線を戻す。
 リョウの手には、なみなみと注がれたエールのジョッキがあった。

「嫌いではないが、記憶がなくなるんだよな。傭兵をしている以上、酒での失敗は命取りになる。だから飲まないようにしているんだ」

 なるほど、傭兵らしいというかリョウらしい理由だなあ。

 ん? でも記憶がなくなるって?

「ここには我らドワーフが大勢いる! 存分に酔うが良かろう!」

 ゲッペンさんはもう一杯リョウにジョッキを渡すと、クルトさんまでやってきて更に一杯渡す。

「全部飲めたら、工房で小僧が欲しそうにしていた剣を打ってやるぞ!」

 クルトさんの言葉に、ピクンとリョウが反応する。

 へえ? リョウが欲しがってた剣ってどんなのだろう?
 リョウが物欲を出しているのって珍しいかも。
 まあ、ドワーフの里に来たら鍛冶に興味を持つよね~。

「その約束、守ってもらいますよ」

 リョウが意を決して、口にエールを注ぐ。

 大丈夫かな? 記憶がなくて暴れる系の酔い方かな?
 でも、リョウが暴れたら私が止めればいいかな?
 私は、エールを一気に飲み干そうとするリョウを応援する。
 頑張れ! って。

 ……あれ? エールのジョッキを傾けるリョウの口元が、笑みの形になっていた。

 あ……これダメなやつだ。

 私は倒れ込むリョウを、慌てて支えるのだった。

「男なのにお酒飲めない人、初めて見た~」

「結婚対象外ね~」

 ドワーフの少女2人がクスクス笑っている。
 出会った初日のちびっ子にバカにされるリョウ。

 ……うん、寝てて良かったよ。いや寝たからバカにされているのか。

「あんたたちはまだ飲んじゃ駄目よ。お姉ちゃんと一緒に果実ジュース飲も?」

「「は~い」」

 うんうん、やっぱり小さい子は人だろうがドワーフだろうが可愛いなあ~。

 ん? 私が飲んだ果実ジュース、味が違うような?

「人のお姉ちゃん強いね~」

「お姉ちゃんは酔っ払わないのね、つまんな~い」

 うん……やっぱり小さい子は人だろうがドワーフだろうがイタズラ好きなのね。

 てか、美味しいなこれ、癖になりそう。

 けれどリョウが飲めないなら、好んで口にするのは控えよう。
 今は大丈夫だけど、ベレニスみたいに迷惑をかけたらヤバいしね♪

 ドワーフの里で酒盛りが始まってから、4時間ほど経った頃だろうか?
 1人、また1人と酔い潰れていく。

 最初にたった一口で酔い潰れたリョウは、私に膝枕されて眠っている。
 フィーリアが酔い潰れた皆に毛布をかけて回り、ベレニスにもかけようとして抱きつかれる。
 フィーリアが抵抗虚しく敗れ去り、2人で寝息を立て始めたのが30分前。

 そうしてドワーフの里の宴はお開きとなったのだ。

 夜空には青白い月が浮かんでいた。

「騒がしくってすまなかったねえ。ローゼちゃんはベッドで寝るといいよ。他の連中は私がなんとかするから」

 ユーリアさんが、娘のフィーリアとベレニスをヒョイと持ち上げる。
 小柄な美人さんに見えてもさすがはドワーフ、力持ちだ。

「あ、私も手伝います」

 浮遊魔法でリョウを浮かせると、ユーリアさんにどこへ運べばいいか確認する。

「あら、便利ね。でも他の連中もカミさん連中に任せればいいから、ローゼちゃんはリョウ君を運んであげて」

 見渡すと、ドワーフの奥さん方が酔っ払いたちを持ち上げている。
 フィーリアもベレニスもユーリアさんに運ばれているし、ここはお言葉に甘えることにしよう。

 私はフィーリアの家へと戻り2階へと上がって、客室に運び込みリョウをベッドへと寝かせた。

 あれ? そういえばクルトさんは?
 ユーリアさんがフィーリアとベレニスを運んで、私がリョウを運んで……
 クルトさんを運んでいる人がいないような?

 ま、まあいっか。

 私は水差しから水をコップに注ぐと、ベッド脇のサイドテーブルに置き、リョウに毛布をかけてあげる。

 普段は鋭い目つきが閉じられて、あどけなく見える寝顔は年相応に見えた。

 この5年間、ずっと復讐だけを考えて生きてきたんだもんね。
 復讐対象のノイズ・グレゴリオは未だ消息不明……リョウは今どんな思いでいるんだろう?

 リョウが、私やベレニスと行動を共にしてくれているのは成り行きもある。
 同じくノイズを探す人物トール・カークスが、王都ベルンで宰相テスタ・シャイニングに取り入り動いている。

 そのことから何かあると踏んで、王都へ行こうとしているのだろう。

 同じ復讐者であった私に、リョウをとやかく言う資格はない。
 私の復讐者であった人物は、すでに自殺していた。

 大まかな事情と、裏に魔王を再び大陸に呼び出す邪教による陰謀があるとだけは知った。
 だが、どんな組織でどんな企みがあり、首謀者が誰なのかなど何も判明してはいない。

 私の復讐目的で始まった旅は、今はこの大陸に蠢く陰謀を阻止したいと目的が変わっている。

 それは両親の死を招いた、魔王復活を阻止するためなのか。
 それとも再び大陸に混沌を呼び込まんとする、邪教の企みを阻止するためなのか。
 はたまたただ単に、この大陸で暮らす人々の日常的な幸せを守りたいだけなのか。

 他者から問われたら、私は迷いなくこう答えるだろう。

 全部、と。

 私はベッド脇の椅子へと腰を下ろすと、眠るリョウの寝顔を眺める。

「ん……」

 リョウの寝言にドキッとする。
 今のは起きたわけじゃないよね?
 ちょっとドキドキしながら様子を見ていると、穏やかな寝息が聞こえてきた。

 あ、良かった……起きてないみたい……

 ん~、そろそろ私も寝るかな。

 結局今日は、七英雄に関する本を読む機会がなかったなあ。

 フィーリアはどうするのかな?
 両親の希望通りに里に残るのかな?
 宴会の時はフィーリアの帰郷祝いなのに、料理を作ったり運んだりお酒を注いだり、ベレニスに絡まれたりで忙しそうだったけど。

 リョウの言う通り、フィーリアの護衛である私たちだ。
 両親に肩入れするわけにいかないし、ベレニスの言う通りフィーリアが決めるべきことだろう。

 けど、フィーリアも11歳(自称)の子供にしてはしっかりしすぎているが、まだまだ親の庇護が必要な年頃なはず。

 ドワーフだって人の親子と変わらない。
 娘が旅に出ると言い出したら、普通止めるだろう。

 私だって親なら止めていると思う。

 両親を喪っている私は、フィーリアが羨ましいのかもしれない。

 ああ~、なんか考えることがいっぱいで頭が沸騰しそう……

 私はベッド脇のサイドテーブルに置かれた水差しから、コップに水を注いで一杯グイッと飲む。
 冷たい水が喉を通り抜けていく感触を心地よく感じると、頭の中が冴えてきた気がした。

 よし、とりあえず寝て起きたらクルトさんの本を読ませてもらおう。
 私はベッド脇の椅子から立ち上がり、リョウの眠る部屋を出ると、自分に割り当てられた部屋を探す。

「そういえば……私の部屋ってどこ?」

 闇が覆っている廊下で、私はポツンと立ち尽くすのだった。
 
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