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第2章 英雄の最期
第26話 魔王復活⁉
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盗賊どもの放った矢に魔力を込めた、魔女ローゼを狙った矢。
これは策通りに、たった1人警戒心を緩めていなかったリョウ・アルバースをハリネズミに変えてやった。
私は嗤った。
後はドワーフどもがこの盗賊共を始末するだろう。
とっとと立ち去るのが吉だが、リョウ・アルバースの屍を抱き、発狂するローゼマリー王女の姿が愉しくて、暫くその場に残ることにした。
もしかしたら、その役目は私だったかもしれなかったのだから。
「あああああああああああああああああ」
ローゼマリー王女の絶望した声を聞き、ざまあみろと嗤う。
あの女は、6人の老婆の魔女から重要視されているらしい。
元々仲間だったディルとかいう魔女に計画を邪魔されて、ローゼマリー・ベルガー王女殿下は病死したことになった。
そして冒険者の魔女ローゼ・スノッサになったらしい。
そんな真の苦労も知らぬ小娘に、あの感情を味合わせる愉悦がたまらなく快感だ。
私は嗤い続ける。
「我らが神よ! 魔女ルシエンを褒め称えよ! そしてどうか、この世界にもっともっと混沌を! 英雄の最期に相応しき破滅を!」
リョウ・アルバースが死んだ。
世界は私に味方している。
混沌をもたらす舞台装置としての使命を全う出来るのだ。
私は運命に祝福されていると確信するのだ。
ドワーフどもが盗賊を駆逐する中で私は嗤い続ける。
ローゼマリー王女殿下は、リョウ・アルバースの亡骸を抱いて泣き叫んでいる。
まだまだ私はこの感情を味わっていたいのだ!
もっと負の感情を引き出すために私は嗤い続けた。
「あーはっはっは! 死になさい。殺しなさい。なんて素晴らしき憎悪と絶望! それでこそ我らが神に供物を捧げられる!」
私は英雄を葬った魔女になったのだ!
ノイズが認めた唯一の生存者になったのだ!
……この時が私の人生の絶頂期だった。
風が吹き荒び、エルフの小娘がレイピアを手にして突っ込んでくる。
「ふん。仲間のベレニスとかいうエルフか」
「傭兵をよくも‼」
「風の精霊魔法にレイピアね。だが、まだまだだな」
エルフ特有の精霊魔法も、怒りの感情に支配された状態なら大したことはない。
風の精霊を宿すエルフの小娘の動きは、単調で読みやすかった。
レイピアの突きを横に回避する。
「もしかしてエルフも、ローゼマリー王女のようにリョウ・アルバースが好きだったとか?」
「はあ⁉ 傭兵なんて大っ嫌いよ! 死んだなんて絶対に許せないわ!」
エルフの小娘は怒りのままに突っ込んでくる。
なるほど。これは使える。
「お前は殺さないでおこう。エルフの長い寿命で語り続けるがいい。黒竜をも倒す若き英雄が無惨に殺されたことを! 我らの存在を! 私の存在を!」
「ふざけるなああああああ‼」
エルフが風を纏い、さらに速度を上げて突っ込んでくる。
私は背後にあった大きな岩に魔力を込める。
エルフは渾身の突きを放って来たので、それに合わせて岩を飛ばす。
沈黙したエルフだが死んではいないだろう。
さて、名残惜しいが駒である盗賊どもはドワーフに皆殺しにされたようだ。
もう少し、ローゼマリー王女の嘆きを見物していたかったが潮時だ。
最期に目に焼き付けようとリョウ・アルバースの死体へ目を向ける。
「なんだ? あれは……」
目を疑った。
と、同時に老婆どもが王女を絶望させるようにと条件を出した理由を理解した。
嘆き、絶望で喚いていたローゼマリーの身体からどす黒い魔力の渦が巻き上がっていたからだ。
一瞬で私は悟った。
「ああ、貴女が我らの神だったのですね! ええ! ええ! いいですとも! 私を復讐で殺しなさい! 神が世界を混沌に導くというなら、私は喜んでその供物になりましょう!」
私は歓喜した。
私の神と出逢えたのだ!
魔女ローゼが私に祝福を授けてくれた!
私はこの神を必ずや復活させようぞ!
「いかん! クルト! あれはなんじゃ!」
「落ち着けゲッペン。あれは魔王よ。我らドワーフだけではどうにもならぬわい」
私を包囲していたドワーフどもも絶句し、魔女ローゼだった存在を見つめていた。
「魔王? ふふふ、凄い魔力。うっとりしちゃう。あれこそが我らの神! 我らに混沌を約束せし者! さあ! 私を殺して世界を破壊してください!」
私は両手を広げて魔王に跪く。
私の魔女、私の神よ!
さあ、この手をお取りください‼ ああ、ああ! 幸せだ。
もう思い残すことなど何もない‼
私は笑いが止まらなかった。
「ローゼさん、落ち着いてくださいっす! ローゼさん!」
無礼なドワーフの少女が一匹、我らが神の背中に抱きつき、不愉快な言動を口走っている。
邪魔だな。
我らが神の身体から発し続ける黒き魔力の渦は、ドワーフの里を覆っていく。
もはや誰もが動けない。
我らが神以外は、私もただ供物になる瞬間を迎えるだけ。
『リョウが死んだ。そうかあ、ならもうこの世界いらないや』
「ローゼさん! ローゼさん! ローゼさん!」
うるさいドワーフだ。諦めて運命を受け入れろ。
始末したいが魔力も体力も、我らが神に吸い取られている感覚で動けない。
ドワーフの小娘が、ローゼマリー様の足元に縋りついている。
不愉快だ。無価値な存在のくせに、私の神の慈悲を妨げているなんて許せない!
「ローゼさん! ローゼさん! ローゼさん!」
しがみついている小娘め。早く諦めろ‼
……ちょっと待て。
何故あのドワーフの小娘は、我らが神にしがみついていられるんだ?
私だけではない。
屈強なドワーフの戦士たちですら動けなくなっているのに、なぜあの小娘は?
黙れ! いい加減にしろ!
無価値な存在の小娘なんかが、私の神に気安く触れていい存在じゃない‼
「ドワーフの小娘! 我らが神からその汚い手をどけろ!」
私は怒りのままに叫ぶ。
ドワーフの小娘は私を見た。
恐れのない目だ。
私に逆らうドワーフの小娘め! 死んでしまえ!
「我らが神よ! ローゼマリー姫殿下! いえ! 魔王ローゼマリー様よ! どうか私を殺してください! 神の愛しき者を殺した罰を喜んで受けましょう! それが私の生きていた意味‼」
黒き魔力の渦が勢いを増す。
ああ、もうすぐ魔王ローゼマリー様が復活するのだ!
私は感極まる思いだった。
『何故殺した』
「理由なんて考えなくてよいのです。本能の赴くまま、生ある者全てを殺してください」
私は嗤う。
もはや私の命なんてどうでもいいのだ。
「ローゼさん。それでいいんすか? 本当にそれでいいんすか? もっと他にやりたいことはないっすか?」
ドワーフの小娘が何か言っている。
命乞いか? 無価値な存在がこれ以上、神の慈悲を拒むんじゃない‼
私の怒りは頂点に達した。
ああ、もう我慢出来ない! 不愉快だ!
あの小娘だけは殺す!
動け私の魔力よ。
命をも糧とした魔法を放て!
あの小娘だけは許さない!
ドワーフの小娘を殺す力を寄越しなさい‼
私の感情を込めた黒き魔法はドワーフの小娘に直撃した。
「やった! これで私の神を復活させる邪魔者が消えたのだ‼ ああ、もうすぐ復活する! 魔王ローゼマリー様が世界を混沌に導くのだ‼」
私は嗤いが止まらない。
「はーっはっはっは、はーっはっはっは‼」
……ん? ドワーフの小娘が生きているだと?
「たしかに直撃したはずだぞ! 私の魔力を込めた一撃をどうして耐えられた‼」
手に何か球体のような物を握りしめている……あれは魔導具か?
魔法を吸収したとでもいうのか⁉
「待っていたっす。魔力頂戴したっす。これで魔女ルシエン。貴女も覚えているっす」
「何をする気だああああああ! ドワーフの小娘がああああああああ!」
わからないわからないわからない!
でも何故だ! 何故、我らが神は棒立ちでお動きにならないのだ!
底知れぬ恐怖が私の身体を支配していった。
あの小娘は危険だ。魔王ローゼマリー様の御身に何か起きる前に始末しなければ!
私は火属性の魔法を唱えてドワーフの小娘に放つ。
しかし、魔導具らしき球体がそれを吸収して無効化する。
何なのだ、あの魔導具は!
私の魔力を込めた魔法は、全て吸収されていった。
……何故だ⁉ 何故、この私が無価値な存在の小娘に追い詰められているのだ⁉
「元凶の魔力。ローゼさんの魔力。シュタイン王が遺せしこの魔導具『時の瞳』。さあ、ローゼさん願ってくださいっす。どうしたいっすか?」
「リョウと……みんなと……もう一度……」
黒く渦巻く魔力が金色の光に包まれていく……
髪色と同じまばゆい光、瞳の色と同じ碧きゆらぎ。
視界がぼやける。
私の意識が遠のく。
最後に見たのは、数十本の矢を全身に浴びて倒れているリョウ・アルバースの姿。
ピクリと指先が動いたのを、私はたしかに見た。
これは策通りに、たった1人警戒心を緩めていなかったリョウ・アルバースをハリネズミに変えてやった。
私は嗤った。
後はドワーフどもがこの盗賊共を始末するだろう。
とっとと立ち去るのが吉だが、リョウ・アルバースの屍を抱き、発狂するローゼマリー王女の姿が愉しくて、暫くその場に残ることにした。
もしかしたら、その役目は私だったかもしれなかったのだから。
「あああああああああああああああああ」
ローゼマリー王女の絶望した声を聞き、ざまあみろと嗤う。
あの女は、6人の老婆の魔女から重要視されているらしい。
元々仲間だったディルとかいう魔女に計画を邪魔されて、ローゼマリー・ベルガー王女殿下は病死したことになった。
そして冒険者の魔女ローゼ・スノッサになったらしい。
そんな真の苦労も知らぬ小娘に、あの感情を味合わせる愉悦がたまらなく快感だ。
私は嗤い続ける。
「我らが神よ! 魔女ルシエンを褒め称えよ! そしてどうか、この世界にもっともっと混沌を! 英雄の最期に相応しき破滅を!」
リョウ・アルバースが死んだ。
世界は私に味方している。
混沌をもたらす舞台装置としての使命を全う出来るのだ。
私は運命に祝福されていると確信するのだ。
ドワーフどもが盗賊を駆逐する中で私は嗤い続ける。
ローゼマリー王女殿下は、リョウ・アルバースの亡骸を抱いて泣き叫んでいる。
まだまだ私はこの感情を味わっていたいのだ!
もっと負の感情を引き出すために私は嗤い続けた。
「あーはっはっは! 死になさい。殺しなさい。なんて素晴らしき憎悪と絶望! それでこそ我らが神に供物を捧げられる!」
私は英雄を葬った魔女になったのだ!
ノイズが認めた唯一の生存者になったのだ!
……この時が私の人生の絶頂期だった。
風が吹き荒び、エルフの小娘がレイピアを手にして突っ込んでくる。
「ふん。仲間のベレニスとかいうエルフか」
「傭兵をよくも‼」
「風の精霊魔法にレイピアね。だが、まだまだだな」
エルフ特有の精霊魔法も、怒りの感情に支配された状態なら大したことはない。
風の精霊を宿すエルフの小娘の動きは、単調で読みやすかった。
レイピアの突きを横に回避する。
「もしかしてエルフも、ローゼマリー王女のようにリョウ・アルバースが好きだったとか?」
「はあ⁉ 傭兵なんて大っ嫌いよ! 死んだなんて絶対に許せないわ!」
エルフの小娘は怒りのままに突っ込んでくる。
なるほど。これは使える。
「お前は殺さないでおこう。エルフの長い寿命で語り続けるがいい。黒竜をも倒す若き英雄が無惨に殺されたことを! 我らの存在を! 私の存在を!」
「ふざけるなああああああ‼」
エルフが風を纏い、さらに速度を上げて突っ込んでくる。
私は背後にあった大きな岩に魔力を込める。
エルフは渾身の突きを放って来たので、それに合わせて岩を飛ばす。
沈黙したエルフだが死んではいないだろう。
さて、名残惜しいが駒である盗賊どもはドワーフに皆殺しにされたようだ。
もう少し、ローゼマリー王女の嘆きを見物していたかったが潮時だ。
最期に目に焼き付けようとリョウ・アルバースの死体へ目を向ける。
「なんだ? あれは……」
目を疑った。
と、同時に老婆どもが王女を絶望させるようにと条件を出した理由を理解した。
嘆き、絶望で喚いていたローゼマリーの身体からどす黒い魔力の渦が巻き上がっていたからだ。
一瞬で私は悟った。
「ああ、貴女が我らの神だったのですね! ええ! ええ! いいですとも! 私を復讐で殺しなさい! 神が世界を混沌に導くというなら、私は喜んでその供物になりましょう!」
私は歓喜した。
私の神と出逢えたのだ!
魔女ローゼが私に祝福を授けてくれた!
私はこの神を必ずや復活させようぞ!
「いかん! クルト! あれはなんじゃ!」
「落ち着けゲッペン。あれは魔王よ。我らドワーフだけではどうにもならぬわい」
私を包囲していたドワーフどもも絶句し、魔女ローゼだった存在を見つめていた。
「魔王? ふふふ、凄い魔力。うっとりしちゃう。あれこそが我らの神! 我らに混沌を約束せし者! さあ! 私を殺して世界を破壊してください!」
私は両手を広げて魔王に跪く。
私の魔女、私の神よ!
さあ、この手をお取りください‼ ああ、ああ! 幸せだ。
もう思い残すことなど何もない‼
私は笑いが止まらなかった。
「ローゼさん、落ち着いてくださいっす! ローゼさん!」
無礼なドワーフの少女が一匹、我らが神の背中に抱きつき、不愉快な言動を口走っている。
邪魔だな。
我らが神の身体から発し続ける黒き魔力の渦は、ドワーフの里を覆っていく。
もはや誰もが動けない。
我らが神以外は、私もただ供物になる瞬間を迎えるだけ。
『リョウが死んだ。そうかあ、ならもうこの世界いらないや』
「ローゼさん! ローゼさん! ローゼさん!」
うるさいドワーフだ。諦めて運命を受け入れろ。
始末したいが魔力も体力も、我らが神に吸い取られている感覚で動けない。
ドワーフの小娘が、ローゼマリー様の足元に縋りついている。
不愉快だ。無価値な存在のくせに、私の神の慈悲を妨げているなんて許せない!
「ローゼさん! ローゼさん! ローゼさん!」
しがみついている小娘め。早く諦めろ‼
……ちょっと待て。
何故あのドワーフの小娘は、我らが神にしがみついていられるんだ?
私だけではない。
屈強なドワーフの戦士たちですら動けなくなっているのに、なぜあの小娘は?
黙れ! いい加減にしろ!
無価値な存在の小娘なんかが、私の神に気安く触れていい存在じゃない‼
「ドワーフの小娘! 我らが神からその汚い手をどけろ!」
私は怒りのままに叫ぶ。
ドワーフの小娘は私を見た。
恐れのない目だ。
私に逆らうドワーフの小娘め! 死んでしまえ!
「我らが神よ! ローゼマリー姫殿下! いえ! 魔王ローゼマリー様よ! どうか私を殺してください! 神の愛しき者を殺した罰を喜んで受けましょう! それが私の生きていた意味‼」
黒き魔力の渦が勢いを増す。
ああ、もうすぐ魔王ローゼマリー様が復活するのだ!
私は感極まる思いだった。
『何故殺した』
「理由なんて考えなくてよいのです。本能の赴くまま、生ある者全てを殺してください」
私は嗤う。
もはや私の命なんてどうでもいいのだ。
「ローゼさん。それでいいんすか? 本当にそれでいいんすか? もっと他にやりたいことはないっすか?」
ドワーフの小娘が何か言っている。
命乞いか? 無価値な存在がこれ以上、神の慈悲を拒むんじゃない‼
私の怒りは頂点に達した。
ああ、もう我慢出来ない! 不愉快だ!
あの小娘だけは殺す!
動け私の魔力よ。
命をも糧とした魔法を放て!
あの小娘だけは許さない!
ドワーフの小娘を殺す力を寄越しなさい‼
私の感情を込めた黒き魔法はドワーフの小娘に直撃した。
「やった! これで私の神を復活させる邪魔者が消えたのだ‼ ああ、もうすぐ復活する! 魔王ローゼマリー様が世界を混沌に導くのだ‼」
私は嗤いが止まらない。
「はーっはっはっは、はーっはっはっは‼」
……ん? ドワーフの小娘が生きているだと?
「たしかに直撃したはずだぞ! 私の魔力を込めた一撃をどうして耐えられた‼」
手に何か球体のような物を握りしめている……あれは魔導具か?
魔法を吸収したとでもいうのか⁉
「待っていたっす。魔力頂戴したっす。これで魔女ルシエン。貴女も覚えているっす」
「何をする気だああああああ! ドワーフの小娘がああああああああ!」
わからないわからないわからない!
でも何故だ! 何故、我らが神は棒立ちでお動きにならないのだ!
底知れぬ恐怖が私の身体を支配していった。
あの小娘は危険だ。魔王ローゼマリー様の御身に何か起きる前に始末しなければ!
私は火属性の魔法を唱えてドワーフの小娘に放つ。
しかし、魔導具らしき球体がそれを吸収して無効化する。
何なのだ、あの魔導具は!
私の魔力を込めた魔法は、全て吸収されていった。
……何故だ⁉ 何故、この私が無価値な存在の小娘に追い詰められているのだ⁉
「元凶の魔力。ローゼさんの魔力。シュタイン王が遺せしこの魔導具『時の瞳』。さあ、ローゼさん願ってくださいっす。どうしたいっすか?」
「リョウと……みんなと……もう一度……」
黒く渦巻く魔力が金色の光に包まれていく……
髪色と同じまばゆい光、瞳の色と同じ碧きゆらぎ。
視界がぼやける。
私の意識が遠のく。
最後に見たのは、数十本の矢を全身に浴びて倒れているリョウ・アルバースの姿。
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