【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ

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第2章 英雄の最期

第27話 ドワーフの秘宝

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 ボヤけた視界がクリアになる。
 木々に覆われた、ドワーフの隠れ里を見下ろせる格好の高台……だと?

「どうしたんですかい? ルシエンさん。それより合図を頼みますぜ」

 弓矢を構えた盗賊どもの姿。

 見下ろした先には黒竜を倒し、集まって話をしているドワーフどもとリョウ・アルバース。
 それに……我らが神?

 ……なんだこれは?

「ヘヘ、青ざめてふらつくなんて、ルシエンさんも人なんですなあ。まあ安心してくだせえ、標的の傭兵はちゃんと殺しますよ。そんでドワーフを皆殺しにして、里のお宝ぜ~んぶいただくって約束は守ってもらいやすぜ」

 さっきまでのは夢? でも何故、私はここに?
 ……わからない。

 警戒心の強すぎる標的に、何重にも張り巡らせた策の最高の結果。

 ドワーフどもに駒で不要の盗賊どもを始末してもらい、副産物として我らが神の復活という大戦果。

 なのにここは?
 私の思考はぐちゃぐちゃだった。

 何なのだこの現状は?
 私はどう判断すればいいのだ?

 わからない、わからない、わからない!

 改竄魔法? いやあり得ん! 死は変更できない!
 殺された盗賊どもが、何も知らずに弓矢を構えているのが証拠!

 なら……時が戻った?
 あり得ない、あり得ない‼
 そんな魔法は存在しない!
 私は何を見ている?
 これは現実なのか⁉ 夢なのか⁉

「散開しやしたぜ。ヘヘ、人間の女がふらついて倒れやしたぜ。格好の的だ」

 同じだ。知っている光景と全く同じ。

 なら迷うな! もう一度繰り返せばいい!
 リョウ・アルバースの次にドワーフの小娘を始末する!
 絶対に絶対に絶対に‼

 私が手を挙げると、一斉に矢が放たれた。
 ドワーフどもは気づいていない。

 気づいたのはやはりリョウ・アルバースだけ。
 走れ。護れ。そして死ね!

 ああ、やはりさっきのは正夢だ!
 我らが神の復活が我が手で行われるという、我らが神の啓示だったのだ!

 さあ今度こそ世界に混沌をお願いします!
 魔王ローゼマリー様‼

 しかし……
 放った矢は一本も刺さらない。

「ぎゃあああ」

「おのれええええ。ヒエッ」

「た、助け……俺たちゃあの魔女に騙されて……ぐはっ」

 盗賊どもの血飛沫が舞う。

 何だ? 何が起きている?
 何故だ、なぜ……矢の先に誰もいない‼

「何故‼ 貴様らがここにいる‼ ドワーフども! それに……リョウ・アルバースううううううううう!」

「魔女ルシエンだな。投降し、全てを話せ」

 リョウ・アルバースが剣を構える。
 何故だ! 何故⁉
 盗賊どもは手筈通り矢を放ったはず……私の合図で矢を放つはずだった。
 そしてこの男に命中するはずだったのに!

 背後からも、私の首筋に切っ先が当たる。

「チェックメイトよ。観念しなさい」

 この声、エルフか。

「どういうことだ! 貴様は私がこの手で倒したはずだ‼」

「は? 私があんた如きに負けるはずないでしょ」

 エルフの少女は不敵に笑う。
 わからないわからないわからない!
 やはり時が戻ったとでもいうのか‼
 ドワーフどもも斧を構えて包囲してくる。
 盗賊どもめ! 役立たずが‼

「通してください」

 ドワーフどもの後ろから我らが神の声がする。
 淡い期待で私は神を見る。
 金色の髪を靡かせて、碧き瞳の美しい少女がそこにいた……

 だが、禍々しい魔力をその身に纏っておらぬ、ただの魔力切れを起こして今にも倒れそうな魔女ローゼとして。
 その横にあのドワーフの小娘!

「貴様あああああああ! 何をしたあああああああああ!」

 ドワーフの小娘は恐れもせず、私に視線を向ける。

「さっきの記憶を持っているのは自分とベレニスさん。それとローゼさんとあんただけっす。記憶が共有されたという感じっすかね」

「何を言ってい……る? 時を戻したとでも言うのか‼」

 ドワーフの小娘はニヤリと笑う。

「まさか、そんなことは出来ないっすよ。この魔導具、ドワーフの秘宝『時の瞳』は、これから起こり得る事象を体験させるだけっす」

 その魔導具は、ドワーフの小娘の手元で音を立てて崩れ落ちた。

「……すいませんっす。そしてありがとうっす」

 ドワーフの小娘が崩れ落ちた魔導具へ、小さく呟いた。

「体験……だと?」

 その秘宝とやらが消えた。
 ならば勝機はあると、懸命に策を練る私であったが……

「私が教えてあげるわ」

 得意げな声で、エルフが語り始めた。

「ドワーフの里に急いで戻る私とフィーリアが、隠れ潜んでいるあんたらを見つけられないとでも? 黒竜を利用して身を隠す魔法で気配を消してたっぽいけど、御生憎様、木々はエルフの味方なのよね。精霊は、この私に違和感を教えてくれるのよねえ。このペンダント見えるかしら? これはドワーフが私のために作ってくれた魔導具。私の精霊力を増幅してくれるのよ! それにこのレイピアも見えるかしら? これはドワーフが私のために作ってくれた超軽くて超斬れ味が凄いのよ♪ ムフン♪」

「まあベレニスさんは、よくわかんないけどムキーってなったっすから、自分の魔導具で場所を特定したっすけどね」

「ちょっとフィーリア! 私、そんなムキーとかなった覚えないわよ!」

 エルフがドワーフの娘に食ってかかる。

「見つけて単身で奇襲しようとした、ベレニスさんの単細胞ぶりを止めるのにも苦労したっすぅ~」

「はあ? あの時点で私1人で全部始末してたわ! あんな雑魚ども、私1人で楽勝よ!」

 エルフとドワーフの娘の口論が始まる。

 なんなんだこいつらは⁉
 何故だ……何故こんなことになったのだ……
 私の計画は完璧だったはずだ、こんな理由のわからない失敗など認められるか!

 私は奥歯を強く噛み締めながら、打開策を考えていった。
 
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