【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ

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第3章 公爵令嬢の選択

第7話 仕組まれた再会

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 貴族街の教会へとやって来た私たち。

 青い屋根に真っ白な城壁の教会の門を潜ると、色とりどりの美しい花が出迎えてくれた。

「あの~、冒険者ギルドから来たんですが~」

 中に入って、最初に目に入った修道服の人に声をかける。

「2週間前に行方不明になった、シスターの捜索の依頼で来ました」

 広い教会内、他にも祈りを捧げている人がちらほら見える。
 礼拝堂の祭壇では、貫禄ある修道服の女性神官が祈りの言葉を捧げていた。
 あの人が依頼人のターニアという人かな?

 話しかけたシスターは、振り向いてもくれず反応もしてくれない。
 どうしよう? 失礼しますと挨拶してこのまま直接祭壇に向かおうかな?
 そう思った矢先だった。

「キヒ♥ こいつはビックリだわ~。まさかここでこうもあっさり再会するなんてぇ♥ あたしたちって運命の糸で結ばれているんじゃなぁい?」

「この声!」

 私とリョウとベレニスは戦闘態勢を取った。
 フィーリアも察したのだろう、身構えながら相手を観察している。

「おっと、止めておいたほうがいいと思うよぉ♥ あたしは逃げるついでにぃ、無関係な人たちを盾にできるけどぉ、そっちは人殺ししたくないでしょぉ♥」

 私たちに振り向いたシスター服に身を包みながらも、歪んだ笑みを消そうとしない人物。

 忘れるはずがない。
 この声、オレンジ色の髪、姿。

「ジーニア。貴女がここにいるってことは、この教会はビオレールのように邪教の支配下と思っていいのかな?」

 そう、目の前の少女は、かつてビオレールで教会に潜り込み、魔獣を使って生贄の実験をしていた人物。

 私の両親を殺した魔女ノエルが属していた、邪教の魔女ジーニアだ。

「逃亡して、手配されているのに同国の王都にいるとはな」

「ふうん。ベルンでの用も早く済みそうね。こいつを捕まえて吐かせれば良いんでしょ?」

「待って、ベレニス、リョウも。他の人を犠牲にする可能性がある以上、ここでは戦えない」

 2人を制し、私はジーニアに向き合う。

「キヒ♥ 王女様は物わかりが少しは良くなったのかなぁ♥ でもで~もぉ♥ お互い知った以上は野放しにできないよねぇ。さあて困ったわぁ♥」

 まだ他の人たちは、私たちに気づいていない。
 でも時間の問題だろう。
 不審に思って誰かが近づけば大騒ぎになるし、もう後戻りできなくなる。

「この方が邪教の魔女ジーニアっすか。なるほど……噂には聞いてましたが、少し想像と違ったっすね」

 フィーリアの発言にジーニアは、口元をさらに歪ませた。

「初めましてぇ、ドワーフのお嬢ちゃん♥ 随分冷静じゃない? ちょっとムカつくわねぇ。あんたらは全員ここで死ぬから、今どんな気持ちなのかをじっくりと聞く予定だったんだけどねぇ♥」

 ジーニアの挑発にフィーリアは動じない。
 むしろ、一歩前に出て私の前に立った。

「もっと狂気に染まった人物だと聞いていたっすけど、打算と計算高さを併せ持っているっすね。ルシエンという魔女のほうが、よっぽど狂気に染まっていたっすよ」

「フィーリア。それってつまり?」

「ローゼさん。自分たちがここに来たのは、この魔女ジーニアの罠っすね。ただ、他に近づいたり様子を窺ったりする気配がないことから、他に仲間はいないっす。彼女が、なぜ自分たちをここに呼んだかは不明っすけど、きっと頭の中は、どうやってこっちを思い通りに動かせるか考えているはずっす。だから挑発に乗ってやる必要はないっすよ」

 フィーリアの分析を聞いて、私はジーニアを凝視する。
 たしかに、ジーニアからは私たちを利用したい感じがプンプン臭うかも。
 なら、冷静にジーニアの目的を探るのが先決か?

「……クヒ♥ ちびっ子ドワーフちゃんやるねぇ。こっちとしては、とある命を救ってもらう代わりにぃ、あんたが王女様だと公言しないと取引するつもりだったけどぉ。まさか見破られるなんてねぇ♥」

「わかった。そうしましょ」

 即決する私にリョウもベレニスも、ジーニアも驚きの表情をした。

「こいつは信用できないぞ。捕縛を前提にすべきだ」

「傭兵に珍しく同意するわね。こいつの言葉は嘘ばっかりよ。あっさり約束を破るわ」

 リョウとベレニスの言葉にも一理ある。
 だが、ここで戦って無関係な人を犠牲にするのは避けたい。
 それに、とある命を救ってもらうという、ジーニアの言葉に引っかかりを覚える。
 いったいジーニアが、邪教が、誰を救おうとしているのか興味もあった。

「キヒ♥ そうねえ、約束すぐ破っちゃうかもぉ♥」

「それはないかな? 転移魔法で去ることもできたのにしないのは、ここにいなければならないから。違う?」

 私の指摘にジーニアはまた口元を歪める。
 どうやら図星のようだ。

「オーケーこうしましょ。あたしが明らかに劣勢だ。観念して喋って、あ・げ・る♥」

 ジーニアは、まるで悪戯がバレてしまった友人に対する仕草をすると、貞淑なシスターのように歩いて私の耳元に唇を近付けてきた。

「テスタ・シャイニング宰相が、ヴィレッタ・レスティア公爵令嬢の暗殺を企てているよぉ♥ 実行予定は、今日これから教会に寄った帰り道。実行犯は、あたしがあんたたちを呼び寄せるために出した名前のバネッサ・トリトリン。キヒ♥ 話しすぎたかなぁ♥」

 ジーニアはそれだけ言うと距離を取る。
 ヴィレッタが⁉ なんで暗殺?

 教会に鐘が鳴り響く。
 夕刻を知らせる鐘だ。
 礼拝客が帰り支度を始める中、噂話が耳に届いてくる。

「陛下が、レスティア家の公女様を側室にすると布告されたそうだ」

「側室?……ああ、宰相様派閥じゃないからか」

「宰相への遠慮だろうな。しっかし、これで世の中どうなるのかねえ」

 ヴィレッタがサリウス叔父さんと結婚?

 私の思考が停止していると、司祭や他のシスターたちがこっちに向かって歩いてきた。

「ターニア。私たちはこれから外に食事をしに向かいます。留守と客人のもてなしをお願いできますか?」

「畏まりました。司祭様」

 別人のように恭しく頭を下げるジーニア。
 教会内は私たちだけとなった。

「ターニア、ね。また安直な偽名ね」

「キヒ♥ 下っ端は辛いねえ。さぁて、どうする? 王女様たちぃ♥ 今ならぁ、思う存分戦ってぇ破壊された教会とぉ、死体になったあたしを作ることだってできるよぉ♥」

「……そうなれば私たちはとんでもない極悪人として後世に語り継がれることになるかな」

 私のボヤきにフィーリアも同意の目線を送ってくる。

 ここでジーニアとやり合えば、大勢の目撃者がいる以上、疑われるのは私たちだ。
 善良なシスターを無惨に殺した極悪人として認識されるだろう。
 それは避けねばならない。

 それより今は……

「みんな、聞いてほしい。ジーニアとは休戦。これよりヴィレッタ・レスティア公爵令嬢の保護と、犯人であるバネッサ・トリトリンの確保を目的にする」

 私の言葉にベレニスとフィーリアも頷くが、リョウは鋭い目線をジーニアに向けた。

「一つだけ教えろ。ノイズ・グレゴリオはお前たちの仲間か?」

「キヒ♥ 教える義理はないねぇ。何か取引できる情報があれば、お・し・え・て・あ・げ・る。キャハ♥」

 ジーニアの歪んだ笑みが印象に残った。
 
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